後編は15日に予定しています
温暖湿潤気候の日本に夏がやってきた。
椚ヶ丘の本校舎にはクーラーが完備され、生徒達は快適な環境で勉学に励める。
ただしE組は・・・、
「あぢ~…」
タスクが制服のYシャツのボタンを全部開けて晒しを巻いた上半身を肌蹴させてノートで仰いでいた。
「クーラーないとかありえない~~」
岬も男子の目を憚らずYシャツやスカートをパタパタさせていた。
「雪~、生きてる?」
「………」
「も、萌ちゃ~ん、雪君が返事をしないよ~」
「あぁ…、文字通り熱さで解けてダウンしてるわね…、殺せんせー、保健室連れて行きま~す」
そう言うとE組保健委員の萌が雪を保健室に連れて行った。
「だらしない。夏が暑いのは当然です。ちなみに先生は放課後寒帯に逃げます」
「「「ずりぃっ!!!」」」
「コーラ含んだ息で音の鎧を纏わせてよ!」
クラス中と不破さんから不満の声が上がった。
「んも~、しょうがないな~。では皆さん、水着を持って裏の沢まで来て下さい」
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
なんということでしょう、足首まであるかないかだった沢の水はかなりの深さまで溜められています。
そこにレーンが設けられ、プールサイドにはデッキチェアまで置かれ、そこには快適なプールが造られていました。
さらに水門で水位の調整をすれば魚を飼って観察もできるという生物好きな陽菜乃垂涎な設備まで備わっていました。
「さ、あとは1秒あれば飛び込めますよ」
全員一気に飛び込んでE組のプール授業が始まった。
泳いだりボールで遊んだり、潜ったりと各々楽しんでいたが・・・・
ピピピピ!
「相楽君!木の上から飛び込むのは止めなさい!下の人があぶないでしょ!」
「…うす」
ピピピピ!
「巻町さん!竹筒使った水遁の術はほどほどに!溺れたかと心配します!」
「…~…~」
と、水中でボコボコと返事しながら岬は中が空洞だと思わせていた竹筒を殺せんせーに向けると対先生物質の矢を吹き出した。が、あっさりビート版で防がれてしまった。
ピピピピ!
「緋村君!プールに入りながら余所見(倉橋さんの方)ばかりしていたら危ないですよ!」
「…っす」
(((小うるせぇ………)))
【殺せんせーの弱点:プールマナーにやたらうるさい】
自分で造ったプール(フィールドの中)で王様気分の殺せんせーにE組はありがたみ半減の視線を送っていた。
「かたいこと言わないでよ、殺せんせー。水かけちゃえ!」
「きゃん」
「…?」
陽菜乃から水をかけられるというご褒美的なことをされた殺せんせーに一瞬髪色を赤黒くした健は、しかし、次の瞬間そのリアクションに眉をひそめた。
「………」
さらにカルマがそっと近付いて殺せんせーが座っている監視台を揺らすと・・・
「きゃあぁっ!カルマ君揺らさないで!落ちる!」
ありえないほどテンパり出した。
そのリアクションに、E組の誰もがその時今までの中で最も有効的な弱点に気付いた。
「べ、別に今泳ぎたくない気分なだけだし、水中だと触手がふやけて動けなくなるとか、女になる呪いとか受けてないし」
【殺せんせーの弱点:泳げない】
「殺せんせーはまさか、ヌルヌルの実の触手人間!?」
「不破さん、ちょっと黙ってようか」
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
翌日、そのプールが滅茶苦茶に壊されていた。デッキチェアも飛び込み台も壊され、ゴミまで投げ込まれていた。
「ちょ…、何これ!?姐さんが厳選したセクシー水着を披露しようとしてたのに!」
萌の後ろではバスタオルを巻いたイリーナが茫然と立ち尽くしていた。
「あ~あ、こりゃ大変だ」
「ま、いいんじゃね。プールとかめんどいし」
そんな状況をニヤニヤしながら吉田、村松、そして寺坂が見ていた。
E組の誰もが犯人を確信していたが・・・
「犯人探しなんてしなくていいですよ。ほら、これで元通り。いつも通り遊んで下さい」
殺せんせーがマッハで破壊されたプールを復元してしまった。
寺坂組、というより寺坂の暴挙はこれで終らなかった。
放課後のヌルヌル合宿に抜け駆けして参加していた村松を突き飛ばしたり、
吉田が殺せんせーとバイクの話で盛り上がっていると廃材で造られたバイクを蹴り壊したり、
それを殺せんせーに注意されるとスプレー缶を破裂させて中身を撒き散らした。
「寺坂君、ヤンチャするにもほどがありますよ!」
「触るんじゃねぇよモンスター。気持ち悪ぃんだよ、テメーも、モンスターの言いなりになって仲良しこよししているE組(オメーら)も」
寺坂の発言にE組は険悪なムードになった。
「なにがそんなに嫌かね~。気に入らないなら殺せばいいじゃん。せっかくそれが許可されている教室なのに」
そんな中、カルマだけは寺坂に意見した。
「んだよカルマ、てめぇ俺に喧嘩売ってんのか、上等だよだいたい…っ!」
