暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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夏休み編開始です
思った以上に長くなったので、ひとまず今日前編
今月中には後編載せます


夏休み―前半
陽菜乃との時間


A組との一学期末試験対決は、E組が4対1で勝利。

そこで得た特別夏期講習・・・、とは名ばかりの沖縄リゾート二泊三日の旅を利用し、四方を海に囲まれたそこで殺せんせーの触手を家庭科も合計した9本を破壊し一気に攻める大規模暗殺の計画が進めらることになった。

結果を残した者も、残せなかった者も、そこに向けて刃を研ぎ澄ませている。

 

 

・・・・・・・のだが、

 

 

「………どうしてこうなった」

一学期末試験では学年40位という結果を残し海外出張で父親不在の健の現在の保護者である翼の父弥七はE組から本校舎への復帰を提案されたがE組残留を希望した緋村健は、現在寝袋に入っていた。

 

その隣には・・・、

 

「すー…、す~…、」

 

気持ち良さそうに寝息を立てている倉橋陽菜乃がいた。

 

「………眠れん…、」

 

何故このような状況になっているかというと・・・

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

期末試験が終わり、殺せんせーから二重丸の特別評価をもらった健は陽菜乃と一緒に以前から探している“アレ”について話し合っていた。

「ねぇひーちゃん、夏休みのあたまにさ、ちょっと広い範囲に仕掛けして“アレ”を捕まえたいんだけど」

「ん…、いいよ。いくつくらい?」

夏休みになると離島に行くまではほとんど会えないと思っていた陽菜乃からのお誘いに、髪と頬をほんのりピンクにしながら、しかし平静を装って健は訊いた。

「んっとねぇ~…、だいたい二十箇所くらい?今回は今までいけてない校舎の裏のさらに上の方とかまで仕掛けようと思って」

「分かった。その…、いつにする?」

「じゃあ今からちょっとE組の理科室で準備しよ。烏間先生には使う許可もらってるから」

普段使っている教室の校舎の反対側にある理科室に行くと、やたらあまったるい匂いが充満していた。陽菜乃は実験用の冷蔵庫から大量のパイナップルや黒くなったバナナ、皮がしわしわになったリンゴを取り出した。さらに引き出しから包丁も2本。

「すご…、どうしたのさ?こんなに…」

「近所の八百屋さんに熟れ過ぎて売り物にならなくなったのタダで貰ってきたの~」

萌、矢田、それに陽菜乃の3人は特にイリーナに懐いていて、直伝の接待術や交渉術を学び、それに陽菜乃が元々持っている人懐っこさ、人たらしの才能が合わされば、この程度の材料の調達はお手の物だった。

「まずはこの材料を大体一口くらいに切ろう」

「わかった」

健は切りにくいパイナップルを手にして、陽菜乃には柔らかく切りやすいバナナを任せた。

食べるわけではないので外側の皮を削ぎ、そのままサイコロ状になるように芯ごと切っていった。

「やっぱりひーちゃん切るの上手いね」

「ま…、昔から翼が食事作る時は材料切るのは俺の役目だったから」

「そういえば、前不破ちゃんになんか切ってってお願いされてなかった?」

「あ~…、ト●コみたいに果物放り投げるから逆刃の小太刀(これ)で空中で斬ってみて、ってね。流石にできるか、って断ったよ」

健はパイナップルを切り終えると、リンゴを切り始めた。

十数分も経つと全て切り終え、果物がバットに山盛りになっていた。

「それじゃ…」

陽菜乃はさらに冷蔵庫から茶褐色の一升瓶を取り出した。

「それって…」

「うん、焼酎。ビッチ先生が酒屋さんからせしめたんだけど、味が好みじゃなかったから好きに使っていいってさ」

(マジかよ…あの人…、未成年の飲酒を少しは考えろよ、仮にも教師なんだから…。いやまぁ陽菜乃に限ってそれはないだろうけどさ…)

