超、お久しぶりです。
小説家になろうで小説を書こうと、書き溜めてたんで全然更新出来ませんでした。
これからもゆっくり更新していく……かも
布団オバケと化したユウキに、焼き鳥の様なナニカを供えて荒ぶる御霊を鎮めてから一日。
俺とユウキは再び噴水広場に集まっていた。
余談だが、ユウキと俺は部屋こそ同室たが、きちんと違うベッドで寝ました。まる。まぁ、ベッドと言っても部屋にはベッドは一つしかなく、
時刻は夕方。なんでも、昨日のディアベルのスピーチに感動したのかどうか知らないが、士気が急上昇。
今日の午前中に怒涛の勢いで二十階層を制覇し、ボス部屋を確認したらしい。ご丁寧に中をチラ見して住人の顔も拝んだとか。
ボスは身の丈二メートルに達する巨大なコボルドで名前は《イルファング・ザ・コボルドロード》。武器は曲刀カテゴリ。
取り巻きには金属鎧を着込み、
それが、青髪のイケメンこと自称騎士のディアベルが得意げに語った内容だった。
相変わらずの麻袋スタイルであるユウキは興味なさげに手元の小冊子を読んでいる。
だがその頑張りも、いつの間にか噴水広場の隅の
当然の事ながら会議は一時中断。全員が全員ーーもちろんあのクレーマーであるモヤットボールもーーガイドブックを購入ーーと言うか貰って中身を熟読した。…無料で配布されているのをまざまざと見せつけられ、本当に何故俺はアイツから五百コルも支払ってガイドブックを仕入れていたのだろうと、悲しくなる。
にしても本当によく調べてある。マジでディアベル君達の午前中の頑張り無駄になってんじゃねぇか。此処までくると、ディアベル達に対する憐れみよりも、アルゴに対する呆れの方が強くなる。
お前、こんな詳しく知ってんならちょいとボスに特攻かまして来いよ。骨は拾ってやるから。
でもまあ、あのネズミのスタンスを崩しかねない攻め込んだフレーズが載っていたのは少し驚いた。
【情報はSAOβテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります】
この文を載せれば、自分がβテスターである可能性を疑われる事くらい理解している筈だ。最悪、真っ先に吊るし上げられる可能性だってある。軽く広場を見渡しても、その姿が見られない事から、それを承知で此処までやったのだろう。そのことに関しては素直に尊敬する。お陰で七面倒な調査の手間が全て省く事ができた。
「ーーみんな、今はこの情報に感謝しよう!」
ディアベルが声を張り上げる。それはそうだろう。今此処で最後の文や情報の真偽について論じあっていたらラチがあかない。
ディアベルのそんなβテスターとの融和を選択する様な言い回しに、聴衆は騒つく。……いや、何故に騒つく。βテスターとの確執を広げても何一つ得をすることが無いのだから当然の選択だろうに。あのモヤットボールですら、声嚙みつかずにだんまりを決め込んでいるというのに。
……もしかすれば、いやしなくとも。此処に集まった奴らって脳筋ばっかのアーパー集団なのか⁉︎ …バカに連携とか出来るのかよ。キアラ、心配だなぁ。
その後もディアベルは聴衆を煽る煽る。コイツのリーダーシップは中々のものだ。他人を先導(扇動)するのに向いている。第三層から作れるギルドでも立ち上げたのなら、さぞかし素晴らしいギルドを作ってくれるだろう。期待してるぜ、ディアベル君よ。
と、俺が感心していると騎士様が、仕切り直すかの様に手を叩き言った。
「ーーそれじゃぁ、早速だけど、これから実際の攻略会議を始めたいと思う! 何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担もできないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティーを組んでみてくれ!」
「おし、俺とユウキは二人パーティー決定だな」
元からパーティを組んでいる俺とユウキはパーティー申請もする必要は無く、実に早く決まった。何より、常日頃から共に行動しているからコイツとの連携はとてもやりやすい。
「えぇー。キアラと二人ー? 嫌じゃないけど二人パーティーだとボスと戦わせて貰えなさそうで嫌だなぁ」
だが、ユウキお嬢様はご不満の様だ。リスの様に頬を膨らませながら可愛く抗議してくる。麻袋が頭を覆っている為に殆ど見えないのが残念だ。つーか、嫌じゃないって前置きして置いて嫌って、どっちだよ。
ふむ、確かにユウキにも俺以外との人間と接点を持たせないとダメか…。と、なれば…。
「な、なぁ」
「ん?」
唐突に背後から掛けられた声に振り返る。と、そこには黒髪黒眼の女顔の男と、赤いフードを目深に被った性別不詳ーーいや、体の感じから見て女の二人組が背後に立っていた。
「どーしたの?」
ユウキが俺の後ろから、ひょっこりと顔を出すと、麻袋に驚いたのか二人が僅かに身じろぎした。ははは、悪いね。でも、フードの君も同じ事を考えてのその格好だろう?
