序章:覚醒―Awakening―
西暦2305年、政府が統治能力を徐々に失い、それに伴い各地でテロ行為や暴動が頻発していた。それらを鎮圧し、秩序の回復を図るため、軍隊はより強力かつ高度に機械化され、軍に様々な兵器を供給する軍産企業もまた、数社の企業から成る強固な軍産複合体を形成し、その影響力を強めていった。
加速する世界の破綻により、ついには経済システムが存亡の危機に陥るに至り、新たな統治体制の確立を目指し、実質的最高権力組織となっていた6つの企業組織が、政府に対し全面戦争を開始した。
”国家解体戦争”の開戦である。
しかし、国家解体戦争はわずか1ヵ月で企業側の圧倒的勝利により終戦を迎える。
以後、企業による統治、「パックス・エコノミカ(経済による平和)」が始まった。
これに投入された兵器により、企業は地球から宇宙へと目を向け始めていた。
軌道エレベータ、それを保持する3大国家。
企業との取引によりかろうじて国家を維持する「ユニオン」「AEU」「人類革新連盟」。
しかしこの3国の力はあってないようなものだった。
そして、この3国と企業傘下に入らず徹底的に叩き潰された小国は国としての機能を維持できず、紛争や内戦を繰り返していた。
企業側の完全勝利、最新鋭の国軍の敗北。それは、企業が投入した兵器の圧倒的な強さを人々に植え付けた。
旧トルコにあるコロニー、アナトリア。
東洋人が発見しその発見者の名前を冠す物質、コジマ粒子。
アナトリアの科学者、イオルネフェルト教授はこの粒子の研究の第一人者だった。
そのコジマ技術を惜しみなく投入し作られた最新兵器、ACネクスト。
わずか26機のその兵器は国家の軍隊を蹂躙し、破壊し、叩き潰した。
そしてネクストは、戦後企業により40機まで増産された。
そんな中、国家解体戦争で負傷し、ネクスト技術の研究を産業としていたコロニー・アナトリアで療養を受けていたあるレイヴン(旧世代AC、ノーマルのパイロット)。
彼の存在が、世界の命運を分けるとも知らずに。
国家解体戦争が終結して5年が経った。
アナトリアのトップ、イオルネフェルト教授が死亡、同時にアナトリアの優位性であるネクスト技術が外に漏洩した。
この一件により、アナトリアは急速に衰退を始める。
教授の部下で現アナトリアのトップ、エミール・グスタフは頭を悩ませていた。
しかし、きっかけは些細なことだった。
イオルネフェルト教授の娘、フィオナ・イオルネフェルトが救ったあの男、伝説的なレイヴンだった。
彼は戦争で重傷を負ったところをフィオナに救われ、アナトリアで療養していた。
その時に分かったことだが、彼にはAMS適性――つまりネクストを動かす資質――があったのだ。
それに加えて、アナトリアは技術開発用としてネクストを持っていた。
つまり、ネクストを用いた傭兵業でコロニーの資金を賄う事にしたのである。
我々が負うべき負担を一人に押し付ける、極めて非人道的な策であったと思う。
しかし、ひっ迫した経済事情が他の選択肢を許さなかったのだ。
「これしかない、わかってくれ」
「嫌よ、彼はもう戦う必要なんてないの!まして、ネクストに乗って私達のために戦わせるなんて!」
「ここを去ってもまた戦いに身を投じるだけだろう」
「それは・・・」
「そうだ、君がオペレーターをやればいい」
「私が?そんな、オペレーターをやったことなんて」
「いいんだ。きっと君がそばにいてやるだけでいい」
「・・・わかりました、彼に話してきます」
(本当にすまない・・・)
そして戻ってきた彼女はさらに肩を落としていた。
「了承してくれました・・・」
「そうか・・・ではさっそく準備を始めよう」
アナトリアに研究用として保管されていたネクスト、オーランティウム。
出撃の準備は瞬く間に完了し、時が来た。
ミッションブリーフィングがはじまる。
「独立計画都市グリフォンを占拠する武装勢力を排除する。グリフォンはかつて、大規模テロにより基幹インフラを失い、廃棄された。敵は都合よくそこを根城にしているに過ぎない。
この作戦は、アナトリアのネクスト、即ち君のパックスに対するプレゼンテーションだ。特にパックス最大の企業体、GAは、グリフォンの復興を計画している。連中にアピールするまたとない機会だろう。状況は出来上がっている。あとはキミ次第だ」
「作戦開始よ」
グリフォンに降下したオーランティウムに、フィオナから通信が入る。
「敵主力、ノーマルをすべて撃破して」
撃破対象、ノーマル。国家の統治能力減退に比例するように顕在化したテロと暴動の脅威に対抗すべく開発された「圧倒的な火力、制圧力を実現する人型汎用兵器」。
国家解体戦争以前においては、戦場における最大の脅威となった兵器であったが、企業統治下の現在では、一部の最新型あるいは特化型を除いて、その戦闘力や重要度は、プライマルアーマーとAMSを搭載したネクストACに遠く及ばない。
一方で、ネクストと異なり量産可能である事から企業軍の量的な中核という地位は健在であり、コロニーあるいは武装勢力のレベルでは、ノーマルが未だ最強の部類に属する。
橋を渡ると同時に接敵、交戦開始。
まだノーマルは確認できないが、戦車や野砲が砲撃してくる。が、ネクストに到達する前に緑色の粒子に阻まれる。
プライマルアーマー、防御機構の一種。頭文字をとってPAと略されることが多く、完全防護膜、粒子装甲などとも呼称される。
ネクストの標準機能であり、機体周辺にコジマ粒子を安定的に還流させることで、各種攻撃によるダメージを軽減・無効化させる。PAは特に実体弾に対して高い効果を示し、既存兵器搭載の戦車砲、機関砲や榴弾、ミサイルなどではほとんど損傷を与えられない。
これに対抗するためには艦船や大型兵器クラスの火力か、あるいは同じネクストの扱う火器しかない。
回避すら必要ない。左手のマシンガンと肩のミサイルが火を噴き、戦力を着実に奪う。
「敵ノーマルを確認。作戦目標よ、撃破して」
ノーマルの射撃さえもPAに阻まれる。右手のブレードが、ノーマルを引き裂く。
「敵ノーマル、撃破を確認。作戦成功よ。帰還して」
作戦開始からわずか5分。グリフォンを占拠していた武装勢力は全滅。
アナトリアの傭兵はその名をパックスに記憶されることになった。
「作戦は大成功ね。エミール、大喜びよ。彼はきっとうまくやる…そうしたら、あなたは戦場へ戻ることになる・・・」
第一話、如何だったでしょうか。
サブタイは、潜入ゲーとは関係ないです。
いや、作ろうとした形式とあてはめた言葉がたまたま被っちゃっただけで、決してパクリではございません。