そんな健の心配を余所に、陽菜乃は無邪気な笑顔で「たぱたぱ~」と言いながら焼酎を果物にぶちまけた。

「さて、最後は…」

陽菜乃は紙袋からベージュ色の物を大量に出した。

「これ何?」

「ストッキング」

「………は?」

よくよく見ると、確かにそれは女性が脚に穿く衣類ストッキングで、ふくらはぎの部分が伝線していた。

「切った果物をこれに入れてね」

陽菜乃はストッキングを広げるとぽいぽいと果物を入れていった。しかし健は・・・、

(これはつまり陽菜乃が穿いていた…、陽菜乃の足と…、か、かん…、間接タッチ…)

髪をピンクと赤茶の斑にしながら健は恐る恐る、厭らしくならないように、慎重に訊いた。

「ねえ…、これって陽菜乃の…?」

すると、陽菜乃は即答した。

「ううん。ビッチ先生が処分し忘れてたのもらったの」

「あっそ」

髪色が一瞬で赤茶に戻った健はストッキングを無造作に掴むと手早く果物を入れてった。陽菜乃の私物なら兎も角、イリーナは完全に守備範囲外なので何事も無く扱えた。

全部で三十個の仕掛けができた頃には外は夕方になっていた。

「よし、あとはこれを二日くらい発酵させればいいから。仕掛けるのは明後日ね」

「…たしかこれだけのを発酵させたら臭いがすごいことになりそう…」

現段階でも熟した複数の果実にそこに焼酎のまで入り混じった臭いで理科室は充満していた。

「だから夏休みじゃないとできなかったんだよね。家でもせいぜい5つ作るのがやっとだったし」

そして、二十個以上の仕掛けができた頃には日はもう暮れていた。

「ふう~、あとはこれを発酵させれば完成。仕掛けは明後日の午前中にね」

「ん、わかった」

健と陽菜乃は道具やゴミを片付け、仕掛けも準備室にしまい、実験台の水道で手を洗った。

「そう言えば、例の“アレ”が見つかったらどうするの?」

「ん~…、そだね~、私よりも虫に詳しい知り合いがいるからその人に売ろうかな~、って」

「へぇ、意外。陽菜乃ってそんな小遣い稼ぎで虫捕ることしないと思ってた」

「まぁ普段はしないけどね~。でも“アレ”ならそこそこの値段になるだろうから、そのお金は取っといて暗殺成功の打ち上げパーティーの資金とかにできたらな~、って思ってるんだ」

「そっか…」

「あ、もしかしひーちゃん分け前とか欲しかった?」

「いやいいよ。俺は………好きで………陽菜乃の………昆虫採集に………付き合ってるわけだし」

果たして、もそもそと喋る健の髪と緋色がピンクになっているのは夕焼けのせいかそれとも・・・、

「ありがと~!」

陽菜乃は健は勢いよく健に抱きついてきた。

「ちょ…、陽菜乃…!?」

健の鼻先を陽菜乃のゆるふわヘアーがくすぐると、身体から力が抜けて床に倒れてしまった。

 

放課後、生徒は下校、2人っきり、好意を寄せている女子が抱きついている、仰向けになっている自分の上に跨るような体勢、

 

すなわち・・・・・・、

 

「んにゃぁ~…」

「…は?」

陽菜乃はそのまま健の上で寝息を立て始めた。

「あ、そうか焼酎…」

どうやら理科室中に充満した酒気で陽菜乃は酔っ払って眠ってしまったようだ。

「………さて、どうしたものか」

健はもうしばらくはこのままでも良いかと思った。

 

 

「夏休み早々異性交遊とはヤるじゃない」

 

 

