Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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教会

 

 決戦場から退出したセレアルトとブレイカー。

 校舎に戻った時、赤い服に身を包んだ少女が現れる。

 

「あら、あなたが勝ち残ったのね。アジア屈指のゲームチャンプと言っても命のやり取りなんて未経験だろうしね。遊び気分で参加した魔術師の末路って奴? どう? 見っともない死に様だった?」

 

 遠坂凜とった言う少女は、セレアルトに気安く話しかけた。確かにアキレウスの正体を突き止めるヒントは彼女によって齎された。けれどセレアルトは、肩に置かれた手を払いのける。遠坂凜の顔には、明らかに侮蔑を込めた笑みが浮かんでおり、それが何より不快だった。

 

「彼は、立派だったわ。最期の姿は、小さな英雄そのものだった。そういうあなたは死ぬ前に、ご立派に死ねるのかしら?」

「あなた、生意気ね。ランサー……、殺しなさい」

 

 手を払いのけられた凜。少し面食らったようだが、まるで蚊を殺せというくらい軽く殺戮を命じる。命令と同時にセレアルトの前に現れ、槍を突き刺す赤黒いランサー。ブレイカーは、その槍を受け止めようとするが、魔力が限界に迫っていたため、力負けし、吹き飛ばされる。その際に、セレアルトを抱えて距離を取ったのは戦闘経験のなせる業か。

 

「どういうつもりだ」

「どういうつもりも何も、気に入らなかったから、殺そうと思っただけよ。私に向けたあの軽蔑の目に対して、自害を命じなかっただけでも温情だと思うのだけど?」

 

 遠坂凜は何も悪びれずに、自分の爪を眺めながら告げる。一方でランサーは酷く納得がいかない表情はしているが槍を収める気はないらしい。

 ブレイカーとセレアルトは、遠坂凜の行動に、明らかに違和感があった。先日は、戦いを避けていたのに、今は積極的に襲ってくる。その理由はなんだ。

 

 そして、もう一点可笑しな点がある。

 

「おかしいな。何故戦闘行為を中止する警告が出ない」

「システムを弄ったのよ。まぁ数分だけけどね。ランサー、一度しか言わないわ。その無礼者を殺しなさい」

「お前が敵だと言うなら、やってやるよ」

 

 ランサーは、槍を構え突っ込んでくる。決戦後で消耗し宝具も使用できない。全く想定外の戦闘で、危機に陥るとは思っても居なかった。

 

 セレアルトを抱え、校舎を飛び出し、教会の前まで逃走するも、ランサーに追いつかれてしまう。

 

「ベアラー。少し無理をさせる。我慢できるか?」

「うん。お願い」

 

 セレアルトの魔力はもう限界だ。これ以上は彼女の生命活動にかかわる。けれど、戦わねば殺されるだけ。それなら戦うしかない。ボロボロの体に鞭うって戦うしかない。

 

 そんな時、教会の前の広場で不器用ながらも花冠を作ってラニに渡していたアステリオスたちが目に入る。彼らはすぐに状況を察し、立ち上がる。

 

「ミス・アルト。加勢いたします。アステリオス」

「うん。ぼく、たすけ、る!!」

 

 ボロボロのブレイカーたちを見かねて、ラニとアステリオスが加勢してくれた。両腕に巨大な斧を持ったアステリオスがランサーに猛攻を仕掛ける。それを回避したランサー。巨体から振るわれる怪力は、見事なもので、その一撃が全て必殺の域だろう。地面が大きく砕け、破片が飛び散る。

 アステリオスがブレイカーたちを庇うように立ち塞がり、ランサーが不機嫌そうに攻撃を仕掛ける。それを見切ったアステリオスが豪快に斧を振るい、ランサーがそれを受け止めるも、パワーで押される。

 

「何故邪魔をする」

「原則、校舎内の戦いは禁止のはずです。それに、彼女たちには、……まだ死んでほしくありません」

「ひきょ、う、ゆる、さ、な、い。それ、に、おじさん、とも、だ、ち!」

 

 明確な仲間意識で味方をしてくれるラニたちにセレアルトは泣きそうになる。さらに、騒ぎを嗅ぎつけてか、白と黒のドレスを纏ったありすとアリスまで集まってきてしまった。彼女たちが現れると、セレアルトとブレイカーを守るように半透明のレンガの家のような結界が発生する。

 

「たいへんだわ。あたし(アリス)。お姉ちゃんたちが、狼さんに襲われてるわ」

「大変、早くレンガの家を立てなくちゃ」

 

