サクラ大戦~暁の勝利へ浪漫を刻め~   作:自分不器用ですから

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第壱話~抜錨~

 

人類が制海権を失ってしまった世界。

そしてそれを蹂躙する者、総じてそれは『深海凄艦』と呼ばれていた。

この脅威に対抗できるのは在りし日の艦船の魂を宿した少女『艦娘』のみ。

 

だがその世界に1人の青年がもう1つの光を灯す。

それは海を奔り、空を駆け、深海凄艦を斬る光速の鉄の鎧、鋼鉄の騎士。

 

これは1人の青年と艦娘達が勝利と栄光、そして平和を目指す物語。今、始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??

「ハッ!セイッ!ハァッ!!」

 

桜乱れ咲く中、二刀の剣を振るう1人の青年がいた。青髪を裏手で縛り、侍のよう

な髪型に体にフィットした上下黒のジャケットとズボン姿、そしてその手には二刀

の剣が握られており、順手と逆手を交互に使う特殊な剣技と体術を繰り出していた。

 

???

「一華坊ちゃん、もう少ししたら昼食のお時間ですよ~?」

 

すると落ち着いた声色でウェーブかかったロングヘアーを紫のリボンで縛り、そし

て落ち着いた和服姿で歩み寄ってくる見慣れた家族とも言える人物。

 

一華

「かすみ、いつもありがとう。すぐに行くよ」

 

彼の名前は『神大寺 一華』。

北辰一刀流と二天一流と呼ばれる2つの剣術の免許皆伝の腕前を持つ神童と称され、

機械工学などにも精通する。

性格は穏やかである意味、呑気な性格だが戦闘となると冷酷なまでに敵を倒す。

 

もう1人の女性は『藤井 かすみ』。

彼の里親代わりをしており、幼少の頃から彼を育て彼も彼女の事を本当の家族、そ

して母のように大切に想っている。

 

かすみ

「フフッ、本当に剣を振るう姿がお父様とお母様に似てきましたね。顔つきもとて

 も似てらっしゃいますよ?」

 

一華

「父さんと母さんに?嬉しいな~、小さい頃の記憶しかないけど皆に尊敬され、そ

 して何度も帝都や世界を護ってきた・・・僕の自慢の1つだよ」

 

一華は幼い頃に両親と死別していた。大きな戦いがあり、その戦火の中で多くの命

を救ったがその結果、命を落としてしまったという。

 

かすみ

「お風呂の準備も整っていますから汗を流してからいらしてください?」

 

一華

「ああ、ありがとう」

 

そういって自室の浴場へと向かう一華を心なしか複雑な眼差しで見つめる。

 

かすみ

「(本当に大神さんとさくらさんに似てきた、優しさと強さ、そしてその剣術の

 腕も・・・大神さんの二天一流とさくらさんの北辰一刀流をどちらも極めた程

 の剣才・・・お二人のご子息はとても逞しく育ちました)」

 

だがそれと同時に彼女には不安もあった。だがそれを振り払って表情を戻す。

 

かすみ

「いけない、いけない。暗い表情をしてたら一華坊ちゃんに気づかれちゃうわ。

 今日も美味しい料理で笑顔にしてさしあげないと」

 

そういって食事の準備のために彼女も屋敷へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラジオから聞こえてくるのは自分にとって使命とも言える存在のニュース。

 

『深海凄艦による被害は日に日に増し、現在では多くの鎮守府に被害が起きてい

 る現状です。海域確保も進んではいますが難航しており―――――』

 

一華

「・・・・・・そういえばこの間は近海の鎮守府が襲われたんだっけな」

 

シャワーを浴びて浴場から出た一華はニュースに耳を傾けていた。かつて自分達

の両親と仲間が戦っていたのは魔の存在達だったのだが十数年前に現れた異形の存

在である『深海凄艦』の出現から世界情勢は混乱を極め、それに応じて突如、艦船

として戦っていた記憶を宿した少女達が現れた。

今現在では深海凄艦に対応できるのは艦娘だけと言われている。

 

一華

「・・・今は自身を鍛える時・・・いずれ必ず出会う日が来る・・・それまで」

 

するとドアがノックされてそれに応えると1人の女性が立っていた。

 

????

