旋律の彼方に   作:玉莊亭翠嶽

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第四話 業務開始

 次の日から早速仕事だというので、群像は早く寝ることにした。初めての環境で安眠できるかが不安だったが、布団に入って目をつぶると、旅の疲れもあってか群像はすぐ深い眠りにおちた。

 

 次の日、4月3日は快晴であった。低緯度なので太陽高度が高く、容赦ない日光が水面に照り付けている。

 群像たち5人は会議室の中に整列した。

「気をつけ!」

緒方中佐の左に立った若い将校が大声で号令をかけた。

「私が、ここの責任者の緒方だ。」

と中佐は低い声で言った。

「今からここでの勤務内容を説明する。よく聞くように。」

群像はかすかに頷いた。

「諸君も知っての通り、ここにいる千早君の活躍もあって、『霧』との戦争は終わった。これからの我々の任務は、平和の戻った世界の海の安全を保障することである。」

「この基地の担当海域は、3つに分かれている。一つ目は南シナ海。二つ目はフィリピン海。ここではマニラの国際共同基地との合同演習なども行う。そして三つ目は台湾海峡。船舶の交通量も多い海上交通の要衝だ。以上三つの担当海域がここの担当だ。おいおい、君たちには実際に乗船してこの海域を回ってもらおうと思っている。実際の潮流などは、現地に赴いてみないと分からないことも多い。」

中佐は一息ついて、さらに続けた。

「基本的な君たちの任務は以上だが、もう一つ、君たちに手伝って、いややってもらわねばならぬことがる。」

「と、申されますと?」

群像は思わず言ってしまった。サルベージのことが気になっていた。中佐は群像を一瞥して続けた。

「サルベージだ。君たちには、今台湾沖で行われているサルベージ作業を手伝ってもらう。」

やはりそうだった。

上泉が手を上げた。

「中佐。質問です。」

「むむ。何だ。言え。」

「サルベージ作業に関して、その具体的な職務内容を教えていただけませんか。」

「要するに、海の底に沈んでいる艦船の引き揚げ作業だ。専用の重機を使って行う。重機の使い方は追って説明する。君たちは私が命令したとおりに動いてくれ。いいね?」

「中佐。引き揚げた鋼材は何に使うのですか。」

こう言ったのは宮木である。

「工場地帯に輸送し、そこでスクラップにして再利用だ。あれを見たまえ。」

そう言って中佐は窓の外の、煙をもくもくと吐いている高い煙突を指した。

「あそこが、基地に隣接する工場だ。あそこで鋼材をスクラップに加工する。鋼材の輸送は我々は関わらない。業者が行うことになっている。」

「なるほど。分かりました。」

「以上だ。他に質問は?」

今だ。今しかない。群像はゆっくり手を上げた。

「千早か。何だ。」

「引き揚げている艦船名を、教えていただけませんか...」。

「うむ。1944年11月に、この台湾沖で...」

「潜水艦シーライオンの攻撃により沈没した...?」

群像は慎重に、そう言った。

「なぜ知っている?」

「...いえ。ただ何となく、そんな気がしていました。」

「そうか。なら良いのだがな...」

中佐の口元に少し、笑みが浮かんだ。が、すぐに真顔に戻って、

「終わりだ。」

と言った。

「以上。これにて解散する。解散!」

若い将校が怒鳴った。

 

 群像は右手をグッと握った。もはや間違いはなかった。今から群像たちが引き揚げようとしているのは、超弩級戦艦...金剛だった。

 

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