終わりのセラフ~三宮の名を持つ大剣使い~   作:ほにゃー

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月鬼ノ組官舎前

 

俺とシノアは今日から吸血鬼殲滅部隊の訓練校に来る優と与一が来るのを待っていた。

 

「和眞さん、どうしたんですか?その頬」

 

シノアが頬を指差しながら尋ねる。

 

「朝にな。うっかり風呂場で三葉と遭遇した。おまけに、アイツちょうどシャワーから出た所で」

 

「大体察しは尽きました。まだ三ヶ月ですよね?」

 

「そうだ」

 

「三ヶ月経つのにみっちゃんも随分と初心ですね」

 

世間話をしていると、二人が来た。

 

「遅かったですね」

 

「優、その怪我どうした?」

 

やって来た優は何故か怪我していた。

 

「おや、喧嘩ですか?また謹慎に」

 

「してませーん。僕喧嘩してませーん」

 

優は手を広げて棒読みで言う。

 

「ははっ、まぁいいですけど」

 

「じゃ、これから訓練室まで行く。付いて来い」

 

「うん!これから僕ら、吸血鬼殲滅部隊の研修教室に行けるんだ!」

 

与一は嬉しそうに声を上げる。

 

「研修なんかどうでもいい。とっとと実戦に投入しろよ」

 

「なら、優さんは制服も武器も無しで戦場にどうぞ」

 

「殆ど全裸じゃねぇか!」

 

「では、行きますよ。付いて来て下さい」

 

和眞とシノアを先頭に優と与一が付いて来る。

 

「緊張してきたな~」

 

「なんでだよ?」

 

「だって吸血鬼殲滅部隊の月鬼ノ組っていったら、軍でもエリートしか入れないんだよ。それに、僕と優君、途中転入組だから、苛められたりしたら……」

 

「お前、ここに友達でも作りに来たのか?」

 

「え、いや、違うけど………」

 

「ならいいだろ。それに、もしそんなことあったら俺が守ってやるよ!」

 

その言葉に和眞とシノアは少しだけ優の成長を感じた。

 

「それって……」

 

「取り敢えず、全員ぶん殴って俺の実力を思い知らせてやる」

 

協調性があるようでなかった。

 

そうしてるうちに研修室の前に着き、扉をノックして開ける。

 

「失礼しまーす」

 

教室に居る連中が一斉に和眞達を見る。

 

和眞とシノアは、教卓に居るグレンの前に行き、優と与一を連れてきたことを報告する。

 

「連れて来ました、グレン中佐」

 

「ん、よし。お前ら聞け、今日は珍しく担任の俺が着たのは、転入生が来るからだ」

 

「中佐、言っておきますが担任は基本毎日来るものです」

 

「お前は黙ってろ」

 

そう言って、教室の前に優と与一を立たせる。

 

「とりあえず、こいつらは百夜優一郎と早乙女与一だ。一言言って、アホと弱虫だ、以上」

 

「誰がアホだ!!」

 

「弱虫……弱虫……」

 

「いいから自己紹介しろ」

 

グレンは手をひらひらさせ、自己紹介をさせようとする。

 

「いらねぇよ。そんなもん」

 

だが、優はやっぱりというかいつもの態度で教室に居る連中を見渡す。

 

「ここにいる奴らにも言っとくが俺はおまえらと馴れ合うつもりねぇから!!だいたいこの研修教室は、鬼呪装備の契約ができる人材かどうかを見極めるとこだろ?んじゃ今から宣言しとく。ここにいるクズどもが今まで何勉強してたかはしらねぇがおまえらがやってたことは無駄だ!!一番いい武器は俺がもらうことになった!!以上!」

 

威勢よく優がそう言う。

 

教室に居る連中は呆気にとられる。

 

そして――――――

 

「以上じゃねえええええ!!」

 

グレンの蹴りが優に炸裂する。

 

「お前は普通科で何を学んできたんだ!協調性ねぇ奴はやめさすっつったろ!!このアホが!!クズ!!童貞!!」

 

「童貞関係ねぇぇぇぇ!!」

 

優とグレンが大騒ぎする中、教室の連中はヒソヒソと噂話をする。

 

「もういい座れ、馬鹿が!あー席は…あそこな」

 

「くそ、グレンの馬鹿力め…………」

 

優が呟きながら席へと向かう。

 

優の席は現在、足を机に置いて寝てる男子生徒の前の席だ。

 

「おい。前、俺の席になったから足退けろ。足向けんな」

 

「んだよ。もう昼か?」

 

男子生徒が顔の上に置いていた本を取り優の顔を見る。

 

すると――――――

 

「んな…!!てめぇ今朝の電柱!?なんでこんな所に!?」

 

「ふざけんなそりゃこっちのセリフ……電柱ってなんだコラァ!!」

 

何故か口喧嘩になった。

 

「えっと、こいつらなんなの?確か君月も先月、普通科で友達作りさせたよな。シノアの監視下で」

 

「そうですね」

 

「で、成果は?」

 

「ご覧の通りです」

 

「仕事しろよ」

 

「監視はしてましたよ。今朝も、吸血鬼を殺したと噂の優さんの実力を図ろうと、彼、君月士方君が襲ってました」

 

「で、仲裁に入ったのか?」

 

「面白そうだったので見てました」

 

「仕事しろよ」

 

そして、未だに口喧嘩してる優と君月にグレンがキレ―――――

 