「こんにちわ、一華」

 

そこには綺麗な薄い翡翠色に輝く長髪と肩と胸元が大きく開いた白と青を基調と

したドレス調の服を身にまとった長身の女性。

 

一華

「ローレルか、いらっしゃい。今日はどうしたんだい?」

 

彼女の名前は『ローレル』といい、この屋敷に住み込んでいる女性で彼の両親と

も面識があり、彼の世話をかすみ共々頼まれていたようだ。

 

ローレル

「ええ、新しい歌を覚えたから試しに聴いてもらおうと思って」

 

一華

「いいね、ローレルの歌はとても安らぐ。昼食まで時間があるし、聴かせてもらうよ」

 

そういって椅子に座り、ローレルに視線を向けるとゆったりとした優雅なお辞儀を

すると静かな深呼吸の後に旋律を紡ぐ。

 

ローレル

「~♪~~~ ~♬~~ ~♪」

 

澄み切ったその声は、例えるなら吹き抜ける風、そよ風に揺れる木々、小鳥の囀り

そんな自然に流れる綺麗な旋律が浸透していくようにも思える。

子供の頃から彼女の歌を聴いてきた一華にはとても安らぎを感じるものだった。

 

一華

「・・・・・」

 

ふと気づくとかすみもいつの間にかドアのところで聴きいっているようだ。

 

ローレル

「~~♪~・・・・・」

 

そして訪れた静寂の後に2つの拍手の音が部屋に響く。

 

一華

「やっぱりローレルの歌は最高だね。何度聴いてもいい」

 

かすみ

「ええ、本当に凄いですよ。歌劇団の花形になれます」

 

ローレル

「ふふっ、あんまり煽てないでください。本気にしちゃいますよ?」

 

さっきまでの凛とした表情から茶目っ気のある笑みを浮かべてケラケラと笑う。

そんな穏やかな時間が流れる昼下がりの一幕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一華

「・・・・・・・」

 

一華はその夜、静かに窓の外を見つめていた。窓からは大海原が眼下に広がる。

そこからは潮風とただ押しては返す波の音が響いている。

 

一華

「・・・やれやれ。入るならちゃんとノックをしてくれないかな、加山さん」

 

そういって振り返ってみるとそこにはいつの間にか白スーツの男性が立っていた。

彼もよく知る人物の1人で『加山 雄一』と言って父の古い友人であり、一華の

仕事などでよく情報提供や『設備』の面倒を見て貰っている。

 

加山

「お前の両親はこれで気づいてなかったんだけどな。感覚の鋭さは親を越えてるな」

 

一華

「あんなにここにいると気を送っておきながらよく言うよ。それで今日は?」

 

するとその手にはワインがあり、どうやら仕事が片付いたので寄ったらしい。

 

加山

「たまには親友の息子と飲み明かすのもいいと思ってさ、上等な酒だぞ?」

 

一華

「それならイタリアの知り合いから貰ったチーズと牡蠣の燻製がある、これにしよう」

 

お互いにテーブルに座り、さらにチーズと牡蠣の燻製を盛り付けて加山の持ってきた

ワインをグラスに注ぐ。

燻製とオリーブオイルの風味がワインと合い、しばし無言で酒と肴を楽しんだ。

 

加山

「それにしてもあんなに小さかったお前が今ではこうして立派になるなんてな。あい

 つの友人としてお前を見守ってきた1人として鼻が高いぞ」

 

一華

「ほとんど加山さんには世話になった記憶がないんだけどね」

 

加山

「ひっどいこというね~(汗。扱いの悪さも親譲りだは」

 

そんな話をしていたのだが加山が少し真面目な顔をしてようやく本題を切り出した。

 

加山

「ようやくアレが完成した。お前に合わせた調整にするのに手間取ったけどな」

 

一華

「本当か!?」

 

加山

「あぁ、既に手筈も整えておいたから準備が出来次第、鎮守府への移動になる」

 

その会話が行われている部屋の前ではかすみが静かにその会話を聞いていた。

 

かすみ

「ついに・・・その日が来てしまうのね」

 

本当は彼にはこのままこの屋敷で暮らしていてほしかった。健全に鍛え、そして

本当なら学校へ行き、学業を学び、普通の若者として暮らしてほしいと願っていた。

だが彼が選んだのは痛みを伴う海路。

戦いが待つ場所へ剣を取り、歩まなくてはならない道、かつての彼の両親達が進ん

だ道でもある、そこに今度はその子共まで踏み込もうとしている。

 

