一学期末試験、開戦です
椚ヶ丘は中高一貫の進学校。中等部三年の時点で高校の範囲を教えるのは珍しくなく、この場合それは、数学・理科、そして英語。
殺シアム【英語】
「うわっ!?」
渚は振り下ろされた握り懐剣を躱した。
「大丈夫?」
「う…、うん。中間よりも速いね」
中村と渚の周囲では他の生徒達が強敵(難問)の配下(小問)に次々と殺られていった。
「ふん、どいつもこいつもテストも問題でやられてやがるな」
と、そこに耳たブサイク、瀬尾が現れた。所々かすり傷を追っているが、ほぼノーダメージで強敵(難問)の下に辿り着いたようだ。
「親の仕事でLAに一年いた間に基本的な会話は全て覚えた。この単語も文法もその範範囲内だ」
瀬尾はハンマーを振りかぶった。
「今さら中学英語で躓くかよ!」
果たして、瀬尾の一撃(解答)は当たった・・・・かに、見えた。
「消えた!?」
頭頂部が尖がった問スターはその大きな身体からは想像できないほどの速度で瀬尾の背後に回った。
「何故だ!?満点解答のはずだぞ」
「耳たぶ同様、だらしない男ねぇ」
そこに、鉄槌を担いだ萌が現れた。問スターは次のターゲットを萌に切り替えた。
一瞬で背後に回り握り懐剣を振り下ろした。しかし、そこに萌の姿は無かった。
「そこそこ速いけど、ケン君とタスクの特訓をいつも間近で見てる私には欠伸が出る速度よ」
萌は問スターよりも素早く動き背後に回っていた。問スターはさらに速度を上げるが、萌はそれ以上の速度で背後に回り、それをくり返していくと問スターの膝はその巨体の体重と移動の速度による負担に耐えられず壊れてしまった。
「しっかり読み込めば、これが名作文学からの引用だって気づくわよ」
膝をついた問スターを見下ろしながら萌は鉄槌をクルクル回し始めた。
「見てなさい」
すると、萌の周りに幾つもの解答例が浮かび上がった。
「気取ってツマラナイ女とお茶して腹下すくらいなら…」
萌はその中から雑で簡潔な口語体を鉄槌で選んだ。
「読書でもしなさい」
問スターが最後の悪あがきに萌に向かって覆い被さるように飛び掛った。しかし、萌は鉄槌の柄を地面に突き刺すと柄を伸ばし問スターの頭上高く上がった。
「やぁっ!」
バンッ
問スターの額に叩きつけられた大槌小槌の一撃は、花丸満々満点解答だった。
殺シアム【理科】
「そぉ~ら~!」
小山は持ち前の暗記で覚えた知識を『記憶野の閃光』として杖から撃ち出し、巨大な問スターの鎧を一枚一枚弾き飛ばしていった。
しかし、肝心要の頭部の甲だけは無傷のまま、その問スターの肩に乗っている小柄な頭でっかちな老人の反撃を躱すのに精一杯だった。
(…何故だ、ちゃんと暗記したはずだぞ)
何度攻撃(解答)しても甲は無傷なままだった。
それは健も同じだった。
「くっそ…、両足(生物)と両腕(地学)の鎧(問題文)の隙間から斬り込んだ(解答)けど、あの頭部の甲(化学)の最終問題が斬れない(解けない)…」
その健目掛け、問スターは右手一本で軽々と巨大な剣を振り下ろした。
「うぉっと!くっそ、流石に手強い。力任せに見えてちゃんと手の内を締めてやがる…、奥田さんは大丈…、夫ッ?!」
健は突如起こった大音量の咆哮に小太刀を思わず取り落としそうになった。
「うそ…」
健の視線の先では、奥田が巨人の肩によじ登っていた。
「大丈夫、わかるよ。あなたのことが」
奥田はただ暗記しただけの言葉ではなく、問スターのことをちゃんと理解している、そのことを伝える(解答する)と、問スターは吠え、甲の忍緒を噛み千切ると、甲が外れた。その下の素顔の問スターは歓喜の涙を流していた。
科学にも国語が大切。殺せんせーの教えを奥田はこの土壇場で実践したのだ。
「………」
そして、剣を健に向けた。それは、尋常な立会いの申し込みだと、直感で悟った。
「あの、緋村君…」
「奥田さん、ちょっとそこ退いて」
健がそういうと問スターは奥田を掌に乗せてそっと地面に降ろした。
「………」
問スターは右手で握った剣を振り上げた。小細工無しの一刀勝負の構えだった。
「いざ…、尋常に………」
小太刀を納刀した健は身を低くし構えた。
「勝負!」
健が殺シアムの地面を蹴って問スターに肉迫する。問スターは未だ剣を振り上げたままだった。しかし・・・
「ッ、両手持ち!?」
問スターは剣を両手で握った。両手で持てば威力は片手で振るより上がり、何より振り下ろすスピードも速くなる。
ズドゥンッ!