 双子がアステリオスと一緒にランサーに敵意を向けているようだ。ただ、あくまで遊びの悪者として見ているような軽さだが、二人も味方と見て間違いないだろう。

 

「あら、何この状況」

 

 ランサーを追って遠坂凜が歩いてくるが、見るからに四面楚歌の状況に呆れているようだった。

 

「ここって殺し合いの場じゃなかったかしら? どうして、どいつもこいつもなれ合ってるのかしら。はぁ。めんどくさい」

 

 確かに異様だろう。全員此処にいるという事は一回戦の相手を倒しているという事だ。つまりは全員で殺し合いをする覚悟が決まっているのだろう。だが、今こうして3つの陣営が手を組んでしまっている。協力とは、無縁の聖杯戦争で。

 

ーーーーー

「何事かね」

 

 さらに協会の扉が開き、老齢の男性が現れる。男性は騒ぎに気が付き出てきた様子で、周囲を見渡す。

 明らかに遠坂凜vs3陣営という構図である。

 

「ここは争いを持ち込む場ではない。教会では静かにするものだ。君らの神がどのようなものかは知らないがな」

 

 男性はただ静かに教会は、祈る場だと忠告をいれる。

  

「そうね。神を崇拝するのが神殿の、そして人の役割だものね。けれど此処の宗派など私の知った事じゃないわ」

 

 凜はそう言って、老齢の男性に向かって左手を伸ばし金色の矢のような魔力を放った。明らかに暴走している。しかし、発射された男性は一切身じろぎせず、鋭い眼光で彼女を睨む。

 

「おっと、随分なご挨拶だな。ダンの旦那。応戦してもいいのか?」

 

 ダンは動かずとも彼のサーヴァントが現れ、手に持っていた赤い大弓でもって凜の攻撃を軽く弾き、指示を仰いでいる。褐色の肌と生気に満ちた瞳が特徴の青年だが、その肉体は鍛え上げられており、その纏う気が生半可な英雄ではないと物語っている。

 

「遠坂凜だったな。君はこのような事を仕出かす軽率な性格ではなかったと思うが」

「あら? 凜、いや私の知り合いだったのね? もういいわランサー。そろそろSE.RA.PHを誤魔化すのも限界だし。今日は見逃すわ。よかったわね寿命が延びたわよ」

 

 ランサーを連れて去っていく凜。それを誰も止める事はない。むしろ、止めてしまっては、もっと恐ろしい事が起こりかねないと直感した。その生存本能からくる沈黙だった

 

――――――

 

「あの、ありがとう皆。それに、あの、ありがとうございました」

 

 凜たちが完全に消えるとセレアルトが皆にお礼を言い、結果的に助太刀してくれた老人とアーチャーと思わしきサーヴァントにも礼を言う。

 

「気にすることはないさ。どう考えても校舎で仕掛けてきたアイツが悪い。だろ、ダンの旦那」

「その通りだ。君は気にすることはない。君たち全員も決戦を終えたばかりだろう。それぞれ身と心を休める事をお勧めしよう。では、失礼する」

 

 老人とサーヴァントは教会を後にした。もう一歩も動けないとセレアルトが床に座り込んでしまう。

 その様子をありす達に笑われたが、セレアルトは苦笑するしかなかった。だが、唯一違ったのは、セレアルトはありす達が近くにいれば可愛がろうと撫でたりしていたにもかかわらず、今日は触れる事を恐れているようだった。 

 シンジを殺した事実に対するショックもあったが、何よりも彼との戦闘中に現れた醜い自分の加虐心が怖かったのだ。目の前の可愛らしい少女たちにも牙をむいてしまうのではないかと考えると、気軽に触れられなくなった。

 

「お姉ちゃん気分が悪いの?」 

「ちょっとね。今日はもう帰るわ」

 

 ブレイカーはセレアルトの異変を察して、彼女を抱え直して、全員に頭を下げた。

 

「「またね~」」

「またね」

 

 ありす達は転移してどこかへ行ってしまう。

 

「こんなことがありましたがもう一度顔を見られて、喜ばしく思います。何故、遠坂凜があのような行動に出たかは不明ですが、気を付けてください」

「うん」

 

 遠坂凜の行動は、彼女を知る人物たちから違和感があるらしい。セレアルトは特に交友はなかったが、彼女の瞳を見た時に感じる不快感は何だったのかと夢想するが、いよいよ精神的な疲労が限界に達して眠ってしまう。

 

 





 この作品のラニは、アステリオスを召喚した影響で、感情が既に芽生えてますね。
 
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