Killing Art Online   作:MZMA

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今、連載しているfateがスランプというか…行き詰ったと言うか…。

って感じなので、プロットだけは出来ていたこの小説を息抜きで書こうかな…と。

あらすじでも書いてありますが、ユウキちゃんがイカれます。プレイヤーをザックリとやります。ご承知ください。

…ユウキちゃん可愛いなぁ。



はじまりの物語
プロローグ


 

 

 

 

 

 

 

 

 チリン。

 

 街灯の光の差さない暗がりの中。

 帰宅する際の近道の為に、多少の恐怖心を呑み込み路地裏を足早に歩いていた時だった。

 ふと、鈴のなる様な音と共に金属製の何かが地面で跳ねた。少し屈んで下を見れば、其処には五百円硬貨が転がっている。

 蹴ってしまったのだろうか? それとも上から?

 そう思い、男性は自身の頭上に顔を向ける。狭い1メートル程の細道から見上げる空は、星々の明かりが都会の灯によって覆い隠された無明の夜空。風情も何も無い、新月の夜は伽藍堂の様な空虚さを感じさせる空だった。

 

 ドスリ。

 

 ふと、腰に感じる熱。

 気がつけば、細い指によって口元が塞がれている。

 

「ーーーーッ⁉︎」

 

 熱い。

 只それだけだった。ジクジクと焼き鏝を押し付けられた様に断続的に痛む腰。そしてーー

 

「あーー」

 

 鋭利なナニカが喉の上を滑った。

 ふっと離れる指。途端に猛烈な痛みが襲い、視界の中にに血飛沫が舞う。

 

「ぐーーぁーー」

 

 地面に倒れこんだのだろう。酷く灰色の地面が近い。

 その男性が最後に見たのは、自身の赤き命が地面に水溜りの様に広がり続けている(さま)だけだった。

 

 

 

 

「はあ」

 

 その人影は溜息をつき、たった今自身が殺し、無様に血を零し続けているスーツ姿の男性を見る。

 一瞬の高揚感。だがそれはすぐに冷めてしまう。

 つまらない。全くもってつまらない。精々がまぁ、おやつ程度だ。

 それが少年の感想だった。

 自身が心の底から打ち震えられるナニカが無いのだ。

 運動競技に取り組んでみても、勉学に励んでみても、趣味と呼べるような何がを探してみても、犯罪行為に走ってみても。

 どんな事をしても、この胸にポッカリと空いたような空洞が埋まらない。

 完全に何も感じない訳では無い。やった中での優劣は確実に存在するーーが。それでも尚、心の底から湧き上がるような楽しみを見出す事が出来そうにも無い。

 もう、何一つ自身に楽しみ与えてくれる物はない。

 

 そう、あの世界以外は。

 

 裏路地から出て、人の流れに沿って目的も無くただぼんやりと夜の街を歩く。そして見上げたビルの電光掲示板には、とある世界の名が刻まれていた。

 

 ーーSword Art Online。

 

 蒼穹に浮かぶ鉄と剣の浮遊城。

 自身の体を動かし、闘い、殺し殺される。

 もう、自身の心の拠り所はあの世界しか無い。

 

 都会の光により侵され、星々が輝く事のない漆黒の空を覇気無さげに見上げる。

 あの仮想世界の星々が懐かしい。こんな夜空よりも余程綺麗だ。

 偽りの命(HP)を与えられるあの世界で、魂をぶつけ闘いたい。

 傷ついても良い、生きていると実感したい。

 

 黒髪黒目の少年。

 唯散(ゆいばら) 貴規(あつき)の願いは只それだけだった。

 

 

 ◯

 

 

 東京都渋谷区松濤一丁目。

 とある邸宅にその少年は住んでいた。

 

「貴規くーん! 学校の方からテストの答案用紙が帰ってきたわよー!」

 

 そんな声が階下から響く二階の一室。二十畳の自室に運び込んだランニングマシンの上を走っていた俺は、母親の声を聞き、スイッチを切った。

 部屋に置いてあるテレビからは正午を跨ぐニュース番組が流れている。

 

