暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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水飛沫の時間

「ん…」

神崎は目を開けた。

「あれ…」

頭がぼうっとする。

「よぉ、起きたか…」

頭の上から声がするので見上げるとすぐ近くにタスクの顔があった。

「きゃっ…、さ、相楽君?!」

「あんま動くな、じっとしてろ」

神崎はタスクが苦悶の表情を浮かべているのに気づいた。そして周囲を見下ろすと・・・・

 

以前転校してきたがその日に休学した堀部イトナとその保護者シロがいた。

そして二人の前には触手が膨れ上がり動きが鈍くなった殺せんせーがイトナの触手攻撃に晒されていた。

その周りにはE組が集まり半分は防戦一方な殺せんせーを、そしてもう半分の視線は自分たちに向いていた。

 

「そうだ…、私達…」

神崎はようやく状況が整理できた。

プールの水門が爆破され激流に飲まれたところをタスクに助けられた。

そこに鉄製の水門が流されてきてぶつかりそうだったのをタスクが殴って反らし、直撃こそしなかったが頭部にかすった自分は気を失ってしまったのだ。

 

そして今神崎はタスクに抱きかかえられ、タスクは神崎を抱えたまま木の枝に腕一本でぶら下がっていた。

「殺センコーに掬い上げられたまではよかったんだが、乗っかった枝が折れちまってこのざまよ………」

 

ポタ・・・ポタ・・・ポタ・・・

 

神崎の頬に赤い雫が垂れた。

「さ、相楽君血が!」

木の枝を握っている、二人の生命線である右手からは止めどなく血が流れていた。

「気にすんな。ちょっと鉄をぶっ叩いただけだ」

「でもその傷…」

その時、地上でのバトルに動きがあった。

 

 

「さぁ足元の触手も水を吸って動かなくなったね。さぁイトナ、まずは邪魔な触手を全部落とし、その上で“心ぞ…”」

 

「オイコラ!シロ!イトナ!」

 

水門に仕掛けた爆弾を悟られないようにプールを破壊させ、

弱点である水を調整するための粘液を出し尽くす薬剤を散布させ、

さらにプールの水を溜めている沢の上流から触手生物の動きを鈍くする薬剤を混入させ、

シロに操られて今回の実行犯(となってしまった)寺坂が殺せんせーとイトナの間に割って入った。

「よくも俺を騙しやがったな…」

「まぁそう怒るなよ、ちょっとクラスメイトを巻き込んだだけじゃないか。クラスで浮いていた君にはちょうどよかっただろう?」

一切悪びれないシロの態度に寺坂は完全にキレた。

「うるせぇ!てめぇらは絶対に許さねぇ。イトナ、俺とタイマン張れや!」

寺坂はYシャツを脱ぐと楯のように広げた。

「寺坂君、危険です!」

「うっせぇっ膨れタコ、すっこんでろ!」

「クス、布切れ1枚で触手を防ごうなんて健気だねぇ…。黙らせろイトナ、殺せんせーに注意しながらね」

 

 

「寺坂君!」

神崎とは対照的にタスクは落ち着いていた。

「大丈夫だ、さっきカルマの奴が寺坂に何か指示出してた。カルマの悪知恵にバカだけど体力と実行力だけはある寺坂が組めば…」

タスクはじっと待っていた。必ず来ると確信しているチャンスを・・・

 

 

イトナの触手が寺坂を殴りつけた。当然シャツ1枚程度では防げるわけもないのだが、ガタイだけはいい寺坂はそのまま触手に喰らいついて放さなかった。

「よく耐えたね、ではイトナもう一発だ」

 

その時、不思議なことが起こった。

 

「くしゅん!くしゅん!くしゅん!」

 

イトナが突然くしゃみをしたのだ。それも何回も。

「…?」

状況が理解できていないシロに、カルマはいつもの挑発口調で解説を始めた。

「寺坂のシャツ、昨日と同じのなんだよ。つまり、殺せんせーの粘液ダダ漏れにした成分がたっぷり染み込んでるの。それって同じ触手を持つイトナもただじゃすまないってことだよね」

カルマは自分に注意を向けさせながら背後ではハンドサインでE組に指示を出していた。

「そしてこの水も…」

イトナとシロが隙を見せた一瞬でイトナの前に現われた髪を赤黒くした健は抜刀と同時に身体を大きく回転させ、逆刃の小太刀の刀身を横にすると水面を叩いた。

「おおっ!!」

 

バシィッ!