「ッ!?イリーナ先生!?」

いつの間にか理科室の入口にはイリーナがこちらの様子をニヤニヤしながら見ていた。

「なんだったら、私も入って手解きしてあげようか?保健室のベッドで3p…」

「…ッ!結構っす!」

健は起き上がると陽菜乃を抱きかかえてイリーナに押し付けた。

「にしても、すごい匂いね。タケル、あんたは何ともないの?」

イリーナは形の良い鼻をひくひくさせながら訊いた。

「えぇまぁ、酒臭いな、くらいしか」

「ふぅ~ん、………サムライは酒に強いのかしら………」

「ん?なんすか?」

「なんでもないわ。ちょっと前の仕事を思い出しただけ」

「じゃ、陽菜乃のこと頼むっすよ!」

そうして健は髪と顔を真っ赤にして帰ってしまった。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

そして2日後。

「おは~、ひーちゃん」

陽菜乃は大きなリックを背負って夏休みのE組に来た。サマーニットにミニスカート、髪型や雰囲気とベストマッチなゆるふわスタイルだった。

校舎の外では、待ち合わせの10分前・・・だと陽菜乃を同じくらいになりそうだからさらに5分前に、でも陽菜乃は楽しみにしていることには早めに来るかもしれないからそこからさらに10分・・・、などと考えすぎて結局待ち合わせの1時間も前から待っていた健がいた。こちらは青紺のジーンズに赤いポロシャツ、それに革製のガンベルトを改造した帯刀ベルトに差した逆刃の小太刀をぶら下げていた。

「んじゃ、行こっか」

陽菜乃は手書きの地図を広げた。そこには裏山の人が通れる道から獣道、普段歩いているだけではわからない等高線まで書き込まれ、数箇所タコのイラストが×をしている危険スポットまであった。

「すご…、高低差に崖とかの危険スポットまで…、なんて手厚い地図…」

「殺せんせーがマッハで作ってくれたE組裏山地図だよ」

最近は校外授業と称して裏山を巡りある程度地理には明るくなっているつもりだったが、ここまで細かくは知らなかった。

2人は地図にある殺せんせーのオススメスポットに従って仕掛けをしていった。

「フッ!」

健は手ごろな枝まで幹を垂直に駆け上がった。

「ひーちゃん、すっごいね~」

陽菜乃は下でそんな健を見て拍手していた。

(不破さん、これだけはグッジョブ)

以前、某忍者漫画に感化された不破さんが健と岬に「ちょっとやってみて」と言われてやってみると岬の方が高い位置まで駆け上がれたのが悔しかった健が隠れて特訓して、木の窪みを瞬時に見極める眼力と足裏のどの部分を引っ掛けるかを研鑚して会得した木登り術だった。

十個も仕掛けると、すっかり時間は昼時になっていた。

「ひーちゃ~ん、お昼にしよ~」

そして、2人は大き目の木の枝に並んで座るというシチュエーションでお昼を食べる事になった。健は竹皮に包まれたおにぎりが3個と胡瓜の浅漬けと純和風。陽菜乃は対照的にサンドイッチに卵焼きに唐揚げにミニトマトと洋風だった。

「お~、ひーちゃんの渋いね~」

陽菜乃はサンドイッチをぱくぱく食べながら健の弁当を見た。3個のおにぎりのうち、一つは普通の海苔だったが、2個はテカテカ光っていた。

「1個食べる?」

「あ、じゃあサンドイッチと唐揚げセットで交換ね。元々そのつもりで多めに作ってきたから、」

(…っ陽菜乃のてづくr…)

「お母さんが」

(………)

一瞬だけ期待した健はそれでもありがたくポテサラサンドイッチを食べた。

「あ、ピリ辛だ」

「それ我が家流なんだ~。茹でて潰したじゃが芋にお酢かけて、マヨネーズの前にタバスコ入れてるの」

塩気は塩もみの胡瓜だけだったが、それで十分過ぎるくらい美味しかった。陽菜乃もおにぎりを一口食べた。

「あ、これ韓国海苔?それに中身もお肉だ」

「うん、それうちの…、つーか翼ん家の定番。肉屋で安い牛切り落とし肉買ってきて作る時雨煮。針のように細く切った生姜が味の決め手なんだ」

「そっか~。これってつばさちゃんの手作り?」

「うん」

健の弁当は陽菜乃と(裏山とはいえ)2人で出かけることを話すとやたら張り切った翼が早起きして作ってくれたものだった。

「あ、ひーちゃん」

「ん?」

健が陽菜乃の方を向くと唐揚げが差し出された。つまり・・・、

「はい、あ~ん」

「ぁ…、あ~…、」

かつてない程髪と頬をまっピンクにした健は口を開けた。

「っん」

「どう?」

「………美味い」

「よかった」

真夏の太陽よりも、今の健には陽菜乃の笑顔の方が眩しかった。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

