マイルームに戻ってきたセレアルトは、少しだけいつもの調子に戻っていた。
ブレイカーはあえて声をかけず、彼女の後ろについて校舎を歩いていた。今日は二回戦の対戦相手が発表される日のはず。
その通知をただ待つのも暇だというので、校内を巡りながら昨日助太刀してもらった面々に会ったらお礼を言いに行くという。
その対戦相手が、知人でなければいいのだが。そう思っても口にはしなかった。
「あれ? 対戦相手が決まったって連絡が来たよ」
「誰なんだ?」
「今回は校舎に張り出してるって。見に行こうか」
一回戦の時の怯えは消えていた。強敵との戦いがセレアルトの意識を成長させたのは間違いないだろう。
二人で掲示板まで辿り着き、表示された名前を確認する。
『二回戦対戦相手 セレアルト・グッドフェローvsダン・ブラックモア』
そう記されていた。ダンという人物に思い当たるのは、昨日教会で助太刀してくれた老人だろうか。
二人が老人を想い返していると、背後にダン・ブラックモアが現れる。彼も同じく対戦表を身に来たのだろう。そして、対戦相手と向き合うことになる。
「ふむ、君が対戦相手か。やはり若いな」
「……」
「だが、強い意志を感じさせる目だ。一回戦を超え、戦う覚悟は、整ったという事か。……名乗っていなかったなダン・ブラックモアだ。此度は君の対戦相手となった。私の信条は正々堂々と決着をつける事を望む。だが君にそれを強制するつもりはない。ただこの7日間でベストを尽くす事だ」
「セレアルトです。そのつもりよ」
ダンの鷹の目のような鋭い眼光にもセレアルトは怯える事はない。
(この爺さん、軍人かなんかだな。明らかに戦うもの眼をしている。それに、従えているのはア―チャーか)
ブレイカーも目の前の老人を観察し情報を整理していく。佇まいなどから、彼が戦士だという事は一目瞭然だ。それも指揮官ではなく、明らかに現場慣れしている軍人のそれだろう。
「では、私は失礼する」
立ち去る老人を見送る二人。彼がいなくなると、セレアルトは大きく息を吐いて緊張をほぐしている。そして、期待を込めた目でブレイカーを見上げている。言葉はなくても彼女の言いたいことはわかった。ぐしぐしとセレアルトの頭を撫でるブレイカー。
セレアルトも少し嬉しそうに身を任せている。
「立派だった。随分と頼もしくなったなベアラー」
「へへ。けど、あのお爺さん、なんか魔術師っぽくなかったね」
「目敏いな。佇まいから見るに、軍人かなんかだ。ただ覚悟しなければいけない。お前の次戦うのは、戦いが何かも知らない子供じゃない。相手を殺すことを仕事にしていた職業軍人。戦闘経験や技術に関しては、お前が足元にも及ばない老兵だ」
間違いない。彼はセレアルトにとってシンジ以上の強敵だ。一度だけしか見なかったが、彼のサーヴァントもまた、アキレウスと変わらないトップサーヴァントだろう。アーチャークラスというのは、曲者が多い。弓だけが武器だと考えるのは危険。
そして、逆に弓だけを武器とする場合、その危険度は計り知れない。
三騎士の中で弓兵を下に見るサーヴァントは、結構多いだろう。だが、ブレイカーは数多の英霊との戦闘経験から、アーチャーが2番目に苦手である。ちなみに一番はルーラーである。
アリーナに入った場合も、常に狙撃に警戒しなければいけないだろう。
そんな考えを他所に、セレアルトの端末が光り、1つ目のトリガーキーがアリーナに配置されたと通知が来た。
「来たよ」
「体調は万全か?」
「大丈夫」
「さっさとトリガーキーをゲットして、情報収集やら作戦会議の時間を作るか」
「プリンタイムも作ってほしいわ」
「さて、行くか」
無視した瞬間、セレアルトに背中をビンタされるブレイカー。この甘党マスターの食生活をどうするべきか本気で迷い、健康管理AIだというサクラへの相談をしようと胸に誓った。