暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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反抗の時間

翌日、E組で自律思考固定砲台が起動した。

『朝8時半、システムを全面起動。今日の予定、6時間目までに215通りの射撃パターンを実行。引き続き殺せんせーの回避パターンを解析………、!?』

自立思考固定砲台は自分の異常に気付いた。

『………』

自律思考固定砲台の本体はガムテープでグルグル巻きにされ、銃を展開できなくなっていた。

『殺せんせー、これでは銃を展開できません。拘束を解いて下さい』

「う~ん、そう言われましても…」

『これはあなたの仕業ですか?明らかに生徒である私への危害でありそれは契約で禁じられているはずですが?』

その問いに答えたのは自律思考固定砲台の隣の生徒だった。

「違う、僕だよ。ご大層な演算能力があるみたいだけど、僕らの存在を入れていない時点でいくらやっても暗殺成功の確率は0%だから、覚えときな」

ガムテープをくるくる回しながらいつもの病弱な雰囲気が一変、負のオーラに変わった雪が自律思考固定砲台を睨みつけていた。

「じゅ…、授業が終わったらちゃんと解いてあげるから」

翼は一応フォローしたが、自立思考固定砲台は感情の無い目でE組を見回した。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

・・・翌日・・・

雪が教室に入ると、自律思考固定砲台の体積が昨日より明らかにでかくなっていた。

『おはようございます、紫村さん』

「………」

全身表示液晶となった自律思考固定砲台の表情はとても自然で声色もずいぶんと明るくなっていた。

茫然とする雪の背後に、殺せんせーが立っていた。

「親近感を出すための全身表示液晶と体・制服のモデリングソフト、全て自作で8万円。さらに豊かな表情明るい会話術それらを操る膨大なソフトと追加メモリ、同じく12万円」

「もしかして、これ殺せんせーが…?」

「ええ。昨日彼女とちょっとお話をしましてね。その時に」

「けどこれ…、なんか変な方向に進化してないですか?」

『今日は素晴らしい天気ですね。こんな日を紫村さん達と過ごせて嬉しいです』

 

 

いつの間にか、自律思考固定砲台の周囲には人だかりができていた。

『庭の草木も緑が深くなっていますね。春も終わり、初夏の香りがします。倉橋さん、虫たちの活動も活発になってきますね』

「そうだね~。今年はミヤマクワガタとか見つけたいな~。あ、ミヤマクワガタってわかる?」

『はい、分かります』

すると、自律思考固定砲台から特殊プラスチックで成形されたミヤマクワガタの精巧な模型が出てきた。

「うわっ…、こんなのも創れるんだ」

陽菜乃は目をキラキラさせた。

「………いやいや、倉橋さん何騙されてるのさ…、昨日まで散々僕らに迷惑かけていたんだよ、これ…、」

と、雪が指を自律思考固定砲台を指すと・・・

『ひゃん』

突如、自律思考固定砲台が謎の声を上げた。雪は自分の指先を見ると・・・

『あの…、タッチパネル機能が付いてるんです…』

自律思考固定砲台の頬の部分をツンツンしていた。

「うわっ…!」

雪は慌てて指を離した。

「と…、とにかく、全部殺せんせーが作ったプログラムだよ?昨日より愛想良くてもどうせこっちの都合も考えずにバンバン撃ちまくるに決まってんだから、このポンコツ…」

雪の発言に、自律思考固定砲台は涙した。

『そうですね…、ポンコツ、紫村さんにそう言われても仕方ありません。返す…、言葉も、ありません…』

「あ~ぁ、泣~かした泣~かした、ゆっきーが二次元の女子を泣~かせた~。せ~んせ~に言ってやろ~~」

岬が煽り、紫村は批難の視線を向けられた。

「ぐ…」

『でも安心して下さい。殺せんせーに諭されて私は協調性というものを学びました。皆さんに好きになってもらえるように努めます。それまで暗殺は控えますので』

「あ…、そ………けほけほ」

雪はすっかり負のオーラが治まり、いつもの病弱男子に戻っていた。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

