暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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「絶対に負けられない戦いがそこにはある」  殺ジオ越後


野球の時間

椚ヶ丘中学クラス対抗球技大会

男子は野球、女子はバスケでA組~D組によるトーナメントで実施される。

そしてE組は1クラス余るという“素敵な理由”で野球部、女子バスケ部とのエキシビジョンマッチ(という名の見世物)が組まれている。

元野球部の杉野を中心に、E組野球チームが組まれ試合に臨んだ。

 

 

1番:木村  (中)

2番:渚   (捕)

3番:磯貝  (三)

4番:杉野  (投)

5番:前原  (二)

6番:千葉  (左)

7番:カルマ (一)

8番:タスク (右)

9番:健   (遊)

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

『これより、E組対野球部選抜の余興試合(エキシビジョンマッチ)を行ないます』

放送部部長荒川鉄平のアナウンスと共に、E組と野球部がグラウンドに揃った。

「おいおい、ずいぶん気合入ってんじゃねぇか」

タスクは自前の木製バットを準備しながらウォーミングアップを始めた野球部を見ていた。

「そりゃ野球部としちゃ全校生徒に良いとこ見せるチャンスだし、それに俺ら相手じゃコールドが当たり前。最低でも圧勝が義務だからあっちはあっちで情け容赦無くくるぜ」

一同が整列し、野球部キャプテン進藤と杉野が対峙した。

「学力と体力を兼ね備えたエリートだけが選ばれし者として人の上に立てる。杉野、お前はそのどちらも無かった選ばれざる者だ。そんな連中が表舞台(ここ)に残っているのは許されない。E組(そいつら)共々、二度と表を歩けない試合にしてやるよ」

進藤はそう言うとマウンドへと踵を反した。

「そうや殺センコー…、じゃなくて殺監督はどこよ?俺らにサインとかで指揮するっつってたよな?」

「タスク、あそこあそこ」

健に指差されたほうを見ると、ボールがいくつか転がっている中(の遥か後方)に殺せんせーが顔だけ地面から顔を出していた。

「烏間先生から目立つなって言われたから、ああして遠近法で紛れるって。サインは顔色で出すって」

「そうか…」

その殺監督から顔色サインが来た。

「なんて?」

伝令役の渚は手帳でサインの内容を確認した。

「え~と、①青緑⇒②紫⇒③黄土色だから…、“殺す気で勝て”ってさ」

「たしかにな、俺らにゃ殺センコーっつーもっとでっけぇ標的がいんだ」

両拳をガチっと打ち合わせたタスクに健も賛同した。

「野球部程度に勝てないで、殺せんせーが殺れるわけないか」

「うっし、おい杉野ッ!不破から教わった“アレ”やっぞ!」

「“アレ”か…、そうだな!」

杉野を中心に、9人は円陣を組んだ。

「それじゃ、自称選ばれし野球部を、選ばれざるE組が………、」

杉野は大きく息を吸った。

 

「ぶっ…、」

 

「 「 「 殺 す ! y e a h ! ! ! 」 」 」

 

 

 

アメフトが始まりそうな掛け声と共に、

殺意と触手に彩られた暗殺野球、プレイボール。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

一回表

『E組の攻撃、1番サード木村君』

「やだやだ、どアウェイの中学校のスター相手に先頭打者とか」

E組1番バッターの木村がぼやきながら打席に入った。

「フン、まずは雑魚か」

鼻で笑った進藤は初球から140kmの剛速球を投げた。

『これは凄いピッチャー進藤君、流石の剛球!E組木村棒立ち!バットくらい振らないとかっこ悪いぞ~』

荒木の実況で観客は声援とE組への嘲笑で盛り上がっていた。

「フン、一回表を進藤が3人で終らせて、裏の攻撃でこっちが10点取ってコールド勝ちだ」

野球部顧問の寺井も余裕で踏ん反り返っていた。

そんな木村に、殺監督は新たなサインを送った。

(…りょーかい)

『さあ、進藤君2球目…、投げた!』

 

コォン

 

「何!?」

『あーとっ、バントだ!良い所に転がした、内野誰が取るか一瞬迷った!』

その間に、木村は優々と一塁を踏んだ。

「チッ、こざかしい」

進藤はマウンドで舌打ちをした。

『2番、キャッチャー潮田君』

バッターボックスに入る直前、渚は殺監督からの次のサインを受けて頷いた。

 

コッ

 

