言峰神父は、校舎の下駄箱前で何故か待っており、セレアルトを見ると面白げに微笑んだ。
「どうやら間に合ったようだな。128番目のマスターよ」
「は、はい」
セレアルトが、おずおずと答えると、言峰は意外なものを見たような顔になりながらも聖杯戦争について説明を始めた。まず通常の聖杯戦争とは違い、ここでは1対1の決闘で勝敗をつける。
そして、対戦相手が決まると、相手の名前を知り、6日間の猶予期間(モラトリアム)が与えられるという。この時間内で敵のサーヴァントの情報や突破の方法を編み出したり、自由に使える時間となる。だが決戦には二つのトリガーキーなる鍵が必要。
それは学園内に用意されたアリーナと言う場所に配置されている。そのため、そのカギを手に入れる目的で最低でも二回はアリーナに入る形となる。
アリーナ内は、エネミーなる敵キャラが用意され、それを相手に戦う事でリソースや礼装などが手に入るという。
校舎内での戦闘行為は厳禁で、サーヴァントの弱体化を含む罰則が与えられるという。
(禁止と言いながら、温情のあるペナルティ。どうやらアサシンクラスへの配慮と考えるべきか)
逆にアリーナ内では戦闘行為も可能。だが、一定時間のみの戦闘であり、時間が来れば戦闘の強制終了が行われるらしい。
「以上だ。何か質問はあるかね?」
「あの、私のサーヴァントが、ムーンセルのサポートを受けれてないみたいで、知識とかが欠落してるんですが、追加でサポートとかを」
「不可能だな。理由は、そのサーヴァントが一番よく理解していると思うが?」
言峰は、嫌みな表情でブレイカーを見る。ブレイカーも心当たりがあるのか、特に言い返さない。
「どうしてもというなら、図書室を使いたまえ。あそこなら、君でも使用が可能だ。ついでに資料の貸し出しができるよう取り図ろう」
「アナログだな」
「君に相応しいだろう。では、私は失礼する。そこのサーヴァントに殴られては敵わんからな」
本気で一発殴ってやろうかと思ったが、それを察してか、転移して消える。
「あの、サポートが受けれない理由って何ですか?」
「敬語じゃなくてもいい。それと、答えだが、俺は、ムーンセルに登録されたサーヴァントじゃない」
ブレイカーが簡潔に語った言葉。それを聞いたセレアルトが発した驚きの声は、校舎中に響き渡ったという。
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「なんで、ムーンセルに登録されてない英霊が、私の召喚に応じてるの!?」
「そりゃ、お前が殺されかけてて、慌てて応じたからだよ」
「というか、ムーンセルに登録されてない英霊なんか要るの?」
過去と未来、更に並行世界まで観測しているムーンセルに登録されていないというのは、どういうことなのだろうか。
「単純に俺は、元々別世界で英霊になった事があるってだけだ。並行世界を観測するとは言っても、全ての並行世界をまとめて観測してるわけじゃない。俺は、ムーンセルの観測外から来たサーヴァントって事だ」
「なんで、そんな並行世界の英霊がこの世界に来たうえで、聖杯戦争に参加しようと思ったの?」
ブレイカーはセレアルトの質問に少し困る。何処までを説明していいのかわからないのだ。仮に、別次元でセレアルトが大暴れして世界中が滅茶苦茶になったからその後始末のために日夜頑張っていると説明したとしたらどうだ。
益々困惑するか、可哀そうなものを見る目で見られるのがオチだ。そもそも暴れたのは、アルカの世界のセレアルトであり、目の前にいる彼女には関係がない。
「このムーンセルに用があってな。始めは、月まで直接行ったんだが、ムーンセル本体を前にしてもどうする事も出来なくて、そしたら、ムーンセル側からアクセス方法を提示してきたんだ。それで仕方なく、アクセスしたものの、俺はマスターには不適格で、サーヴァントとして参加しろと来た。
だが、俺と縁のあるマスター候補などこの聖杯戦争には存在しない。だから諦めて、本体をぶっ壊そうと思った時だ。お前が、助けを求めている場面を見たのは。それで今に至る」
そうでなければムーンセル本体を力づくでぶっ壊していただろう。もう一度月まで飛んでいくのは、面倒ではあるが無駄足をさせてきた借りは返すつもりだったのだ。
物理的に破壊できないと言われるムーンセルだが、ブレイカーの見たところ物理破壊も可能だ。現に、ムーンセルに何かが刺さっているところを実際月で見た。
明らかにムーンセルのパーツではなく、余分な何かだった。
ブレイカーの話を聞いて、セレアルトは頭がこんがらがっていた。
(ムーンセル殴るって何? それに月まで飛んだって何? この人、空飛べるの? というか宇宙空間どうやって移動してるの!?)
「それ、全部、何かの例えよね? 宇宙空間生身で行くとかありえないし」
「全部事実だベアラー。宇宙空間位、別に特別な装備はいらねぇよ。昔から、大地より宙の方が居心地がいいくらいなんだ」
(この人、宇宙人だわ。宇宙人の英霊なのね!?)
冬木に召喚される前も、地上から宇宙に飛び出して隕石の破壊とか異星からの訪問者の撃退等色々やっていたブレイカー。懐かしい思い出だなと、少し物思いに耽る。星の終末を起こしたものとして、墓守に徹していたため星間移動は、やったことがなかったが、ムーンセルの問題解決後は、宙に向かうのも悪くなさそうだと考える。
「宇宙人の英霊、フォーリナーとかの方があってるんじゃない?」
「何の話だよ。今日は、アリーナって言うのに足を運んでみるか? どうせ2回は行かなければいけない場所だ。早い所、トリガーキーをゲットしとくのも手だぞ」
変なことを言い始めるセレアルトに突っ込むブレイカー。だが奇しくも彼はフォーリナーと言うクラスに適性がある。しかし、そんなことはどうでもいいと話を切り替え、彼女の同意を得るとアリーナへと向かうのだった。