買い言葉を吐く寺坂の口をカルマを容赦無く塞ぎにいった。
「ダメだってば寺坂。喧嘩なら口より先に手を出さなきゃ」
虚勢を見透かされた寺坂はそのまま教室を飛び出していった。
翌日、寺坂は最大の暴挙に出た。
放課後にプールで殺せんせーを暗殺するから全員協力しろ、と一方的に命令してきた。
「わたし行かな~い」
マ●クのポテトを摘まんでいた陽菜乃が言うと他の生徒達も、吉田と村松でさえもうついていけないと不満をこぼした。
「みんな行きましょうよ~」
と、何故か昨日から涙・・・もとい鼻水が止まらず教室中を粘液で埋め尽くした殺せんせーが参加を促した。というか粘液が固まって全員身動きが取れなくなっていた。
「せっかく寺坂君が殺る気を出して先生を殺そうとしているんです。みんなで協力して気持ち良く仲直りです」
「「「まずあんたが気持ち悪いわ!!!」」」
● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎
殺せんせーの顔を立てて、E組は放課後プールに集まった。ただし、カルマと雪だけはサボっていなかった。
「おら、さっさと入れよ」
寺坂は自分以外の全員をプール全体に散らばらせ、渋っていた竹林をプールに蹴落とした。
「緋村、てめぇもさっさと入れよ」
プールサイドに腰掛けた健は水着にジャージの上だけ肩に羽織り、納刀状態の小太刀を左肩にもたれかけさせていた。
「…小太刀が錆びるからここでいい」
あまりしつこく言うと刀の錆びにするぞ、と言わんばかりの目付きで睨まれた寺坂はそれ以上何も言わなかった。
「…覚悟はできたかモンスター」
そして寺坂は銃を殺せんせーに向けた。
「もちろんできてます、鼻水も止まったし」
「ずっとてめーが嫌いだったよ。消してやりたいほどにな」
「ええ知ってます。暗殺(これ)の後ゆっくり話しましょう」
寺坂が引鉄を引いた。
次の瞬間・・・・
ドグァッ!!!!!
突如水門が爆発した。
「え…、お、おい…うそだろ…、」
溜められた水は激流となりE組を飲み込んだ。
「うわっぷ…」
「ヤバイ、流される…」
何とか水から這い出ようとするが激流がそれを許さなかった。
「…~ッ!」
健は激流に沿って猛スピードで走った。そして陽菜乃を見つけるとその髪色は一瞬だけ緋色になった。
「ッ!ッ!ッ!」
激流の水面を疾走し、陽菜乃を抱きかかえるとそのまま反対岸に飛び移った。
「大丈夫?!」
「けほっ…、えほ…、うんちょっと水飲んじゃっただけ…」
「よかった…」
髪色が元に戻った健は流されたE組を追った。
「カエデちゃん!」
翼は泳ぎがあまり得意ではない茅野の手を取ると何とか岸に手を伸ばした、が、あと数cm届かなかった。
「え…?」
と、その翼の腕を掴む手が・・・
「雪君!?」
カルマとサボっていた雪が長いを目一杯伸ばし翼の手を掴んでいた。
「ありがとう雪君」
「ありがと…」
カエデは雪から微妙に視線を反らしてお礼を言った。
「カルマとサボってたら爆発音して駆けつけたら…、これどういう状況?」
「くっ…、」
一方、萌と岬も激流に飲まれていた。
「こん…の!」
岬は柄の輪の部分にロープを巻いたクナイ6本を木に向かって投げた。するとロープが蜘蛛の巣の様に広がった。流されてきた生徒はそこでロープを掴んで一時的に流されるのを凌いだ。
「萌っち、捕まって!」
岬は手を伸ばして萌を掴むとロープに沿って岸まで辿り着いた。その間に飛んできた殺せんせーがまだ取り残されていた生徒を掬い上げていった。
「大丈夫…?」
「ええ…、なんとかね」
その時、萌はあることに気付いた。
「ちょっと…、あのロープ切れそうよ!」
「ヤバ…!」
その時、タスクが岬の張った蜘蛛の巣の前に立ちはだかり切れたロープを掴んでその場で踏ん張り自ら壁になり流されてきた原さんを腹で受け止めた。
「ぐふっ…」
「ご、ごめん…」
「………なんともねぇよ」
その原さんも殺せんせーが水を吸って膨れた触手で掬い上げた。
「これでだいたい助かったか…?」
と、タスクは激流の中にあるものを見た。
「ッ神崎!」
それは激流に飲まれた神崎だった。
「っと…、」
タスクは神崎を抱き止めた。
「大丈夫か!?」
「あ、相楽君…、う、うん……大丈夫だよ」
神崎の無事を確認すると、タスクは一瞬気を緩めてしまった。
「相楽!危ない!」
岬が叫ぶと同時に、流されてきた鉄製のプールの水門が激流で跳ね上がり・・・、
「ッ!」
「あ…っ!」
タスクと神崎に激突した。
●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○
今回の技
巻町岬
暗殺飛クナイ・鉄砲魚
水中から対先生クナイを小さくしたのを仕込んだ吹き矢で狙う。
ただし潜水時間が長くなると吹き矢の速度と威力が落ちる。
暗殺飛クナイ・蜘蛛の巣
ロープで繋いだクナイを投網のように投げて殺せんせーの動きを封じるつもりで考案した。