Fate/make.of.install   作:ドラギオン

156 / 178
アリーナの戦い

 

 ブレイカーがいつになく真面目な表情でアリーナのエネミーを蹴散らしていく中で、セレアルトはある種の不安を感じていた。

 

 トオサカと呼ばれていた女生徒は、確か優勝候補と呼ばれる遠坂凛だ。すごいハッカーで確か、テロリストだ。自分とは違う、本当の戦いを生き抜いてきた戦士だ。

 

 シンジとは違い彼女の纏う雰囲気から、セレアルトは、薄れていた恐怖を呼び起こしてしまった。彼女の扱う英霊は、シンジの英霊と比べてもそん色のない実力だった。

 

 そんな英霊を遠坂凜が連れているという状況は、絶望する理由にしては十分である。

 

(ブレイカーは強い。けど、私が、マスターである私が、足を引っ張ってしまってる)

 

 悔しい。そのな感情が生まれる。彼らの英霊と比べても自分の英霊は遜色ない。だがマスターの性能という面で、著しい差をつけられてしまう。どうすればいいのか。圧倒的なまでの性能差を覆すには。

 

 険しい表情をするセレアルトには、ブレイカーも気が付いていた。

 しかし、真剣に今後について思案することはいい事だ。今は口を挟まず彼女の努力を見守ることにした。

 ある程度歩いていると、広場にたどり着いたため、少し休憩を挟む。

 

「ベアラー。ウィザードには、コードキャストという魔術があるんだろ? お前はそれを持ってないないのか? 一応、戦力の確認をしたいんだが」

 

 ブレイカーの質問に、彼女はより一層険しい表情をした。

 

「それがね、それがね。私、礼装、一回使うと全部壊れちゃって。今は手持ちがないのよ」

「それが普通なのか? 異常なのか?」

「異常よ。どう考えても。たぶん、私の魔力が全体的に礼装と相性が悪いんだと思う」

 

 そんなことがあるのだろうか。ブレイカーは疑問に思い、先程手に入れた礼装を彼女に渡す。それを試し打ちして見ろと告げる。

 

「add_regen(8);」 

 

 彼女が術式を起動すると、魔力の弾丸が発射され、瞬時に術式がバラバラになる。本当に一回こっきりの使用しかできないようで、彼女が絶望的な顔をする。

 

「なるほどな。わかった。その問題に関しては、ちょっと案がある。こら、落ち込むな。そんな暇はないぞ」

 

 せっかく手に入れた礼装を壊してしまい泣きそうになった彼女を励ましながら、ブレイカーは背後から迫る気配を察して、彼女をお姫様抱っこの形で抱き上げる。

 

「どうしたの?」

「アリーナに仕掛けといた、手製のセンサーが反応した。シンジとサーヴァントが入って来てる。少し戦いやすい場所に移動する」

 

 セレアルトを抱きかかえながら彼女の負担にならない速度で進む。しかし、明らかに気配が迫る速度が速い。

 

(相手も走ってるな。此処で迎え撃とう)

 

 あえてブレイカーが選んだのは狭い一本道。セレアルトを後ろに下がらせ、追ってきた敵を迎える。

 

「やぁセレアルト。昨日は、驚かされたよ」

「……何の用? 貴方には、アリーナに来る理由なんてなかったと思うけど?」

「何、昨日の続きだよ。お前は本戦に進むべくもなく、ここで殺すってことさ。悪いね。今日の僕は、虫の居所が悪いんだ。やれ!」

 

 シンジとサーヴァントの主従が現れ、シンジの命令にサーヴァントはやれやれといった表情で駆け出す。槍を構えたそれは、マスター達の視界から一瞬で消える。それほどの超速移動に対応できるのは、ブレイカーのみ。ブレイカーと俊足の英霊は、互いにしか認識できない速度で、武を競い合う。

 必殺の一突きをブレイカーは、両腕を蛇のように激しくくねらせ、回転によって弾く。弾かれた槍をすぐに引き戻し、何度も槍を縦や横そして突きと狭い通路内でも不自由なく攻め続ける。

 それを捌き続けているブレイカーの技量を褒めるべきか、一切攻勢に写らせないサーヴァントの技量を褒めるべきか。 

 

「あんた、ランサーではないな? 槍にそれほど脅威を感じない。正直、お粗末だ。なら何の英霊だろうな」

 

 防戦一方でらちが明かないと思ったのか、ブレイカーが相手を挑発する。言葉だけでなく、相手を見下した表情と態度で。

 

「お前の意図は読めてるぜ。そうやって俺を挑発して、隙を伺おうって算段なんだろ?」

「いや、本当に欠伸が出るって言ってるんだ。ふぁあ」

「なら、その槍の一撃を刻み込んでやろう!」

 

 ブレイカーの意図は読んでいる。だが、その態度の悪辣さに、堪忍袋の緒が切れたサーヴァント。本当に欠伸をしているブレイカーを殺そうと一歩下がり、最大加速での一撃を見舞う。だがそこは歴戦の英雄。

 

(さぁお前が望んだ一撃だ。どう凌いで反撃してくる)

 

 どんな動きをしようと対処するつもりだった。その刃がブレイカーの左前腕部を突き破るまでは。

 

(何!?)

 

 何らかの防御や回避を行うと踏んでの一撃。どの動きにも対処できるよう神経を集中させたことが仇となる。ブレイカーは一切回避も防御もせず攻撃を受け止め、彼の思考が塗りつぶされた隙に、体中の破壊の刻印が起動、破壊を纏った右手の手刀を突き出した。

 

 アリーナに鮮血が舞う。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。