かすみ

「覚悟していたこと・・・あの子が2人の剣を取った時から。青春を捨ててまで

 一心不乱に鍛錬を重ねて強くなった・・・2人の背中を追って」

 

胸につけていたペンダントを開く。そこには幼い彼と自分の姿。

一緒に暮らしているうちに本当に自分の子供のように思えて自分が持てる愛情を

注いできた、ある種、それもあり、子を戦場に出したい親などいない。

 

かすみ

「いけない、いけないッ。あの子の母・・代わりだろうと強いあの子が求めた道

 なら覚悟を込めてあの子を送らないと」

 

扉を静かに離れたかすみが向かったのは自分の部屋でその衣服棚を開けると一着

の白い装飾の施されたコートを取り出した。

そしてそれを広げてしっかりと伸ばし、装飾も磨き上げていく。

 

かすみ

「あの子の門出のためにしっかりと用意しておきましょう・・・ねぇ?2人共」

 

月明かりを見上げながら彼への選別となるそれを仕上げるかすみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後。来るべき日がやってくる。

 

一華

「いよいよ、船出か」

 

出発前に一華はお気に入りの場所へとやってきていた。それは桜が咲き乱れる庭の

中でも一際大きく樹齢のある桜の木の前でその幹に手を置いて仰ぎ見る。

 

一華

「これ・・・確か父さんが僕が子供の頃に成長記録って言って幹に傷をつけたんだ

 っけな。それで母さんに怒られてた記憶がある」

 

両親との記憶は数える程度しか覚えていないがそのどれもが心温まる『家族』の温か

さで出発前に気づいたそのいくつかの傷も幼い頃の大切な思い出だ。

 

かすみ

「一華坊ちゃん」

 

振り返ってみるとそこにはとても穏やかで柔らかい笑みを浮かべているかすみの姿が

あってその手には何か布のような衣服のようなものが抱えられていた。

 

一華

「お見送り?」

 

かすみ

「ええ、坊ちゃんの新しい船出ですからちゃんとお見送りしないと。それと餞別です」

 

そう言って差し出されたのは持っていたモノなのだがそれを広げると綺麗な銀細工で

所々を飾り、しっかりとした布地で作られた白いロングコートだった。

そしてその背中にはかつて両親が在籍していた部隊『帝国華撃団』の象徴とも言える

シンボルマークで『帝撃』の文字も刻まれていた。

 

一華

「帝国華撃団、役目を終えて解散になったって言う父さんと母さんが作り上げた伝説

 にもなってる歌劇団で部隊だった・・・何故、これを?」

 

加山

「お前の両親からの遺言の1つでな」

 

そこに現れたのは加山で両親達の言葉を伝える。

 

加山

「もしお前が立身して棘の道を選んだ時は共に歩んでくれる者達と共にまた自分達を

 繋いで人々の笑顔と平和を守り続けた帝国華撃団の名を上げてくれってな」

 

これに関してはかつての仲間達にも了承を得ていたらしく、解散した今でもその何人

かとは交友関係であり、師と仰いでいた人物もいる。

さらにその後ろからも3人の人影が歩いてきた。

 

ローレル

「いよいよ、この日が来たのね、一華?」

 

そこにいたのはローレルなのだがその周りには数個の宝玉のようなものが浮かび、さ

らにはその背中には砲のような、いやまさに主砲を二門装備していてある意味では一

華の中でずっと予想してた事が当たっていた。

 

一華

「やっぱりローレルは艦娘だったんだね。なんとなく人と気が違うと思ってた」

 

ローレル

「本当に・・・感が良い子ね。子供の頃から驚かされてばかりだわ。あれだけニブ

 ニブだった一郎とさくらの子供とは思えないわ。まぁ、たまに鋭い事もあったかしら」

 

彼女は元々、彼の両親の上官にあたる『米田 一基』の艦娘だったらしく、その後

『大神 一郎』『神宮寺 さくら』と共に戦い、そして遺言として受けた一華の成

長と彼の船出の際に力を貸すことを頼まれていたようだ。

 

ローレル

「わたしの本当の名は『伊号第五〇七潜水艦・ローレライ』、あなたと共にこの海

 を奔るために今一度、この姿になりました」

 

さらにその隣から来たのはこれも見知った人物だった。

 

??

