みんなの笑顔~日ノ丸新太の非日常~   作:人生美味礼讚

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かなりお久しぶりです。
リアルが忙しくて放置してました。
また少しずつ再開しますのでよろしくお願いします。
今回は、新太VS天津の前半です。
長くなりそうなので前後半で分けました。
地の文が多めになっています。
それでは、どうぞ!


賭け···それは真剣勝負の言いかえ by天津秀樹

時は放課後………

グラウンドには天津と新太が向かい合って立っていた。

クラスメイトはその外から様子を傍観していた。

天津はレロレロキャンディーを咥え背伸びをしている。

対する新太は指でクルクルと銃を回していた。

審判の烏間先生は2人の間で佇んでいた。

 

「勝敗はナイフを相手に当てるか、ペイント弾を相手に当てるかのどちらか!勝った方が負けた方に1つ指示ができる!…………2人とも、準備はいいか?」

 

烏間先生の問いに天津は「はい。」と、新太は「OK!」と短く答える。

天津と新太の手にはナイフが握られていた。

 

「手加減なしね!」

 

「当然です。全力で行きます。」

 

2人はナイフを構えて対峙し、お互い睨み合う。

烏間先生はグラウンドの外に出ると手を挙げる。

 

「それでは……………………模擬暗殺開始!!」

 

その合図とともに前に出たのは新太だ。

新太はナイフがさほど得意ではない。

そのため、速攻をしかけて早く終わらせる。

それが新太の狙いだった。

しかし、速攻をしかけた新太だったが天津は後ろにさがることでこれを回避する。

 

「後ろに下がった………?」

 

前原が天津の行動に対して疑問を唱えた。

1対1の勝負でなぜ天津が下がったのか。

前原だけでなく、クラスの殆どが疑問に思った。

 

「いや、あれも正しい対処です。彼はE組以前はバスケ部だったみたいですね。バスケにおいては線の速さより点の速さが求められます。おそらく、点の速さはE組で1番でしょう。今日入ってきた転校生が彼に接近戦はつらいところがあります。引いてるワケにはそれだけではないでしょうけど。」

 

いつの間にか来ていた殺せんせーが今の攻防を解説しはじめた。

その手にはブラジルに行ってきたと象徴するかのように現地のコーヒーが握られていた。

 

「点の速さ……?短距離とは違うのか……?」

 

殺せんせーの言葉が気になった木村が殺せんせーに尋ねる。

木村はE組一の脚の速さだ。

特に短距離走では群を抜いている。

彼からするととても気になる話だろう。

 

「そうですね。点の速さというのは短距離走とは少し異なります。短距離走は主に走る力です。直線をいかに速く走るかを競う力のこと。一方、点の速さは1歩目の速さです。」

 

「1歩目の速さ?」

 

磯貝が殺せんせーのセリフをオウム返しして聞く。

 

「いわゆる瞬発力です。彼はそれに秀でています。近接戦では瞬発力が重要な要素を秘めています。その点でしたら、新太君が俄然有利です。しかし、ナイフの使い方はまだまだですね。」

 

そう殺せんせーは言うものの新太の攻撃は全て天津に避けられていた。

新太はそれに何か違和感を感じていた。

なぜ、さっきから攻めないのか…と。

賭けに意欲的だったわりに1度も攻めてこないのは奇妙であること他ならない。

 

「ねえねえ、なんで攻撃しないの?負けちゃうよ?」

 

新太が避け続けている天津にそう問いかける。

天津は新太の攻撃を避けつつ、話し出した。

 

「心配しなくてももう少しで攻撃していきますよ。自分の心配をした方がいいですよ。」

 

その攻防を見ていたクラスメイトは新太が終始押しているようにみえた。

しかし、烏間先生はあることに気がついていた。

 

(新太君の瞬発力は素晴らしいが、天津がだんだんと避けるのに余裕が出てきている……?)

 

天津の動作に余裕が出てきたことだ。

最初はなんとか避けていた感じだったが今は避けた後に余裕を感じていた。

それは闘っている新太も感じていた。

自分の攻撃に慣れつつあると……。

 

「よーーし!一気に行くよーーー!!」

 

新太は1度後ろに下がり天津と距離をとる。

そして、脚をバネのように縮め力を溜めて地面を蹴る。

真っ直ぐと天津の方に向かっていく。

…………………はずだった。

なんと、新太は途中で止まってしまったのだ。

なぜかは分からない。

しかし、新太は確信していた。

今、行ってたら返されていた…………と。

 

「新太君、なんで止まるの!?」

 

「止まったんじゃない、止めさせられたんですよ。天津君によって。天津君の左手を見てください。」

 