「緋村君!」
問スターの一撃は殺シアムの地面を大きく抉った。巻き上がる砂埃に奥田は健がやられたと思った。
「あ…!?」
しかし、その砂埃を突っ切り、健が問スターに突っ込んだ。健は自分のパワーでは防ぐことはできないと瞬時に判断し、さらに速度を上げ敢えて懐に飛び込んだのだ。
「おぉっ!」
健は問スターの膝を駆け飛び上がると顎を納刀状態の小太刀の柄頭で打ち上げた。
「…ッ!」
果たして、問スターは一瞬昏倒しかけたが・・・
「チッ…、やっぱ倒し(完全解答)きれなかったか…」
健は問スターの平手打ちで殺シアムの地面に叩きつけられた。
殺シアム【社会】
「てやぁ~!」
岬は両手に三本ずつ握った飛クナイを肥満体の腹に一物ありそうな問スターに打った。が・・・、
「ちょ、全然利いてないんですけど~!」
アフリカ大陸が描かれた腹に飛クナイは刺さりはしたが、分厚い脂肪に阻まれほとんど跳ね返されてしまった。
肥満体問スターはぶよんぶよんの体を縮めるとまるでゴムマリのように殺シアムを縦横無尽に跳ね回り、生徒達はボーリングのピンのように吹っ飛ばされていった。そして、茫然と立ち尽くしていた荒木鉄平の真上に着地した。
「あ~らら、あんだけ偉そうに言ってたくせに即死じゃん」
「巻町!」
そこに、雑魚問スター(小問)を倒した(解いた)磯貝が駆けつけた。
「あれ、中々の強敵だな」
「アフリカ開発会議の首相会談の回数かぁ…、」
岬はこめかみに指を当てて数秒考えた。
「う~ん、しゃ~ない!あたしが隙を作るから、磯貝あとよろしく!」
岬は制服の背中からくの字型の手裏剣を投げた。問スターは形が変わるほどしゃがんで溜めると、凄まじい勢いで上空に飛び上がって躱した。
「もう一発!」
岬は左手に楯のような篭手を装着すると紐を引いて回転させながら打ち出した。一直線に迫る円形手裏剣を、問スターは空中で体を捻って躱した。
「おりゃぁっ!」
岬は右腕からリング状の手裏剣を連続して打ち出した。しかし、それすら問スターはぼょんぼょんと跳ねて躱してしまった。しかし、流石に体勢が崩れ着地してしまった。
「磯貝~~!」
岬が叫ぶと剣を構えた磯貝が問スター目掛け斬り込んだ。問スターはすぐさま跳躍の溜めに入った。そこに・・・
「よしっ!」
果たして、最初に岬の投げたくの字型手裏剣が戻ってきて時間差で問スターの後頭部にクリーンヒットした。
「緋村の、見様見真似!」
磯貝が全力で振り下ろした剣は問スターを直撃、地面に減り込んだ。
「巻町、ナイスサポート!」
「ニシシッ」
磯貝と岬がハイタッチを交わすその後ろ・・・、問スターの腹から何か黒い影が飛び出て殺シアムの外へと去っていったが、誰も気づいていなかった。
殺シアム【国語】
そこでは頭上から降りかかる爆弾に生徒達は戦々恐々としていた。
「神崎さん、大丈夫!?」
そんな中、翼はゆったりと最小限の動きで爆破を巧に躱し、地上部隊(小問)を薙刀で斬り伏せていった。
「うん…、なんとか…、でも厄介だね制空権を取られると」
「………!…、…!」
2人の後ろでは榊原が必死こいて爆発から逃れつつ、何やら無駄に凝った臭い台詞を叫んでいるが、爆音でほとんど聞こえなかった。
「よし、有希子ちゃん、脱いで」
「えっ…!?」
「あ、ごめん上着と、それに薙刀も貸して」
神崎は言われるがまま制服の上着を脱いで翼に渡した。
「よし、わたしがあいつを落とすから」
翼は爆心地に向かって駆け出した。健ほどではないにしろ、元陸上部木村に匹敵する速さだった。
ドッ、バー―ン
「ッ、明神さん!」
翼の頭上に爆弾が落とされ、翼はまともに喰らってしまった・・・・かに見えた。
「上?!」
