Killing Art Online   作:MZMA

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第一回攻略会議

 

 

 

 

 

 

「今日はオレの呼びかけに応じてくれてありがとう!」

 

 そんな男性の声が、此処《トールバーナ》の噴水広場に響いた。

 青髪で長身のイケメンで、名をディアベルと言うらしい。

 (クラス)が存在しないSAOにおいて騎士を自称するディアベルに対して、いくつかヤジが飛ぶ。最も、それはマイナスの感情が含まれたものでは無かったが。

 というか職が無いって言うと全員ニートみたいに聞こえてくる。

 

「ねえ、キアラ。あの人殺したら楽しいかなぁ?」

 

 ちょっと何言ってるんですユウキさん。

 俺が隣に座り、目立たない為に被せた麻袋を被っているユウキの方を見てみると、袋の穴越しに見えるユウキの瞳から光が消え失せていた。視線の先は勿論、ディアベルだ。

 が、それも一瞬の内。一度目を閉じ再び開くと、其処には元気いっぱいと言わんばかりにキラキラと輝く無邪気な瞳があった。

 

「やめなさい。………つーかお前、ギャップすげぇよ…。まぁ、其処が良いんだが…」

 

 ギャップ萌ってやつですね。わかります。

 袋を被せている理由はアレだ。この中で女の子、それも美少女が座っていたら目立つ上に印象に残る。

 それならまだ麻袋を被った変人として見られる方がマシだ。顔も分からないしな。

 

「んー? なぁに?」

 

「なんでもねぇよ。ホラ、あのイケメンくん見てやれよ。キラキラ輝いてっから」

 

 ユウキの頭に手を乗せて、無理やり方向を前に変える。

 

「わかった、わかったから手を離して! 痛たたた!」

 

「おっとすまん。アイアンクローかましちまったな」

 

「酷いよぉ…」

 

「許せ、サ◯ケ…。あ、ユウキだった」

 

「ちょっと!」

 

 俺たちがそんな漫才じみた事をやっていゆ内にディアベルは演説を再開する。

 

「今日、オレたちのパーティーが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した」

 

 指指す先には迷宮区である灰色の塔。それを見て、プレイヤーたちがどよどよとざわめく。

 だが、最上階へと階段だけだ。ボス部屋までは発見できていないらしい。

 

「あれ? ボス部屋って確か迷宮区の二十階層にあったよね?」

 

 ぽつりとユウキが呟く。

 ああ、お前の言わんとしている事は俺も十分理解しているさ。

 

「それってボクたちが五日前くらいにーー」

 

「おっとそれ以上は言うな」

 

 周りに人がいると言うのに俺たちが五日前にボス部屋にたどり着いていた事を喋ろうとするお馬鹿な相棒(ユウキ)の口を押さえる。

 こんな所で空気を読まずにそんな事を言ってしまえばディアベルの面目は丸潰れだ。それ以前に、それなら何故に他のプレイヤーに呼びかけなかったのかと責められるだろう。

 以上二つを踏まえ、俺たちは不用意な発言を控えるべきだと判断する。流石にこんな序盤の序盤で一部とはいえプレイヤーから恨まれるのは勘弁したい。たとえ、その内にプレイヤーキラーとして恨まれる事になろうとも一度もボス戦を経験せずにSAOを終えるのは味気なさすぎる。

 

 だがまぁ、俺たちみたいたなクレイジープレイヤーにとっては何て事のないモンスターでも、生き残る為に戦っている奴らの方が遅くなるのは当然…なのかね。なにせ俺たちときたら初見のモンスターでも取り敢えず突っ込んで行って攻撃されたら、された時に考えようってスタイルだからな。タッグ組んで無かったら何回か死んでいた。

 しかし、ほんの二ヶ月前まではユウキも安全第一プレイヤー(あっち側)であった事を考えると何とも感慨深い……というよりも結果的にとはいえ見た目から考えて十三歳程度の年齢の女の子を此方に引きずり込んでしまった事に微かな罪悪感を覚える。

 

「一ヶ月。ここまで、一ヶ月もかかったけど……それでも俺たちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、始まりの街で待っている皆に伝えなきゃならない。それが、今この場所にいる俺たちトッププレイヤーの義務なんだ! そうだろ、みんな!」

 

