作:お手柔らかに

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煩い、五月蝿い、ウルサイっ!こんな何処とも知れない所に来たいなんて頼んでないのになんでボクが悪いんだよ?おまけにTSしてるとかって誰得なわけ?全くいい加減勘弁してよねっ!


居場所のない世界②

 

 「これくらい密着してないと落とさないで連れてく自信無いから仕方無いだろう」

 

 何かやたらと背中を気にしてるけど取り敢えず急ぎたい僕は相手に構わずそう言い捨てると

 

 「お前の背中を僕に預けて貰う他はないんだよ、僕だっていきなりぶっつけ本番で自分よりも大きい奴を抱えて翔ぶんだから自信なんか少しも有るわけ無いんだからなっ!」

 

 やっと僕の言葉が伝わったらしく奴の顔は引き締まり

 

 「わかった…俺の背中預けよう」

 

 その返事を受け僕は溜めていた気と魔力を一気に解放して敵の気配が近付いてくる方向に翔んだ

 

 「迎撃ポイントはどこにする?」

 

 僕にそう聞かれた奴は

 

 「何処にすると言われてもな…」

と情けない返事をするから

 

 「あんたっ!それでもプロの兵士なの?僕が空中で敵を撹乱するからあんたは地上からその弓で射落としてよっ!」

 

 そう言ってやったらやっと気付いて

 

 「そうなのか、だから俺を選らんだのだなっ!?」

 

 と、興奮して叫んだがそれを聞いた僕が思い切り引いてしまっても仕方無いよね?等と頭の中で自己弁護しながら

「そう言う訳だから射手のあんたに都合の良い狙撃ポイントで迎え撃とうと思うんだよ」

そう言ってやったら『わかった』…と言って奴が頷いて辺りを見回し始めじっくり見回した結果森の入り口にする事にした

丁度岩場が終わり森が始まる箇所で森に隠れやすく僕も岩場を上手く使えば撹乱しやすいと判断したんだって

その結果作戦は呆れる程に上手く決まりあっさり全滅させて意気揚々引き返したけど本体はかなり手強いらしく膠着状に陥ってたけど僕達の迎撃を受けた陽動部隊が全滅

来るはずの援護の代わり背後を取られ挟み撃ちの状態に陥った襲撃者達を撃退するのに然程の時間は掛からなかったけど僕の体力の限界も訪れて意識を保てなかった…

この質の悪い物語が全部夢で目を覚ましたボクはきっとこう言うんだ…と、言うか是非とも言いたい

『なんつー夢見てンだよ?女装願望でもあんのかよ?』

ってそう笑って言えたら良かったのだけどね…そんな叶わぬ夢を胸に抱えながら僕の意識と言う名の手綱を手放してしまった

 

 

 

③漆黒の魔女

 

 

 「お姉さん起きてる?」

 

 可愛らしい少女の声で目を覚ましたボクは

 

 「うん、今目を覚ましたとこだよ…みこちゃん」

 

 そう返事して、身体中が軋むのを我慢して起き上がろうとしたがそれを見透かされて引っくり返された

 

 「お姉さん、無理はしないでってそう言ってあるよねっ!お姉さんは未だ動ける身体じゃないんだよ?」

 

 そんな事はわかってるけど、そんな事言ってられる余裕はない…ってそんな気がして仕方無いんだけどな

その僕の考えを見抜いた魔女の婆さんが

 

 「今のあんたが行った所で、反って足手まといにしかなら無いよ」

 

 と、言い捨てられた上に

 

 「まぁスケベな男共を悦ばせる事くらいは出来るだろうがそんな事はしたくないんだろ?」

 

 僕の心の底まで覗き見る事の出来る魔女は、意地悪く言って嫌がる僕の反応を見て楽しんでいる

 

 嫌な婆ぁだと思っていたらみこの方がもっと厄介だった

 

 「ねえねえお姉さんスケベな男達ってどんな人?お姉さんが出来る喜ぶ事ってなんなの?」

 

 と、しつこく聞いてくるから返事に困った僕がいくら知らないと言っても信じないでしつこく聞いてきた

 

 勘弁してくれと言いたかったが、それすらみこには通じそうに無い感じ

 

 全く嫌な婆ぁだ…僕が睨んでも全く平気で素知らぬ顔をしている

 

 ほとほと困り果てていた僕にみこは

 

 「お姉さん…お姉さんの恋人さんが迎えに来る…」

 

 みこのその言葉にぶっと吹き出す僕

 

 「恋人って…僕にそんなの居ないし第一…「それ以前にこの世界には親しい人間は居ない…かい?」」

 