「ついにお前も行くのか、ならボクも行こう。友として君の艦娘として」

 

一華

「初季・・・そうか君もか」

 

初月

「そういいつつ予想通りなんだろう?ボクの名は『秋月型四番艦駆逐艦・初月』だ」

 

サイドに長いショートヘアーで白と黒の制服にコルセット、そしてタイトスーツの

ような内着、そして同じく艦娘の装備『艤装』を付けた長年『初季』と呼んでいた

親友と呼べる少女、基、『駆逐艦・初月』だった。

 

??

「ふぃ~、たくまぁ~、年寄にこの寒空は応えるぜ。ぶあっくしょん!?」

 

そこにはメガネに短髪で着物姿の老人が杖をついて歩いてきた。

 

かすみ

「米田指令~ッ!温かくしてないとお体に毒とあれほど」

 

一華

「一基の爺様ッ。駄目じゃないか、身体が弱いのにこんな冬空に来ちゃ(汗。」

 

そう、この人物こそ帝国華撃団初代総司令官であり、ローレル最初の提督でもある

『米田 一基』で引退、そして大神達の死後は一華に帝撃メンバーを紹介してその

修行や、実際に自分もその指導に当たっていた彼の『師匠』で『爺様』でもある。

 

米田

「お前さんの船出にいいモン持ってきてやったんだよ、ずっと預かりっぱなしだっ

 た・・・大神とさくらの忘れ形見だ」

 

そういって抱えていた風呂敷から取り出されたのは三本の刀だった。

 

一華

「これは・・・父さんの刀『神刀滅却』、それに母さんの『霊剣荒鷹』・・・」

 

米田

「おめぇには天賦の才があった。親父達の剣術を総べて体得し、お前だけの技を

 編み出した時からこいつらを渡すのを決めてた」

 

加山

「普通だったらありえないがお前は二刀に抜刀を組み合わせて使えるからな。そ

 れを最大限に引き出すならこの3剣ほど合うのもないだろ?」

 

米田は一華の肩に手をかけてそのまま引き寄せると首に腕を回して頭を撫でまわす。

 

米田

「あのチビ助がこんだけ一丁前な男になりやがって爺様も嬉しい限りだぜ~」

 

一華

「ちょっ、爺様、力が強い、加減してくれ、加減ッ」

 

だが止めずに少しつづけた後に少し強めに腕に力をいれて言った。

 

米田

「お前は死ぬんじゃねぇぞ、一華」

 

一華

「爺様?」

 

その顔は今までに見た事がないような寂しそうな顔だった。

 

米田

「ここにいる奴ら・・いや他にももっとたくさんの奴らがお前の両親が死んだ時に

 泣いたんだ・・・だがなぁ・・お前が生まれて元気に育っていく姿を皆に見せた

 ら自分の事のように喜んでやがった・・・俺ッちもそうでぇい」

 

腕を離すとその胸に拳をおいて言葉を伝える。

 

米田

「だから・・・お前は生きろ。これから戦う男にこんな事いうもんじゃぁ~ね・・

 だがな、お前はいろんな奴の希望なんだって事、絶対に忘れんな。それだけじゃ

 ねぇ・・・死んだ大神とさくらが残したあいつらの希望なんだ」

 

一華

「皆の希望・・・」

 

米田

「強くなれ、今だって強いかもしれねぇ。だがまだまだ大神やさくらの持っていた

 『強さ』は足りねぇ。力や技だけじゃねぇ、それ以上の強さを今度はお前自身が

 見つけて育てていくんだ。それがお前が背中に背負う『重さ』ってやつだぜ」

 

しかし言い終えると酷く咳き込み始めた。どうやら体に無理をさせていたようだ。

 

加山

「米田指令・・・ッ!言わんこっちゃない、無理するから。歳考えてくださいよ」

 

米田

「うっせい、べらぼうめ~!これぐらい屁でもねぇ!どうしても言っときたかったんだ」

 

加山に抱えられて一華の館へと連れられて行くのだが最後に振り返り言った。

 

米田

「行って来い、一華。いいんや、帝国華撃団隊長・・・神大寺 一華!」

 

