Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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コロシアム

 

 アキレウスとの決戦が始まる。

 

「ライダー!! 最初から宝具全開だ!」

「ばてるなよシンジ!」

 

 マスターの采配に異はないらしく、馬車を召喚しそれに跨る。ブレイカーもそれを阻止しようと接近していたのだが、先に馬車が走り出してしまう。それにより距離を取られてしまう。

 

 コロシアムの中心で、アキレウスの狩る戦車を観察しながら、構えを取るブレイカー。容赦なく宝具を使うとは予想外だった。だが、シンジもそれなりに考えてきたのだろう。己のサーヴァント活かす方法を。

 

 外周を回りながら、ブレイカーに接近する隙を探るアキレウス。以前ほどの速度は出せないが彼の足は十分俊足と言える。だが、それではブレイカーに届かない。だからこそ、速度と火力を両立できる戦車で轢き殺す。その案にライダーも同意した。

 ブレイカーは消耗戦では、手痛い一撃を貰いかねない。あるのは一撃必殺。それは彼の宝具で可能だ。

 

「よそ見してる余裕があるのかな!?」shock(32)

「そっちこそ!」apocalypse(13)

 

 サーヴァントたちの争いの横で、マスター二人も争っていた。シンジは前回と同じように、魔力弾を放ってセレアルトを爆撃していく。対するセレアルトは、礼装の防御力を頼りに、シンジ目掛けて破壊の針を発射する。

 

 威力はシンジの方が上だが、手数と連射速度ではセレアルトが勝る。

 一発放たれた魔力弾にセレアルトが放った針が数本刺さり爆散。更に発射された針が、シンジの肩を貫く。

 

「痛!なんだよこんなもん。あれ、抜けない」

 

 刺さりはしたがダメージはほとんどない。そこで針を抜こうとしたシンジだったが、針が抜けないのだ。そして、刺さった箇所から、少しづつ破壊の魔力が浸透し、彼の体の傷を広げていく。それが良くない事だと分かったが、どうやっても抜けない。

 強引に如何にか一本を力づくで引き抜いたが、傷口が広がってしまった。

 

「何日も時間があったから、針に返しをつけたの。結構嫌でしょ?」

「ふざけるな!」

 

 シンジが怒りに任せて、魔力弾を乱射する。それを対処することはできないセレアルト。大人しく礼装の自動防護で受け止め、地面を転がる。しかし、戦意は死んでおらず、爆炎に紛れて発射した針。

 

 それはシンジの両足に突き刺さる。両太腿に刺さった針だったが、シンジは今度は一切気にすることなく魔力弾を撃ってくる。

 

「痛覚は遮断できるんだよセレアルト。そんな攻撃で僕を倒そうなんて百年早いんだよ!」

「くぅ」

 

 シンジとセレアルトの攻防の横で、ブレイカーとライダーの戦いも苛烈を極めていた。

 

ーーーーーー

 

 迫りくる戦車の走行を紙一重で回避していくブレイカー。回避の際に、何度も戦車を引く馬などに攻撃を仕掛けているが、魔力の障壁を張った彼の宝具『疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)』は、生半可な攻撃では突破できない。

 

 戦車に追われながら、ブレイカーは最高速度でコロシアムを駆ける。壁を走り観客席や天井などを足場に逃げるが、苛烈な攻めを繰り返すアキレウス。逃げ切るのは不可能だろう。

 

「ふぅ 

  

 ブレイカーは、戦車の接近に空中に回避する。しかし、彼が次に足場にしようとした崩れたコロシアムの破片を、アキレウスの槍の投擲が襲う。空中に逃げたブレイカーよりも槍が早く、その槍が次の足場を砕いてしまったせいで着地できず、空中に投げ出される。

 

「悪いな! クサントス、バリオス、ペーダソス、行くぞ。命懸けで突っ走れ! 我が命は流星の如く!『疾風怒濤の不死戦車(トロイアス・トラゴーイディア)』!!」

 