「ラスト1個~」

最後の1つを仕掛け終えE組校舎まで戻ってくる頃には日が傾き初めていた。

「お疲れひーちゃん。1人じゃここまでできなかったよ」

「さて、収穫は明日だけど結構早めに来ないとね」

早起きが苦ではない健に対し、陽菜乃はとんでもない事を言った。

「実はね、今日両親田舎の親戚の所に行ってて家に誰もいないの」

「………は?」

以前翼の部屋で読んだ少女漫画でこの台詞出た後のシチュエーション的には、彼女の自宅に行ってお泊り、というのが鉄板だが、そこは陽菜乃・・・、

「だからここに泊まろうと思って」

陽菜乃は校舎に置いていった大きなリュックから(野)外泊用のセットが出てきた。

「ちょ…、聞いてないんだけど…」

「大丈夫。烏間先生には校舎の設備使う許可もらってるから。ここなら朝早くから捕りにいけるし」

「………」

健はこの状況を整理していた。

今は夏なので凍え死ぬことはない、校舎だから雨風は防げる、食事の準備も食材に家庭科室が使えるなら問題無い。

だが、それ以上に・・・・・・

(………女子1人でこんなとこに泊まらせる…わけ、には…)

健は意を決して口を開いた。

「………俺も泊まる…」

「え…?」

「俺もここに泊まる。大丈夫。校舎の部屋は別なとこに泊まるし。………何なら陽菜乃が寝る部屋には鍵かけてもいいし………」

「いいよ~」

陽菜乃はあっさり承諾した。

「一応食材はお大目に持ってきてるし」

 

 

健は校舎裏に回ると携帯を取り出し短縮ダイヤルの一番上に登録してる番号にかけた。

『もしもし~健?ひなのちゃんとのデートはどうだった?』

「あのさ…、翼…」

『ん?』

「俺今日…、陽菜乃と外泊することになった」

『‡#Π★б*%℃Сゞ』

電話越しにも翼の同様が伝わってきた。

『え~~!!なになになになに!?どうやって口説いたの!!??』

「いや実は…」

健は事情を説明した。

『………何か…、微妙にズレてる…、想像した展開の斜め上だよ…』

「つーわけでさ…、」

『うん、お父さんとお母さんには上手く言っとくから』

「ん、サンキュ」

『ねぇ健』

「なに?」

『イリーナ先生が万が一の時に…、念のために入れてるらしいよ………、机の引き出しに避に…』

健は電話を切った。

「…さて、次は」

健は翼のすぐ下の番号にかけた。携帯ではなく家電だ。

『はい、相楽です』

電話に出たのはハキハキとした声の女の子だった。

「椚ヶ丘3年の緋村と言います、タスクいますか?」

『あ~、すみません。兄は用事で出かけてて、帰りがいつになるかわからないんです。何か言伝ですか?』

「いや、急用じゃないから大丈夫です。ありがとう」

『はい、わかりました』

健は電話を切った。

「………タスク、妹いたんだ………」

そういえばタスクの家族構成を知らなかったことを、今さらながら気づいた健だった。

タスクの家がダメだったので、健は次の登録番号に電話をかけた。

『もしもしぃ~…』

「あ、雪?」

『んぁ…、健何~?』

お菓子でも口にしているのか、雪の声はもごもごしていた。

「ちょっといきなりで悪いんだけど、今日雪ん家に泊まってることにしてくれない?」

『ん~…、いいよぉ~』

雪はあっさり承諾した。

「…理由訊かないの?」

『別に~、どうせうち親滅多に帰ってこないし~』

その時、電話の向こう側から女の声が聞こえた。

「………ね~、ゆか…、…n話~?」

『…ッ切るねそれじゃ』

雪は慌てて電話を切った。

「………あいつ、彼女家に連れこんでるのか…?」

この時、健は電話の向こう側の女子の声が実は自分も知る人物だとは気づいていなかった。

 

 





●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○―◎―●―○
木を駆け上る部分はNARUTOからの引用です。チャクラとかではなく、健の脚力と技術のなせる技です。
お弁当おおにぎりの時雨煮は食戟のソーマ、ポテサラはドラマ侠飯から引用。


来月のるろ剣再開に合わせて、孤島編開始します
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