一華

「・・・・・はいッ!」

 

去りゆく背中を見送り、そして手にある数々の『重さ』『想い』『力』を見据える。

そしてその白いコートを羽織る。しっかりと感じる色々な『重み』。

コートの腰部分には想定されてか金具がありそれにに父の刀『神刀滅却』そして

腰には母の刀『霊剣荒鷹』を下げ、全身にその重きを感じる。

 

一華

「これが今まで父さん達が背負っていた重さの1つか、これだけなのに凄いな」

 

まだまだ2人の背負ったモノのほんの一部しか背負っていないというのに既に彼に

はこれから自分が歩む道に待つモノへの重圧が来ていた。

 

一華

「ローレル、初月」

 

そう言って2人に手を差し出し、その手を2人は取る。

 

一華

「2人共、まず僕が背負う最初の『重さ』、そして『力』になってくれ。頼めるか」

 

ローレル

「既にこの心身はあなたのモノ。好きなだけ背負い下さい、そしてわたしもあなた

 と『重さ』を背負い、駆ける覚悟です」

 

初月

「皆まで言わなくていい、大丈夫、お前はボクが護ろう」

 

しっかりと握られた手、そしてそれは2人の覚悟を背負った証でもある。

それからローレルが宝玉の1つを丘を少し降りた海際に放つとそこから光が放出さ

れて轟音と共に海から大型の潜水艦が浮上し、そして抜錨する。

そして荷物や物資、そして彼の『力』も乗せられていく。

 

かすみ

「坊ちゃん」

 

それを見つめていた一華にかすみが声を掛ける。そして1つの風呂敷とお守りを渡す。

 

一華

「これは?」

 

かすみ

「大神さんから渡されていたお守りです。困ったときは開けて中のモノを読んでみろと」

 

一華

「父さんのお守りか、ありがとう」

 

そしてもう1つの方を開けてみるとそれは味噌おにぎりだった。

 

一華

「かすみの味噌おにぎり!作っておいてくれたんだ」

 

かすみ

「しばらく坊ちゃんにはお食事を作ってあげれませんから最後にとおも――――」

 

だが言葉を言い終える前にその口に指を置いてさえぎる。

 

一華

「最後じゃないよ。僕はまたここに帰ってくる、かすみがいつも笑顔で出迎えてく

 れると僕も嬉しいから。だからまたちゃんとかすみの作ってくれた料理を食べに

 戻るよ?だから言葉は・・・『またね』、だよ」

 

そして渡された味噌おにぎりを口いっぱいに頬張り、ぺろりと平らげる。

 

一華

「ふぅ~、やっぱりかすみの作ってくれた味噌おにぎりは昔も今も絶品だね。僕に

 とってご馳走だよ♪」

 

かすみ

「もう、坊ちゃんたら・・・♪」

 

ひとしきり笑い合った後、かすみはしっかりと一華の身体を抱きしめた。

 

かすみ

「・・・・ちゃんと無事に・・元気に帰ってくるのよ・・・?」

 

一層強く抱きしめる。

 

かすみ

「一華・・・大神さん達の代わりだけどあなたはわたしの大切な息子よ・・?」

 

かすみを一華もしっかりと抱きしめて万感の想いを込めて言葉を告げる。

 

一華

「ありがとう・・・そして行ってきます・・・・母さん」

 

かすみ

「えぇ・・・いってらっしゃい」

 

それから数刻後、一華を乗せた潜水艦伊五〇七は海へと抜錨する。

 

かすみ

「・・・・・・・・」

 

海風に髪がなびき、いつもと変わらない優しい朝日が身体を包み、海面に映る朝日

の中に潜水艦を消えていき、また穏やかな海辺になる。

渡り鳥も見送るように消えていく潜水艦の周りを飛びながらそして共に空へ消える。

 

かすみ

「大神さん、さくらさん・・・一華を護ってあげてください。どうか・・・」

 

最後に祈りをささげて自身も彼との約束、戻ってくる場所へと戻る。

こうして一人の青年『神大寺 一華』は戦いへの船出を迎え、自身が向かうべき戦

場へ、多くの人の想いと重さを背負い長く険しい航海へ、抜錨する。

 

 

~TO BE CONTINUED~

 

 

 

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