「なんで俺がパシリ……なんで俺が…」
「ごめんね、僕のせいで…」
男子生徒に殴られ、パシリにされた優と与一はジュースを抱え教室に向かっていた。
その後ろを和眞とシノアは面白い物を見る様な目で続く。
「おいシノア!和眞!お前らも持てよ!」
「面白い冗談ですね〜」
「自業自得だ。後始末ぐらい自分でしろ」
「てめぇら……!」
「ご……ごめんね…」
何故か謝る与一に優は反応する。
「おめーもさっきからペコペコ謝ってくるな!だいたい、なんであんなヤツらに虐めてられたんだ?」
「い、いじめられてた訳じゃないんだ。僕が山中君にお願いがあって、それで……」
「山中?誰だっけ?」
「脳ミソ猿ですね」
挑発するシノアにキレ、拳を上げるが、与一の話に優はその手を下ろし話を聞く。
「さっき、百夜君を殴った人だよ」
「ああ、アイツか。で、頼みって?」
「実は、僕、帝鬼軍の入隊試験に落ちてて、でも、どうしても入りたかったんだ、で、中山君、あの有名な吸血鬼殲滅部隊、月鬼ノ組入りの内定が決まってるらしくて」
「マジで!?俺も入れてねぇのに!グレンの野郎、ぶっ殺す!」
「だから山中君にツテでもう一度、試験を受けさせて貰おうって………」
「あのゴリラが良くて、何で俺が駄目なんだよ!」
「さぁ?童貞だからじゃないですか?」
「お前……ぶっ殺す!」
騒ぐ、優を放置し、和眞は与一の言葉の続きを聞く。
「こんな弱っちいのが…ていうのは分かってるけどどうしてもお姉ちゃんの敵を取りたいんだ…」
「敵?」
「うん。お姉ちゃん…僕を庇って吸血鬼に殺されたんだ…僕、怖くて動けなくて…」
その言葉を聞いた優が与一に近づきそのまま与一の頭を殴った。
「バーカ、何が後悔だ。助けに行ってたら死んでたよ」
「で、でも……」
「でもじゃねぇよ。悪いことは言わねぇから入隊は止めとけ。それに、姉貴も復讐なんてして欲しくないだろう」
優がそう言った瞬間、校舎が爆発し、爆音が鳴り響いた。
そして、校内に警報とアナウンスが鳴り響いた。
『緊急警報 緊急警報 全生徒及び職員にお知らせします 隣接している生体実験施設から吸血鬼が脱走しました 吸血鬼は血を吸うと力を取り戻します 見つけても決して近寄らぬように』
「吸血鬼が脱走だと!?」
「二人はすぐに避難をして下さい!私は月鬼ノ組に出動要請を!」
「いらねぇ!吸血鬼は俺が殺す!」
「は!?」
「ひゃ、百夜君!?」
シノアの制止を無視して優は走り出した。
「シノア、早くグレン中佐を呼んどいてくれ。俺は百夜を追う」
「あ、ちょ……和眞さん!」
シノアの声を無視し、和眞は優の後を追う。
教室へ向かうと、優は丁度吸血鬼と対峙していた。
優は刀を振り、吸血鬼の腕を斬り落とすも、吸血鬼はすぐさま手を切断面にくっつけ、元通りにする。
「ふ…ふふ…遊びは終わりだ、お前は誰も救えないこいつの血で回復すれば…お前など妾の敵ではない」
吸血鬼がそう言い、血を吸おうとした瞬間、与一が飛び込んで来た。
与一は吸血鬼にタックルをし、動きを止める。
「百夜君早くこいつを…!!」
優は吸血鬼を攻撃するより、今にも与一を攻撃しそうだった吸血鬼にぶつかり、壊れた窓から吸血鬼ごと飛び降りる。
「たくっ、とんでもない問題児だな」
和眞はそう呟き、窓から飛び降り、一階に降りる。
優は刀を吸血鬼の心臓に突き刺した状態で動けないでいた。
「残念だったな。この程度では童は死なん。お前の血を吸い、“月鬼ノ組”が来る前に……!!」
吸血鬼は最後の言葉を言う前に、言葉を詰まらせる。
吸血鬼の胸からは優の刀とは別の刀が出ていた。
吸血鬼の後ろには“月鬼ノ組”の制服を身に纏い、刀を持った青年がいた。
一ノ瀬グレン中佐。
優の保護者であり、和眞やシノアの上官である。
「よぉ。呼んだか?」
「おのれ……鬼呪の掛かった武器か……!」
「キーキーうるせぇんだよ、ヴァンパイア」
刀を抜き、吸血鬼を殺すとグレンは見下すように優を見下ろす。
「なんだその姿、お前アホか?抗吸血呪も掛かってない一般兵器で吸血鬼を殺せるわけねぇだろ」
