暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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本当なら6月20日に載せれればよかったけど、今日になってしまいました


緋村健・明神翼の時間

 

 

6月20日

今朝は早朝の道場の鍛錬も裏山での鍛錬も休みにしていたので、健はいつもより遅く起きた。

「………」

カーテンを開けると朝日が差し込み、瞼を少し閉じる。そして明るさに慣れた健の目に映ったのは・・・・

 

 

大口開けて欠伸をしている明神翼の姿だった。

それも、パジャマを半分脱いでいる半裸状態で。窓枠で見えないが、おそらく下半身は・・・、

「あの馬鹿…」

萌の様に異常な発達をしているわけでもないが、岬よりは程好く発育している胸がチラッと見えかけて・・・

 

 

「はぁ~…」

健は溜息を吐きながらそっとカーテンを閉めて着替え始めた。

 

 

 

 

健の制服に着替えが終わる頃、窓がノックされた。

カーテンを開けるとそこには椚ヶ丘の制服を着た翼がいた。

緋村家と明神家はほとんど二世帯住宅並みに隣接しているので屋根伝いでも行き来が可能で、小学生の頃から翼はこうしてよく健の部屋に遊びに来ていた。

「よいしょっと」

健が窓を開けるとスカートの裾が翻るのも構わずに翼は部屋に入って来た。

2人は互いを見詰め合うと口を同時に開いた。朝の挨拶、ではなく・・・

 

 

「誕生日おめでとう、翼」

「誕生日おめでとう、健」

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

健と翼は緋村家の仏間にいた。蝋燭に火を灯し、線香を上げ、2人は揃って合掌した。

「小母さん…、わたし15歳になったよ…」

翼が閉じた目尻から涙をこぼしながら呟く隣で、健も目を閉じて報告していた。

(………母さん、15歳になったよ…。父さんは相変らず世界中飛び回ってる、たぶん元気。今は…、普通とは言い難いけど充実した学校生活を毎日送っている。色々と、色んな意味で凄い先生達の授業もちゃんと真面目に受けている。翼以外にも気の置けない友達もできたし、それに………………好きな、人も…、いる。まだ告白とかできていないけど…、いずれは………)

2人の前にある遺影の無表情な女性の口元と頬がわずかに緩んだ・・・ように見えた。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

その日の昼休み

「健、誕生日おめっとさん!」

タスクがでっかいお菓子の詰め合わせを6個机にどさっと置いた。

「これは僕から、翼ちゃん誕生日おめでとう」

雪はメカメカしい天使のぬいぐるみを翼に渡した。

「うわぁ~、これエンゼル御前のそれもクレーンゲームのプライズ限定版!ありがと~雪くん」

「これもゲーセンにしかないやつじゃん…、雪はともかく、タスクよくこれだけ取れたね?普段パンチングマシーンとワニ叩きしかやらないのに」

「ン…、まぁなオレにかかればこんなん朝飯前よ!」

呵呵大笑するタスク越しに、茅野や奥田と弁当を食べている神崎と視線が合った。すると神崎は健に向かって静かに微笑んで口だけ動かして「お誕生日おめでとう」と伝えてきた。

(なるほどね…)

 

 

 

 

前日

とある大型ゲームセンター

「ぬぉ~~!取れねぇっ!」

お菓子のクレーンゲームの前でタスクが戦闘民族のような髪をガシガシ掻きながら叫んでいた。

「もう諦めて普通にスーパーで買えば?」

「こんなにデッカイのはゲーセンにしかねぇんだよ!それにここで取れりゃお徳だしなんか特別感あんだろ?」

「もう結構使ってるけどね。あと残金は?」

「無ぇ。雪の字、かし…」

「…貸さないよ、際限無く貸す羽目になって共倒れが計算するまでもなく分かりきってるから…」

「………お前はよく1コインで取れたよな」

雪はすでに別の筐体でエンゼル御前の人形をゲットしていた。

「取る位置、アームの形状と引っ掛ける部分、ボタン操作と実際のアームとの微妙な誤差、あとはアームのピンチ力を適宜修正計算すればなんとかね」

「だ~~!んな細けぇ計算できっかぁっ!」

 