『今度は三塁線に強いバント!前に出ていたサードの脇を抜かれて、これでE組ノーアウト一、二塁!』

(な、何ぃ~~~~~)

(こいつら何故こんなにバントができる?素人目には簡単に見えるだろうが、バントを狙った場所に転がすのは至難の技だ)

と、進藤と寺井監督は思っていた。

E組は殺監督の300kmの超速球や分身守備、脅●手帳の囁き戦術による精神攻撃の地獄の特訓を経験していたのだ。

そして、殺監督が進藤と同じく“とびきり遅く”投げる球でバントを練習していた。その練習の後では進藤の球は止まっているように見えている。したがって、バントだけなら充分レベルで習得が可能となる。

『ま、満塁!E組ノーアウト満塁!?ちょ、調子でも悪いんでしょうか進藤君』

3番磯貝もバントで出塁し、次のバッターは・・・

『4番、ピッチャー杉野君』

ヘルメットを被りつつ、杉野は殺監督のサインを確認し、バントの構えを取った。

(な…、なんだこいつら。今までこんな敵と…、戦ったことなんて…)

進藤は杉野の構えたバットにナイフの幻影を見るまでに情緒不安定になった。

(獲物を狙う躊躇の無い目………、俺が今やっているのは、本当に、野球なのか?)

進藤は杉野には無い文武を持っている。杉野の武力では進藤には到底敵わない。しかし、例え弱者でも狙い済ました一刺しで強大な武力を仕留めることができる。

(内角高めのストレートでビビらせてやる…)

進藤は杉野への第1球を投げた。その瞬間、杉野は構えをバントから打撃に握り替えた。

 

カキィンッ

 

『打ったー!深々と外野を抜けた~~!』

快音と共に打った球はバントしかないと思い込み油断しきっていた外野の守備を貫いた。

『走者一掃のスリーベース!…なんだよこれ想定外だよ…、E組3点先制~!』

(馬鹿な…、何故俺の球がことごとく見切られてんだ?全校生徒に俺の活躍を見せるこの場で、なんでこんな屈辱を選ばれた俺が…)

そして、ベンチで焦っている寺井監督の背後に・・・・

 

 

「顔色が優れませんね、寺井先生。お体の具合でも悪いのでは?」

「…ッ!?」

「すぐ休んだほうがいい。部員達も心配のあまり実力が発揮できていないようだ」

理事長浅野學峯がそこにいた。

「り、理事ちょ…、いや、私はこの通りげん…「病気で良かった」…きで…、」

理事長は自分の額を寺井監督の額に当て、その耳元で囁いた。

「病気でもなければこんな醜態を晒す指導者が私の学校に在籍しているわけがない」

理事長の言葉に寺井監督は気を失った。

「ああ、やはりすごい熱だ。誰か保健室へ。“その間監督は私がやります”」

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

「惜しかったねぇ」

バスケの試合を終えた翼が試合を振り返っていた。

「萌ちゃんアンクルブレイク何度も決めてたね」

「まぁね。姐さんから教わった視線誘導に身体の使い方、意図的に男の人とトラブれる技術の応用よ」

萌は胸元の谷間の汗で透けたTシャツをパタパタさせていた。

「岬ちゃんも相手のプレーをほとんど完璧に真似て凄かったね」

「うん、昔から色んな人を見てあれこれ真似をしていたから」

岬は人目を憚らずTシャツの裾をバサバサしているのでおへそがチラチラ見えていた。

「速水さんもあんな体勢からシュートが決まるなんて」

「ま、これも日頃の訓練の賜物かしらね」

ほとんど倒れた状態やゴールの裏側、3Pラインより後方からもシュートを撃って要所要所で得点を決めた速水凛香は試合中結っていた二つ結びのおさげを解こうとして…、そういえば自分ってビッチ先生と髪型被ってるなぁ動き易いしこのままでいいかと思い直し解くのを止めた。