『昨夜遅く、東京都渋谷区の路地裏で男性が殺害されているのが発見されーー』

 

『男性の名前はーー』

 

『犯人は未だ見つかっておらず、警察はーー』

 

 ブツリとテレビの電源を落とすと、タオルで拭い汗を拭いながらゆっくりと歩を進めるのだった。

 

 

 

「それで、テストの結果なんだけどーー」

 

 一階、ダイニングルーム。派手派手しく無く、だがしかし決して安いとは言えないであろう上等な家具で揃えられた一室で、俺は母とダイニングテーブル越しに向き合っていた。

 完全なる余談だが、俺の父親は実母の再婚相手で、大企業の社長らしい。あまり興味は無いので何処の会社かどうかは覚えていないが。

 

「見せなくていい。どうせだいたい満点だろ」

 

「そうなのよ! 13教科、1300点満点中で1273点!」

 

 キャー! と興奮を露わにする母親に冷めた様な冷たい眼差しを送りながら俺は思う。

 何故、こんなにも喜べるのかと。

 

 だいたい、テストなんて社会に出ても何一つ役に立たないだろうに。

 

 極端な話だが、路地裏で殺されそうになった場合の対処方法なんて学校では教わらない。学校で習った事が役に立つ事などごく僅かだろう。

 

 精々、良い学校に進学し高学歴を誇れる様になる程度だが、学歴よりも実力や技術重視の社会になりつつある今、そんなものを振りかざして喜ぶのは金持ちの家の子で特に誇れる何かが無い様なボンボン程度だ。…断言は出来ないがな。

 自身の目の前に置かれた炒飯を手早く胃に落とし込みながら、嘲笑めいた笑みを未だにテストの答案用紙を見て目を輝かせている母親に向ける。

 

 嫌いでは無い。一時期は、まざこん? と言うものにもなってみたが、特に楽しくも何とも無かった上に、それ以来鬱陶しさが増した気がするので今では若干後悔している。本当にあの時の俺はどうかしていたぜ……。

 

 そして、カチャカチャとレンゲと皿が立てる音のみがダイニングに響く。俺は何も言わずに黙々と食べ、母親が嬉しそうにテストを見る。そんな、互いと互いが同じ部屋に居ながら相手に全く見向きもしないという、人によっては居心地が悪いであろう静寂がしばしの間続いた。

 

「それじゃあ、俺は今からやる事があるから」

 

 昼食を手早く胃に詰め込み、席を立つ。その際に、食器をキッチンに持って行く事を忘れない。最低限の後片づけは基本だからな。

 時刻は十二時五十分。

 あの世界へと繋がるまでに、準備は終えられるだろう。

 

 歯磨きを適当にこなし、ナーブギアの電源を入れる。ソフトは既に挿入済みである。抜かりはない。

 ラフな格好に着替え、震える手でヘッドギアをゆっくりと装着する。

 ベッドに横たわった時、中の時刻は十二時五十九分を示していた。何ともギリギリな時間に内心苦笑する。

 

 コレ、時間過ぎてたら暫くショックを引きずったな…、と。

 

 期待と興奮で、胸が高鳴り知らず知らずの内に右手を強く握りしめていた。くはは、俺らしくもない。…いや、これが俺なのか?

 

 そしてーー

 

 遂にその時がやって来た。

 

「リンク・スタート」

 

 叫びそうになる声を抑え、その言葉を口にする。

 途端に視界が爆発したかの様に光に覆われる。

 カラフルなマークと共に、現実から乖離していく感覚。

 βテストのデータをそのままに、その世界へと降り立つ。

 

 一瞬の静寂。

 

 ひゅうと風が吹いた。

 目の前に広がるのは、中世の街中にある様な広場。

 

「ーーッ」

 

 唇の端が釣り上がるのを否応無しに感じる。

 俺の体はアバターであり、存在しないはずの心臓がドクリと跳ねた。

 ああ、戻ってきたのだ。あの世界へと。

 