 

「相楽君?それに紫村君も」

 

 

不意に声をかけられた2人が後ろを振り返ると、神崎がいた。

「おぅ神崎じゃねぇか」

「けほ…、神崎さんもゲームしに?」

「うん、最近子供相手に対戦ゲームで調子に乗ってる人がいるから“ちょっとお仕置き”をね」

「へぇ…」

紫村はその神崎の背後に蠢く黄色い触手とカメラを一瞬見た・・・ような気がした。

「それより2人ともクレーンゲームの前でどうしたの?紫村…、そういう趣味あったっけ?」

「いやいや違うから。実は…、」

雪は神崎に目的を伝えた。

「え、緋村君明日誕生日なの?それに明神さんも」

「そう。それで何かプレゼントをと思ってここのプライズを取りに来たの。前に翼ちゃんこの人形欲しがってたから」

「んで、俺はとにかくドーンと派手に行きたかったからこの詰め合わせ取ろうとしたんだけどよ………」

「取れなかった、と」

「ぐ…、それにもう金も無くて………」

「それじゃあ私が取ろうか?お金も私が出すよ」

「いや…、けどよぉ…」

雪から借りようとしていたタスクも、女子の神崎から借りるのは抵抗があるようだった。

「相楽君にも緋村君にも京都では助けてもらったし、………その後相楽君と2人っきりの時間ももらったし………、私からのお礼も兼ねて」

「ん~~~~…、よし、神崎!ニンニン羽織だ!」

「は…?」

「どこの手裏剣戦隊さ、それを言うなら“二人羽織”でしょ?」

「おう、そうそうそれそれ」

タスクは神崎を筐体の前に立たせるとその後ろから手を回し、自分の手をボタンの上に、さらにその上に神崎の手を乗せた。

「~っ!」

必然的にタスクと密着する体勢になった神崎は真っ赤になって下を向いてしまった。

「頼むぜ、健への誕プレ、是が非でも自分の手で取りてぇんだ。ちょっとズリィやり方かもしんねぇけど、頼むぜ」

タスクは神崎に自分の手を押させてボタンを操作させた。

「…うん…」

 

 

 

 