 その曖昧な表現にホッとして

 

 「どれだけの人が僕の事を人間として見てくれるのか…人間として扱ってくれるのかだって知れたもんじゃないんだ…」

 

 肩を竦め僕は呟いた

 

 「何で?お姉さんは天使か女神様みたいな人なんだから普通の人間じゃないのは仕方無いんだよ?」

 

 僕はみこをまじまじと見て

 

 「有り難う、みこちゃんは本当に優しい子だね…そう言う風に言ってくれるのなら未だ僕だって救われるかも知れないけど実際は…」

 

 魔女は溜め息を吐き

 

 「何か言われたのかい?」

 

 と、解りきったことを聞いてきたから僕は

 

 「目は口ほどに物を言い…言われなくたって人が僕をどんな目で見てるか位嫌でもわかるよ?

 

 僕自身こんな存在と突然出会ったら…それほど心の広い人間じゃないからね」

 

 そう呟く僕を見て

 

 「じゃあお姉さん…その翼が生えたの嫌なの?」

 

 泣きそうな顔を抱き寄せ

 

 「本当に優しい娘なんだね、みこちゃんは…大丈夫だよ…翼はさ、小さな頃から

 

ずっと欲しいって思って探し求めてたモノなんだからもしかしたら僕の思いがツバサになったのかも知れないって気がするんだよ

 

 だから早く元気になってもっと飛び回りたいくらいなんだよ…今の願いはね

 

 それにほら…こんなに美しい翼を与えて貰ったんだよ?要らないなんて言ったらそれこそバチが当たるってもんだよ、そうだろ?婆さん」

 

 そう言うと満足そうに笑いながら

 

 「翼の民として生きていくんだね」

 

 そう言って遠い追憶に浸っていた

 

 (もしかしたら若い頃事を思い出してるのかな…だとしたらかなりの大昔…ー余計なお世話だよっ!ー)

 

 そう言って睨まれてしまった

 

 「お師匠様…何者かが…いえ…お姉さんの恋人さんがお姉さんを迎えに来ました…如何致しましょうか?」

 

 溜め息を吐く僕を横目に

 

 「未だ動ける訳じゃないんだから会わせるだけ無駄だと思うんだけどねぇ~っ…あんたは会いたいのかい?彼氏にさ」

 

 そう言われてやっぱり男かよ…と、思いながら嫌みっぽく笑う魔女は無視して

 

 「それでその恋人さんとやらは一体どんな奴なの?」

僕がそう聞くとみこは

 

 背が結構高い白銀の弓を背負った格好良いお兄さんだよ」

 

 (白銀の弓を?あーっ…あいつかっ…何であいつが僕の恋人な訳?つかアイツの何処が格好良いんだよ?)

 

 そう思ってブスッっとしている僕に魔女は

 

 「その顔は思い当たる男が居るんだね?」

 

 そう冷やかすように言われて

 

 「弓を持っている奴は知ってるけど格好良いなんて思った事は一瞬足りとてないんだけど?」

 

 僕がそう不満げに抗議すると魔女はさも可笑しそうに

 

 「情の強い娘だ事」

 

 その完全に僕をおちょくっている言い方にカチンっときた僕は

 

 「娘ゆーなっ!僕は…」

 

 「僕は何なの?お姉さん…

 

 あのね、前々から思ってたんだけどお姉さんみたいに可愛い女の子は自分の事を”僕“何て言ってちゃダメなんだよ?お母さんにそう叱られた事無いの?」

 

 そう言われて思わず『無いよっ』て答えてしまったが

 

 (有るわけ無いだろう僕は男なんだからな)

 

 そう思っていたら魔女の目は

 

 (男の子だった…の間違いじゃないのかい?)

 

 そう意地悪く言っているのがまるわかりな目をしてるのでムカッときて魔女を睨んでいると

 

 「お姉さんは一度恋人さんに注意して貰わなきゃダメみたいだね?だから私…迎えに行って来るね」

 

 そう言うとみこはその姿をフッと消した

 

 (えっ?いや恋人じゃ無いって…つかあんな奴は連れてこなくて良いってっ!)