 空中で回避不可能。そこに全力で宝具の真名開放を使用した戦車が迫る。まさに流星のような疾走がブレイカーを一撃で粉砕せんと迫る。ライダーは焦っていた。自分の戦車は確かに最強だ。だが魔力の消費が激しく、マスターであるシンジの負担が計り知れないと。

 だからこそ短期決戦を望んだが、ブレイカーは戦車相手にも逃げ遂せる実力者。ここぞという場面で無理をする以外、仕留める手段がなかった。

 

 だが完全に嵌った。これは避けられない。

 

―――――いや、ブレイカーは避ける気などなかった。

 

 その右手には、赤い手甲が装着されていた。そして、その手甲には5つほどの宝石のようなものが嵌められており、其処にはすさまじい魔力が充填されてた。それも彼の宝具である白と黒の破壊をもたらす魔力が。

 

「『偽装宝具開帳・白黒き銃身(アルターフェイカー・グレイバレル)』」

 

 赤い手甲の宝石に充填された魔力がブレイカーの指先で圧縮され、発射される。自らの右腕を銃身とし、非戦時に充填しておいた魔力を発射する。いうなればそれだけの疑似宝具。だが素材に使われたのは、別世界で軍神マルスと呼ばれる神霊の本体のパーツ。それだけでも神造兵装ともいえる。それを彼が好き勝手に改造したのがこの宝具である。宝具開発に当たって、イメージしたのは生前、自分を傷付ける事の出来た超兵器である。

 素材が優秀なため、彼の破壊を纏った魔力を溜めておけるという破格の耐久性を誇っている。だがそれでも全力の展開は不可能で、彼本来の宝具の方が何百倍も強い。

 だがこの宝具の利点は一つだ。

 

 最大稼働で7日に一回程、それ以外なら3日に一度の使用であればマスターであるセレアルトへの負担がないのだ。これはセレアルトの魔力不足という彼らの陣営の抱える欠点をカバーする事が出来る。 

 

 放たれた白と黒の魔力が濃縮された魔力砲は、正面から迫る馬車を引く馬達を貫いた。真名開放による魔力の壁での防御も貫いた一撃。従者であるアキレウスだけは、空中に飛び上がることで回避するも馬車は、現界を保てずに消滅。

 ブレイカーを轢き殺すことは叶わなかった。そして、空中に飛び上がったアキレウスとブレイカーは、互いに空中で向き合う。だが、上空を取っているのは、何処からか盾を取り出したアキレウス。

 

「見事だブレイカー。だが、俺の宝具の数を見誤ったな!」

 

 落下しながら、アキレウスは盾を掲げる。それは彼の持つもう一つの宝具。これまで一度も見せたことのない切り札だった。

 

――――――

 

 一方でシンジとセレアルトの戦いも佳境に差し掛かっていた。両者ともに自分のサーヴァントを信頼している為、全力でぶつかっていた。シンジの攻勢は徐々に収まりつつあり、一方でセレアルトの攻勢は苛烈になっていった。

 

「な、。なんで、倒れないんだよ!」

「負けたくないからよ!!」

 

 シンジは気が付いていなかったが、ライダーの宝具の発動によって多く魔力を消耗し、彼の魔力の底も見え始めていたのだ。だが、それでもセレアルトと同等。負けるはずがない。

 

 現にそのはずだったのだ。本来であれば。だが、セレアルトは戦いが佳境に差し掛かると、その動体視力でもってシンジの攻撃を回避し始める。時間経過でアキレウスの踵すら見切る動体視力。それをもってすればシンジの攻撃を避けることなど容易かった。

 そして、シンジの体に針を打ち込んでいく。シンジは痛みを遮断していて、一切怯まない。

 

「当たれ! 当たれっての!?」 

「絶対に、負けないんだから!?」

 

 シンジ相手にセレアルトは駆け出す。これまでと違い接近戦を挑んだ結果。シンジは焦って魔力弾を発射するが、それらはセレアルトは寸でで回避する。そして一気に距離を詰められた事に、シンジは焦って、魔力弾を至近距離で放ってしまう。

 セレアルトは避けない。それは自動防御で防げるからだ。だが、シンジはそうではない。

 

