ブレイカーがセレアルトを落ち着かせ、ようやく二人は向き合う。
「改めまして、俺の名前はブレイカーだ。お前のサーヴァントとして契約した。その令呪が何よりの証拠だ」
「うん。うん。けど、なんで、今まで、呼んでも来てくれなかったの?」
しかし、再び泣き始めていたセレアルトに、何処から出したのか冷蔵庫からジュースを渡すブレイカー。
セレアルトは、何故自分が地獄に囚われている間、一度も召喚に応じてくれなかったのかと尋ねる。そんなことを言ってもブレイカーが困るだけだと分かりながらも聞かない訳にはいかなかった。
「……遅くなって悪かった。無視していた訳じゃない。縁が出来たのが、さっきなんだ」
ブレイカーは、目に見えて八つ当たりされているのを理解しながらも、確かに酷な時間を過ごさせたと謝った。セレアルトは、感情がコントロールできない。自分を救ってくれた唯一の存在なのに、どうして、なぜと言葉が止まらない。
彼が悪くないと思っていても、過ごした地獄が頭をよぎる。こんなことを言って怒らせたらどうしよう、嫌われたら、見捨てられたらと、後ろ暗い考えがセレアルトの頭を埋め尽くす。
「ちが、こんなこと、いいたいんじゃ、いや、あの、ごめんなさ」
「マスターと呼ばないと言ったことを気にしているのか知らないが、俺はお前のサーヴァントだ。サーヴァントは最期まで契約者の味方だ。俺はお前の召喚に応じた。お前が俺を見限ることはあっても、俺がお前を見限ることはない。だから怯える必要はない」
弱気で泣き虫なセレアルトというバグのような存在に、ブレイカーは必死に言葉を選びながら接する。これは名前と顔だけが同じ別人だと理解している為、かつての敵意は消え去っている。
ただ問題は、この貧弱な担い手でどう、聖杯戦争を勝ち抜くかという事だ。ブレイカーは、宝具に莫大な魔力を食う。そうなれば目の前の担い手の魔力は枯渇して、確実に死ぬ。昨日の赤いアーチャー戦での小手調べの宝具の開帳で、死に掛けたのだから。
となれば身体強化のみで戦うしかないが、それも担い手の魔力を食わない範囲という制限がある。
(マスターって結構すごかったんだな)
魔力食い虫の自分を最大稼働させ続けられた前マスターの性能に驚愕する。
「歩けそうか? 実は昨日、試練をクリアーしたマスターへ、似非神父から今後の説明があったらしい」
「噓?」
「どうも今日から何かが始まるらしい。歩けるなら、行ってみるか?」
どうせ行かなければいけない催しだろう。あの神父が親切を働くとは思えないが、聖杯戦争に参加させない方法を選ぶとも思えない。
「行くしかないよね」
「当然」
ルール一つ理解していないが、どうせ英霊同士の戦いになるはずだ。聖杯戦争とはそういうものなのだから。
「サーヴァントって霊体化するんじゃないの? なんで私と一緒に歩いてるの?」
「ここで一つ悪い知らせだ。今の俺は霊体化できない」
「なんで!?」
ブレイカーが気まずそうに「電脳世界での霊体化のやり方がわからない」と告げる。
「そんなことあるかしら? じゃ私ずっとサーヴァント傍に侍らせながら、生活しないといけないの? というかサーヴァントって真名とか隠すためにも、戦闘時しか表に出しちゃいけないんじゃ?」
「その点は大丈夫。俺は弱点のある逸話とか皆無だから」
校舎をセレアルトと闊歩しながら、そんなことを大声で話すブレイカー。彼の声を聴いて、マスターらしき人間達が警戒の色を強める。特に校舎内にいたサーヴァント達の視線が、刺さる。それを肌に感じてか、セレアルトが冷や汗をかいている。
視線から庇うように彼女の盾となったブレイカーは、殺気を校舎に走らせる。
「「「!?」」」
多くのマスターが身震いし、多くの英霊が、その気配に凄まじい敵の到来を察知した。
(一応、脅してみたが、10人ほど、とんでもない英霊が混じってるな。このセレアルトと俺で勝ち抜く事が可能か?)
己の殺気にも、怯まず、警戒すら示さない存在を察知したブレイカー。よほどの馬鹿か、今の自分より強い相手がいると知り、少ない戦力をどう活かすか考察していた。
「?」
寒気が無くなった事で、セレアルトは不思議がっているが、ブレイカーはそんな彼女に「キョロキョロするな」と指示をする。その言葉を聞いて背筋を伸ばして歩き始めるセレアルト。
(聞き分けはいいな)
二人は、周囲の声も気にしなくなり、言峰神父の居るであろう場所に向かって歩いて行った。
―――――
そんなセレアルトとブレイカーの後姿を眺めている青い髪をした男子高生が居た。彼は自分の手元の端末に記された名前を見ながら、にやりと笑った。
「どうやら、僕らの相手は、あいつらみたいだね。サーヴァントを出しっぱなしとか、セオリーも知らないど素人だね。お前はどう思う、ライダー?」
そんな彼の傍に霊体化を解除してサーヴァントが現れる。銀の軽鎧を纏い、槍を持った緑の髪をした美丈夫。その存在感だけでも、彼が一流の英霊であることが計り知れる。
「あのお嬢ちゃんは、何か、心配になるけどよ。あのサーヴァント、アイツはいいな。シンジ、あいつとは、尋常に勝負してみてぇ」
「あ? 何言っちゃってんだよ。ステータス見た感じ、魔力と宝具は、優秀だけどそれ以外は、お前の足元にも及ばないような奴だぞ?」
「いいや、英雄としての勘が言ってる。あいつは強ぇ。間違いなく、ギリシャの英雄豪傑にも劣らねぇ」
自分のサーヴァントが最強だと信じているマスターの青年。だがライダーが対戦相手のサーヴァントを評価したことで、彼は面白くなさそうにする。
「お前の同郷とか? じゃ、じゃ~、さっそくいろいろ準備しなくちゃね」
「おいおいおい、下手な横やりは、白けるから勘弁してほしんだが?」
「僕がマスターだぞ。僕の命令には従ってもらうからな」
「まぁお手並み拝見と行こうか。シンジ。けど、気に入らない命令なら、ノーって言うからな。どうしてもっていうなら令呪を使うこったな」
「くっ、行くぞ、ライダー!」
「あいよ」
そう言い残し、二人の主従も姿を消した。
一回戦の相手は、例の彼です。そのサーヴァントは、EXTRAからかなり改変されております。ブレイカーが紛れ込んだことによる、敵陣営の大幅強化です。
EXTRA編は、サーヴァント頂上決戦見たくなるかもしれないです。