「片岡さんもポジションがCなのにPGの役割までこなして、1人で30得点10リバウンド12アシストのトリプルダブルなんて凄すぎるよ」

「訓練で体力付いていたし、皆との連携も取りやすかったしね」

片岡は笑いながらバスケットボールを指の上で回転させた。

和気藹々としたE組女子の中で、茅野だけは暗い表情をしていた。

「カエデちゃん…?」

「ごめんね、私が足引っ張ったせいで負けちゃって………」

「そんなことないよ」

「女バスのキャプテンのぷるんぷるん揺れる胸を目の前にしたら怒りと殺意で目の前と“首筋が”なんか…真っ赤に染まっちゃって……」

「カエデちゃんのその巨乳に対する憎悪はなに?」

「まぁまぁ茅野っち、結構善戦して女バスも観客もドン引きしてしてたし、一矢以上報いたから良しとしようよ」

「さて、男子の野球は…?あ、雪~今どんな状況?」

「けほ…、あぁ萌か」

「あらすごいじゃない、野球部相手に先制してる」

「こほこほ…、ここまではね」

雪はマウンドを指差した。そこには野球部員が集まり、そこに理事長が歩み寄る。

「一回表からラスボスのご登~場~…、………どんなクソゲーだよ仮面ライダークロニクルかよ…………」

実況席でも動きがあった。

『…っ!え~、今入った情報によるりますと、顧問の寺井監督は試合前から重病で…、部員達も気にして野球どころではなかったとのこと。それを見かねた理事長が急遽指揮を取られるそうです』

観客から野球部への声援が上がり、空気がリセットされた。理事長はマウンドで円陣を組ませ“教育”を始めた。

『いくつか指示を出した理事長監督が下がりました。さぁここからどのような…、こ、これは何だ?!』

野球部員は内野が前進守備よりもかなり近くに布陣を敷いていた。

『守備を全員内野に集めてきた!こんな極端な前進守備みたことない!』

ルール上ではフェアゾーン内ならどこで守っても自由だが、バッターの集中を乱す妨害行為と見なすかは審判次第。当然審判は“あちら側”なので期待はできない。

殺監督も打つ手なしとサインを送れず、あっという間に5番前原、6番千葉、7番カルマが凡退し、3アウトチェンジとなった。

『あっという間に3アウト!サードランナー1歩も動けず!ピッチャー進藤君完全に復調です!』

 

 

 

1回裏

E組:3-0:野球部

杉野と渚のバッテリーは特訓で磨きをかけた変化球で野球部を翻弄していた。

『2者連続三振!』

しかし、野球部ベンチでは進藤が理事長からさらなる“教育”を受けていた。理事長もまた教育の名手であった。生徒を教えるのも、やる気を出すのも抜群に上手い。殺せんせーとやり方は似ているが、どこか対照的。この2人の采配対決はまだ始まったばかり・・・

「相楽君」

「おわっ!」

右翼を守っていたタスクの足下に突如殺監督が出てきた。

「いきなし足下に出てくんなよ、思わず踏んじまうとこだったぞ」

「次の回は君の打席からです。少し相手を揺さ振ってみましょう」

「揺さ振りねぇ…、あいつらに効くかねぇ」

「まぁ、それはただの布石。本当の揺さ振りはバットで殺りましょう」

そして杉野は3人目のバッターも三振に打ち取り、チェンジとなった。

 

 

 

2回表

E組:3-0:野球部

野球部は変わらず鉄壁の前進守備のバントシフトを敷いていた。その状況に対してタスクは・・・、

「…ったくよォ、ズル過ぎやしねぇか理事長センコー!こんだけ邪魔な位置で守ってんのに審判何も言わねぇしよぉ」

しかし、理事長は動じずタスクは標的を観客に変えた。

「なぁおい、お前ら馬鹿だろ?こんな守備位置になってもおかしいとも思わないなんてよぉ?野球理解できてねぇだろ?」

中間試験学年最下位からの馬鹿発言に、観客の一般生徒はキレた。

「小さい事でガタガタ言うなE組が!!」「たかがエキシビジョンの守備でクレームつけてんじゃないわよ!」「文句があるならバットで結果を出してみろ!!」

ブーイングの嵐に、神崎ははらはらしながらタスクを見守っていた。そのタスクはニヤっと犬歯を剥き出しに笑った。

「しゃーねぇ!ならいっちょぶちかますか!」

タスクは木製バットを手にバッターボックスに入った。

ピッチャー進藤は理事長の“強育”により大きく体を使って威圧するように4シームのストレート・・・、ではなく、カーブを投げた。

「はっ…、遅ぇ!」

 

カコォォォンッ!

