Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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食堂

 

 一日中アリーナで過ごしたブレイカーとセレアルト。やった事はもちろん、セレアルトの射撃精度の向上。

 高速で動き回るブレイカーを狙って針を射出し続けるだけだった。ただ、緊張感を出すために何度もブレイカーは石を投擲する。それが命中し、自動防御で防ぐセレアルトだが、怖いものは怖い。

 だが訓練しながらも、ブレイカーは本来のアキレウスは自分よりも早いと言い。自分速度になれるだけでなく、動きの先読みも義務付けた。

 

 それを延々と繰り返し続けた。少しでも気を抜けばブレイカーから投石がくる上に、たまに接近戦を仕掛けてくるのだ。殴られそうになって転んだことも何度かわからない。

 

 超スパルタだった。もう二度と特訓なんて頼まないとセレアルトが泣きべそ書いていた。自動防御機能は、敵の攻撃用ではなく、自分のしごきに耐えられるようにつけたものだと後で察した。

 

「あれだけやったら、もう出来ないなんて言えないだろ?」 

「自信の前に、虚無感が発生してたわよ。それに私に攻撃するとき、妙に慣れてる感じなんなの!?」 

 

 経験はある。一方的にぶちのめした経験が。だが、こっちのセレアルトからすると容赦のなさが恐怖だったのだろう。だが、特訓に熱が入ったのは、セレアルトが確実に自分の踵を狙い打てるようになったからだ。

 

「ちょっとやり過ぎたと思ったから、食堂でその体に悪そうなものを奢ってやってるんだよ」

「プリンは体に悪くありません」

 

 そういいながらバケツプリンを食べるセレアルト。何故おいているのかも疑問だが、注文する方も方である。あきらかに大皿一個に跨るプリン。上にはクリームやら果物が乗っているが、体に悪そうである。見ているだけで口の中が甘くなりそうでブレイカーは注文したブラックコーヒーで口直しをしている。

 一応、プリンだけでなく、デザートより前には、サンドウィッチなども食していたが、明らかに量の配分がおかしい。

 

「ブレイカーこそ、天丼一つで足りるの?」

「食おうと思えばいくらでも食えるが、別に無理に食う必要はないからな」

 

 ブレイカーが日本食を迷わず注文したことをセレアルトは観察していた。どう見ても日本人顔ではないが、日本食の注文や食べ方に違和感がない。食べなれているかのようだった。次は、湯豆腐でも食べるかと言っている。

 

 ブレイカーの情報をまとめると、タクシー運転手、ヘラクレスと戦った事がある、日本食が好き。である。セレアルトは、やっぱり最初の情報が全部掻き乱してくるノイズだと思った。

 

 どこの英霊かさっぱりわからない。日本食好きでヘラクレスと戦った英霊も意味わかんないけど。

 

「おいまて、おかわりするな。バケツプリンのおかわりはヤバい」

「まぁそうかな」

 

 券売機にこっそり行こうとする甘党を止めるブレイカー。そんな彼らの背後に、眼鏡の褐色少女、ラニが現れた。

 

「こんばんわ」

「おう。飯か?」

「はい。アステリオスがお腹を空かせていますので」

 

 ラニに軽く挨拶を交わしたブレイカー。その様子を見てセレアルトが「どちら様」と尋ねてくる。

「図書室で知り合ったんだ」

「はじめまして。私は、セレアルト・グッドフェローと言います」

「ラニと申します。アトラス院で製造されたホムンクルスです。この子は私のサーヴァント、アステリオスです」

 

 ラニがセレアルトに挨拶すると、彼女の背後に巨大な体を持つアステリオスが現れる。

 突然現れたサーヴァントの巨体と気配にセレアルトが思わずブレイカーの背後に回って盾にする。

 

「ますたぁ、ぼく、でてきて、よかった? こわがって、る」

「ミス・セレアルトはいつもサーヴァントを出していましたので、こちらも出すのが礼儀かと」

「対戦相手じゃないんだ。そんなに怯えるな」

「えーと、びっくりしただけで、怖がってるわけじゃないです。よろしくお願いします」

「相席しても?」

「どうぞどうぞ!」

 

 ラニに尋ねられたセレアルトが、散らかしていた机をかたずける。ラニは、礼を言うとアステリオスを残して、食券を買いに行ってしまう。残されたアステリオスはキョロキョロしているがブレイカーを見て「おじさん、きのう、の、おこのみ、おいしかった」と昨日の礼を言ってくる。

 