 

 と、焦るがみこはもう迎えに行ってしまい既に居ないのだから仕方無いが…

 

 「婆さんっ!」

 

 僕が怒鳴ると

 

 「ほれ、恋人が来たよ」

 

 その言葉に振り返ろうとしたがその暇は無く奴に抱き締められた…

 

 それ程知ってる訳じゃないけどその余りにもの奴らしからぬ振る舞いに

 

 「一体何があったんだっ!」

僕が聞くと奴は顔を歪め

「アマゾネスに姉貴を拐われた…

返して欲しかったらお前を引き渡せと言われ…俺はどうしたら…」

そう言って僕を抱き締める手に力を入れやがった…

僕の顔がみるみる青ざめていくのを見て驚いたみこが止めてくれたから良かったが…

そうでなかったらきっとそのまま絞め殺されてしまったに違いない

「ゲホゲホッ…お、お前なぁ~っ…僕を殺しに来たのかよ?」

そう言わずにはいられなかったが

「お姉さんっ!」

みこに叱られてしまったが奴は首を横に振り今のは俺が悪いから仕方無いよ…」

溜め息を吐いて

「で、そのアマゾネスって何者なのさ?」

「翼の媛よ…貴女を捕らえ座敷牢に押し込めていた者達がアマゾネスの民です」

翼の媛…僕はその一言に反応したが我慢し

「なら簡単じゃないか?あの人達は僕に害意はなかったのだから僕を連れて行けば良い

大切な姉さんなんだろ?何で悩むのか僕には解らないから結論を出してやったが

「お姉さんっ!」

と又みこに叱られたが訳が解らない

「みこちゃん僕何か悪い事言った?何で怒られてるの解らないんだけど…」

僕のその言葉に怒りを増したみこは

「お姉さんいくつ?恋愛したこと無いの?」

そう捲し立てられ

「え…もうすぐ二十歳だけど恋愛なんて未だ早いよ?」

怒りに震えていたみこの身体の震えがピタッと止まった

「お姉さん…それ本気で言ってるの?」

ますます訳がわからず

「本気でって…それが普通だと思うんだけど…え、あれ、ナニ、違うの?僕がおかしいの?」

えっえっえ~っ?

三人の顔を交互に見たが僕が可笑しいのか…間違っているのかと不安になってきてたら魔女が面白そうに

「世界が違うんだよ…世界が

その子のいた世界じゃ未々結婚する歳じゃないんだからさ

良かったねあんた…翼の媛は初物尽くしなんだから頑張って射止めなっ」

みこがクスクス笑いながら

「じゃあもしかしたら未だキスも知らなかったりしてえ~っ♪」

面白そうに言われた僕は顔を赤くして

「わ…悪いかよ?」

と口ごもってしまったが

「別にぃ~っ、可愛いお子様にはお似合いだから良いんじゃない」

今までの目上の者に対する敬意はすっかり影を潜めその口調は完全に子供扱いに変わっていた

「じ、じゃあみこちゃんはもうキスの経験はあるの?」

僕の質問を鼻で笑い

「私位の歳ならキスくらい極普通の事ですよぉ~っ

私はお師匠様の元で修行してますから当分有りませんけど早い人はもう嫁ぐ年なんですよ?」

僕はみこを改めて見たが

(それって完全に犯罪だよ…)

僕の心を覗いている魔女は肩を振るわせ笑っていたが僕にはもうそれを気にする余裕はなかった

「そ、そんな事より僕を引き渡さなきゃ人質を取り戻せないなら遠慮は要らない

僕を連れていけば良いって言うのはそんなに可笑しい事なのか?」

魔女は深い溜め息を吐くと

「間違っては居ないが正しいとも言えない…

少なくともその男には選べまいて…そうだな?」

やはり理解できない僕は

「何でだよ…大切な姉さんなんだろ?

余所者で大して親しくもない僕なんかと比べる理由なんか無いはずだし僕もそれで良いって言ってるんだから引き渡せば良いじゃんか?」

と言ってやったら奴は少し怒った様に

「俺は嫌なんだよっ!」

(怒りを押さえてる様に聞こえるが…う~ん…何でだ?)

「だからさ、何で嫌なのさ?お前が拘る理由が僕には解らないぞ?」

さすがの僕も一寸イラッとしてきていたら

「そのお嬢ちゃんは鈍すぎるからはっきり言ってやらないと伝わらないんだよっ!」

そう言われて奴は一度大きく深呼吸すると

「一目惚れなんだよっ!悪いかっ!?初めの時は包帯で顔が見えなかったし終われてバタバタしていたから余り意識してなかったけど…

二度目に逢ったあの時お前に惚れちまったんだよっ!」

「一目惚れ…」

予想だにしない答えで怒鳴られた僕の頭の中は真っ白になり言葉の意味が理解出来なくなった

この状況をどう理解したら良いのか?

どう対処したら良いのか?

