暗殺~SWORD X SAMURAI~   作:蒼乃翼

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先月は失礼しました
ここに載せ始めて4年目の記念日です

では、どうぞ


伏魔の時間

『その様子じゃクラスの半数は発症したみたいだな。フフフ、けっこうけっこう』

萌は天井を見回すと、急拵えで付けられたと思しき監視カメラを二台見つけた。

「もう一度訊く、お前は…?」

『………俺が誰かなんてどうでもいい。百億の賞金首を狙っているのはガキどもだけじゃないってことさ。治療薬はスイッチ1つで爆破できる。我々の機嫌を損ねると感染者は助からない』

「…念入りだな」

『そのタコが動けることを想定しての計画だからな。動けないなら尚更こちらの思い通りだ』

「………にゅ…、」

『山頂にある【伏魔殿上ホテル】の最上階までその文字通り賞金首のタコを持ってこい。期限は1時間以内だ』

烏間先生はかなりの危険が想定されたが、生徒達の命には代えられないと覚悟を決めた。

「わかった。今から俺が…」

『おっと、先生。あんたは相当腕が立つらしいからな。人選はこちらに任せてもらおう』

電話の男は、そうだなぁ、とわざとらしく値踏みをするように間を開けると・・・、

『動ける生徒の中で“小柄な生徒達”に持ってこさせろ。女子も1人入れてな』

「…ッ!?」

萌と烏間先生と殺せんせーの視線が、タスクを介抱する健、杉野と中村を介抱する渚と茅野に向けられた。

『フロントには話は通してある。素直に来れば賞金首と治療薬の交換はすぐに済む。だが、外部と連絡を取ったり1時間を1分でも過ぎれば、その時点で治療薬は破壊する。感謝するよ、よくぞそいつを行動不能まで追い込んでくれて。天は我々の味方のようだ』

電話の男はそう言って笑うと電話を切った。

「クソッ!!」

ガンッ!

烏間先生は萌から殺せんせーを引っ手繰るとテーブルに叩きつけた。

(まさかこのタイミングで第三者が狙ってくるとは…)

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

烏間先生は動ける生徒を集め、電話の内容を説明した。

「…という訳だ」

「…烏間先生、ホテル側にその客のこと聞き出せないんですか?」

萌の質問に烏間先生は首を横に振った。

「先ほど部下の園川に連絡を取らせたが、プライバシーを繰り返すばかりでダメだったらしい」

「………防衛省とか政府の名前出してでも、ですか?」

「………そうだ…」

「そういえば、ビーチで言ってましたよね。“悪い噂”って…、もしかしてそれと関係あります?」

烏間先生は、止むを得んなと呟くと話し始めた。

「警視庁の知人から聞いた話だが、この小さなリゾート島『普久間島』は『伏魔島』と呼ばれ常にマークされている。ここを含めたほとんどのリゾートホテルは真っ当だが、山頂のあのホテルだけは違う。南海の孤島という立地もあり、国内外の非合法組織、それらと繋がる財政界の人間が出入りしている。それらの私兵達による警護の下、毎夜非合法なドラッグパーテイ―や商談を開いているらしい。警察上層部、政府の高官も噛んでいるらしく、迂闊に手が出せないんだ」

「ふぅ~ん、そんなホテルがこっちに味方するわけないか」

いつもと変らないカルマに吉田が食って掛かる

「おいおいカルマ、どーすんだよ。このままじゃ俺らもいずれ発症して死んじまうんだぞ?!こんなとこで殺されたくねぇよ!」

そんな吉田を落ち着かせたのは発症した原だった。

「落ち着いて吉田君…、そんな簡単に死なない死なない。じっくり対策考えよう」

「お…、おぅ悪いな原…」

「けど言う事聞きすぎんのも危険だぜ」

寺坂は渚と茅野の頭をぺしぺし叩いた。

「背の低い生徒って、こいつらだぞ!緋村は兎も角、こいつらなんて人質増やすだけじゃねぇか」

髪色が京都の時程ではないが黒ずんだ健は、いつでも乗り込めるように逆刃の小太刀の目釘を改め、柄に水を吹きかけて湿り気を与えていた。そしてガンベルトを改造した下げ帯の位置を念入りに確認し、いつでも抜き打てる様にしていた。