「それは良かった。けど、ここの料理も中々上手い。楽しみにしておけ」

「うん。おいし、そうだなって、おもってた」

「仲いいんだね? ラニさんとアステリオスさんと」

「昨日会ったばかりだけどな。助けてもらったんだ。礼装の開発で」

「聞いてないんだけど!?」

 

 まさか別のマスターの協力があったとは思わず、自分の纏う礼装を見て驚く。そんな二人の会話を聞いてアステリオスがおかしそうに笑っている。そんな顔を見てセレアルトも彼に笑いかける。

 

 セレアルトとアステリオスが笑いあっていると大きなお盆を二つ持ったラニが帰ってくる。彼女の前に置かれた料理は、エジプト料理で、アステリオスの前に盛られたのはギリシャの料理だろう。

 

「私まだ食べたりないや」

「俺ももうちょっと食いたい」

 

 どちらも非常においしそうで、セレアルトとブレイカーもいそいそと食券を買いに行った。盛大に食べたはずのセレアルトは、ラニの食べている料理を買ってきてブレイカーは、宣告通り湯豆腐を買ってきた。

 

 4人で食卓を囲み、食べている。

 

「ラニさんこれ美味しいわね」

「故郷でよく食べていました。師も大好物で。それとラニで結構ですよ。ミス・セレアルト」

「あ、それなら、私も……アルトでいいよ。セレアルトだと呼びにくいでしょ?」

 

 突然のあだ名で呼んでくれムーブにラニは少し考えるそぶりをしたが。

「アルト。ふむ、確かにその方が響きがいいですね。わかりました、ミス・アルト」

「ミスもいらないんだけど。うん、はい」

 

 女子たちは仲が良く。一方でアステリオスがブレイカーの湯豆腐を見て興味深そうにしていたので、彼が少し分けてあげた。火傷しそうになりながらも食べたアステリオス。

 

「なんか、うす、あじ。でも、やさしい、あじ、する」

「俺もその肉くれよ。食欲刺激されて仕方ない」

 

 ブレイカーもアステリオスから肉料理を貰ってかぶりつく。その旨味に舌鼓打っていた。夜の食堂で賑やかにしていると、新しい客人たちが舞い降りたらしい。

 

「見て見てあたし(アリス)。でっかいお牛さんだわ」

「駄目よあたし(ありす)。お食事の邪魔をしては」

「見に行きましょう。見に行きましょう。カエルさんはどこかしら」

 

 食堂のドアを勢いよく開けて入ってきたのは、手足に球体関節のようなアクセントのある白いドレスと黒いドレスを身に纏った、可愛らしい双子の少女たちだった。ドレスの色以外に違いはなく、同じ顔をした10歳前後の少女に見えた。

 明らかに聖杯戦争に参加する年齢に見えないが、彼女たちは、食堂でひときわ目立つアステリオスに迫ると、その姿を見上げていた。

 

「何この子達。すっごい可愛いわ」

「まぁ同意だけど。嬢ちゃん達、何の用だ?」

 

 セレアルトが二人を見て、目を輝かせている。ブレイカーは一応警戒しないといけない関係上、多少ぶっきらぼうに接する。それでも泣かれない程度に声色は優しい。

 

「私達、夜のお茶会の予定だったの」

「けど、先にお茶会が開かれててもうびっくり」

「そしたら牛さんが居たの。角、本物?」

「うん。ほん、もの。さき、とがってる、き、を、つ、けて」

 

 アステリオスが床に座っているとはいえ、二人が背伸びしても角に手は届かない。けれど角を持っている彼を不思議そうに見ている。すると、観念したのか伏せるようにして角を触らせてあげる。白いドレスの少女は、角に触ってその不思議な感触を楽しんでいる。一方で黒いドレスの少女はブレイカーたちの食卓に並んだ多種多様な料理に興味がありそうである。

 

「よかったら、一緒に食べる? いろいろ頼み過ぎてたの。ラニもいいかな?」

「構いませんよ。こちらの席にどうぞ」

 

 ラニとセレアルトの二人はそれぞれ席を用意してあげ、二人の少女はお礼を言いながら、席に座った。6人の男女が集まった食卓。本当に聖杯戦争の会場なのか疑わしいくらいだが、小さな少女を邪険に扱う残酷さは誰も持っていない。

 

「ラニ。ぼく、こども、そばに、いない、ほうが、いいかな?」

「貴方はアステリオスです。あの怪物ではありません。英雄アステリオスです。楽にしていていいでしょう」

 

 アステリオスは子供たちの傍にいてはいけないと思ったらしい。けれど、ラニは彼の言葉を否定する。その否定にどこか安心したのか、アステリオスは静かに座った。

 