神崎が上空を見上げると蝙蝠のような痩せ細った問スターのさらに上、薙刀二本を上着に通して、文字通り翼のように広げ爆風に合わせて飛び上がった。
「はぁっ!」
翼は両手の薙刀を振るい問スターの飛膜を斬り裂いた。が、長柄武器の二刀流を扱うには翼は身長と手の長さが足りなかった。問スターは上体を翻すと翼に爆弾を投げつけようとした。
その時・・・
「当たって!」
地上の神崎が黄色くごつい弓を撃って問スターの腕を撃ち抜いた。
飛行能力を失った問スターはなすすべなく地面に落ちた。
「よっ…、と」
翼は着地すると神崎と並んだ。
「有希子ちゃん、そういうのも使えるんだね」
「ええ」
淑やかに微笑んだ神崎は弓を分割して鎌二刀流にした。
「それじゃ、有希子ちゃん」
「ノーコンティニューでクリアしましょう、明神さん」
殺シアム【数学】
「お~お~、みんな必死だね~」
斜に構えたカルマはサブマシンガンを肩に担いで戦場を歩いていた。脇はがら空き、顎を突き出し周囲を見下して、一見隙だらけだが問スターの部下(小問)が襲い掛かるとあっさり躱し、足払いを喰らわせ、ほぼゼロ距離でサブマシンガンを連射した。そうしてカルマは余裕をひけらかしながら殺シアムの奥に佇む問スターと対峙した。
「はぁ~ん、なんか面白い武器持ってんね」
問スターは槍の穂先と反対側に鉄球がついた武器を持っていた。そしてその両目は隠されていた。
「ちょっと、カルマ…、油断しないで」
そこに四つのパーツを組み合わせた銃を持った雪がやってきた。こちらは一体一体確実に、しかし圧倒的スピードで倒して来たようだ。
「わかってないね~、紫村。通常運転で勝ってこその完全勝利。今から見せてあげるよ」
問スターは槍の穂先と鉄球の乱舞を2人に繰り出した。雪は十分な距離を取ったが、カルマは軽く距離を取っただけでサブマシンガンを乱射した。
砂埃が舞い上がり視界が塞がれた。その中にカルマは迷わず足を踏み入れた。
「ん~と、そこかな」
カルマは適当な方向に銃口を向けて発砲すると、果たして問スターは武器を旋回させて弾丸を弾いた。と・・・、その武器が柄の半ばで真っ二つになった。
「チャ~ンス」
カルマはそれを武器が壊れたと思い込み無警戒に足を踏み入れた。
「ッ!」
問スターの武器は壊れたのではなく、分割されただけだった。槍の穂先の部分を握り背中の亀の甲羅の楯を前に突き出し、カルマの視界を完全に塞いだ。
「チッ…!」
カルマは咄嗟に横に跳ぼうとしたが・・・
ザク
甲羅の楯の横から突き出された穂先がカルマの太ももに刺さった。
「このッ…!!」
カルマはサブマシンガンを乱射したが、弾丸は全て楯の丸みで反らされてしまった。
そして・・・・・
●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○
今回の技
龍昇閃・砕
柄頭一点集中攻撃(修学旅行編での龍槌閃・砕の逆バージョン)
萌
大槌小槌 判・伸
岬
変わり手裏剣
くの字・円形手裏剣・篭手輪手裏剣
おまけ
磯貝
見様見真似龍槌閃
神崎
ガシャコンスパロー
問スター・一学期期末試験編
英語:尖角(十本刀じゃないけどでかくて丁度いいかな、ってw)
理科:不二・才槌(自分を理解されて鎧を脱ぐという描写的に不二しかいない。あと、小山と才槌を戦わせたら面白いと思った)
社会:夷腕坊(なんとなく。てか、消去法)
国語:刈羽蝙也(神崎と夷腕坊を戦わせたくなかったので)
数学:魚沼宇水(カルマの鼻っ柱折るならこいつしかいないかなと)
鎌足、安慈、宗次郎は別の機会に
というか、予告になりますがこの中の一人夏の孤島編に出します
次回は試験結果
果たして、ここのE組は何本破壊できるでしょうか