「………」

「どうかしたの?雪くん」

先ほどから思案顔の雪を翼は心配そうに覗き込んだ。

「いや、単に持ってこさせるだけならひ弱そうな女子1人…、茅野を指定するのが合理的だ。なのに向こうは複数人、それも殺せんせーのことやE組のことを下調べしてるなら健の戦闘力も知ってるはず…、わざわざ抵抗されると厄介な健を運び人に指定するのが引っ掛かってね…」

「健が毒で動けなくなるのが前提だったとか?」

「ここを悪趣味に監視してるなら健が動けるのは分かっている。なのにあの指定の仕方だと当然その健も含まることになる…」

雪そこまで考えるとモバイ律に何やら指示を出し始めた。

「とにかくだ!人の友達(ツレ)にまで手ぇ出しやがった奴等にむかついてしょうがねぇ!要求なんざ全シカトだ!今すぐヘリでこいつらを高荷んとこでも竹林んとこでも運び込んで…」

寺坂の馬鹿でかい声を遮ったのは、意外な生徒だった。

 

「賛成しないな…」

 

「あん?!」

発症していない生徒の1人、竹林が氷とビニール袋を持ってきた。

「本当に人工的に造られた未知のウィルスならそれの抗体は何処の世界の病院にも無い」

そうよ、と萌も賛同した。

「いざ運んでも打つ手なしじゃ、みんなのリスクを高めるだけよ」

萌は髪をまとめマスクをし、ゴム手袋をはめた。

「こっちで応急処置はしておくから、早く取引に行きなさい。あ、奥田さん手伝ってくれる?空の洗面器をいくつかお願い。それと、念のためマスクとゴム手袋も忘れずに」

「あ…、はい!」

3人の理系トップが倒れた生徒を看てはいるが、現状打つ手は無かった。

E組の暗殺があと一歩まで行ったことが災いし、何とかしてくれそうな殺せんせーはあと24時間弱は身動きすら取れない。取引に行ってもそのまま薬を渡されず逃亡されればそこで終わり。健が居たとしても、1人では恐らく相手に対処できない。

交渉期限は、あと1時間も無かった。

 

 

「良い方法があります」

 

 

と、身動きのできない殺せんせーが発言した。

「病院に逃げるより、大人しく取引に応じるよりも。紫村もすでにその考えに至って律さんと下調べは終ったようです」

雪の掲げた画面の律はインチキ古武術でもやりそうなレオタード姿でウィンクした。

『はい、バッチリです』

「動ける生徒は裏山に集合です。汚れても良い格好でね」

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

健、雪、翼、岬。それに渚、カルマ、茅野、千葉、速水、寺坂、吉田、木村、菅谷、磯貝、片岡、岡野、矢田、烏間先生、イリーナ、とついてに殺せんせー。合計19人と1体は山頂ホテルの裏手、ほぼ垂直な崖の前の道路に集まった。夜間ということもあり車は通らず、人気も無い。それでもホテルの過剰なまでも照明が下まで照らしていた。

『あのホテルの警備システムに侵入して見取り図を手に入れました、警備手配図も。ホテルの正面玄関と敷地一帯には大量の警備が置かれています。フロントを通らず内部に侵入するのはまず不可能です』

その場にいる全員にモバイル律から各自の携帯に画像が送られた。

『ただ1つ、この崖を登った所にある通用口が1つあります。まず侵入不可能な地形ゆえ…、警備は配置されていません』

「ちょ…、殺せんせーそれって…」

こういう時の勘働きが鋭い岬は、殺せんせーの書いている絵図が見えた。

「そうです。敵の意のままになりたくないなら手段は1つ。動けない11人に看病の3人を残し…」

(………)

健の脳裏に残した陽菜乃(と、ついでにタスク)の苦悶の表情が浮かんだ。

「ここにいる全員で侵入、ホテル最上階に奇襲を仕掛け、治療薬を奪い取る!」

 

「「「………!?!?!?」」」

 

殺せんせーの突拍子も無い計画に、E組は息を呑んだ。そこに烏間先生が異を唱えた。

「危険すぎる…、この手馴れた遣り口、相手は明らかにプロだ」

「そうですね。それに今は先生は身動きが取れず生徒達の安全を守れない。大人しく渡した方が得策かもしれません」

そこで一旦切ると、殺せんせーはどうします?と健に訊いた。

「全ては君たちと指揮官である烏間先生次第です」

「………」

「それはちょっと…、」

「難しくね…?」

不安の声がちらほら上がった。それにイリーナも同調した。

「そーよ、無理に決まってるわ!第一この崖よ!ホテルに辿り着く前に転落死よ」

(やはり無理だ)