 再びの喝采。正直鬱陶しい。

 ディアベルの事を悪く言うつもりは無いが、俺は他人の事なんてどうだって良い。俺は、俺たちはただただ、戦って殺したいだけなのだ。

 自論だが他人の為に戦うというのは確かに美しい事なのだろう。だが、美しいだけた。自分の為に戦う方が難しいと俺は考える。

 だってそうだろ? 他人の為に何かを成すなんてお題目を掲げれば、目指すべき目標が定められる。

 だが、自分の為に何かをする為には自分自身で目標を定める必要がある。いくら妥協しようが誰も知らないし気づかない。だから苦しい事があればどんどん堕落する。

 自分の為に何かを成す為には、心を鍛えなければならない。他人の為になんて、何かに縋るよりよっぽど困難だ。

 まぁ、長々と語ったが、どのつまり俺たちは自己中だって事だな。

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

 と、そんな声が低く流れれた。この状況下で待ったをかける空気の読めなささにある意味感心し、俺は思考を打ち切り、声の方へと視線を巡らせ、

 

「モーニングスター?」

 

「いや、どっちかっていうとモヤットボールでしょ」

 

 ウニみたいな頭をしたプレイヤーを見つけ、暫し唖然とした。

 …リアルでもあの髪型なのか…⁉︎

 

 前方の人垣を割りながら進み出てきたユウキ曰くのモヤットボールは、ディアベルとはまさに正反対の濁声で唸った。

 

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへわな」

 

 仲間ごっこが出来ないのなら、モヤットボールが居なくなれば良いと思う俺は果たして間違っているのだろうか?

 別に聞きたく無いし、俺やユウキは確実にアイツを仲間とは認識しないしな。

 

「別に、アイツが居なきゃいけないルールなんぞねぇし不満ならとっとと出てい行きゃぁ良いのに…」

 

「うわぁ、キアラがいつになく辛辣だぁ…」

 

「いやだってそうだろ…。なんでアイツが攻略に必ず参加しなきゃいけない体で話が進んでるんだよ」

 

 だが、自称ナイトのディアベル君は唐突な乱入に余裕溢れる笑顔のまま言う。

 

「こいつとは何かな? まぁ、何にせよ意見は大歓迎さ。でも、発言するのなら名乗ってほしいな」

 

 こいつ…心までイケメンなのか⁉︎

 まぁ、ディアベル君の心がシルク製の雑巾の様に白いのか、はたまた使い古したボロ雑巾の様に薄汚れているのかは兎も角、何か言いたいらしいモヤットボールへと視線を向ける。

 あーあ、聞くのダルいなぁ……。誰かコイツをつまみ出してくれたら逆襲の雌牛のクリームを一瓶あげちゃう。

 

「わいの名は《キバオウ》ってもんや」

 

 牙王って…。自分で王とか名乗るとか厨二が入ってるんじゃあなかろうかこの中年。…いや、老け顔なのかもしれないが。

 

 モヤットボール改め、キバオウは眼光鋭く広場に集まった全プレイヤーを睥睨した。

 

「こん中に、五人か十人、ワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」

 

 まるで殺されかけた被害者が犯人を捜すかの様に、殺気立ちながらキバオウは言った。

 

「うーわ、上から目線うぜー。殺してぇー。けど、アイツ如きと命懸けの勝負とか勘弁だわー」

 

「落ち着いて、落ち着いて。あの人殺したってどうにもならないよ」

 

「そうなんだけどさー。つーか、ワビ入れるとか意味不明じゃね? そもそもアイツ誰よ」

 

「さぁ」

 

 だよな! この二ヶ月の間に殺した六人の知り合いとかじゃなくて良かったー。ユウキが覚えてないって事は逃した獲物とかじゃ無い様だし。

 

「詫び? 誰にだい?」

 

 ディアベルの静かな声が様になった仕草で問いかける。

 

「はっ、決まってるやろ。今までに死んでいった二千人に、や。奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや! せやろが‼︎」

 

 途端に、騒めいていた約四十人の聴衆がピタリと押し黙った。

 成る程、βテスターか。

 重苦しい沈黙の中、NPC楽団の奏でる夕方のBGMだけが流れる。すげぇシュールだなオイ。リアルだと無いから初めての体験だ。

 

「ーーキバオウさん。君の言う《奴ら》とはつまり……もとβテスターの人たちのこと、かな?」

 

「決まっとるやろ」

 

 そして、キバオウは長々と頼んでもいないのに自論を垂れ流し始める。

 

 曰く、βテスターはビギナーを見捨てた。

 自分たちだけが良い思いをして、知らん顔。

 それ故に、謝罪、賠償をしない限りは命を預けられないし、預かれない。

 

 だ、そうだ。

 

 ……こいつ馬鹿なのか?