「だって大事なお姉ちゃん助けなきゃ駄目だよ…」

僕はただそう譫言のように繰り返していた 

僕が落ち着くのを待って奴は僕の手を取ると

「翼の民の媛よ身分違いの懸想を許してくれとは言わぬ…

ただ想い続ける事を許して貰えればそれで良いのだ…」

その告白に対して僕は…

「ごめん…君の気持ちには答えられない」

僕の返事に歯を食い縛る奴に

「僕は翼の民でもなければお媛様なんかでも…そもそもこの世界の人間じゃないと思う

それに…そんなにまで誰かを好きになった事がないから愛とか恋とかも未だよくわからない…

みこちゃんの言う通りにお子様みたいなんだ…

だから少し…どれくらいかはわからないけど考える時間が欲しい、君の想いに真剣に向き合える時間を…

今の僕には軽々しく答える資格がないってゆーか答えて良いことじゃないって言う気がするんだ…本当にごめん」

今の僕には謝ることしか出来ない…そう思い話題を変えようとして

「ところで聞きたいのだけど…そもそも僕は何故この世界に迷い込んだのだろうか?

それがすべての始まりのような気がするのだけど…

そして何故貴女達は僕の名前を聞かないのですか?」

僕のその問い掛けに対して婆さんが

「何故この世界のに迷い込んだかについては私にもその答えはさすがにわからないね…お前さんの秘めたる魔力…才能…内に眠る霊がこの世界に引き寄せられたとしか神ならぬ身のあたしにゃそうとしか言いようがない」

そう言って溜め息を吐き

「だがお前さんの名をだれも問わぬ理由ならば答えてやろう…

この世界の者がお前さんに名を問いそれにお前さんが答えた瞬間からお前さんはこの世界の理に囚われこの世界の者となり二度と戻ることが叶わなくなるからさね…」

そう宣告され

「それなら答えは簡単だよ、僕は誰からも必要とされなかった元の世界に戻りたいとは思わないしその必要もない

だけどアーチャー、少なくとも君は僕を必要だって言ってくれるんだろ?ならこの世界に残る理由は有るしずっと探し求めていたモノを手に入れた今はもう絶対に失いたくないんだよ」

僕のその言葉に婆さんが

「そんな簡単に決めて後で後悔するんじゃないよっ!」

そう言われたから笑いながら

「それ無理っ♪僕の性格上どっち選んだって必ずってくらいに後悔するって思うから自分で選びたいし思うように生きたいんだ」

そう答えると驚いた様に僕を見る婆さんと

「あははっ、いかにも翼ちゃんっぽい答えだねっ♪うん、後悔しないなんてそんな簡単な事じゃないもんね…

だから翼ちゃんに帰れば良かったなんて後悔させちゃダメだよ?お兄さん」

みこに笑って言われた男を見ながら

「そうゆーわけだから君の名前…教えて」

僕の問い掛けに男は

「俺の名はアーチャーだ…」

そう名乗ってくれたから

「そう…アーチャー、君は僕に一目惚れだって言ったよね?なら今この場に来てくれたようにアマゾネスの元で待つ僕を迎えに来てくれるのを待ってる

如何なる理由が有ろうとも人質を取ると言う手段を使う人達を信じる事は出来やしない

だから…君が僕を迎えに来てくれるのを待っているからお姉さんを取り戻しなさい、良いですね?」

僕にそー言われて

「…………お前が俺を騎士として受け入れてくれるのなら…な」

暫く考え込んだ後に絞り出すような声でそう答えたから

「みこちゃんは知ってるよね?でも僕は知らないんだよ…騎士として受け入れるってどう言う事?」

僕はみこの耳元にそっと囁き聞いたのにみこは大きな声で

「あのねぇ~っ、翼ちゃん貴女ってそんな事も知らないの?本当に呆れた人だよねぇ~っ…」

その声は本当に呆れていたが

「仕方無いんだよ…そもそもお嬢ちゃんの住んでた国には騎士と言う概念がないんだから仕方無いんだよ…

良いかい大まかに説明するけど騎士ってのは二種類有って正式に騎士号を持ち国等に支える騎士と個人的に王族や将軍等軍の指揮官等に誓いを立てた非公式の騎士のふたつが在るんだよ」

「でも…「良いから年寄りの話は最後まできちんと聞きな…確かにお前さんはそう言った者には該当しないが自分で言ったろう?自らの事を化け物とね

だがそれ言い換えればお前さん自身が特別な存在である事を言う事を同時に指し示してるんだよ

如何なる姿をしていようとも敵を化け物と呼ぶのが人間の性……そうじゃないのかい?」」

僕の言葉に被せて遮りその噛んで含めた言われ方に剥れ

「確かにそうとも…「だからお姉さんはお子様なんだよっ!」」

みこにまで言い訳を遮られるようにピシャリと言われて

「だ、だって…」

そう言い訳しかけたら

「だってじゃないでしょ?しっかりしようよ…これから翼ちゃんは自分の運命を選択しなきゃいけないんだよ?ホントにそれを…ちゃんとわかってるの?」

そう強い口調で言われたから

「わ、わかってるよ…それくらいボクだってね…さっきも言ったけど元居た世界じゃ誰からも必要とされてなかったけどアーチャー…君は僕を必要だって言ってくれるんだよね?