殺せんせーの言葉を聞いて天津の左手に注文が集まる。

何も無いように見えるがよくよく見てみるとそうではない。

彼の袖からはナイフの先端がちらりと見えていた。

 

「始めから狙っていたのでしょう。自分の運動能力は高くないことを自覚して回避に徹しつつカウンターの機会を見ていたのです。」

 

「しかも、それだけではない。」

 

殺せんせーの解説が入り、それに割り込む形で烏間先生が付け加える。

 

「おそらく、天津君には見えているな、新太君の動きが。」

 

クラス全員、今の言葉にしっくりくるものがなく首を傾げる。

その様子を見ていた烏間先生は分かりやすいように補足を行う。

 

「つまり、天津君は新太君の動きの1つひとつを記憶している。避けながら相手の動きを学び、対策を立てている。今の彼には新太君が次に何をしてくるか見えてるはずだ」

 

クラス全員、烏間先生の説明に動揺を隠せない。

しかし、それは烏間先生とて同じだった。

自分で簡単にそう話すものの、その技術は容易でない。

そもそめ、脳は見る、聞く、動かすという動作の中で記憶しようとする。

漢字の暗記も自分で書くという動かす要素、見るという要素があるから暗記ができる。

しかし、人が書いたものを見るだけではなかなか覚えられない。

それは、自分が書くという動かす要素が欠けているから。

つまり、自分でしたこと以外では物事覚えにくいもの。

さらに、今のような激しい動作の中で相手の動きを見て覚えるというのは困難を極める。

天津はその常識を覆すようなことを平然とやってのけているのだ。

そのため、烏間先生も驚いているのだ。

 

「ってことは、長期戦になればなるほど天津が有利になるってことか?」

 

「そういうことですね。そして、この勝負はそう長くならないでしょう」

 

殺せんせーの話を聞き杉野だけでなく、クラスのほとんどは緊張した面持ちになっていた。

それは、新太が突っ込んでカウンターを喰らうか、新太が天津の上を行くか、この二つのどちらかだということを理解したからだ。

そして、その決着はあと少しで着くだろうことからのことだ。

 

(しかし、それほどの暗記が出来るとは……。天津君は何者だ……。)

 

烏間先生の頭に天津に対する疑問が浮かび上がる。

しかし、それを確認する術は今の烏間先生には持ち合わせていなかった。

 

「……………やっぱり見ていたね。」

 

カウンターを回避した新太が話しかける。

仕掛けた本人である天津の表情には変化がなかった。

そもそも、天津は表情が乏しい。

簡単に言えば、喜怒哀楽が薄い。

そのため、表情による心情の読み取りは困難である。

しかし、それでも新太は話を続けた。

 

「勝負の前のあの自信と強気な姿勢は嘘じゃなかった。それなのに、攻めて来ないで回避ばっかりってなったら、何か狙ってるって思うよ。それでも、もう少しで引っかかってたけどね。」

 

今まで表情に変化がなかった天津の顔が少し曇る。

それは自分の手が読まれたからでなく、新太の言葉に焦りを感じないからだ。

むしろ、どこか楽しげな感じに聞こえるのだ。

 

「………分かっていながら、わざと突っ込んで来たのですか?覚えられると知りながら。」

 

「確証はなかったけど、あのカウンターを見て確信したよ。だって、あのカウンターの位置は丁度僕の死角になる場所だったから。あの位置でカウンターを仕掛けるには相手の動きを読まなきゃ無理だから。」

 

「なるほど。私が何を狙ってるかはっきりさせるために……ですね。」

 

この2人の会話の中で天津は思った。

何か仕掛けてくる……と。

いくら、私の狙いを見るためとはいえ、自分の動きを見せるのは新太氏にとってデメリットが大きすぎる。

となれば、新太氏にとって私の狙い(暗記)が重要なものだとするなら、何かするための保険、または確認といったものではないのか。

一方、新太も思った。

おそらく、天津くんが僕の行動の不自然さを見抜いてきている。

こっちが何か仕掛けることは向こうも考えること。

しかし、天津くんのその完璧に近い暗記を超えるには相手の反応を超えなきゃ勝てない。

そして、その反応速度は最初のうちに見せてもらった。

あれなら、問題なくいける!

2人の頭の中は自分が取るべき行動、相手がしてくる行動の両方を考えていた。

 

(新太氏、何を仕掛けてこようが関係ない。暗記した動きから何をするか予想すれば良い…。)

 

(天津くん、暗記した中になければ予想してくるだろう。それでも、その反応を超えれば勝てる…。)

 

(勝つのは…………僕だ!!/私だ!!)

 

決着はもうすぐ。

軍配はどちらに上がるのか。

その行方を知る者はこの場にはいない。




特別編「懺悔の時間」はまた後日上げようと思います。
ヒロインの結論もそこで出したいと思います。
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