Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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特訓

 

 ブレイカーに引きずられるようにアリーナに連れられるセレアルト。

 

「私にそんな役割無理だよ。きっと失敗しちゃうから」

「お前できるって言ってただろ」

 

 確かにセレアルトは可能だと言っていた。隙さえあれば、アキレウスの動きでも捉えられると。だが重要な役を託された途端、セレアルトは子供のように嫌がった。

 自分はそんなことできない。絶対失敗するからと。

 

「なんで、急にやる気がなくなるんだ」

「昔からそうなの。何か任されたり期待されると、絶対失敗してしまうの。だから、絶対無理なんだよ」

 

 どうしてもやりたくないと、校舎の壁にしがみ付かれ、ブレイカーは頭を悩ませる。

 

「この負け犬根性というか、やらないと負けるんだぞ」

「他の方法を考えましょう。絶対その方がいいから」

 

 廊下の柱にへばりついて、動こうとしないセレアルトをどうするべきかとブレイカーが考えていると、廊下を通ろうとしていた女生徒が倒れた。

 

 二人の目と鼻の先で人が倒れたことで、二人は争いを止めその女生徒を見る。周囲に人はいるが誰も彼女を助けようとしない。当然、敵のマスターが倒れていて、助けるメリットなんぞ皆無だ。

 

「大丈夫ですか?」

 

 誰よりも早く、セレアルトが声をかけに行かなければ、ブレイカーも無視しただろうに。

 

「……」

「酷い怪我。それに熱も」

 

 女生徒は、体のいたるところに絆創膏と包帯が巻かれており、文字通り重体だった。手の甲に令呪がありマスターであるのは確定だが、彼女のサーヴァントの気配がない。主の危機にどこをほっつき歩いているのだろうかとブレイカーも見たことのないサーヴァントに嫌悪感が募る。

 気を失っている女生徒は、すぐに目を覚ました。

 

「ん、あ、ありがとう。でも、大丈夫。これから保健室に行くところだった、から」

「そんな傷だらけで、無理よ。肩を貸してあげるから、一緒に行こう?」

 

 女生徒は一人でも大丈夫だというが、疲労からか立ち上がれず、すぐに廊下に倒れ伏してしまう。それを見かねたセレアルトが手を貸す。

 

(セレアルトが善行を施している光景は、妙な違和感がある。だが運命が違えば、善性をアイツも持てたのだろうか)

 

 遠慮する女生徒を助け、保健室に運ぼうとする彼女の背中を見て、世界に背を向け、滅ぼそうとした過去のセレアルトを夢想する。決して重なることのない両者だが、全能でなく、むしろ無能であれば、彼女は人として生きられた可能性に、ままならないものだなと感じる。

 そして、問題を先送りにしながらも、担い手の意思を尊重し、ブレイカーはその後ろに付き添う。

 

――――――――

 

 保健室にたどり着くと、サクラが慌てて女生徒に駆け寄る。

 

「岸波さん!? どうしたんですか。また無茶をなさったんですか?」 

「サクラ。いつもごめんね。また治してもらえるかな?」 

「はい。そこの椅子に座ってください。……あれ、セレアルトさん達は」

「倒れてた私を助けてくれたんだ。そういえば、名前名乗ってないし聞いてなかったね。私は、白野。岸波白野」

 

 落ち着いた様子で自己紹介する怪我まみれのマスター。岸波白野。彼女は、素直に助けてもらって嬉しかったとセレアルトの手を取って感謝を伝えてくる。

 

「私は、セレアルト。そんなに感謝しなくてもいいよ。当たり前のことをしたんだし」

「当たり前の事?」

「誰かが目の前で苦しんでいるなら、できる限り手を貸したくなるもんじゃないかな? 本当に心細い時に、誰かが助けてくれるっていうのは、本当に救いになるから」

 

 セレアルトは、ちらりとブレイカーを眺めた。彼女にとってブレイカーこそがそれだった。

 

「そうだね。でも、こんな状況でそれが出来るのは、とてもすごい事だと思う。みんな自分の事で精一杯のはずだし。だからこそ、私は嬉しかった」

「煽てないで。褒められるのには、慣れてないの」

 

 少し恥ずかしそうにするセレアルトの表情を見た、白野は悪戯気な笑みを浮かべ、執拗にセレアルトを褒めまくった。性格や容姿まで。

 

「眼鏡美少女」

「やめて」

「月の女神」

「もう、いい加減に」

「隠れ巨乳」

「それ褒めてる?」

「可愛らしい眼鏡」

「あら?」

「素晴らしい眼鏡」

「眼鏡が本体になりつつある!?」

 

 岸波と相性は悪くないのだろう。くすくすと笑いながら話していると、サクラが治療が終わったと報告してくれる。体の調子を確かめながら、立ち上がった岸波。彼女は、サクラにお礼を言い、セレアルトにまた会ったら、一緒に食堂でも行こうと誘った。

 誘われたセレアルトは、困りながらも頷いた。

 そして、教会に用事があるからと立ち去ろうとした彼女をブレイカーが止める。

 

「君のサーヴァントは何をしているんだ? 明らかに主の危機的状況だったが」

「バーサーカーは、私の事を思って出てこなかっただけ。主想いのいい子だよ。本当に私にはもったいない位」

 

 サーヴァントに説教でもしてやろうかと思ったが、彼女たちなりの事情があるらしい。なら深入りは不要だと思い、気を付けるようにとだけ告げた。

 

「いい人だったね」  

「それはよかったな。だけども、親しくなればなるほど、別れは辛くなるぞ」

「そうだよね。でも、友達って、憧れてたから。岸波さんみたいな友達ができたらいいなって」

 

 友達。それをこの聖杯戦争で作るべきか。サーヴァントとしては、止めるべきだ。だが、ブレイカー個人としては、主の望みを否定する気にはなれない。

 思い出すのは、主(アルカ)と百貌のアサシン(アン)の出会いと別れか。ほとんどの確率であれと違う結末になる。アルカとセレアルトは違うのだから。セレアルトにいざという時に、岸波を救う力はない。

 しかし、それはせん無き事。

 

「ところで、アリーナに行くこと忘れてないよな?」

「え。でも」

「期待されるのが嫌だって言ってたけどな。ぶっつけ本番でさせるとは言ってない。膨大な練習の果てにやってもらうぞ」

 

 まさかの特訓発言にセレアルトは固まる。ブレイカーは人差し指を立てながら、ある男の言葉だがと語る。

 

「凡俗であるのなら数をこなせ。才能が無いのなら自信をつけよって言ってた男が居た。お前に足りないのはまさにこれだろう。それにお前は数をこなす事は、得意のはずだ。無理やりにでもこなさせられていたんだ」

 

 無限ループを耐え抜く精神性。その普遍ではない異常性こそが彼女の強さだ。無理だと言うなら出来るまでやればいい。ブレイカーは失敗を咎めない。だが、自分の担い手が戦いを諦めるという選択だけは許容できない。自分が死ぬのは構わないが、自分が守り切れないのは納得がいかない。

 

「アキレウス相手でも、百発百中出来るって言うまで、やるからな」

「い、いやーーー」

 

 問答無用と言わんばかりに、ブレイカーはセレアルトを担いで、アリーナに突入した。

 その日のアリーナは、黒と白の針が床や壁一面を埋め尽くして草原のようになり、ブレイカーとセレアルトの足場になったか所以外すべてが、針の筵になったという。

 

 

 

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