烏間先生も結論を出した

「………そうだな…、ここは危険だが、渚君、茅野さん…、」

と、烏間先生の視界から渚と茅野が・・・、だけでなく健と翼を以外のE組全員消えていた。

「…!?」

視線を上に向けると、E組は全員ひょいひょいと崖を危なげなく登っていた。

「「!?」」

驚く烏間先生とイリーナを横目に、完全防御形態の殺せんせーはにまにま袋の中で笑っていた。

「崖だけなら楽ショーだよね」

「まぁね…」

まるで階段でも登っているかのような岬だけでなく、雪までも長い手足を岩肌のくぼみに巧にひっかけ最低限の労力で最大限効率良く登っていった。

「けどさぁ~、あたしら未知のホテルで未知の敵と戦う訓練は受けてないから」

「…烏間先生、指揮、お願いできます?」

「ここでやってくれた奴らに、きっちり落とし前付けさせてやるっすよ」

普段は(一方的に恋敵だと思って)敵意を露わにしている健が烏間先生を頼った。

「彼らはただの生徒では無い。私が教えあなたが鍛えた特殊訓練を積んだ侍にくノ一までいる精鋭部隊。あなたの下にはそれが16人もいます。さぁ、どうします?時間は無いですよ」

烏間先生は、覚悟を決めた。

「注目!」

健たちは居住まいを正した。

「目標は山頂ホテル最上階!隠密潜入から奇襲の連続ミッション!ハンドサイン、連携に付いては訓練と同じ物を使用する!いつものと違うのは標的のみ!」

ここで烏間先生は腕時計で時刻を確認した。

「3分でマップを叩き込め!1950(ヒトキューゴーマル)、作戦開始!」

 

「「「了解!!!」」」

 

 

 

 

烏間先生からの指示が終ると、健は崖を登ろうとした翼の肩を掴んで止めた。

「翼は看病の方に回って」

「え…、でも…」

「相手は監視カメラで残ってる陽菜乃たちを監視している。あれ以上何かするとは思えないけど、万が一……、向こうに追い討ちの暗殺者が行くかもしれない。その時は………」

健の目はいつになく真剣だった。そして翼は今にも泣きそうな表情になった。

本来、翼は争いは好まないし誰かを傷付けることは嫌いな性格だった。しかし、今は翼の神谷御剣流の守の型の技量に頼る他無かった。

「………うん、わかった。健たちも気をつけて…、………っ」

翼の口から出かけた言葉を、健は頭をポンと撫でて制止した。その髪色はいつもの優しい色合いの赤毛に戻っていた。

「安心しろ、俺たちは誰も死なない。必ず生きて、また皆で会える」

健はシャツの胸の辺りを掴んだ。服の下には陽菜乃から誕生日プレゼントで貰ったクワガタメダルをぶら下げていた。

翼に背中を向けた健は一瞬動きを止めた。

 

「いってくる」

「うん」

 

そう短く言葉を交わすと、健はその場跳びで一気に登り始めた(イリーナを負ぶった)烏間先生を追い越して、そのまま手を使わず崖の岩肌の窪みに足裏を引っ掛けると驚異的な脚力で駆け上がって行った。

 

 

その髪色は、ホテルからの明るさのせいか、鮮やかな緋色となっていた。

 

 

 

 

 ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎ ● ○ ◎

 

 

 

 

果たして・・・、健の読みは最悪の現実となってしまった。

「………フドー、下に行ってぶっ倒れたガキどもの見張りに行け。此処からじゃ全員の動きは把握できない…、もし変な動きがあった時は…、わかってんな?」

「………」

部屋の片隅に座り込んでいた影が立ち上がった。

大きい。ボロボロの法衣を纏った190を越える体躯には着衣の上からでも分かるほど岩のように隆起した筋肉が搭載されていた。禿頭に手拭を巻いたその男は無言のまま部屋を出た。

 

 

タスクたちが倒れて看病されている浜辺のレストランに向かうために・・・・・・、

 

 

 

 




順調に書き溜めはできていますが、更新は来月も未定です

あと今月号のSQ
タイミング良くこっちもあいつの影を出せました
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