Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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海魔

 

 ダンが狙撃銃の引き金を引き、銃声と共に放たれた弾丸は、セレアルトではなく、彼女に背後から襲い掛かろうとしていた蛸とヒトデが混ざったような怪物を貫いた。

 

 特殊な弾丸なのか、攻撃がヒットした化け物は、跡形もなく吹き飛んだ。その体液が、セレアルトに掛かりそうになるが、自動防御の礼装が起動し障壁がその体液を防いだ。

 

 だが、セレアルトは背後から突然現れた怪物に驚いて尻もちをついてしまった。

 そんな彼女を狙い、遺跡の水辺から姿を現した2匹の蛸のような怪物が襲い掛かる。

 

「アーチャー」 

「了解」

 

 そのうちの一体はダンの命令で矢を放ったアーチャーによって消し飛ばされ、残った一体は、ブレイカーの手刀でバラバラに粉砕された。

 

 突然の乱入者にアーチャーとブレイカーの両名は、警戒を強め、戦闘自体が中断される。それとほぼ同時にアリーナでの戦闘中断の防壁が発生する。

 

「この乱入者共が何者かはわからないが、此度の勝負は一度預からせてもらおう」

 

 ダンは、少し不機嫌そうにアリーナを後にした。取り残されたブレイカーとセレアルトだったが、周囲を見渡せばウゾウゾと蛸の怪物がうごめいている。アリーナに点在するエネミーとは違う怪物。

 

「引くぞベアラー」

「けど、まだトリガーキーが」

 

 セレアルトが、本来の目的を果たしてないと慌てるが、しれっとブレイカーは懐からトリガーキーを渡す。見たことのある流れに、セレアルトが訝しげな眼をする。

 

「戦闘中にどさぐさに紛れて盗ってきた」

「手癖が悪すぎる! っていうか、いっぱい出てきたぁ! 早く帰ろう!」

 

 不気味な怪物に囲まれるのは嫌なのですぐに立ち去ろうと告げる。それに同意したブレイカーが彼女を抱えてアリーナの出口へと走り出した。彼らが去った後も、アリーナには蛸の怪物が増殖を続けていたのだった。

 

-------

 

「なんだったのあれ」  

「海魔って奴だな。昔見たことがある」

「何処で!?」

「うーん、森?」

「もりぃ!? 海とか川じゃなくて?」

 

 ブレイカーは第四次聖杯戦争の事を思い出しながら、先程の怪物がキャスターの召喚した化け物だと考えていた。第四次聖杯戦争のキャスターが召喚していた怪物と瓜二つの怪物たち、それらが何故月に現れたのか。

 

 その答えはブレイカーが月にいる理由と同じだろう。

 

(あの男が月の聖杯戦争に召喚されている。または、あの宝具を持った別の英霊がいるか)

 

 聖杯戦争である以上、サーヴァントとして召喚されるのはおかしい事ではない。月の聖杯戦争は、サーヴァントを触媒ではなく、相性の良いサーヴァントが自動で選ばれるという。ならあのキャスターと相性がいいマスターがいたのだろう。

 しかし問題は、あのキャスターの海魔が自分たちのアリーナにまで現れている事だ。

 

「一先ず監督役に文句でも言いに行くか?」

「クレームで何とかなるの?」

「さぁ。別にアリーナに入る必要はないから、放置でも構わないが……ん?」

 

 アリーナに余計なものが現れる現象を解決するべきか放置するべきか。ブレイカーが真剣に悩んでいると、彼の背中に勢いよく何かがぶつかる。それが何か振り返ると、其処にいたのは黒いドレスを着たアリスだった。

 

 いつものように白いアリスは傍におらず、楽しそうな表情ではなくボロボロに泣き出していた。

「ど、どうした? 何かあったのか?」

 

 ボロボロと大粒の涙を流しながら、ブレイカーの衣服を掴むアリスの様子に、ただなるものを感じたブレイカーがしゃがみながら訪ねた。

 

「おじさま、おねえちゃん、お願い。あたし(ありす)を助けて」

 

 大泣きを始めてしまった子供を隣にいたセレアルトがどうにかあやそうとするが、少女は首を横に振るだけで泣き止まない。それが途轍もない非常事態だと察したブレイカー。彼女を抱き上げ、「何処だ」と尋ねる。すると廊下の先を指さした。

 

「ベアラー。非常事態だ。いいな?」

「良いも何もないわよ。行こう」

 

 アリスを抱えながら、彼女の案内通りに進んでいくと教室があり、其処はマイルームの入り口だった。そして、アリスは慌ててマイルームに入っていくと、すぐに白いドレスのありすを連れて出てくる。

 だが、白いドレスのありすの様子がおかしい。衣服は所々敗れ、血が滲んでいる。そして何より、顔色が悪く呼吸も荒い、そして酷い熱にうなされている。

 小柄のアリスでは、支えきれず、半ば引きずるように連れてきていた。

 

「待って、酷い熱。それにこの傷。ありすちゃん! ありすちゃん! ダメ意識がない」

「今は泣いてる場合じゃない。アリス。何があったんだ。移動しながらでいい、話してくれ。ベアラー、そっちのありすを抱えて保健室に行こう」

「待って。保健室の前には一杯あれが居たのだわ」

 

 アリスの言っているそれが何かわからない。だが、不思議とこのタイミング故に、思い当たるものがある。

 

「任せろ。何が居ても蹴散らしてやる。行くぞ」

「アリスちゃん。大丈夫。ブレイカーは、とても強いから」

 

 怯える彼女を励ますようにセレアルトがアリスの手を握り、ブレイカーがありすをお姫様抱っこする形で移動する。子供の体でこれほどの熱病は、一分一秒を争う可能性があり、速足で向かう事となる。

 

  

 

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