表と裏を繋ぐ巨大な楔の前で、子ギルの用意した黄金の帆船の船首に立つアルカは、胸の前で手を組み。祈りを捧げるように、目をつむっていた。
そして彼女の体からは、魔力が漏れ出し、それらが天へと昇っていく。その行為は8時間にも及び、子ギルが周囲の神代の怪物たちを追い払わなければ、瞬時に食われていただろう。それでもマスターたる彼女の命令は、意識を集中している間、一切の気を乱す事のないよう護り抜けというもの。
それを実行する子ギルだが、彼女のサーヴァントの扱いは荒いなと感じていた。そして、彼女の元相棒と大人の自分との会話でも「マスターの扱いがひどい」と嘆いていたのはこういうことかと感じた。
「僕は王であって、庭師ではないんですがね」
だが、やがてアルカが目を開くと子ギルに振り返る。それは彼女の作業の終わりを告げていた。少し魔力を使いすぎたためか、アルカがふらついて船の床に座り込む。
額から汗が流れ、明らかに無理をしたのが理解できる。無表情なアルカが汗をぬぐいながら、ブレイカーのナイフを見つめる。それを不思議そうに子ギルが眺める。
「お疲れみたいですけど、手段は手に入りましたかマスター?」
「ん。彼に全てを託した」
アルカの言う人物は何となくイメージ出来た子ギルは、あの時の彼かと納得する。青年の自分に奇跡的にも認められた男。彼に希望を託したとなれば面白いと感じる。
「それで、ずっと待機ですか?」
「状況は思った以上に悪化してる。だから、私も策を考える」
「考えると言いながら、答えは見えているのでは?」
「ん。また時間を稼いで」
「えー。あ、いや令呪で脅さないで下さいよ」
断りたがった彼にアルカは、令呪を見せびらかして子ギルが困惑する。この人本当に容赦ないなと肩をすくめ、ふたたび護衛に当たる羽目になる。とはいえ、彼に魔力を与え、表側に出ようとするのだからアルカの行動は間違っていない。
船内に戻った彼女は、手のひらの上に浮かばせたブレイカーの宝具『恐怖の大王(アンゴルモア)』を魔眼で読み取り始める。それはどうしても必要なことだった。セレアルトに対抗する手段は、アルカにとって彼だ。既に根源に繋がり、精霊にまで昇華されたアルカはサーヴァントを一体なら隙に召喚できる。
だが彼を再び召喚しようにも、根源が不可能だと指摘する。何故かと調べれば自分と契約していたことでブレイカーについては根源も教えてくれない。ゆえに残されたヒントを辿るしかない。触媒は彼の宝具がある。だが、本来召喚されない英霊を意図的に呼び出すためには、彼を知るしかない。
10年間過ごしても、彼からはほとんど語られなかった真実を知り、ブレイカーを召喚するために。
「install」
アルカは、ブレイカーの宝具に宿った記憶を読み取り内包し始める。