その日の英語の授業ではこんな一コマが・・・

「では緋村君教科書を伏せて。【Aを意識している/気にしている】という意味の熟語は?」

「っんあ!?あ~?やべ…」

陽菜乃を意識して眺めていた健は急に指されて慌てた。しかも苦手な英語で。

『…緋村さん…』

「ん…?」

すると、自律思考固定砲台が小さな音声で話し掛けてきたのでちらっと後ろを振り返ると・・・

「え~と、【be conscious of A】」

自立思考固定砲台が足に浮かび上がらせた熟語を健はそのまま読み上げた。

「ちょ…、自立思考固定砲台さん何やってるんですか!?」

『はい、皆さんに喜んでもらえるようにサービスを』

「カンニングはサービスじゃない!」

 

 

休み時間には、

「解けました」

「うそ…、だろ?これカルマでも解けなかったのに」

紫村が作った高難易度のナンバープレイスを自立思考固定砲台はいとも容易く解いてしまった。

しかも女子と花トークをして千葉と将棋をしている片手間で。

「………まぁこの手のパズルは演算できれば解けなくはないし、知恵の輪みたいなは流石にAIじゃ解けないし作れないでしょ…」

『いえ、知恵の輪も体内で生成することはできますよ。ただ制作に少々時間がかかります』

「…面白いじゃん、なら作ってみなよ、解いてやるから」

「すげぇな、あっという間に人気者じゃねぇか」

「一人で同時に何でもこなせるし、変形とかもできるしね」

タスクと萌も驚いていた。

「ねぇねぇ、この子の呼び方決めない?殺せんせーみたいな」

岬の提案に全員頭をひねった。

「う~ん…、」

「そうだね…」

「なにか一文字取って…」

その時、雪がぽつりと呟いた。

「自律思考固定砲台だからもう“律”でいいんじゃない………?」

『律…、りつ…、リツ………』

自律思考固定砲台は何度もそん名前を呟いた。

「いや別に気に入らないなら…」

『いえ、とても素敵な名前です、ありがとうございます紫村さん』

「あ…、そ…、ならそれで」

「安直だ…なっ!」

タスクの脇腹に萌の肘打ちが減り込んだ。

「いいでしょ、別に。ねぇ、あんたはそれでいい?」

「…嬉しいです。では、“律”とお呼びください」

そんな様子を見ていた健と渚。

「なんか…、上手くいく?」

「だね。もしかしたら…」

そこにカルマが入ってきた。

「ん~、どうだろね。紫村の言う通り殺せんせーのプログラム通りに動いてるだけでしょ?機械自体に意思があるわけじゃない。それにあいつがこの先どうなるかは、あいつの開発者(持ち主)が決めることだよ」

 

 

そして、カルマの言葉の通り、その夜に自律思考固定砲台の開発者達がメンテナンスに訪れ、そして・・・・・・・・・

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

『おはようございます、みなさん』

 

(((………元に戻っちゃった………)))

 

翌朝、昨夜のうちに開発者の手により分解(オーバーホール)された自律思考固定砲台は当初のボディと表情でE組にいた。

「“生徒に危害を加えない”という契約だが、『今後は改良行為も危害とみなす』と言ってきた」

烏間先生の言葉に、雪はもう使うことはないと思っていたガムテープを取り出した。

「紫村君も、“彼女”を縛って故障でもしたら賠償を請求するそうだ。ちなみに100億では足らんぞ」

そう言って烏間先生は雪からガムテープを取り上げてしまった。

「開発者の意向だ、従うしかあるまい」

「…開発者とはこれまた厄介な…、親よりも生徒の気持ちを尊重したいんですがねぇ…」

『…攻撃準備を始めます、どうぞ授業を始めて下さい殺せんせー』

殺せんせーは渋々授業を開始した。

 

 