「邪魔すんじゃねぇ。もうちょっとで殺せた」
「へー」
「本当だぞ!!」
グレンは刀を鞘に納めながら優を見下ろす。
「でもまぁ、今回はガキの割によくやった。お陰で犠牲は少なくすんだ。学校の友達を守ったな」
「……は?友達?興味ねぇよ。てか、俺の実力見ただろ!俺を月鬼ノ組に入れろよ!」
「やだね。俺、チームワーク出来ない奴嫌いだし」
「そう言う中佐が一番チームワーク出来てませんよ」
「あ?なにか言ったか?」
「いいえ」
「とにかくシノアに伝言させた通り、お前は学校で友達作んなきゃ……」
「友達友達ってうっせんだよ!んなもん吸血鬼殺すためにいら「百夜君無事だったんだ!」
優の言葉を遮り、与一が優に抱き付く。
「死んだかと思ったよおおおおおおおおお!!」
「ちょ、お前なんだよ!?痛い痛い痛いっ!そっちの肩脱臼してる……!?」
「………なにアレ?」
優と与一を見て、グレンが呟く。
「一応友達みたいですよ」
「一応じゃなく、友達だよ。それはそうと中佐。約束まもらないといけませんよ」
「えー、嘘だろぉ?」
グレンはそう言い、痛みで気絶してる優を見る。
気絶した優を病院に運び、目覚めるのを待っていると、暫くしてから目覚めた。
「ようやくお目覚めか」
和眞はそう言いながら、制服をベッドに置く。
「新しい制服だ」
「それと友達も出来たので、今日付けで、貴方は吸血鬼殲滅部隊の配属になります」
「それと与一。お前の勇気ある行動を湛え、グレン中佐が上に掛け合って、日本帝鬼軍に特別入隊、そして吸血鬼殲滅部隊に配属だ」
「これで、私達“仲間”ですよ。貴方が嫌いな」
そう言ってシノアは腕を出す。
その上に和眞も手を重ねるように出すと、与一が手を重ねる。
「ねね、百夜君も」
「……んだよ、クソ」
口悪く言うが、優は照れながら手を重ねる。
「………よろしく」
「男のツンデレとか誰得だよ」
「うるせぇ!ぶっ倒すぞ!」
「あ、俺に歯向かったらお前、また謹慎になるから気を付けろよ」
「はぁ!?なんでだよ!?」
「改めて自己紹介だ。日本帝鬼軍吸血鬼殲滅部隊“月鬼ノ組”所属、三宮和眞だ。階級は少尉だ」
「同じく、日本帝鬼軍吸血鬼殲滅部隊“月鬼ノ組”所属の柊シノア。階級は軍曹です」
「と言う訳だ。上官への悪口やタメ口には十分気を付けないとな、百夜優一郎二等兵君」
肩をポンと叩き、和眞は笑う。
「う、嘘だあああああああああ!!?」
優の叫びが病院中に響いた。
優と与一への指令を言い終えた和眞は同じ病院の最上階へと移動する。
そこには三宮佳那と書かれた病室だった。
病室からは笑い声が聞こえ、それを聞いた和眞は笑みを浮かべ中に入る。
「よぉ、元気にしてたか、佳那」
「あ!お兄ちゃん!」
「和眞!やっときたか!」
三宮佳那は和眞の実の妹で、生まれつき体が弱く、病気になりがちな子だ
最近では医療設備の充実したこの病院に入れてもらったおかげで、昔と比べると随分良くなっている。
「ちょっと仕事で遅くなった。佳那、顔色はいいな」
「うん!元気が有り余ってるぐらいだよ!」
佳那は元気よく笑って見せるが、急に表情を曇らせ咳込む。
「顔色は良くなっても、体調はまだ万全じゃないな」
和眞は優しく、佳那の背中をさすり、ベッドに寝かせ、布団を掛けさせる。
「あ~あ。早く退院して、三葉お義姉ちゃんのご飯食べたーい」
「退院したら佳那ちゃんの好きな物作ってあげるから、今は大人しく休んでてね」
佳那の頭を撫で、三葉は優しい笑みを浮かべる。
「明日、また来るよ。今日はもうゆっくり休め」
「うん。また明日ね、お兄ちゃん、お義姉ちゃん」
佳那に手を振り、二人は病室を後にする。
「三葉、いつもありがとな」
「気にするな。だってあたしは………和眞の奥さんだぞ。和眞の妹はあたしとっての
「……ありがとう」
和眞は三葉の頭を撫で笑う。
三葉も黙って撫でられるのを受け入れ、目を細め、気持ちよさそうにする。
「さて、帰って晩飯だ」
「ああ!」
そして、どちらからともなく二人は手を繫ぎ、自分達の家へと帰って行った。