 

唐突に投げられた変化球に完全に振り遅れたと思われたタスクのバットは、果たして猛烈なスピードで振られた。ボールは一気に外野まで飛んで行ったが、またしても外野は油断しきっていたので見失ってしまった。

「な…、おいボールは?」「どこだ?」「フェンスだ!」

外野が見つけたボールは外野フェンスに減り込んでいた。

 

 

「ムゥ…、あれこそは【剛の秘打法・破竹】!!」

突如、観戦していたE組女子の中に額に『大人』と書かれ辮髪にドジョウ髭の劇画タッチの顔になった殺せんせーが現われた。

「知っているの、殺大人?」

鉢巻を巻いた不破さんがそれに応じた。

 

 

【剛の秘打法・破竹】

切り出したばかりの竹を素振りし、付いている葉が全て落ちた時に会得できる秘打法。

その真髄は竹を振り回す強靭な上半身の筋肉とそれらを支える頑強な下半身の筋肉から繰り出される強力に不ず、葉を落とすために必要な居合抜きの如き速さにこそある。

かつてこの打法を極めた男は校舎の時計を破壊したという逸話がある。

破竹の勢いという言葉がこの秘打法から生まれたことには論を待たない。

集英社 鈴木信也作『Mr.FULLSWING』より

 

 

『え~…、協議の結果、只今の相楽君の記録はエンタイトル2ベースヒットとなりました』

タスクは2塁を踏んだ。

『9番ショート緋村君』

こちらもタスクと同じく木製のバットを手にした健が打席に立った。

(クソ…、さっきは油断した。ああいうタイプには変化球で簡単に打ち取れると思ったが、今度は絶対に打てない速球を投げてやる。それに、あいつは完全に素人だ。バットの握りが全然なってない)

バットを握る手を離している健に対し、進藤は140kmの剛速球を投げた。しかし・・・、

 

コキィィンッ

 

先ほどのタスクよりも鋭く速いスイングによって振られたバットは進藤の速球をいとも容易く外野へと運んだ。

 

「まさしくあれこそ、【静の秘打法・空蝉】!」

「あれが…!」

 

 

【静の秘打法・空蝉】

はるか戦国試合に編み出された剣術の鍛錬に端を発する打法。

糸で天井から垂らした紙を一刀で斬ることができた時に会得できる、剛の秘打法破竹をより洗練させた打法。

徹底的に動きから無駄を省き、全神経を集中させ、紙をなびかせることなく振るわれる神速のスイングは160キロを超える速球をも打ち返すと言われている。

この打法の鍛錬を編み出した武士は敵の怪しげな鎧に寄生されてしまい、現代で解放された後は現代文化にも適応してブレイブに生き続けたという逸話があったりなかったり。

集英社 鈴木信也作『Mr.FULLSWING』

 

ボールが外野に転がっている間にタスクは優々とホームイン。

そして健はその俊足であっという間に二塁を蹴り、三塁に向かった。その時・・・・

 

「ひーちゃ~ん、がんばれ~~!」

 

陽菜乃からの声援を受けた健は髪色を桃色にして三塁も蹴った。

「フン、素人め!」

外野からの返球を受けたの進藤はそのままホームの前に立ちはだかりブロックした。

「…ッフ!」

健はヘルメットを脱ぐとさらに加速し、グラウンドの土を抉るようなスライディングをかました。

「なんと…、【低駆緒負洲比度(テイクオフスピード)】!」

「三段階でスピードを上げる走塁術の奥義か!」

殺大人と剣不破太郎は冷汗を流していた。

 

 

ドバッ

 

「く…、見えな…」

健は視界を奪われ棒立ちとなった進藤の股の間を抜けてホームインした。

『ラ…、ラ…、ランニングホームラン!!まさかまさかのランニングホームラン!これでE組は5点目だ!どうなってんだよ、こんな展開ありえないだろ!?』

「そうか、相楽君と緋村君が下位打線だったのはこのためだったんだな、殺大人?」

「いかにも。これぞ【第二の刃戦法】」

 

 

その後、E組の攻撃は1番木村、2番渚、3番磯貝が凡退となりチェンジとなった。

 

 

 

 

二回裏

E組:5-0:野球部

快進撃を続けるE組だが、野球部の反撃が始まった。

『打った~~!!進藤君、長打!』

さらに5番、6番と連続ヒットで2点を返された。それでも7~9番は三振に取り、チェンジ。このエキシビジョンは特別ルールで次の3回が最終回となる。

 

 

 

 

三回表

E組:5-2:野球部

が、4番杉野、5番前原、6番千葉はあっさり凡退してしまった。

 

 

 

