「よぉ、シノア」
「和眞さんおはようございます」
和眞は学校の校門前でシノアと合流し、教室へと向かう。
「この百夜優一郎って奴がグレン中佐の秘蔵っ子ね」
和眞は資料を見ながら呟く。
「はい。独断専行や命令違反など問題児ですが、その実力は“月鬼ノ組”でも十分通用するものです」
「でも、力がいくら強く経って意味は無いだろ」
「ですから、中佐も彼を“月鬼ノ組”に入れないんでしょうね」
二人で話ながら教室へと行き、席に着く。
授業が始まった瞬間、優は勉強する気が無いのか教科書も出さず
「なんで軍人の俺がこんな所に………」
小さな声でぶつぶつと文句を言う優。
教師はそんな優に気付き、注意する。
「おい!百夜優一郎!授業中だぞ!」
「フン」
だが、優はそっぽを向き、反抗的な態度を取る。
「なんだその態度は!転校してきたばっかで緊張してるのかなって大目に見てやってるのに、あんま態度悪いと停学にするぞ!」
教師の言った停学という言葉に反応した優は机をバンッと叩いて喜ぶ。
「マジで!停学にしてくれんの!お願いします!」
「喜ぶな!」
教師と言い合ってる優の背中を優の後ろの席に座ってるシノアが指で突っつく。
「あ?」
優が振り向くと、シノアはノートに何かを書くとそれを優に見せる。
『私は柊シノア。軍からの監視役です。ちなみに隣の席の彼は、三宮和眞で同じく監視役です』
優は和眞の方を向くと、和眞は小さく手を振って笑う。
シノアはまたノートに何かを書き見せる。
『もしあなたが協調性の無さそうな行動をしたら軍に報告をして謹慎を延長することになってます』
「はぁ!?延長!?どういうことだよ!」
その文面を読み、優は声を上げて叫ぶ。
しかし、シノアは特に反応せず唇だけを動かし、「協調性」とだけ言った。
すると、優は大人しくなり、席に座る。
そんな優を見て、教師も授業を再開する。
「ちなみに、強調し絵の欠片も無い貴方の謹慎はこの一般校で友達を作らない限り解けないことになってます。頑張ってお友達作って下さいね」
放課後になり、クラスの皆が帰り支度を始め賑わう。
「あーあ、部活だりー」
「ねえねえ、帰りにアイス食べに行こうよ」
緊張感の無いセリフを聞きながら、教室には和眞とシノア、優の三人が残った。
「待って、僕ちんもアイス大好きなんだよねって皆に声をかけたらどうです?」
「シノアの言い方は兎も角、一応は高校生なんだ。話掛ければ自然と友達になれると思うぜ」
「何だよお前ら、なれなれしいな」
「グレン中佐に言われました。あなたは子供時代に吸血鬼に家族を皆殺しにされたそうです。それから他者と触れあうのが極端に減ったと。仲良くなったあと、再び失うのが怖い、怖くて怖くて、仲間も友達も恋人を作ることもできない」
図星なのか優はシノアの肩を掴む。
「テメェ、人の事を勝手にべらべらしゃべってんじゃねえよ!下らねえ事言ってねえで、さっさと吸血鬼殲滅部隊に入れろってグレンバカに伝えろ!俺は奴等を倒すだけの力は手に入れたってな!」
「と言うと思って中佐からこれを渡せと言われました」
そう言ってシノアは一枚の紙を優に渡す。
『仲間も友達も恋人もできないような童貞くんは軍にいりませーん。悔しかったら一人でも友達つくって俺に紹介してみろっての、プップー』
それを見た優は紙を握り潰して床に叩きつける。
「どいつもコイツも馬鹿にしやがって」
肩で息をしてると、教室の扉から誰かが倒れるように床に突き飛ばされる。
「や、やめてよぉ……」
「やめてだ?何だよそれ。それじゃ俺達がお前を虐めているみてぇじゃねえか」
「俺ら友達だからジュース買ってきてって頼んだだけだろ?なによその態度は」
「ううう……」
「平和だねぇ……帰るか」
苛めの現場に遭遇しながらも優はドライな感想を言い、鞄を手にする。
「あれを見てその感想じゃ、当分友達を作ることが出来ませんね」
「協調性以前に、人としてダメだな」
和眞とシノアの挑発的なセリフに優は僅かに反応するがそれでも帰ろうとする。
「だいたい、俺らの仲間になりたいって言ってきたのはお前だろ?なら働けよ、家畜見てーに」
家畜という言葉を聞いた優は歩くのを止め、苛めている男達の方に向かう。
「おい」
「何だよ?」
「その辺にしとけよ」
「おいおいおーい。え?何?まさか正義の味方?ミカタっすか?」
「いやぁ…お前ら分かりやすくていいわぁ。俺こう言うの得意だからなんか嬉しいわぁ。いいよ、喧嘩か?やるか?」
優は嬉しそうに笑う。
「あ、言い忘れてましたが、民間人に手を出したら謹慎延長ですから」
「はああああああああ!?」
次の瞬間、優は男の拳を食らい倒れた。