「あ、うん。アンタ達もあぶれたのかなって」
「だから、私はあぶれてなんかーー」
「ちょっと黙っててくれ。で、もし良ければパーティーを組まないか?」
ふむ。こちらとしては思ってもない申し出だ。ユウキも他の人とパーティーを組みたいと言っているし、断る理由も無いな。
「オーケーだ。ユウキもそれで良いな?」
「いーよー。キアラに任せる」
「そんじゃ決まりだ。宜しく頼むぜ、黒い剣士さん」
そう言って、メニューウィンドゥから俺とユウキは黒髪の剣士にパーティー申請を飛ばす。
「こちらこそ。俺はキリトだ」
それと同時に、俺の視界の左端に二つのHPバーが発生する。
【Kiara】【Yuuki】【Kirito】そして、【Asuna】
へぇ。アスナって名前なのか。まあ、俺は強い奴にしか興味が無いから弱ければ忘れるだろう。キリトと名乗った少年共々。
「宜しく頼むぜ、お嬢さん」
フードの奥を覗き込む様に顔を近づけてアスナに囁く。
フードの奥の闇で、ギラリと光る榛色の眼光が俺を射抜いた。
◯
自称騎士のディアベル君は実務面でも優秀だった!
…一体なんでコイツみたいな、顔良し、能力良し、性格はーー良いのかわからないけど、これまでの全てが自身の目的の為に被っていた役ならば、十分に
だが、流石のイケメンナイト・ディアベルでも、オミソパーティー(勿論俺たちだ)のフォローは完璧とは言い難い物だった。
騎士様は俺たちの前にやってくると(年齢とコミュ力的に俺がリーダーになってしまった…解せぬ)暫く考え込み、爽やかな笑顔で言った。
「君たちは、取り巻きコボルドの潰し残しが出ない様に、E隊のサポートをお願いしていいかな」
意訳すると、ボス攻略の邪魔だから奥ですっこんでろと言っているのだろう。
ユウキが抗議しようと口を開いたのを袋越しに察した俺は、ユウキの頭に手を乗せて制する。ドウドウ、あんまり噛み付くなよ。この先何かとやり難くなるだろ。
アスナ嬢もキリトが止めてくれた様で、特に何も言うことは無かった。良くやったキリト。
「イェッサー。重要な役だな、任せろ」
「ああ、頼んーー」
「ーーだが」
おっと、ディアベル。俺にそんな役を押し付けるなら俺だって好き勝手やらせてもらうぞ。俺を丸め込もうなんざ百年早いわ!