 

強烈な水の瀑布を防いだイトナの触手は殺せんせーと同じように膨れ上がり動きが鈍くなった。

「タスク!」

 

 

ただ名前を呼ばれただけだが、樹上のタスクは瞬時にその意図を理解した。

「神崎、舌ぁ噛むなよ!」

「え…」

タスクは神崎を胸にしっかりと抱き締めると、手を離した。

 

バシャァッッ!!

 

タスクが盛大な水飛沫を上げて着地すると同時に、カルマは親指を下に向けて合図を出すと、次々にE組の生徒が飛び込み水飛沫を上げてイトナに水をかけた。

「だいぶ水を吸っちゃったねぇ」

カルマが悪魔のような笑顔でニタニタ笑った。

「で、どうする?万全状態でもお前の触手程度なら見切れるそ」

健は血振りの要領で刀身についた水を振り払うと素早く納刀した。

「その膨れ上がった触手でこれ以上殺るってんなら………、この小太刀、反すよ?」

抜刀体勢を取った健の赤黒い髪は黒みが増していた。E組を(というか陽菜乃を)危険な目に合わせタスクもあと一歩で危険な状態に陥りそうになった怒りから口調が京都での状態に近いものになっていた。

「そもそも、皆あんたら(と、ついでに寺坂)のせいで死にかけてるし、まだ続けるなら、こっからはE組のステージ、全員で水遊びさせてもらうわよ」

吹き矢を水鉄砲代わりに口に構えた岬を筆頭に、水をかけられる葉のついた枝や水の入ったビニール袋を構えた生徒達を前に、さしものイトナも迂闊に動けなかった。

「………してやられたな。丁寧に積み上げた戦略がたかが生徒達の作戦と実行力で滅茶苦茶だ」

シロは頭巾の奥で溜息を吐くと踵を反した。

「ここは引き上げよう。触手細胞は感情によって左右される危険なシロモノ。この子らを皆殺しにしようものなら、半物質臓がどう暴走するかわからんからな。………“心臓”の破壊はまた次の機会だ………」

その呟きを、奥田と耳の良い岬は聞き逃さなかったが何のことかまでは分からなかった。

「ッ~…!」

イトナはまた暴走しそうになり、抜刀体勢の健と睨み合いになった。

「どうです?楽しそうなクラスでしょう。そろそろみんなと一緒に暗殺(勉強)しませんか?」

が、顔がパンパンに膨れ上がった殺せんせーによって戦意を削がれてしまった。

「………フン」

イトナは崖の上まで一気に飛び上がるとシロ共々姿を消した。

そして、すぐさま萌によってタスクの傷の手当てが施された。

「ん…、骨に異常は無いわね。というかこれって割と最近の傷が塞がってたのが開いたって感じね…」

「あぁ、まぁちょっとな」

タスクは手当ての刺激にガマンしながら適当に答えた。そんなタスクを神崎は心配半分、申し訳無さ半分な表情で見ていた。

「雪君、さっきはありがとう。なんか雪君には助けてもらってばっかりだね、カエデちゃん」

「え…、あ、うん」

「………」

茅野は翼から話し掛けられると言葉を濁し、雪もそっぽを向いた。

「それにしても、殺せんせー膨らんだね~。獣電池の15番でも使ったみたいに」

「ヌルフフフ、感謝していますよ皆さん」

殺せんせーはコミカルさが増した顔でぼそりと呟いた。

 

 

「………まぁ、“奥の手”はまだありましたがね………」

殺せんせーの“奥の手”が何なのか、それをE組が知るのはまだもう少し先のこと・・・。

 

 

 




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今回の技
土龍閃・瀑
sxsオリジナル
小太刀で水飛沫を巻き上げ相手にぶつける

相楽タスクの弱点②【右手に古傷がある】
E組送りの原因となったゲームセンターでの騒動の際、不良が筐体ゲームを投げつけそれから神崎を庇った時にガラスで切っている。
日常生活は何の支障もないが、強い衝撃を受けると傷口が開いて出血する。




岬「相楽って喧嘩好きなわりに寺坂とやったことないよね」
タスク「あん?だってE組(身内)だし」
萌「あら意外」
タスク「そもそも俺は強い奴との喧嘩が好きであって弱い奴い喧嘩吹っかけてイジメル趣味はねぇぞ」
翼「あ~…、うんそうだね」
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