Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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予兆

 

 端から防ぐという案を廃止したブレイカーのカウンターだったが、サーヴァントの目を狙った突きは、彼の驚異的な反射神経からくる回避によって、頬を切り裂いただけに留まる。だが鮮血が傷口から流れ、ブレイカーの手を血で染める。

 まさかの反撃にサーヴァントは瞬時に、背後に跳ぶ。その際にブレイカーの腕に刺さった槍が強引に抜かれ、少し痛そうな表情を彼にさせる。

 

「お気に入りの反撃方法なんだがな。軽傷か。よほどの英雄か、やっぱり」

 

 左腕を使い物にならなくされたブレイカーだが、既に治癒を始めており、後ろに飛んで驚愕の表情をしている。

自分の頬から流れ出る血を、手ですくい、何度もブレイカーを見たかと思えば、槍を地面に突き刺し、高らかに笑いだした。

 

「ハハ、ハハハハハ! 素晴らしい! 素晴らしいぞ、灰色の英霊!! お前は俺を傷つけ、殺すことができるのか。ならば、俺とお前の戦いは宿命である。あぁ、オリンポスの神々よ。この戦いに栄光と名誉を与え給え!!」

 

 自分を傷付けられたことがよほど嬉しいらしい。この事態にはシンジも困惑しており、回復をかけながらも驚かざるを得ない様子だった。只サーヴァントが戦っただけなのに、何を驚くことがあるのだろうか。ブレイカーは冷静に頭の中のピースを埋めていく。

 自分が意図しない何かをした。それが何なのか。それさえ解れば、この英霊の正体にたどり着く。

 

「スキル、いや宝具か」

「ブレイカー!? 避けて!!」

 

 セレアルトが思わず自分のサーヴァントのクラスを口にしてしまう。ブレイカーは何事かと思ったが、突如彼の脇を槍の一撃が通り過ぎた。

 

「跳びなさい! 右から来る」

「な」

 

 一撃目はセレアルトの方向を向いたことで攻撃が外れ、さらに振るわれた横なぎは、彼女の言葉通りに動いたことで避ける。避けた先で別の指示があったため、反射的に蹴りを見舞えば、相手のサーヴァントの肩にクリーンヒットする。蹴りが入ったサーヴァントは、大きく吹っ飛び、床に激突した。

 突然指示をするようになったセレアルトの様子が変で、彼女の姿を見てブレイカーが驚愕する。

 

「うぅ、ぐぅう」

 

 セレアルトの両目の色が七色に変化し、右肩からは魔力の羽のようなものが生えていた。だが、アリーナ中から発生する鎖のようなものが彼女を縛り付けていた。やがてそれらが彼女を抑え込むと、彼女はその場に倒れてしまう。

 

「セレアルト!?」

 

 何が起こっているかわからないが、ブレイカーは右腕で担い手を縛る鎖のようなそれを打ち消し、彼女の安否を確認する。息はしている。だがこの目ではっきりと見た、彼女を縛る悪意は、まだ消えていないことを。

 

ーーー腹立たしい。全部丸ごとぶっ壊してやろうか。

 

「なんだ、マスターが不調なのか」

「おい、今すぐ止め刺すんだ」

「止めとけ。今手を出したら、間違いなくあいつは俺たちごと心中しかねない」

 

 謎は多い。セレアルト、今生の担い手たる彼女が、今何に巻き込まれているのか、そして何をその身に宿すのかはわからない。けれど、彼女の異変と同時に流れ込んできた魔力は、ブレイカーの霊基を満たす。月の聖杯戦争にて初めてまともな魔力供給を得られた。

 だが、少し悪い癖が出た。破壊することに前向きになってしまった。それが意味することは何か。

 

 ブレイカー。破壊者の英霊の存在価値。破壊、破壊である。彼から迸った魔力がアリーナ中を伝って、アリーナが崩壊を始める。地響きと共に、ブレイカーの怒りが空間に広がる。

 

(このプレッシャー。オリンポスの神々すら凌駕しかねない。なんだこいつの力は)

 

 異質。そう表現するしかないブレイカーを深く警戒するサーヴァント。ちょうど同じタイミングでアリーナ内での戦闘可能時間が終了する。両者の間にエリアを遮断する壁が形成される。しかし、その壁すら、ブレイカーの魔力に触れると、ひびが入り、砕け始める。

 

「この勝負、今日は預けるぞ!」

 

 あまりにも見境のない破壊の権能を前に、サーヴァントはシンジを連れ離脱。敵が居なくなったことを確認したブレイカーは、セレアルトを抱え、目の前の壁を打ち砕いた。本来不可侵の筈の障壁だったが、ブレイカー配置も簡単に砕き、自分の担い手を連れて、アリーナを脱出する。

  

 アリーナを抜け出して、保健室に駆け込んだブレイカー。

 

「すまん! 急患だ。診てくれ」

「は、はい! ってセレアルトさんですか。また何かあったんですか?」

「わからない。だが、アリーナそのものに襲われていた。何が起こったのかわからない。頼む、みてくれ」

 

 セレアルトをベッドに寝かせ、サクラがバイタルの確認を始める。

 

「全身の魔術回路が焼き切れています。どうしてこんな、いや、待って。これは一体」

 

 何やら不穏な声がサクラから聞こえるが、このSE.RA.PHの中で電脳体の治療なんぞ、まだブレイカーにはできない。故に彼女を頼るしかないのだ。

 30分ほど経った後、サクラが戻ってくる。そして、彼女はお茶を用意して、ブレイカーに差し出す。

 どうやら問題はないと見ていいのか、ブレイカーはお茶を口にしながら、サクラに問いかける。

 

「何が起こってるんだ?」

「セレアルトさんの体を前回よりも綿密にスキャンしました。すると、セレアルトさんの体の中に、とてつもなく大きな情報が眠っていました。途轍もない厳重なロックとセキュリティで守られていて、それが何なのか、私にも調べられません」

「前に言っていた、膨大な記憶とは別なのか?」

「はい。前回は、綿密に隠蔽されていた為解りませんでしたが、それよりも遥かに膨大なデータです。彼女の中に納まるはずの内容量が、どういう訳か、封じ込められている。そんな状況です」

「今回はそれが原因で?」

「はい。どういう現象か不明ですが、その膨大なデータが内側から漏れ出し、セレアルトさんの体を膨大な魔力の流れで焼いてしまったんです」

 

 嫌な予感がする。杞憂なら良いのだが。

 

「だが、セレアルトの魔力が溢れると同時に、アリーナというかSE.RA.PHそのものがセレアルトを攻撃していた。あれは何故だ」

「状況を見ていないのでわかりませんが、SE.RA.PHそのものが、セレアルトさんに眠るデータを不正データだと感知し、セキュリティが働いたのではないかと.。ですが、それは攻撃ではなく、セレアルトさんの体を守る意味がったようです」

 

 サクラの説明によれば、セレアルトの漏れだしたデータは、SE.RA.PHによって完全に封印され、より強固な守りとなったという。元々溢れ出ればセレアルトの体を突き破ってしまうようなそれを、SE.RA.PHが完全にコントロールしたため、今後はこんなことは起こらない。

 そう判断したという。AIは嘘をつかないらしいので、本当のようだった。

 

「セレアルトさんは、マイルームにまた連れて帰るんですか? 直に目を覚ますと思いますけど」

「目を覚ますまで、寝かせてやってくれ」

 

 一時間も経たないうちに目を覚ましたセレアルトとブレイカーは、二人してマイルームへと向かうのだった。

 

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