「ただいま」

 

 そんな声が口から漏れた。

 

 

 ◯

 

 

「キアラ、キアラ!」

 

 俺ことアバター名 " Kiara " は現在の状況に辟易した様な溜息を吐いた。自身の前でフレンジーボアを翻弄しながら見事に倒して見せた手際は素直に賞賛しよう。とても初心者とは思えない動きだった。

 だが、しかし。

 

「わかったから纏わりつくな、ユウキ」

 

 そう、俺の腕を取り嬉しそうに飛び跳ねる紫髪紫眼の青年(・・)ーーユウキを面倒臭げな目で眺める。

 

 きっかけはほんの些細な事だった。

 SAOに戻ってきた事で幾分か機嫌が良くなり、本来なら絶対にする事のないお節介を焼いてしまった。只それだけだ。

 俺はよく勘違いをされるのだが、人間が嫌いという訳ではない。来るもの選び、去る者追わず、というスタンス故に俺が関心を持った人間しか相手をしない。

 人としてどうかと問われようとも、俺はそういう生き方しかできないのだ。

 この場合、ユウキは前者である為、面倒臭げな表情をしつつも本当に面倒とは感じてはいなかった。腹立たしい事だが。

 

 と言うよりもこの世界に来てから俺の人間選別思考が少し緩和されている気がする。同じゲームにログインした同士だからだろうか。

 

 まあ、それは置いておいて、だ。アバターが男だった為に声を掛けてみたのに、この様子を見るに実際は少女だろう。少女の顔のままだったら嬉しかったが、これでは野郎二人が組んず解れつしている様にしか見えない。

 せっかく上がったテンションがだだ下がりしていくのを感じた。

 

「ねえねえ、次はどんなモンスターをーー」

 

「纏わりつくなって言ってんだろうが、ボケ」

 

「あぐっ⁉︎」

 

 チョップをHPが減らない絶妙な加減で頭に叩き込む。圏外で他人のアバターのHPを減らすとオレンジプレイヤーになってしまう。

 

「野郎が涙目上目遣いとかキモいからやめてくれません?」

 

「ううっ…キアラが酷いよぉ〜」

 

「だ・か・ら! 男のアバターでそういう事すんなよ! 可愛くも何ともねぇよ! 何でSAOでネナベしてんだテメェは!」

 

「ええっ⁉︎ ボクが男じゃないってどうして分かるの⁉︎」

 

「いや、今のやり取りでわからなかったらソイツヤベェよ」

 

「むぅ〜」

 

「ハイハイ。そんじゃあ始まりの街を出るぞ」

 

「え? 出るの?」

 

「当然だ。こんなヌルいステージでチマチマやってられるかよ」

 

 ユウキの実力は相当な者だ。HPが全損しない程度に強敵に突っ込ませて行けばみるみる内に強くなるだろう。まあ、全損したらその程度という事になる。その場合はさっさとサヨナラだ。

 

「ほれ、最初はお前の獲物である片手剣でいい奴を取りに行くぞ! ホルンカの村だ」

 

「わかったよぉ」

 

 もー、全くー。とブーたれるユウキを小突きながら始まりの町の外へ。

 だがしかし、俺はそんなユウキが弱ければ切り捨てる、という思考を持ちつつも、育て甲斐のありそうなコイツの強化案ばかりが湧き上がるのは、一体何故なのか。

 はて、と自身の行動に一抹の疑問を感じ立ち止まる。

 

「キアラーー! 立ち止まってないで早く、早くー!」

 

「お前、何処行くかわかってんの?」

 

「あ」

 

「………これだよ…」

 

 えへへー、と笑い絡んでくるユウキを適当にあしらいながら、気持ちの悪い植物型モンスターを大量に狩るだけのお仕事(クエスト)を受けに、ホルンカの村へ俺たちは足を進め始めた。

 

 

 そして、コレが平和なソード・アート・オンラインにおいての最初で最後のクエストであった。

 

 

 

 

 

 

 

 






まあ、プロローグなんてこんなもんですよね。
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