「あくまでも俺達はサポートだ。キバ……キバ……「(キバオウだよ、キアラ)」……キバオウ率いるE隊ならば撃ち漏らすとも思えない。サポートをする事はするが、ボスに対する遊撃くらいは任せてくれよ。なに、こっちは少数だが精鋭ぞろいだ。心配すんなよ、
にっこりと、いい笑顔で俺は言った。
あと、ナイスフォロー、ユウキ。キバオウの名前を教えてくれてありがとよ。危うく人の名前も覚えない様なバカだと思われる所だった。まぁ、実際覚えていないがな。
少数精鋭だかどうかは知らんが、ハッタリでも大丈夫だろう。まだ第一層。プレイヤーのレベルや実力に其処まで差は無い。
「そ、そうだな。前向きに検討しておこう。ほら、他の隊との擦り合わせも必要なんだ。わかってくれるか?」
「勿論、理解しているぜ。お互い、頑張ろうな」
すっと手を差し出せば、レイドリーダーである向こうは引けない。ガッチリと固い握手をした後に、ディアベルは背を向けて去って行った。
「キアラが凄いいい笑顔だったね。ボク、びっくりしちゃった」
「どういう意味かな、ユウキくん?」
「痛い、痛い〜」
ぐりぐりぐり〜っと。
どういう意味だ、こんにゃろう。
ユウキの両顳顬に人差し指の第二関節を押し当て、動かす。
「これでいいだろ、キリト」
「ああ、だけど前向きに検討って事はーー」
「まあ、逃げだな。当然だけど」
「ええ〜。それじゃあ変わらないじゃん」
「良いんだよコレで。前向きに検討ってのは一応の言質になる。あとはソレをどう解釈したかの問題に持ち込めば、俺達はある程度好き勝手に動いてもルール違反を侵した事にはならないのさ」
ふっ。今の俺、輝いてるな…多分。
「うーわ。悪い顔だなー、キアラ」
「もっと褒めてくれても良いのよん」
「褒めないよ!」
その後の会議はA〜Gまでのパーティーリーダーの短い挨拶と、ボス戦でドロップしたコルやアイテムの配分方針を確認して終了した。
ドロップ配分は、コルはレイドを構成する四十六人で自動均等割り、アイテムはドロップした人間の物という実に単純で後腐れの無い方法が採用された。まぁ、当然だな。アイテムを改めてダイスロールなんて方法を取ればドロップアイテムを申告せずにネコババする奴が必ず出てくる…と思う。俺はβではボス戦は一人で特攻するだけだったからな。それで第三層のフロアボスを倒してしまったのは、俺の密かな自慢だ。
「それで、この後はどうするよ?」
頑張ろうぜ! おーう! なんて、運動会みたいたノリで解散した攻略会議だったが、それが終わった今無理に一緒にいる必要は無いのだが、
「ねえ、ねえ、アスナ! 何処かに寄って行こうよ!
ユウキが妙にアスナに懐いてしまったのだ。
「ちょ、ちょっと。離して。それにどうして私の名前をーー」
「ボクの名前はユウキって言うんだ! キアラと一緒にコンビを組んでるの!」
麻袋を外した後のユウキは、もう凄かった。アスナの腕にひっついて子犬の様に笑顔でじゃれつく。まぁ、SAOで初めて会った女性プレイヤーだからな、アスナは。興奮するのも無理は無いだろう。
だが、
「落ち着けユウキ。コイツが困ってるじゃねぇか。嫌われるぞ?」
「むー。でも、嫌だったなら謝るね。ごめんなさい」
ユウキはちゃんと「ごめんなさい」が出来る良い子なのです。嫌わないであげてね。
「彼女とはずっと?」
「ん? まあな。はじまりの街からずっとだよ。なかなか可愛いヤツだろ?」
「アンタ、大胆なんだな」
「いや何がだよ。一体何を想像したんだよキリトくんは」
「え、いや」
ははーん。ご多感な時期なんですねえ。
でもわかるよ、とてもよくわかる。ユウキ可愛いもんな。可愛がりたくなるもんな、何処でとは言わないが。
「まあ、良いさ。それで、アンタら今後ーーってももう夜だか、予定は?」
「ああ、俺はこの後アイツに酒場か何処かでパーティー戦闘のレクチャーをする気なんだけど……何処がいい? その辺の酒場とかはどうだ?」
キリトが俺を飛び越えユウキと並んで歩いているアスナに声をかけた。
「……嫌、誰かに見られたく無い」
おおう。結構ザックリくる台詞を…。キリトがダメージを受けたかの様によろめく。クリティカルヒットか、これは?
なら、とキリトは立て続けに提案するが全てがにべもなく切り捨てられる。
…本当に大丈夫なのか、キリトは。圏内でHPバーが若干減った様な気がしたのだが。まあ気のせいだろうが。
てか、そろそろ本当に勘弁してやれよ。これ以上年下の少年が精神的ダメージを被り続けるのを見ているのは辛いんだが…。
「大体、この世界の宿屋の個室なんて、部屋とも呼べないようなものばかりじゃない。6畳もない一間にベットとテーブルがあるだけで、それで一晩五十コルも取るなんて。食事とかはどうでもいいけど、睡眠だけは本物だから、もう少しいい部屋で寝たいわ」
「「「え?」」」
見事に、俺とユウキとキリトの声がユニゾンした。アスナを除く全員が全員首を傾げている。
まさかコイツ…宿屋に泊まってるのか?