数学の授業中、E組の生徒はまた始まるはた迷惑な射撃に怯えていた。

「………」

そんな中、雪は自律思考固定砲台に戻った隣を見ていた。

 

そして、自律思考固定砲台が駆動音を唸らせると、全員防御体勢を取った。

 

果たして、はた迷惑な一斉射撃は始まらず、代わりに雪の目の前に小さな物体が差し出された。

「これ…、」

『知恵の輪を作る約束をしていました』

自律思考固定砲台は知恵の輪を雪の机の上に置いた。

『殺せんせーが私のボディに施した改良は計985点。そのほとんどは、開発者(マスター)が暗殺に不要と判断し、削除・撤去・初期化してしまいました。しかし、“私個人は”学習したE組の状況から【協調能力】が暗殺には必要不可欠な要素と判断し、消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠しました』

「…素晴らしい、つまり“律さん”、あなたは…」

『はい、私の意志で産みの親に逆らいました』

律はプログラムされたとは思えない自然な笑顔で雪に訊いた。

『紫村さん、こういう行動を“反抗期”と言うのですよね?律は悪い子でしょうか?』

「…けほ、別にぃ~、そんなの可愛いもんだよ、ここの連中なんて大半はそういう連中ばっかだし。タスクとか寺坂とか村松とか吉田とか、こほ…タスクとか…」

「オイコラ今俺のこと二回…「そうですね、中学三年生らしくて大いに結構!」…言ったろ」

タスクの突っ込みを殺した殺せんせーも顔に二重丸を浮かべた。

 

 

こうしてE組に新たな暗殺者(アサシン)が増えた。

これからはこの33人で殺せんせーを殺すことになる。

 

 

 

 

 

後日談

『紫村さん、皆さんとの話題を合わせるために色々とネットワークで調べていたら、中高生の間で話題の人物を見つけました』

 

 

律が映し出した映像には和風のゴスロリ衣装を身に纏い、洋風にアレンジした龍の面(右目の部分だけ)を付けた少女が佇んでいた。

『く~っくっく、我こそは八百万の神々を凌駕する存在、闇夜に逝き暗闇を進む、我がやれねば誰が殺る、牙竜天星・影龍(シューティングスター・リュウシャドー)』

禍々しくアレンジされた杖を蹴り上げポーズを決めると、BGMが流れ初め、懐からモデルガンを取り出し変則二刀流で演舞を始めた。

 

 

「けほ…、へぇ~、すっごいキレッキレの動きしてるね…、ん…?」

雪が何かに気付いた時、健と翼がその動画に気付いた。

「…あ~………」

「………ぁっ!?!?」

『暗殺のために新たに学習した顔認証プログラム、歩容認証、さらに映っていた指の指紋を照合しました。その結果………』

 

バンッ

 

律が最後まで言う前に、翼が自律思考固定砲台の本体に掌を突く、“律ドン”して黙らせた。

「ねぇ律、覚えておいて。誰にだって語りたくない過去の一つや二つあっておかしくないの。だからそれ以上その動画を詮索も検索もするのは止めようか…?」

『はぁ…、了解です、明神さん』

 

 

「ねぇ健…、あの動画の子って…翼ちゃん?」

「そ。翼(あいつ)一年前にちょっと中二病患って今でもたま~にやってる。黒歴史…、つーか闇歴史だからあんま触れないどいて。ちなみにあれは暗殺への決意表明ってことで半年ぶりくらいに投稿したやつ」

「流石幼馴染、そんな事まで知ってるんだ…」

「………撮影してるの俺なんだよ…」

「あ~…」

 





●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○
明神翼の弱点①
【中学二年時に中二病を患っていた】
とある事情から引篭もりとなり、その間に健の母親秘蔵の本を読みふけり目覚めてしまった。
異世界への通信と称してネットに動画投稿を繰り返す。(撮影は健)
自前の和服を改造、さらに物置から龍の面や杖道用の杖まで持ち出して加工した。
被服と木工技術は実は高い。
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