戦う以外にも大忙しなんです。主に提督を落とすために。
こっちはpixvに上げるつもりはないのですが、普段はpixvが主な生息地なので、生存報告も兼ねています。
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「提督、横須賀から明石さんが到着するそうですよ」
佐渡島守中将は、隣に立つ陸奥の言葉に頷いた。
「挨拶させにここに来させるのは申し訳ないから、迎えに行くか」
守の言葉に陸奥は少し思案してニヤリと笑った。
「そうですね、そうしましょ」
守は重い腰を持ち上げ、立ち上がった。壁に掛けてある軍服を羽織ると、ゆっくりと地面を踏みしめるように歩いた。
守の数歩後ろを陸奥は歩いてついていった。
守の身長は陸奥の胸ほどの高さだったが肩幅と腹回りは陸奥の二倍はありそうだ。その横綱のような見た目と鋭く上がった目尻と頬に残る一本傷が相まって、彼と初めて会った人はほぼ全員が委縮する。
その後ろを歩く陸奥は対照的にすらりとしており、身長も平均よりかなり大きいほうだろう。その姿からは教会で飾られるマリア像のような包容力を醸し出す。
しかし時折その顔に浮かぶいたずらっ子のような笑顔は、多くの男性を魅了してきた。
太陽と月が並んで歩くような二人の姿は、奇妙でありながら気持ちの良い一体感を持っていた。
「ところで提督、今ちょうど間宮さんもうちの鎮守府に来てるのよ」
「知っている。朝潮が興奮気味にまくしたててきた。駆逐艦は甘いものが特に好きだからな」
「あら、私だって好きよ。甘い物」
陸奥は悪戯っぽく舌を出した。
「……帰りに奢ってやるから、舌をしまえ」
二人とすれ違った整備部の青年が頬を真っ赤にして早歩きで去っていくのを見て、守は溜息をついた。
「お前はもう少し周りに気を使え」
守の言葉に、陸奥はクスクス笑う。
「『守』と一緒にいるからつい、ね」
「提督と呼べ」
陸奥は時折、守を名前呼びすることがあった。
守本人はそれを信頼の意味に捉えていたが、守以外の者はそれが陸奥からのアピールだということに気づいていた。
それはこの大湊鎮守府における常識の一つと化していた。
外を歩いて港に向かっていると、朝潮と荒潮が仲良く手を繋いで歩いていた。
「あら、提督と陸奥さん」
「こ、こんにちは! どうなされましたか!?」
朝潮が繋いでいた手を離して敬礼したことに、荒潮が機嫌を悪くしたことがすぐに分かった。
守は敬礼をやめるように手で示した。それに従い敬礼を抑えたところで、荒潮はすばやく朝潮の腕に自身の腕を絡めた。
「もうすぐ明石が来るらしいから、こちらから挨拶に向かうところだ。今回は駆逐の装備を優先して改修する予定だからそのつもりでな」
守の言葉に、朝潮と荒潮の瞳がきらりと輝いたのを見ると、守は再び歩を進めた。
「それじゃ、今日も一日頼むぞ」
「「はい!」」
今度は二人そろって敬礼をした。守はそれに軽く返した。
「あら、でもたしか明石さんは……」
荒潮がそう言いかけたところで、陸奥は黙ったまま唇に人差し指を当てた。
荒潮は一瞬思案顔をして、そのあとすぐ頷いた。
朝潮は二人の間に交わされる信号を察知することができず、首を傾げていた。
「陸奥、おいてくぞ」
「はいはい」
最後にウインクを残して、陸奥は二人の前から去っていった。
「なんだったのでしょう」
「いつものことよ」
朝潮の問いに、荒潮は苦笑いで応えた。
「なんの話をしてたんだ?」
「内緒です」
陸奥の言葉に疑問を抱きながら、二人は港に向かった。
港には、事務課の課長である外岩めぐみが、横須賀鎮守府から明石を護衛してきたと思われる数名の艦娘と話をしていた。
「んで、暁が提督とガチの喧嘩してさ」
「あれは大変だったクマ。喧嘩してる癖に秘書艦は変えないから、執務室に報告しにいく時に胃が痛くなったクマ」
「私はトレーニングしてたんで後から話聞いたんですけど、最後は第六の他の子がなんとかしてくれたみたいですよ」
「大変でしたねー。でも喧嘩するほど仲が良いっていうじゃないですか。それに比べてうちの提督と秘書艦ってば……」
「めぐみさん、後ろ」
霞の言葉に振り返っためぐみは、青筋を立てた守を見て、声にならない悲鳴を歯の間から漏らした。
「うちは喧嘩しなくても仲がいいんですよ」
陸奥も怒りはしてなかったが、しっかりと反論をした。
