旋律の彼方に   作:玉莊亭翠嶽

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第一話 始まり

 長い戦争は終わり、平和が訪れた。

 

 

 西暦2057年...

 

 4月。春たけなわである。そろそろ花見の季節も終わりだ。

 

 早朝の横須賀港に、一人の青年の姿があった。名を、千早群像。19歳。

彼はじっと海を見つめている。

 

 何を思っているのだろうか。

 

 「もう一年か...」

と群像は呟いた。時の経つのは早いものだ。

 

 あの時、一年前のあの時、伊401のメンタルモデル、イオナと永遠の別れをして...それからもう一年経つのだ。

その後、出奔の罪を許されて士官学校に戻ってから半年。群像は海軍少尉になった。そして今日から、彼は海軍中尉として、台湾の基地へ派遣されることが決まった。

 

 台湾への連絡船が出港するまで、あと1時間はある。

 

 杏平や、いおりや...その他の伊401のクルー達はどうしているだろうか。戦争が終わったあの日、この横須賀港で別れたきり、群像は彼らの行方を知らない。彼らの事だ。元気でやっているだろう。いや、元気に違いない。群像はそう思っている。

 

 

 「千早君。君は4月から中尉として台湾基地に赴任してもらう。昇進おめでとう。」

そう、久保洋平少将が自室に群像を呼びつけて言ったのは3月の下旬であった。その指令があまりにも急だったため、群像は自分の荷物を半分以上寮に残して行かざるを得なかった。

「台湾基地での具体的な任務は?」

「うん。詳しくは現地の緒方中佐が説明すると思うが、主に南シナ海とフィリピン海方面の監視に当たってもらう。それから...」

「それから?」

「現地のサルベージを手伝ってもらうかもしれんな。」

「サルベージ?」

「何、大した事じゃない。要するに台湾沖の海の底に沈んだ鋼材の再利用ってことだ。」

「...成程。分かりました。」

 

 一体どんな船を引き揚げるというのか。商船か。汽船か。あるいは...

 

ボォーと連絡船の汽笛が鳴る。群像は我に返った。

 

 「やるぞ。」

 

 青年は拳を握りしめ、乗船口の方へ歩き出した。横須賀の明け方の空に、カモメなどの海鳥が数羽、のんびりと舞っている。

 

 「おい、千早じゃないか!お前も台湾だっけ?」

突然声をかけられて、群像は振り向いた。見ると、同級の野島が立っていた。彼とは海軍を出奔する前からの友人だった。

「ああ、台湾だよ。」

「そうか。俺も台湾だ。いやぁ...それにしても久しぶりだな千早。お前、先の戦争では大活躍だったんっだって?凄いなぁ。いや、お前なら必ずやると思っていたんだよ!」

野島は少し興奮気味に言った。

「...ああ、まあな。でも、戦争も終わった。これからは平和の時代だ。」

「そうだな。平和の維持が俺たちの使命って訳だな!」

「ああ。」

「そういうことで、これからも宜しく頼むぜ!」

野島はそう言って笑った。

 

 

 

 

 

 

 

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