セレアルトを抱えたブレイカーが校舎を闊歩しているとチラホラとサーヴァントや参加者のマスターとすれ違う。どうやら校舎内での戦闘は禁止されているのか手出しをしてくる様子はない。
けれども堂々とサーヴァントを出して闊歩する主従ということで、注目を集めてしまうのは仕方ない。
「ここか。ん?」
ブレイカーが保健室に着くと、保健室の入り口で尼僧がしっとりとした目で扉を見つめていた。まるで中を覗き見ているような視線で。だが、保健室に入るには、その女が邪魔なため咳払いをして、利用者の存在を伝える。
「あら、申し訳ありません。私としたことが。ですが、この保健室は何者かの手でロックされているのか扉は開きませんよ?」
女はそう言って、マイルームに戻った方が賢明だとアドバイスしてくる。女の言うように扉は結界の様なものが張られ、侵入者を拒んでいるようだ。
「ご忠告どうも」
しかし、結界の類は、ブレイカーの障害にはなりえない。片手で扉を強引に近づく。結界が彼を阻もうとするが、彼の魔力に触れると綺麗に砕け散ってしまう。
結界が壊れると同時に、保健室の扉が開いて女生徒が外に出てくる。
「あ、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だ」
すれ違った少女がどこかへ行く頃には、ドアの前を陣取っていた尼僧が姿を消しており、ブレイカーはセレアルトを連れて保健室に入る。
「おい、急患なんだ。診てくれないか」
「え? あ、はい。こちらのベッドにお願いします」
保健室にいたのは、紫色の髪をした美少女だった。白衣を身に纏う彼女は、言峰の言っていた上級AIなのだろうか。彼女の指示に従いセレアルトをベッドに下ろし、ブレイカーは椅子に腰かける。
サクラと名乗ったAIは、カーテンで視界を遮り、セレアルトの衣服を脱がしながら、治療を施していく。そして数分して戻ってくると、お茶をブレイカーへ出してくれた。
「酷い怪我です。それに魔力が枯渇寸前で、あと数分遅れて居たら、危なかったです」
「治療が間に合ってよかった。いつ頃目覚めそうなんだ?」
「半日程眠れば、回復すると思います。このまま、保健室で休ませますか?」
「ここは安全なのか?」
「マイルームほどではないですが……一応私が管轄している空間ですので」
魅力的な提案だが、ブレイカーはマイルームに行くと言って、再びセレアルトを抱えて移動し始める。何故だか保健室から妙な気配を感じるのだ。
知識がない以上、勘に頼るしかない。マイルームについてサクラから聞いた情報で居場所を確認して、セレアルトと一緒にマイルームに入る。
マイルームの中は、普通の教室と言った風景だった。有能なマスターやサーヴァントは自分たちである程度、部屋を改築するらしい。
「幸いにも俺には、道具作成スキルがある。流石に寝床くらいはな」
ブレイカーは、破壊者の英霊に相応しくないスキルを数世紀ぶりに使用し、自分好みに部屋を改装する。そして、作り出したベッドに自らの担い手を寝かせた。
――――――
穏やかな寝息を立てながら、深い眠りにつく今回の契約者をパイプ椅子に座りながら眺めるブレイカー。
「どっからどう見ても、セレアルトだよな」
抑止力『アルカ』の守護者として、長い長い年月を過ごし、記憶が摩耗する中でも、忘れられない宿敵。マスターの天敵であり自分を一度謀殺した人類悪の化身ともいえる女。いや少女だろうか。
全ての世界を呪い、抑止力すら呪いで汚そうとした存在。セレアルトとアルカは、元々同じ体を使っていただけあり、顔では見分けがつかない。けれど、表情や仕草が違うため、ブレイカーならすぐに判別が可能だ。
ただ今回は緊急事態で、殺されそうになっている、マスターを見かけた為、大慌てで召喚に応じたのだ。
けれど、ふたを開けてみれば、マスターではなく、マスターの姉だった人物。
「ただ、別の世界線のセレアルトなんだろうな。魔力も微弱だし、そもそも俺の知るセレアルトなら、あのアーチャー相手に殺されかけるとかないだろうな。むしろ、この聖杯戦争そのものが、こいつの掌の上でもおかしくないな」
危険度で言えば、セレアルトに勝る物を見たことがない。
だが、今のセレアルトは、明らかに貧弱すぎる。先程の魔力消費に関しても、6歳の頃のアルカでも苦にならないくらいだったのだが、今のセレアルトは半日寝込む程、負担が大きいらしい。
妖精の血を継がず、根源にも繋がらず、魔術の才能も並かそれ以下。それが今のセレアルトのスペックだ。
過去を思えば、今こうして寝こけている姿は、平穏で実に尊いのかもしれない。
「だけど、こいつの置かれていた状況は、地獄だったみたいだな」
サクラが教えてくれた情報の中に、セレアルトが通常では考えられないほどの心の傷を負っているというものがあった。体の傷以上に、心の傷がひど過ぎるのだと。体だけでなく魂までもデータ化している世界だからこそ、解析できた事実。
年齢でいえば中学生程度のはずだが、不自然に記憶の容量が爆増していたらしい。
(軽く10世紀は、経験している計算だったか)
精神が摩耗していないのが異常ともいえる。ブレイカーですら長い年月戦い続けているせいで、記憶が所々薄れて居たり支障があるのだ。そして、契約を結んだことで繋がったパス。それを通じてセレアルトから流れてくるのは、死の記憶。
