今日の夕方はコナン見ましょう
ホテルに潜入してロビーを抜け、一先ず律制御下の監視カメラの廊下で烏間先生はブリーフィングを始めた。
「さて、君らを私服で来させたのには理由がある。厳しい入口のチェックさえ抜けられればここから先は客のふりができる」
「え、客ぅ?ここ悪い奴らが泊まるホテルなんでしょ?中学生の団体客なんているの」
老舗旅館の孫娘の岬の質問に烏間先生は頷いた。
「訊いた話、結構いるらしい。大企業の御曹司、政治家の2世、3世、それに芸能人のボンボン共だ。小さい頃から王様のように甘やかされて育った彼らはあどけない顔の内から違法なアソビに手を染めている」
「ほぅほぅ」
「どこかの死んだら終わりのフルダイブゲームに取り込まれて倫敦でシャーロックホームズ探しながらMMORPGしそうな条件満たしてるわね」
「何言ってんの、不破っち?」
「そう、だから君たちもそんな輩になりきったつもりで、世の中を舐めてる感じで歩いていきましょう」
「あっそ、じゃあ死んでよ」
殺せんせーのアドバイスで、雪は某大学のゲームサークルに所属して鏡の世界の戦いに参戦したら蛇に食われた大企業の道楽息子(犀)のように、岬は無い胸反らせて見下すように、健は竹串を咥え小太刀も肩に担いで浪人風を気取って歩き出した。
「そうそうその調子」
そんな殺せんせーも舐めている時の緑の横縞模様になっていた。
「その調子…、なのか?あとお前は舐めんでいい」
「ですが、我々もまた敵の顔を知らない。向こうも客のふりをして接近してくる可能性があります、油断せずに行きましょう」
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三階廊下
最後尾、殿の健の横を明らかに堅気ではない雰囲気の男たちが通り過ぎていった。
目線は合わせず、しかし特に反らす事も無く堂々と歩いていると逆に男たちの方が顔を反らして横を通り過ぎていった。
「本当にただの客同士って感じだね…」
最後尾、殿を受け持った健が小声で言うと雪も小声で応えた。
「トラブル避けたいのは向こうも一緒、むしろ好奇心旺盛な堅気の子供に見られるほうがよっぽど面倒だってことでしょ…」
「ホテル全部が敵かと思ったけど、これならあっという間に最上階行けそうだね」
「あのさぁ…、そんなに簡単な訳ないでしょ、馬鹿なの?」
「だって何か遭っても前衛の烏間先生が見つけてくれるし何とかしてくれるでしょ」
「だといいけど…」
岬はどこまでも楽観的だった。
「きっとこの規模なら部屋にご自由にどうそって山盛りの果物とか置いてるんだろうなぁ、きっとウェルカムドリンクも大人にはアルコールとか…」
その言葉を聞いた時雪は何かに気付いた。
「そうか、それだ!」
「なにが?」
と、同時に前衛にも異変があったようだ。不破さんの声が聞こえると同時に健は最前線に向けて一気に駆け出した。
そこには帽子とバンダナで顔を隠している男と烏間先生が対峙し、床には寺坂と吉田が転がっていた。そしてその場には薄くなりつつある白い煙が漂っていた。
「…毒ガス…?!」
そこに岬と雪も駆けつけた。
「………大丈夫っすか、烏間先生?」
「あぁ…、不破さんが気づいてくれなかったら寺坂君たちも巻き込まれていた」
その不破さんはおそらくは敵の手先である男と対峙していた。バンダナを下ろした男の顔はどこかで見たような気がした。その特徴的な団子鼻を・・・
「何故わかった?殺気を見せず近付いて毒ガスを浴びせる、俺の十八番だったんだがなおかっぱちゃん」
「だってオジサン、ビーチで最初にウェルカムドリンクを配ったボーイさんでしょ。あとボブだし」
「それだけだと根拠が薄いぜ。毒を盛る機会は他にもあっただろうに」
「いいや、そこしかありえないだよ」
そこに雪も加わった。
「うちの医療班からの推察だと感染経路は経口、つまり飲食物と共に体内に取り込まれた可能性が高い。そしてE組全員が共通して口にしたのはドリンクとデイナー」
「そのデイナーで仕込まれた可能性はないのか?」
「ないね」「ないわ」
雪と不破さんはきっぱりと言い切った。
「あんたらは知らないだろうけど、あのデイナーは全員参加ではなかったんだよ」
「映像編集で手が離せなかった三村君と岡島君、この2人も感染して今看病されているの」