 

 そりゃあ、誰だってこんな状況になれば自分の事で精一杯だろうに。

 しかも、コイツは戦力として期待できるβテスターを吊るし上げるときた。

 自分の発言が、自分の知らないクエストを知っているβテスターに対する嫉妬心と、見捨てられたビギナーに対する優越感から来ている事を自覚していないらしい。

 さしずめ、ビギナーなのに此処までたどり着いた俺スゲーってところか。…………アホくさ。

 もしもコイツがβテスターだったのだら真っ先にトンズラするか、ビギナーに対して超偉そうに振る舞ってお山の大将を気取っていただろう……雰囲気的に。

 あ、それと最後に俺は誰であろうとも、何があろうとも命を預ける事は無いし預かりもしない。唯一の例外はユウキだけだ。

 ユウキ以外の人間に命を預けられても、ドブに捨てるか、俺が喰らう(殺す)

 

「発言、良いか?」

 

 その時、ハリのあるバリトンボイスが夕暮れの広場に響き渡った。

 立ち上がったのは身長は百九十程の巨漢だ。精悍な顔つきに、チョコレート色の皮膚と彫りの深い顔立ち。そして、スキンヘッドも相まって実にイカスな男性だった。

 キバオウとは天と地ほども差がある。

 

 彼は前に進みでると、俺たちに軽く頭を下げーー礼儀も良い。この状況で発言しようとする胆力と言い、リアルだとさぞモテテいただろう。既婚者かもしれないーーキバオウに向き直る。

 まぁ、俺が立っても良かったのだが、名前を名乗る必要がある為に万が一にβテスターだとバレると余計面倒になりそうだ。

 エギルに見下ろされたキバオウが一歩下がる。実に小物臭い仕草に笑いがこみ上げるが、嚙み殺す。そんな俺を見ていたのか、それともユウキも同じかんがえだったのか、ユウキが苦笑した。

 

「俺の名前はエギルだ」

 

 エギルと名乗った人物の反論は実に見事だった。

 キバオウを完全論破し、要求を取り下げさせたのだ。

 だが、まぁ他のMMOでトップを張っていた奴らが死んでいったというのは些か残念だ。それ程の奴らなら俺が殺してみたかった…が、SAOを舐めてかかって死んだアホ共だ。たかが知れていただろう。茅場がわざわざ現実だと教えてくれただろうに。現実は甘く無いって言葉を忘れたのか?

 でも、それ以上に引っかかったことが一つ。ガイドブックって無料(タダ)だったのか? ……今度あの鼠とエンカウントしたのならOHANASHIする必要があるだろう。

 

 その後は、ディアベルのポジティブな呼びかけが数分続き、会議はお開きとなった。…実務的な話が何一つされてねぇ…。

 

 

 

 ◯

 

 

 

「あー、疲れたなー」

 

「だねー、あのモヤオウって人が乱入したからかなー?」

 

 キバオウな。モヤットボールと混ざってるぜ、ユウキちゃんよ。

 ひょいとユウキに被さっていた麻袋を取る。広場では中々に目立っていた様だからな。まあ、外していたら外していたで目立っていただろう。

 

「とりあえず、今日はもう宿に戻って寝ようぜ。迷宮区に今から潜るのは勘弁だ。夜更かしはお肌の天敵だしな」

 

「いや、キアラ男じゃん。てか、まだまだ夕方だし」

 

「おい馬鹿、俺がわざわざユウキのことを慮って言ってんのに…」

 

 いくらこの世界ではペッタンコなお胸は成長しないとはいえ、脳は起きているのだ。成長ホルモンが分泌される時間に寝ていないとちんまいままだぜ? まぁ、俺としては小さくても歓迎なのだが。

 ユウキちゃんハァハァ(棒)。

 

「今、失礼な事とエッチな事考えたでしょ?」

 

「何故にわかったし」

 

 こんなにペッタンコでも女の子って事なのかねぇ…。女の勘は鋭いって言うしな。

 

「イッタ! 蹴るなよ!」

 

「また失礼な事考えた!」

 

 胸を押さえ、頬を赤く染めながら上目遣いに睨みつけてくるユウキを見て無性に愛でたくなる。ここまで、異性に入れ込んだのは初めてだ。恋愛感情かどうかはともかく、今現在で一番大事な人間はユウキだと断言できる。両親よりも、だ。

 

 と、言うよりも…

 

「あれ、よく見るとユウキ…思ったより胸があるぞ⁉︎」

 