何度も何度も殺され繰り返す日々。誰とも共感できない孤独や必ず訪れる死の恐怖。それらを疑似体験していくブレイカー。自分用に作った仮眠用の椅子に靠れながら、セレアルトに起こっていたことを知ろうとする。
「ループってSE.RA.PUでは、よくある事なのか? くそ、聖杯戦争の時と違って知識のバックアップがないから、わからねぇことだらけだ。また誰かに聞きに行ってみるか」
ーーーーーーーーーー――――
半日程が過ぎると、セレアルトが目を覚ます。
「ん? わたし、また、死んだの? じゃ、また一日目から?」
教室の天井が見えたことで、またループが始まったのかと絶望するセレアルトだったが、自分が眠っていた場所が教室には似つかわしくないベッドである事に気が付いて、周囲を見渡す。そこで何よりも教室に相応しくないものが目に入る。
「教室に、タクシー?」
「おはようさん。気分はどうだ、ベアラー?」
教室の窓側に何故か、扉のないタクシーが止まっており、運転手側の座席を倒して、ブレイカーが寝転がっていた。それを見て、セレアルトの瞳に涙が浮かぶ。
ーーーーーやっと地獄から抜け出せた。
『クラス』ブレイカー
『真名』アンゴルモア
『マスター』アルカ・ベルベット&セレアルト・グッドフェロー
『性別』男性
『身長・体重』183cm 70kg
『属性』秩序・悪
筋力 c~ 魔力 EX
耐久 c~ 幸運 e-
敏捷 c~ 宝具 EX
クラス別能力
破壊:EX
発動時は全身に刻印が浮かび上がる。自らの肉体により物質、概念、宝具などありとあらゆる物を破壊することが出来る。破壊された物体は、自然治癒できる場合は回復できるが、不死属性や神霊などの超自然的概念では破壊を修復できない。すなわち概念による優位性を破壊するスキル。
世界の終着点:E
世界を亡ぼしたことで人類史の終着点となった逸話に基づくスキル。彼が存在し、世界を滅ぼそうと決めた段階で、未来や他の剪定事象が全て滅びへと固定される。千里眼などの未来を見るスキルや根源接続による未来視すらも無効化する。未来を決める能力ではないため、ブレイカーを打倒すれば、通常通りの未来が訪れる。だが神秘はそれ以上の神秘によって上回るという世界の法則上、一度も敗北したことなく外宇宙とも戦い打ち勝った過去があるブレイカーの神秘は、現状最高峰といえる。
保有スキル
強化:EX
魔力の限り無制限に自身の体や関係する力を強化する事が出来る。
無我の境地 :A-
ある目的のために迷いを捨てるスキル。精神汚染や精神系統の能力に対しては、完全に無力化する。
概念耐性 :B+
血統故に持ち得ている概念に対する耐性。全ての宝具に対して、ある程度の防御補正が適応される。例としては、必殺は必殺たりえず、無敵は無敵足り得ない状態にするスキル
取得:A-
自分の得たいスキルを学ぶことで取得することができる。先天的なスキルは不可能だが、技能系スキルであれば取得可能。さらに錬度をあげればランクも上がっていく
道具作成:B+
魔力を帯びた器具を作成可能。ブレイカーはあり合わせに物に魔力を付与して礼装を作り出す事を得意としている。
単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターがサーヴァントへの魔力供給を気にすることなく自身の戦闘で最大限の魔術行使をする、あるいはマスターが深刻なダメージを被りサーヴァントに満足な魔力供給が行えなくなった場合などに重宝するスキル。反面、サーヴァントがマスターの制御を離れ、独自の行動を取る危険性も孕む。
騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。また、英霊の生前には存在しなかった未知の乗り物(例えば古い時代の英雄にとっては見たことも無いはずの、機械仕掛けの車両、果ては飛行機)すらも直感によって自在に乗りこなせる。
子育て:B
長年の思春期の女子を3人育て上げた末に手に入ったスキル。子供相手に力加減を間違える事はなく、子供心の理解の判定が有利に働き、叱る際は、説得力が増大する。
etc…。
【宝具】
『この世全ての終わり(ブロークン・ファンタズム)』
対全宝具
ランク:EX
詳細:ブレイカー本来の魔力。純粋な破壊の性質を持ち、大権能すら凌駕した純粋な高エネルギーの放出。指向性を持たせることで長距離射撃も可能とし、広範囲に拡散することで防御も可能とする。破壊の概念を持たない物にも強制的に破壊の性質を与える。ブレイカーの内包魔力に上限がないため、最大解放の威力は未知数。
『恐怖の大王(アンゴルモア)』
対心宝具
ランク:E-~A+
詳細:ナイフ状の宝具であり真名開放を行うと、対象者のイメージした物質や性質を帯びたものに変化する。そのイメージは相手の最も恐れるもの、恐怖そのものであり、使用者のブレイカーには相手の恐怖の対象が解らないため、使用には不安定さが否めない。
しかし、本質は、この世に存在したありとあらゆる恐怖の感情が結晶化したものであり、その存在自体が権能の一つともいえる。所持しているだけで、別の権能に対する防御手段となりうる。
追記、ブレイカーはある事情から、再び英霊となっているため、ステータスが存在します。全体的にステータスが向上しているのは、戦闘経験が更に追加された為です。