Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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無限の剣製5

折れなかった衛宮士郎。

 

「下らん! 下らん下らん!もはや見るに耐えん! 愚昧ここに極まったな衛宮士郎! 正義の味方になる?

 ただ正しいだけのもの、そこまで分かっていながら何故間違いに気づかない! 

 正義とは秩序を示すもの……全体の救いと個人の救いは別のものだ。その2つは絶対に両立しない。正しい救いを求めれば求めるほどお前は自己矛盾に食い尽くされる! ただの殺し屋に成り下がる! それが分からないのなら死ね! 

 その思想ごと砕け散れ! 何も成し得ないまま燃え尽きろ! そうだ、そうなれば俺のような間違いも霧散する。お前という命の痕跡を俺自身の手で消し去ってやる!」

 

折れない剣は、更にアーチャーによって打ちのめされ、徐々に強さを増していく。アーチャーの言葉を全て聞きいれた上で、自分の未来を打ち負かす為に剣を振るう。

 

 二人の戦いを見護ると決めたセイバー。徐々に士郎の剣が、アーチャーとの経験の差を埋め始める。固有結界を展開しながら、残り少ない魔力を消費するアーチャーが弱くなっているのもある。だが、それを差し引いても士郎は今最も成長し始めている。

 先程までの力の差が嘘のように、アーチャーの経験を習得した士郎の剣が速さを、鋭さを増す。それは次第にアーチャーを防御へと移らせる。打ち合えば打ち合う程に、士郎という剣は磨かれていく。

 しかし、自分の理想によって折れてしまったアーチャーの方が、逆に折られる兆候を見せている。

 

 人間離れした動きで剣を振るわれ、英霊である筈のアーチャーの額に汗が浮ぶ。

 

(こいつは止まらない、限界は訪れない。そんなものとっくに通り過ぎている。なぜならコイツが斬り伏せようとしているものはとっくに俺ではなくなっている。

 

 あぁ、知っているとも。その無様さ、私はよく知っている。心は折れない。ただの一度も敗北を諦めることはしなかった男をよく知っている。

 万人を救おうと足掻き続けその理想を誰とも分かち合えなかった醜悪な正義の姿をよく知っている)

 

 成長する士郎を何度切り付け、何度地面に這いつくばらせても折ることが出来ない。むしろ折ろうとする自分の方が、逆に折れてしまいそうな。そんな恐怖を、アーチャーは感じていた。

 

 正義の味方として、苦しみ人々を救いたいと願い、叶えられなかった理想。そして、それを知ってもなお、諦めない衛宮士郎。それこそが、過去にアーチャーの犯した罪。

 

「だからこそ、お前は必ず絶望する!」

 

 切り合いを止め、固有結界に内包された地面に突き刺さる剣を操り、士郎へと飛来させる。それを干将莫邪で受け止める士郎だったが、突然投影した剣が砕け始め、新たな剣を作り出す事が出来なくなる。

 

「?」

「皮肉だな、心より先に魔力が尽きたか。お前に残された武器はそれだけだ。どうあれ衛宮士郎の闘いはこれで終わりだ」

 

 元々魔力量は多くない士郎が、意地だけで投影を続けていた。体は聖剣の鞘で回復するも、士郎の魔力が先に底をついてしまった。そして士郎に残されたのは、片方だけ残った夫婦剣のみ。無限の剣を操る世界の主であるアーチャーに対してそれは、武器を持って居ないにも等しい。

 

「あぁお前は正しいさ、俺の思いは偽物だ。けど、美しいと感じたんだ。

 自分のことより他人が大切なんてのは偽善だと分かっている。それでも、それでも、そう生きられたのならどんなにいいだろうと憧れた。俺の人生が紛い物でも、誰もが幸せであって欲しいという願いは美しいもののはずだ。

 

 俺は無くさない! 愚かでも引き返すなんてことはしない! この夢は決して! 俺が最後まで偽物であっても――決して間違いなんかじゃないんだから!」

「だまれ、だまれ! 衛宮士郎は此処で消えろ!」

 

 なおも歩む士郎。一歩一歩、前に進むたびに士郎の心が固有結界、アーチャーへと流れ込む。摩耗した記憶が鮮明に、そして固有結界の荒れた荒野と錆た剣が、士郎の心に反応して輝きを放つ。空に光が差し込み、嘗ての自分が戻ってくる。

 それを許せないアーチャーが、干将莫邪を投影して、投擲するも士郎は、現界を越え不完全な投影によって作った二振りの剣で弾き飛ばす。 

 

「絶対に、この思いは、理想は……間違いなんかじゃない!!」

 

 理想を否定するアーチャーに理想を信じる士郎。その瞬間、アーチャーの中で嘗ての想いが、蘇り始める。思い出すは、切嗣との記憶。呪いだと自分で言った光景が、別の意味に感じられる。眼前に迫る士郎、まだカウンターには間に合う。

 だが、アーチャーは士郎の突き出した剣を、受け入れた。

 

 士郎の剣が、アーチャーの身体を突き刺した瞬間、固有結界は解除され、元の慰霊碑の前へと戻る。

 

「俺の勝ちだアーチャー」

「ああ、そして私の敗北だ。完膚無きまでに……」

 

 互いに死力を尽くした結果、心の強さだ勝った士郎が勝利した。そして、見届けたセイバーも二人に歩み寄る。

 

「決着です。異存はもうありませんね?」

「そうだな」

 

 負けを認め、戦いが終わりを迎える。始まりの場所で、英霊エミヤの復讐は終わりを告げた。そして、戦いが終わるとほぼ同時に、講堂に走って入ってきた人物が居た。

 

「士郎! アーチャー!」

「と、遠坂!? なんでここに」

「はしってきたに、きまってるでしょう、みてわからない?」

「凛、無事でよかった」

 

 本当に全力で走って来たようで、凛は肩で息をしながら汗を拭う。冬とは言え、遠坂邸から中央公園まで走れば、誰でも汗だくになる。そして、何より驚いていたのはアーチャー自身だった。凛をキチンと拘束して、遠坂邸に監禁したと言うのに、彼女は抜け出していた。

 

「どうやって抜け出した。君に付けたロープは、魔力を使えなくするものだったはずだが。それにドアも強化して塞いだはずだ」

 

 その問いに、般若のような形相で睨む凛。彼女の手には、剥き身の短剣が握られていた。

「お父様の形見のアゾット剣。部屋に置いてあったのを思い出して、自分で斬ったのよ。後、扉は開かなかったから、窓を突き破って来たって訳。後、綾香とイリヤとは合流したから」

 

 アゾット剣を持ちながら、そう言いきる凛。予想以上に苛烈だとセイバーですら感じた。大脱出劇を繰り広げる彼女、凛を助ける名目でこの場所に来たが、本人が脱出して来てしまった。

 

「さて、どうおとしまえ付けてくれるのかしらアーチャー……って、その傷どうしたのよ」

「全く、つくづく甘い。彼女がもう少し非道な人間なら、私もかつての自分に戻らなかったものを」

 

 全ては後の祭り。もはや過去に対する望執はなく、折檻です甘んじて受けるしかないなと感じる。だが、英霊エミヤである自分が衛宮士郎を認めてしまった。全てが終わったと感じた時、アーチャーは視界の端……凛の背後に迫る黒い影を見た。

 

「凛!」





 一応UBWは此処までですかね。
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