「そそそ、そうですよねー」
めぐみは震えながら、後ろに立つ天龍、球磨、長良、霞に無言で助けを求めた。
「よし、任務は終わりクマ。守中将、また今度クマー」
球磨を先頭に、綺麗な単縦陣で横須賀鎮守府の面々は帰っていった。
「あぁ、あぁぁぁぁ……」
「めぐみ課長、あんたこの前、出会いが無いのは仕事を押し付けてくる俺のせいだと、酒の席で絡んできたことを覚えているか?」
「い、いいえ……。どうだったかなー、私記憶残らないタイプだし……」
「嘘はいけないわ、めぐみさん。この前飲んで酔っ払って、私にハイボール零した次の日、クリーニング代のつもりでってゴディバを差し入れてくれたじゃない」
陸奥からの支援砲撃で、めぐみは完全に轟沈した。
「与太話してるから仕事も帰りも婚期も遅れるんだろうが! 無駄話を一切するなとは言わんが、お前はし過ぎだ。仕事に戻れ!」
守の言葉に、めぐみは飛び上がって走っていった。
そこで守は思い出したようにめぐみの問いかけた。
「おい、明石はどうした。あいつに会うつもりでここに来たんだが」
「え? さっき陸奥さんから電信で、そのまま工廠に向かってくれって……」
めぐみがそこまで言ったところで、守は陸奥に顔を向けた。
「……わかった。もういいぞ」
めぐみを仕事に戻らせて。次は陸奥に向き合った。
「お前も説教されたいのか?」
「説教なら間宮で聞きたいかな」
守は陸奥のいたずらっぽい笑顔と数秒向き合った。
「まぁ、だいたい理由は分かるがな。いくぞ」
「はいはい」
二人は先ほどよりもゆっくりとした足取りで間宮へと向かった。
「これがチョコレートトルネードパフェ……すごいわ、間宮さん」
「伊良湖ちゃんが発案してくれたんです。舞鶴がデビューになります」
守は目の前に置かれた、どんぶりほどの大きさがありそうなパフェの器に、どうやって入れてのかよくわからない形のアイスに、調律のとれたチョコソースの線が入ったスイーツを見て、開いた口が塞がらなかった。
「守中将はいつもの抹茶団子入りあんみつでよかったですか?」
「あ、あぁ。ありがとう」
陸奥の前に置かれたパフェと自分のあんみつを見ると、都会と田舎という二対の単語が頭をよぎった。
ちょうど演習や任務が重なったのか、間宮には陸奥と守以外客はいなかった。
間宮が笑顔で厨房に戻っていくと、陸奥は嬉しそうにパフェを頬張りだした。
「うーん、これチョコはブラックなのね。甘さと苦さのハーモニーが素晴らしいわ」
「お前はグルメリポーターか」
「ほら、『守』も。あーん」
「提督と呼べと…ンぐ。……確かにうまいな」
「でしょ」
陸奥はほんの少し頬を染めてパフェを再び頬張った。
「で、あんな嘘ついた理由だが……」
守の言葉に、陸奥はそっぽを向いた。
「俺が書類に行き詰ってたから、それの息抜きだろ? だったらそのまま『休憩しましょう』とか言ってくれ」
「言ったって、『守』は聞かないでしょ。ここは前線とは言えないけど、やぶられちゃいけない防衛の要だから、責任の重い仕事がよく回ってくるんだし、その責任を私にもわけてほしいんだけど、それも嫌がるでしょ。だったらこういう手に出るしかないの」
陸奥は拗ねたように言った。
「はぁ……。まぁお前の言った通りなんだけどな。やっぱり俺の秘書艦はお前しかいいねぇな」
守は怒り半分、嬉しさ半分と言った顔をした。
「俺はどうにも周りを頼るってのが苦手だ。できることなら俺が艤装をつけて深海たちと戦いたい。でも『それ』はできないし、だったら俺にできることは俺が全部やるのが道理だろ」
「そういう提督の考え方、嫌いじゃないわ」
「馬鹿野郎、俺は嫌いだよ。嫌いでも治せねえから性分ってんだ。でも、お前みたいな女が隣にいてくれるなら、こんな生き方も悪かねぇな」
そう言って、守はくしゃりと陸奥の頭を荒っぽく撫でた。
「ありがとな」
陸奥は目を丸くして、耳を真っ赤にさせた後、アイスを無言で食べ続けた。
それを見て、守もあんみつを頬張った。
間宮の外から二人をこっそりと見ていた荒潮は、溜息をついた。
「あそこで止まるから、マジ惚れって困るのよね」
「荒潮、あんまり見ていては失礼ですよ。そろそろ演習の時間ですし、もどりますよ」
朝潮は名残惜しそうにする荒潮の手を引いて去っていった。
大湊の空は、いつもと変わらず青く広がっている。