「やかましい!!」

 

口喧嘩してる二人を蹴り飛ばした。

 

「優君!?」

 

「ほっとけ。起きてると授業にならない。じゃ、一週間後の鬼呪装備適性試験に向けて、久しぶりに授業始めんぞ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わり和眞はグレンに報告があったのでグレンの執務室へと向かっていた。

 

部屋に入ろうと扉を開けようとしたら、中から君月の声が聞こえた。

 

『一週間後の鬼呪装備適性試験のことですが、当然俺が最上位の“黒鬼”のシリーズを挑戦させてもらえますよね?それとも、吸血鬼を倒したとか言うハッタリ馬鹿を選ぶつもりじゃないですよね?』

 

“黒鬼”とは俺達吸血鬼殲滅部隊が持ってる鬼呪装備の等級で、その最上位が“黒鬼”と呼ばれる。

 

和眞が持ってる“天之村雨”は“黒鬼”のワンランク下の“羅刹”で、グレンが持ってる鬼呪装備は“黒鬼”だ。

 

『なんで焦ってそんなに力を求める?』

 

『どうせ軍は俺の素性も知ってるんでしょ』

 

『ああ、知ってて利用してる。子供でありながら大人たちを殺した黙示録のウイルスに感染したお前の妹の治療の為に金が要る……だろ?』

 

グレンの台詞に君月は唇を噛みしめる。

 

『吸血鬼殲滅部隊はエリート集団。そこに入れば軍の施設病院に入れるし、活躍すれば民間には解放されてない治療や解呪法を無制限で受けられる。だが、今のお前じゃ活躍するどころか、鬼呪装備に触れることすら出来ない。なんせ鬼呪は人間の欲望に取り憑くからな』

 

『じゃあ、あの百夜とか言う馬鹿は大丈夫だとでも?』

 

『どうかねぇ、少なくともアイツは一度鬼を退けてる。それに、意外とアイツ、仲間も大事にしそうだし』

 

『ふざけるな!アイツなんかよりも、俺の方が力が!!』

 

「そこまでだ」

 

和眞は扉を開け、部屋に入る。

 

「和眞、勝手に入るな」

 

「すみません」

 

グレンに一言謝り、は君月の前に立つ。

 

「はっきり言うが、今のお前じゃ力不足だ。そんな程度じゃ、“黒鬼”どころか一番下の“明王”にすら触れれねぇよ」

 

「んだと!」

 

「口の利き方に気を付けろよ、君月士方二等兵。上官には敬語を使え」

 

「くっ……!」

 

「和眞、下がれ」

 

グレンに言われ、和眞が下がる。

 

「和眞の言う通り、今のお前は力不足だ。単純な戦闘能力のがじゃない。お前も、仲間を作れ。一人で抱え込むな。じゃなきゃ、鬼に取り込まれた時、戻ってこれなくなる」

 

そう言って、グレンは刀を抜き鬼を具現化させる。

 

それを見て君月は震えだす。

 

「怒りや焦りは鬼の大好物だ。今のお前じゃ、欲望に食われて本物の鬼に成り果てるぞ」

 

君月は震えながら執務室を後にした。

 

「中佐、ちょっとやり過ぎでは?」

 

「お前が言うか?言葉に殺気を込めてたくせによ」

 

「仲間の重要性を分かってない青二才にお仕置きをしただけです」

 

そう言って、和眞はグレンの執務机に書類を置く。

 

「報告書です。失礼します」

 

そう言い残し、和眞は執務室を後にした。

 

「…………はぁ~」

 

執務室を出ると和眞は溜息を吐く。

 

「和眞!」

 

するとそこに三葉がやってくる。

 

「三葉。今日の任務は終わりか?」

 

「ああ。後は中佐に報告書を出して終わりだ」

 

「じゃ、待ってるから一緒に帰ろうぜ」

 

「うん!」

 

嬉しそうに頷く三葉を見送り、和眞は君月の事を考えていた。

 

「………妹、か」

 

「待たせた!」

 

「おお、帰るか」

 

官舎を出て、二人で歩いていると、三葉は和眞の手を急に握りしめる。

 

普段は、恥ずかしいから外ではあまり手を繫ごうとしない三葉にしては珍しかったので和眞は驚く。

 

「どうした?」

 

「なんか、和眞が辛そうだったから………」

 

「………三葉には隠せないな」

 

和眞は気まずそうに笑い、先程の事を話す。

 

「そうか、その君月って奴に妹が」

 

「ああ。俺も昔は、アイツの為に必死になってたから君月の気持は分からなくない。でも、だからこそ、アイツは間違えじゃいけないんだ。アイツには………俺と同じ道を歩まないでほしい」

 

和眞が悲しそうにそう言うと、三葉は手を離し、そして背伸びをし、和眞の引き寄せ、そのままキスをする。

 

数秒後、唇が離れ、三葉は顔を真っ赤にしながら和眞に抱き付く。

 

「大丈夫だ。和眞が気にすることじゃない。もうアレは忘れろ。それに………今の和眞は違う。だろ?」

 

「………ああ、そうだな」

 

和眞は笑い、三葉の頭を撫でる。

 

「それにしても、手を繫ぐならまだしも、キスだなんて大胆だな、三葉」

 

「うっ!い、いいだろ!和眞は元気づけようとしたんだから!」

 

「はいはい、そうだな。ありがとう」

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