「ありがたく頂戴するよ、2人(タスクと神崎の初めての共同作業)の苦労の賜物をね」

健はそれとなく神崎の助力を察してそう言った。

「んじゃ、私はこれね!緋村、つっちゃん、オメデト~」

岬が短冊状の紙片を2人に渡した。紙には筆ペンで妙に格好付けた文字でこう書かれていた。

「………葵屋無料宿泊券…?つーかこれ手書きじゃん。肩たたき券感覚かよ」

「え、いいのみさちゃん?こんなの貰って…」

「いいのいいの。使う時は連絡してね。ちゃんと手配しとくから」

その時、健は券に書かれている有効期限に気付いた。

「てか、これ有効期限が5年後からじゃん」

「うん、その頃には友達招待するくらいの仲居さんになってる予定だから」

皮算用な岬に健と翼は失笑した。

「それじゃ、最後は私ね。はい、ケン君、翼ちゃん、おめでとう」

萌のプレゼントは薄い青色と白のハンカチだった。

「ありがと、萌」

「わぁ…、綺麗な刺繍…」

刺繍の手触りから健は気付いた。

「もしかして、これお手製?」

「そ。空座町の病院に勤めている親戚のお兄さんがこういう刺繍とかの手芸が上手くてね。教わりに行ったの」

翼の純白のハンカチにはイチゴの花、健の方には高貴な十字架の刺繍が施されていた。

仲間からの心からの贈り物に感謝した。

「みんな、ありがとう大事にするね」

「ありがと。とりあえず、弁当食べたらこのお菓子皆で摘まもうか」

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

放課後

健と翼は山道を降りている途中で呼び止められた。

「あ、ひ~ちゃ~ん、待ってまって!」

健は髪色をほんのり桃色にして振り返った。

「…ッ、陽菜乃」

「健、わたし先に行ってるね」

翼は気を利かせて健と陽菜乃の2人っきりにしてくれた。

「はい、これ」

陽菜乃は小さな包みを健に差し出した。

「お誕生日おめでとう、ひーちゃん」

今日一日で言われた中で、1番最高に幸せなおめでとうに健の髪色はほぼピンクになっていた。

「開けても…、いい?」

「うん」

包みを開けると、中身は六角形の分厚いペンダントだった。中心にはクワガタ虫が彫られていた。

「これ…」

「知り合いにこういうの持ってる人がいてね。お店教えてもらってクワガタの探してたんだ。ひーちゃんカブトよりクワガタ派でしょ?」

「うん…、ありがとう………、すごく嬉しい」

「よかった~。あ、それ付けてあげるね」

陽菜乃はそう言うとペンダントのチェーンを手に取り、健の首に手を回した。

(~~~ッ!)

ほぼ密着した状態で陽菜乃のゆるふわヘアーやうなじから漂うメイプルシロップのように甘くふわっとした匂いに健は嗅覚から脳に最大級の衝撃を受けた。

「はい、できた」

健の胸に金色に輝くメダルが揺れていた。が、それ以上に健の精神が揺れていた。

「うん、とっても似合うよ、ひーちゃん」

陽菜乃がお日様のような笑顔で褒めてくれたが、そこを境に健の意識は無くなった。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

「ちょっと健!タケルってば!」

「はっ…!?」

翼に肩を叩かれて健は意識を取り戻した。

「あれ…、陽菜乃は?」

周囲には翼しかいなかった。

「もう帰っちゃったよ。2人で歩いて来たけど健、ほとんど心ここにあらずって感じだったよ」

「あぁ…、そっか」

「わたしもひなちゃんからプレゼントもらったんだ。ツバメの髪留め」

翼は早速付けた飛翔しているツバメを象った髪留めを見せてきた。

「へぇ、似合ってんじゃん」

健と翼はタスクからのお菓子を摘まみながら家路の途に着いた。

「ねぇ…健」

「ん?」

「健は進路って決めてる?」

「まぁね」

「それって普通の高校?」

「いんや、ちょっと…つーかかなり特殊かな。翼は?」

「わたしも、健とは違う高校になる。あそこは特殊だから」

「そっか…」

健と翼はしばし黙って歩を進めた。

「もしかして俺と離れるの淋しいの?」

「はぁ!?それはこっちの台詞だし!健がわたしのいない環境で1人で学校生活とか、むしろそれを心配してるし。野菜の好き嫌いあるし何か1つのことに集中すると周り見えなくなるし好きな子の前ではテンぱるし」

「よく言うよ!寝惚けてカーテン開けっぱで半裸で着替えてる奴が!それにたまにスカートの裾だって捲れてるの気付いてないだろ!岬や萌経由で教えてんの俺なんだからな!」

「何見てるのさ!?健のエッチ!」

「はぁ?例え翼の全裸見たって劣情なんて欠片も催さないし!」

「それはこっちもだし!弟の裸とか全っ然意識とかしないし!」

「はぁっ!?誕生日は一緒だろ!」

「わたしのが8時間早いし」

「そんなん誤差の範疇だろ!昔っからそうやって上から目線で姉気取んな!」

2人はかなり険悪な状況でにらみ合って・・・・

「………ふっ」

「………あはっ」

2人揃って失笑した。

「ま、15年もずっと一緒だったし、今さら別の高校行くぐらいで感傷的になることもないんじゃない?」

「うん、そうだね」

「これからもよろしく、翼」

「うん、こちらこそ、健」

 

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