「つまり全員が同じタイミングで同じ物を摂取したのはドリンクしかないんだよ。まぁ、僕はああいう酸っぱいの苦手だから飲んでないけどね」
「つまり、犯人はドリンクを配ったあなたしかいないってことよ、オジサンくん!」
「くっ…」
「すごいや不破さん、紫村君」
「ふふふ、普段からジャンプを読んでいるとありえない状況に陥ってもすぐに対処できるのよ」
「まるで探偵みたい」
「そうね、最近はあの孫探偵が37歳のさえないPR会社の営業部主任になった続編や今日から2週連続1時間スペシャルを放送するラブコメ探偵物は必読よ!!」
「それイブニ●グとサ●デーだよね!?」
「お得意のジャンプは?」
「あ~うん、転職相談所に来た勇者に魔王の座を譲った魔物が現世にやってきて大食いJKをこき使う作品が面白いらしいよ。だいぶ前だから知っている人少ないだろうけどね」
「………くくく」
男が不敵に笑うと同時に、烏間先生が急に膝を着いた。
「烏間先生!?」
その身体はぶるぶると震えていた。
「…なるほど、毒ガス。それも即効性で空気に触れると同時に無毒化する奴だね…、でなきゃ、今頃この場にいるオジサン含めた全員が同じ状態になってるはずだもの。今皆を苦しめてる毒同様、オリジナルでしょ?」
「最近のガキは察しがいいな」
「勘の良いガキは嫌い?」
不破さんが世界的にも有名な錬金術漫画の有名なワンシーンを捩って訊いた。
「さてね。しかし、これで交渉は決裂。お前らに交渉の意思は無いようだ、ボスに報告を…」
毒ガス男が戻るとすると・・・、
「なにっ!?」
雪と不破さん、それにその隣で小太刀を見せびらかして注意を向けさせていた隙に回りこんだ寺坂、吉田、千葉に速水や片岡たちが置物の斧や長いす、壺を構えて廊下の前に陣取っていた。
「………敵と、遭遇した場合は…、即座に退路を塞ぎ連絡を断つ…、すでに指示は済ませてある…」
ホテルの構造が仇となり、毒ガス男は袋のネズミとなってしまった。
「ちッ…」
男は携帯を取り出そうとポケットに手を入れたが・・・、
「シッ!」
岬が飛クナイを射ち男の手を掠め、取り落とした携帯の画面にさらに追撃の飛クナイが刺さった。
「これで連絡は取れなくなった…、お前は我々を見た瞬間に攻撃ではなく報告しに帰るべきだった」
「まだ喋れるとは驚きだな。像すら一発で眠らせるのに…、だが引率のあんたが死ねば他のガキどもだけじゃ最上階までは辿り着けないさ」
毒ガス男はバンダナで口元を隠すと新たな噴射機を構えた。
「緋村君…、小太刀を貸してはくれないか…?」
「…?一度だけっすよ…」
「忝い…」
健は一瞬躊躇ったが、烏間先生の眼を見て信用し、抜いた小太刀を託した。
烏間先生と毒ガス男の間に漂う殺気の濃密な空間を、E組は固唾を飲んで見守っていた。
「っ!」
先に動いたのは毒ガス男だった。噴射機を前に出して烏間先生目掛けて噴射した。
と、同時に烏間先生の身体が前に倒れた・・・、かに見えた。
「っつあ!」
倒れる勢いのまま一気に間合いを詰めると、烏間先生は小太刀の鎬を前に向けて横一文字に振るった。すると、刀身によって巻き起こされた風によりガスは霧散した。
「な…ッ!?」
「ご自慢の毒ガスの高性能さが仇になったな…」
「むっ…!」
毒ガス男はそれでもまだ用意していた噴射機を取り出そうとした。
「プッ!」
しかし、健の吹き飛ばした竹串が手の甲に刺さり、一瞬怯んだ。その隙に・・・、
「ッオァ!」
ほぼゼロ距離まで迫った烏間先生は小太刀を反し、柄頭で男のこめかみを強打した。
「がふ…ッ」
脳震盪を起こした毒ガス男は気を失い、その場に崩れ落ちた。
(速いッ…)
健は烏間先生の身体能力に改めて驚いた。戦力は明らかに半減されているにも関わらず、毒ガスを霧散させるほどの速さで小太刀を振るい、さらに一撃で戦闘不能にするためにより確実な打撃を喰らわせた。果たして今の自分にここまでのことができるのか・・・、
「………緋村、君…」
烏間先生は最後の気力を振り絞り健に小太刀を返した。
「………~」
そして、そのまま倒れてしまった。
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今回の技
土龍閃・颱
土龍閃、土龍閃・瀑の類似技
本来は飛来する矢を打ち払い落とす技
もしも今不治の病とかになったら、心残りは名探偵コナンとワンピースの最終回