「おじ様達は、お茶会が好きなの?」

「特に予定はなかったけど結果的にこんな席になった。食べたいものがあるんなら、買って来てやろうか? 金は持ってないんだろ」

「あたしたちはお茶とお菓子がいいわ」

「私はプリンが食べたいぐえ」 

「嬢ちゃんは了解。ベアラー、お前は白湯だけだ」

 

 黒いドレスの少女の注文を聞いたブレイカー。どさぐさに紛れようとしたセレアルトにチョップをお見舞いして、再び食券を買いに行く。お菓子となると購買も行った方がいいかと思ったが、アフタヌーンティセットなるものがありそれを購入した。

 それを並べてやると、二人の少女たちは嬉しそうにそれを味わっていた。

 

「あたし(ありす)は、ありすっていうの。とても素敵なお茶会ね」

「あたし(アリス)は、アリスっていうわ。」

 

 ラニが双子の名前を聞いたのだが、二人とも同じ名前らしい。これでは呼び分けできないなと思い、セレアルトが何かを考える。

 

「白ありすちゃん、黒ありすちゃん……だめ?」

「こいつらが着替えたどう判断するんだ?」

「ぶふ」

 

 アステリオスに笑われてしまったセレアルト。お腹を押さえながら我慢しているようだが、まったく我慢できていない。ラニも他所を向いているのであれは内心笑っているのかもしれない。それからもありす達がお喋りをして、最終的に全員で紅茶を飲むことになった。

 

「お姉ちゃんは、あたし(ありす)と同じなんだね? この前は見つけられなかったけど。あたし(ありす)ともお友達になってくれる?」

「いいよ。約束する」 

「約束ね。やったわあたし(アリス)。素敵なお友達ができたわ」

 

 ありすの言っていることは理解できなかったが、友達になってほしいという言葉だけは賛成したセレアルト。指切りを交わし、二人で笑いあっている。一方でブレイカーは自分の隣でそんな二人を眺めている黒いアリスを見た。

 こっちのアリスは、多少大人っぽいと言うか冷静な面がある。

 ありすの笑顔に嬉しそうで、少し憐憫をはらんだ表情をしている。

 

 白いアリスは、ラニやアステリオスとも指切りを交わしていた。最後にブレイカーの所までくる。

 

「おじさんとの指切りはまた今度だな。夜が深くなった。いい子はおうちに帰って寝ないと狼に食べられてしまうぞ」

「あらいけない。もうそんな時間」

「あたし(ありす)。そろそろお茶会もお開きだわ」

 

 もう時間が遅いという事もあって話を切る。それは拒絶だったのだろうか。だがありすは、ブレイカーの童話のような語り草が気に入ったのか、ありす達は笑いながら「また遊んでね」と良い腕を振って食堂を後にした。

 

「我々も随分長居してしまいました。そろそろ解散としましょう」

「うん。ラニやアステリオスもまたね。片づけはやっておくから」

「うん。また」

 

 ラニとアステリオスが食堂を後にした後、ブレイカーとセレアルトで後片付けをして、マイルームに戻った。

 今日は特訓以外はいい事があったとご機嫌な様子のセレアルト。その喜びが表情以外からも溢れていた。此処は聖杯戦争の真っただ中。だが、その中でも救いや喜びはあるのだろう。

 それがのちに訪れる深い絶望への切符だとしても。

 

「楽しかったか?」 

「うんとっても。今日だけで友達増えちゃったわ。昔から友達作るのが夢だったんだ」

「月に来る前はいなかったのか?」

 

 ブレイカーの何気ない質問。その質問をされたセレアルトが固まり、額を片手で押さえながら狼狽える。

「あれ? なんで、いや、そんな、あれ? いた? いない? そもそも、わたしって、あれ?」

「どうした?」

 

 ブレイカーがセレアルトの様子を心配すると、校舎中にノイズが入った。突然のノイズに警戒を強めるブレイカーだったが、先程まで狼狽えていたセレアルトの様子が一変。

 

「あ、そうよ。うん。ごめん、あんまり覚えてないや」

「覚えてないって、そんなことあるか?」

 

 再び質問すると、再び校舎にノイズが走る。

 

「何か言ったかしら?」

「……いや、何でもない。今日はゆっくり寝て、明日に備えるか。そろそろ二個目のトリガーキーが出てくるころだろう」

 

 ブレイカーは、このノイズがセレアルトの記憶に関する現象だと理解した。今下手に手を出せば、面倒な事になりそうだと諦めた。いずれ対処はするが、今はセレアルトに負荷をかける訳にはいかないのだから。

 

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