三回表

E組:5-2:野球部

「橋本君、手本を見せて上げなさい」

理事長の指示で1番バッターが取ったのは・・・、

『あーとっ!バント!今度はE組が地獄を見る番だ!』

1番がバントで出塁すると、続く2番バッターも同じくバント。

『野球部バント地獄のお代えしだ。同じ小技なら野球部の方が遥かに上!E組の守備はざる以下だ!』

実況の通り、E組は短期間でバントは習得したが、その反面守備はほとんど素人レベル。なのであっという間に・・・・

『ノーアウト満塁!ここで迎えるバッターは、我が校のスーパースター、進藤君!しかも、ここで一発が出れば逆転満塁ホームランだ!』

その時、右翼のタスクの足下に殺監督が現われた。

「相楽君、さっきの布石を活かす時がきましたよ」

「あいよ」

タスクは健に殺監督からの指示を伝えた。

「マジっすか…」

そして2人は内野を前進した。

『こ…、この前進守備は』

「バッターの集中乱す位置に立ってってけど、さっきそっちがやった時は何も文句が無かったし、文句はねぇよな、理事長センコー?」

「ご自由に。選ばれし者は守備位置くらいで心を乱すことはない」

理事長の言うとおり、進藤の集中力は“強育”により極限まで高まっていた。

「んじゃ、遠慮無く」

タスクと健はさらに近付き、ほぼ0距離まで迫った。

『ち、近い!前進守備どころか0距離守備!振れば確実にバットに当たる位置だ』

(は…?)

流石の進藤も集中が乱れた。

「来いよ、スーパースター」

「ピッチャーの投球は邪魔しないからさ」

タスクと健の挑発に、理事長が指示を出してきた。

「構わず振りなさい、進藤君。バットが当たって骨が砕けても打撃妨害を取られるのはE組の方だ」

(ナメやがって…)

進藤は2人の間から投げられた球を打つことより二人をビビらせることを意識してバットを大きく振った。

「…!!」

果たして、バットは2人にはかすりもしなかった。否、健とタスクがバットを完全に見切ってわずかに上体を反らして躱したのだ。

マッハ20の殺せんせーの暗殺で鍛えられた動体視力に、度胸と運動能力に関して言えば健とタスクはE組でもトップ。バットを避けるだけならバントよりも容易かった。

「遅いスイングだな…」

「だな、おいスーパースター、次は“殺す気”で振ってみろよ」

健とタスクの脅しに、進藤はすっかり呑まれていた。

「う…、うわぁあ!」

進藤は完全に腰が引けた状態でバットを振ったが、打球はホームベースに当たりバウンドした。

「よっ、と」

タスクは跳ねたボールを素手でキャッチするとキャッチャーの渚のミットに投げた。

『サ、サードランナーアウト!』

「渚、それをサードに」

健は三塁を指差した。

「し…、しまった!」

セカンドランナーは慌てて走り出したが、それより先に三塁手磯貝のグローブに渚からの送球が届いた。

『せ、セカンドランナーアウト!』

「磯貝、次は一塁だ。焦んなくていいぞ」

杉野の言葉の通り、バッターの進藤はバッターボックスでへたり込んで走り出していなかった。

『ば…、バッターランナーアウト………、ト、トリプルプレー?!?!ゲームセット!なんとE組が野球部に勝ってしまった。………なんだよおいあの戦力差で負けるか普通………?』

一瞬、会場はシーンとしたが、次の瞬間E組の女子から歓声が上がった。

「やったー!」

「男子やるじゃん!」

「相楽君すごい…!」

「ひーちゃんかっこいい~!」

タスクと照れながら健も、神崎と陽菜乃にサムズアップして応えた。

 

 

 

「………」

理事長は表情を崩さず静かに立つと踵を反した。

そんな理事長を野球ボール模様の殺せんせーはニヤニヤしながら見送った。

(これで不意討ちの中間試験の結果と合わせて一対一。次は期末でケリをつけましょう)

 

 

 

 

 

 

 

 




●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○
今回の使用技

【土龍閃】
今回はスライディングで土煙を巻き上げるように使用
【静の秘打法・空蝉】

タスク
【剛の秘打法】




今回はジャンプのスポーツマンガから色々ネタを使いました。
MrFULLSWING
アイシールド21
黒子のバスケ


ミスフルはアニメでも見てみたかった作品の1つです。
屑桐がお気に入りでした。
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