 プレートアーマーがあるから分かりにくかったが、よくよく観察すると掌にすっぽりと収まりそうな可愛らしい双丘ががががーー。

 これまでの二ヶ月、何故気がつかなかった俺ッッ‼︎

 

「遂に口に出したな! それに思ったよりってなんだー!」

 

 うなーー! と猫の様にじゃれついてくるーー本人的には襲いかかっているつもりなのか? ーーユウキを捕まえて、脇にかかえ込んで抱き上げようとしーー筋力値が足りなくて断念する。

 リアルだとユウキくらいの年齢の娘なら簡単だろうにな。筋トレをしても筋力値が上がらない世界とは如何なものか。

 早くレベルを上げたいなぁ。ま、上がったとしても主に振るのは敏捷値だけどね!

 

「ちょっ! キアラ! 恥ずかしいよ!」

 

 ん? 捕まえた後はやけに大人しいと思っていたが合点がいった。

 

「ああ、悪い」

 

 筋力値のままならなさに思いを馳せていたが、そりゃそうだ。脇に抱えようとして断念したのだ。自然とその格好はユウキの肩に手を回して抱き寄せている様になる。

 得約、得約。

 むむむ、と顔を赤くしながら唸る姿はとても可愛らしく、ちっとも怖く無い。

 

「照れちゃって〜。可愛いなぁユウキちゃんは」

 

「か、可愛いって! 馬鹿馬鹿、キアラの馬鹿〜!」

 

「はははは、痛くも痒くもありませーん」

 

 だって圏内だもん。仮にソードスキルを食らっても被撃箇所が嫌な痺れを暫く訴えるだけだ。

 

「さて、と。宿に戻ってデュエルを何戦かしたら明日に備えて眠るぞい。俺は頑張る時は頑張るが、サボるときはサボるんですたい」

 

「むぅ、わかったよ。キアラの言う通りにしまーす。攻略は明日からだね」

 

 ここ二ヶ月一緒に居て気がついたが、ユウキは何方かと言えばバトルジャンキーな気があるらしい。ついでにサドっ気も。

 俺がPKする時は、専ら全損決着モードのデュエルを強制させているのに対し、ユウキは一方的に嬲って殺すのを好んでいる。

 SとMは表裏一体と言うが、はてさてユウキはどうなのやら。

 それよりも、ユウキはいま重大な言質を俺に与えてしまった。

 

「じゃあユウキ、おっぱい揉ませて」

 

「へ⁉︎」

 

「いやだって今、俺の言う通りにするって言ったじゃん?」

 

 そう、詰まりはユウキの胸とか尻とかを揉むのも、顔とか体とか脇とか舐めるのも、ユウキの全ては自由自在というわけだ。いや、VRでしか出来ない様なアブノーマルな感じで眼球を舐めてみるというのもなかなかーーーー

 

「キ、キアラのエッチーーー!」

 

「ぐはっ!」

 

 俺はユウキのストレートを食らい、見事に宙を錐揉み回転し、石畳に叩きつけられた。あれ? 石畳は破壊不能オブジクトの筈なのに地面にめり込んだ気がする様なしない様な…。

 いやー、しかしお見事。十メートルは飛んだぞコレ。右ストレートだけでとか筋力値足りてるのか? システムを超えた人の力を見た気がするぜ…。

 

 フッ…前途多難だな、いろんな意味で…。

 

 俺はトマトの様に顔を真っ赤にさせながら、恥ずかしそうに宿の方向へ走り去って行くユウキの後ろ姿を眺めながらそう思った。

 ははは、耳まで真っ赤でやんの。かっわいー。

 

 ……………。

 暫く地面と熱い抱擁を交わしていると、近くを通りかかったプレイヤー達に変な目で見られたので、のっそりと立ち上がる。

 

「何かお土産を買って帰るか…。流石に毎日パンとクリームじゃ飽きるしな…」

 

 照れっぱなしで、暫く呼びかけなければ布団から出て来ないだろうユウキの事を考えながらぼやく。

 誘い出す為には何が一番効果的だろうかと思いを巡らせながら、俺はNPCの経営する露天の並ぶ一角へと足を進めた。

 

 

 

 

あ、あとさ。

完全に余談なんだけど、苗字がこんがらがりそうな元吸血鬼の変態紳士男子高校生も言っていた様に、女子の目を舐めたいと思うことって、健全な男子の一般的な発想だと思うんだけど、どう思う?

 

 

 

 

 

 

 






あれ?

書いてるうちにどんどん主人公が変態になってきてる…?
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