 魔力弾がセレアルトの自動防御と衝突し爆発が起きる。その衝撃で両者吹き飛ばされるが、セレアルトはすぐに起き上がる。

 

「くそ、なんで、たてない、くそ、え、嘘だ。ぼ、僕の腕が!?」

 

 至近距離での爆発。さらに針で体中を貫かれ、破壊の魔力で脆くされていたシンジの体は、右足と左腕を失っていた。痛みを感じていなかったから気が付いていなかったが、起き上がれなくなったことでようやく現実を理解する。

 痛みは感じない。だが自分の手足が吹き飛んでいる光景と出血を見て、泣き叫ぶシンジ。

 

「あぁ!!嫌だ、死にたくない! たすけて、たすけてらいだぁ」

 

 その姿と苦痛に歪む顔を見たセレアルト。一瞬だけ無表情になるが、次の瞬間、彼女は動けなくなっていたシンジにさらに針を発射した。

 

 

――――あぁ。もう堪らないわ。

 

 

 針はシンジの残っていた右手を床に縫い付け、動けなくする。起き上がる事も出来ず、パニックになっている彼を見て、セレアルトは嘲笑した。

 

「ぷ、ふふ、うふふふ。あはははははは!! 無様ねシンジぃ」

 

 これまでの彼女からは想像も出来ないほど邪悪な笑みを浮かべ、シンジを見下ろすセレアルト。動けなくったシンジを甚振るように針を飛ばし、彼を針の筵に変えていくセレアルト。

 

「まるで蟲ね。貴方には地を這う虫が似合ってるって思ってたの。本当にお似合いよシンジ。うふふふ、あはは」

 

 戦闘の高揚感か、勝利が確定したことでタガが外れたのか不明だが、セレアルトがこれまで見せたことのない凶暴性と加虐性。それらが合わさって、シンジにとって何よりも恐ろしい悪魔が目の前にいる。

 酷くご満悦と言った様子で苦しむシンジを観察するセレアルト。だが、シンジが冷静になろうとしているのを察したのか、酷く不機嫌な顔になる。

 

「もっともっと聞かせてよ。情けない声を。ねぇねぇ! ねぇねぇねぇー!」

「ぐあ、やめ、いた、やめて、うぅうう、ううう」

「あぁいいわ。いい。それでこそシンジ。私のおもちゃ。ずっと苦しんで、苦しんで、うふふ、私を愉しませて頂戴!」

 

 動けないシンジを踏みつけ、唯一動いていた右足を針で貫き続け、関節から簡単に引きちぎったセレアルト。その暴走は止まるところを知らないようだった。次は右手を千切ってあげると宣言する。

 

 そして、本当にしようと思った時、本気で泣き出し始めたシンジ。罵声も悪態もつけず、絶対的な力にただ、泣くしか出来なくなった。その様子は、本当に幼子のようで、その瞳から静かに流れる涙を見て、セレアルトの心臓が酷く傷んだ。

 そして、先程まで全身を支配していた高揚感や興奮が綺麗に冷めていく。

 

(なんで、今の、私がやってたの? いや全部覚えてる。けど、何で、私こんな。私こんなの私じゃない。さっきのは何なの?)

 

 先ほどまでの自分の行いと言動に恐怖覚え震えるセレアルト。だが、このままじゃいけないと、シンジに駆け寄り、彼の傍にひざまずくと、呆然と泣くしかないシンジの瞳から流れた涙を拭ってしまった。

 

「ん? 何を、ぐす、えぐ、ぐす、もう、いじめ、ないで」

「……わから、ない。ごめんなさい。ごめんなさい、こんなこと、するつもりじゃ、ごめんね、ごめんね」

 

 明らかに自分はおかしくなった。シンジが憎くとも、こんな残酷な事をするつもりじゃなかった。セレアルトは、魔術を解除し、シンジを開放する。そのまま謝りつつ、距離を離してしまった。

 

 急に大人しくなり、謝ってくるセレアルトにシンジもどうしていいのかわからなかった。だが、彼らの目と鼻の先で戦う二人の英霊の決闘を見守るしかなかった。

 

 マスター同士の決着はついた。

 

 

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