Fate/make.of.install   作:ドラギオン

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特例

 

「ありすさんについて。お伝えしなければいけないことがあります」 

 

 検診を終えたサクラから、話があると告げられ、3人でその話を聞くこととなる。だが、サクラは協力者とはいえ、別陣営のセレアルトたちに告げていい物か悩んでいる。

 

「俺達が聞いてもいいかアリス?」

「えぇ。聞いてほしいわ」

「では、お話します。ありすさんは、今重度の中毒状態です。傷口から入った毒が体を巡り、生命活動が脅かされています。今は、私の方で応急手当をしているので、大事には至りませんが、根本的な解決にはならないんです」

「毒を排出したり、中和は出来ないのか?」

「見たこともない毒で、健康管理AIである私でも、治療は難しいです。そもそもこの世界に存在する毒物とは大きく違うんです」

 

 健康管理AIのサクラでも手出しができないと言うなら、誰にも治せはしないだろう。医療関係のサーヴァントでもいれば話は違うかもしれないが、土台無理な話だろう。

 

「手っ取り早く、毒の大元を消してしまえばどうだ? 原因は、とあるマスターとサーヴァントが召喚した異世界の生物、海魔だ」

「え? いや、その。仮に、そのサーヴァントが消滅すれば、同時に毒素も消滅するでしょうけど、それを別の陣営である貴方方がやるんですか? 当然、校舎内での戦闘にはペナルティが発生しますし、何よりもメリットが」 

 

 サクラの考えはもっともだろう。だが理屈だけではないのだ。

 

「校内での戦闘が禁止なのは理解しているが、実はな、俺達のアリーナにも海魔が湧いて出てきてるんだ。それだけじゃなくこの校舎内にもな。それこそペナルティが掛るべきじゃないのか?」

 

 ブレイカーの報告を聞いて、サクラが何かを思い当たったのか、端末を起動し誰かと連絡を取り始める。

 

「そんな。ブレイカーさん、監督役に確認を取った所、全てのアリーナで正体不明の海魔が現れているそうです。しかも、おびただしい数で空気中に毒をまき散らし、汚染をしていると。監督役は召喚者に既にペナルティを与えたそうですが、一切の反応がないと」

 

 どうやら言峰も事態を把握してるらしい。

 

「ペナルティってどんな?」

「ステータスのダウンなどです」

「なら意味がない。あの男の宝具は、それ自体が魔力炉となる代物。そして今回の海魔の大量発生の真相は、アリーナの性質だな」

 

 霊子で構成されたアリーナにエネミーが自然発生するシステム。それらは、全て海魔の餌となっている。通常では考えられない大量発生の裏側に、この電脳世界が海魔にとっての餌場になってしまっている事実があった。

 

 奴らは、周囲の霊子を食らい、たまった魔力で別の個体を召喚する。それを繰り返し、無限に増え続けている。増える速度自体はなだらかだが、倍々的に増えていく都合、時間を置けば月の聖杯戦争そのものが海魔に埋め尽くされかねない。

 これは、結果的にすべての陣営がキャスター討伐に赴く理由になるだろう。

 

「おいサクラ。言峰に質問してくれ。おそらくキャスターの行いは、ムーンセル側としても望まないものだろ? 特例で狩りをするつもりはないのかと聞いてくれ」

「それはルールを曲げるという事ですか?」

「お前は校舎内でのマスターの健康管理の使命があるんだろ? 毒物を吐き続け、アリーナや校舎内で好き勝手に増え続ける化け物は、その使命に反すると思うんだが?」

「っ……少し待ってください」

「ごゆっくり」

 

 かなり無理な事を頼んでいる自覚はある。いまだにAIが何かわかっていないブレイカー。だが彼女たちの存在を令呪で縛られたサーヴァントに仮定して理解をしようとしている。絶対に逆らえない令呪の命令があり、彼女たちはそれに反しない範囲でしか動けない。

 だが、多少は自己の認識による隙間があり、それを縫うことで自由を確保も出来る。そう確信していた。

 

「! ……無理だそうです。まだその段階ではないと。もう少し別の譲歩なら考えられると言っていますが」

 

 サクラは言峰からの返信を読み上げる。言峰の言葉を深読みするブレイカー。

 

「なら、こう聞いてみてくれ。アリーナ内での戦闘行為にだけ、制限時間を撤廃してくれと」

「それに何の意味があるんですか? ありすさんがこうなっている以上、サーヴァントであるアリスさんが、アリーナでの戦闘時間を延長されても、どうしようもない筈です」

「この小さなサーヴァントだけならな。……俺が行く」

 

 ブレイカーはとんでもないことを言っている。通常アリーナは、どうやっても対戦相手としか同じアリーナに入れない。なのに、彼は海魔を召喚するサーヴァントとアリス達専用のアリーナに侵入するというのだ。

 そんなこと不可能だ。

 

「そもそも一緒に入ることはできません。入り口で弾かれるに決まって」

「なら海魔は、どうやって俺達のアリーナに入ってきた? かなり無理やりだが、ごり押しで別のアリーナにはいる事も可能なんじゃないのか?」

「それは、使い魔に限った話です。それでもファイアーウォールに阻まれ、ほとんどが消去されているはずです。それを膨大な数で押し切って、消去の隙間をぬった個体が侵入しているだけです」

 

 だが、それがサーヴァントなら別だ。もはやルール違反そのものである。すぐにでもSE.RA.PHからペナルティが与えられる上に、SE.RA.PHの想定外の動き故に、サポートも受けられない。

 言うなら深海に生身で放り込まれるようなものだ。

 

「結界だのなんだの、俺には関係ない。ただ、戦闘時間の制限による強制的な排出が厄介だっただけだ」

「セレアルトさん、貴方はいいんですか? 別の陣営の為に、貴方のサーヴァントが自殺行為をしようとしているのに」

「……いいも悪いもないよ。私がブレイカーにお願いしたから。それに、ブレイカーは私を裏切らないから」

 

 サクラを真っすぐ見据えるセレアルト。まだ数日しか一緒に居ないパートナー。だがセレアルトのそれは、崇拝ににも近い感情だった。この人はどこか狂っている。そうサクラは感じ取った。

 

「本当に、いいんですね?」

「あぁ。俺が勝手に追い込み漁を始める」

 

 サクラは渋々と言った様子で言峰に連絡を取り、数分後、その返答が来た。

 

「許可するそうです。ただ他の手助けは一切ないと」

「十分だな。後は、敵さんがどこにいるかだな」

 

 ブレイカーの想像では、逃げたアリス達を追って校舎に来ているはずだ。結界などを張って逃げ込めないようにしていたのだから。校舎内で派手に暴れてるとなると、そろそろ騒ぎが大きくなるはずである。

 

 ブレイカーの予想通りというか、校舎内で地響きが起こり、何処かで戦闘が開始した。

 

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