どうやら【INN】と書かれた場所以外は止まれないと思っていた様だ。キリトに指摘されて、ガックリと項垂れている。キリトが若干得意げな顔をしているのは気のせいではないだろう。
俺? 面白そうだから、余計なことを言わない様にユウキの口を押さえて傍観してたよ。
そして、一通り説明した後、キリトの今住んでいる部屋の自慢話が始まった。楽しそうだね、君。
「俺がこの町で借りてているのは、農家の二階で一晩八十コルだけど、二部屋あってミルクの飲み放題のおまけ付き、ベッドもデカイし眺めもいいし、その上風呂までついて…」
と、其処までキリトの話を唖然として聞いていたアスナだったが、『風呂』というワードが出た瞬間、雷光のごときスピードで動いた。キリトの胸倉を掴み上げ、引き寄せる。犯罪防止コード発動ギリギリのラインだろう、アレは。
にしても、速ぇえな。ユウキもびっくりしている。
となれば、あながち精鋭ぞろいってのも間違いじゃあ無いかもしれない。中々に良い設備の宿屋を取っているキリトは予想でしか無いがβテスターだろう。キリトという名前を聞いたことがある。
そして、気迫たっぷりの声でアスナは言った。
「………なんですって?」
◯
場所は移動してキリト宅。
二十畳程の部屋にベッドルームと風呂の二部屋付き。大雑把に数えて五十五畳程か。
俺とユウキが一緒に借りている部屋が三十畳のベッドが置いてあるリビングと別室の風呂がある物件(推定四十五畳)なので、こちらの方がすこしランクは上だろうか。だがまあ、俺たちの部屋は一晩六十五コルだし、水なら井戸水が無料で飲めるので、別に大した差は無いだろう。
事の顛末は、アスナが風呂に入りたいとキリトの家に押し掛け、俺とユウキもちゃっかり便乗。ユウキはアスナと共に入りたいと駄々をこね、一悶着あった後、今は二人仲良く風呂に入っている。
「悪いな、アスナはともかく俺とユウキまで押し掛けちまって」
俺はソファーに腰を下ろしながら、テーブルを挟んで向かいに座るキリトに苦笑混じりに謝罪する。お互いの手には部屋で無料で飲めるミルクの入ったグラス。
にしても、無料のミルクにしては味が良い。
「いや、良いさ。アンタとも明日は一緒に戦う訳だしな」
「そりゃどーも。あ、食べる?」
俺は皿と焼き鳥もどきをオブジェクト化させ、鳥を皿に乗せてテーブルの上に置く。昨日の残りですいません。
「サンキュー……。微妙な味だな、何の肉だ?」
「知らん。匂いだけは一級品なんだよなぁ、コレ。SAOってこんなんばっかだよなぁ」
「そうそう、βの時なんてーー」
と、其処まで行ったところでキリトは自身の口が滑ったことに気がついたのだろつ。慌てて口をつぐむ。まあ、遅いけど。
「安心しろ。お前がβテスターだってのは予想してたから」
「そ、そうなのか?」
「何より俺もβ出身だしな」
はっはっは、と笑いながら言うと幾分か安心したのか、ホッと肩の力を抜いた。どんだけバレたくなかったんだよ。分からんことも無いけどさぁ。
「歩き方が全然違うのさ」
「歩き方?」
俺はここでキリトをβ出身だと看破した種明かしを始めた。ビビらせたお詫びってやつだ。
「そそ。βテスターってのはさ、歩き方が自然体なんだよ。VR慣れしているからだろうけど、ビギナーよりもスムーズに歩いてるんだよな」
「そうなのか…。全然意識してなかった」
「そりゃそうさ、普段から自分の歩き方なんて意識してる奴はいないだろ。俺が見抜けたのは多少武術をかじってたからだよ」
「へぇー。一種のシステム外スキルってヤツだな」
「まあ、そうなるか。でも、そろそろビギナーもVR空間に慣れてきてる時期だからスゲェ微妙だったんだよ。口を滑らせてくれて助かったわー」
「あははは」
ごめん。そりゃあ苦笑するしか無いわな。
と、その時風呂場ではなく廊下側のドアが、コン、コココンと。
独特のリズムでノックされた。俺たちは顔を見合わせる。
客の様だ。キリトが若干嫌そうな顔をしているのは何故なのだろう。
「客みたいだぞ?」
「ああ、分かってる」
そして、キリトが戸を引き開けると其処には、顔にネズミのヒゲのペイントを施した少女。