なら僕はここに居る理由はあるけど帰らなきゃならない理由は無いし帰りたいとも思わないのだからアーチャー…僕に名前を聞いて」

僕の顔をじっと見て

「良いのか…戻れなくなるんだろ?」

心配そうに聞くアーチャーに笑顔を見せた僕はクスッと笑い

「ずっと探し求めていた物を手に入れた僕はもうそれを手放したくないし必要とされない世界に戻る気もない」

そう答えると今度は魔女が僕に

「そんな簡単に決めてしまって後悔するんじゃないよ?」

と突き放した言い方をしたが

「それ無理、僕の性格上どっちを選んでもきっと後悔するって思うから自分の思うように生きる」

魔女は目を白黒させたがみこは笑って

「いかにもお姉ちゃんらしい答えだよ…

そうだね…確かに後悔しないなんて難しいよね?アーチャーさん…お姉ちゃんに絶対に後悔させちゃダメだからね?

さぁお姉ちゃんに名前を聞いてあげて…」

息を飲み魔女を見ると頷いているの確かめたアーチャー

「翼の民の媛よ…御身の名を教えて頂きたいのですが宜しいでしょうか?」

(大袈裟な…でも仕方無いのかな?)

と思った僕

「僕の名は翼、天野翼だよ」

アーチャーは僕の右手を取ると

「我が名はアーチャー…

翼の民の媛巫女、翼媛よ我は誓う

我が剣は貴女の為に振るい我が盾は貴女の御身を守る為に有る

この誓い我が魂に賭け誓う故に我が誓い我が魂を受け取って頂けましょうか?」

みこの声が頭の中に響く

(アーチャーさんの手を取り直して手の甲に口付けして…

私に続けてこう言うんだよ…)

僕はみこに言われる通りにアーチャーの左手を取ると口付けをして

「貴方の誓い喜んで受け取りましょう

貴方の力を私に貸して頂けますね?」

(そう、そしてもう一度口付けをして)

僕はもう一度口付けをすると

(そうそれで契約は完了だよ

ほら契約の証しアーチャーさんの手の甲にはお姉ちゃんの…翼の民の姫巫女の象徴の紋章…二枚の羽を模したアザが浮かび上がってる筈)

「本当に…でも何かくすぐったいな僕の騎士様なんでしょ?アーチャーは…照れ臭いけどさぁ、お姉さんの救出に向かおうっ!それと有難うございます…今まで本当にお世話になりました」

僕は二人に礼を言うと今度こそ起き上がろうと身体に力を入れたが上半身を起こすのが精一杯

「翼…無理しなくても良い」

そう言うとアーチャーは僕を抱上げ魔女の結界を後にした

 

僕達はアマゾネス達の指定する場所に居た…

と言っても魔女の結界に居た時は魔女の魔力で何とか整えられていた僕の体調

でもそれは結界の外に出ることにより高熱が一気にぶり返してしまったのだ

より症状が悪化して

僕の意識はその熱のため朦朧となってしまっていた…

それでも僕の唇は僅かに動いてくれて

『待ってるから…』

と伝えれてそれを見たアーチャーの顔は承知しました…

そう言ってくれているのを再び遠退きつつある意識の片隅で捉えることが出来た

「さぁ…お連れしたんだから姉さんを返して貰おうか?」

猿轡を噛まされて両手を後ろ手に縛り上げられて居たが彼女の目は怒りと哀しみに満ちていた

「何故こうもあっさりとお嬢様を引き渡したのです?」

抱えられ拘束中であるにも関わらずそう言った

彼女の怒りの矛先は弟に向けられていたが取り敢えず今のアーチャーにはその場を離れることしか頭にない

念のため尾行が無い事を確かめながらの移動の為余り進むことが出来なかったが

何とか二人きりになる事が出来る場所まで移動出来たアーチャーに姉は

「アーチャー…貴方は一体何を考えているのですか?」

しかしアーチャーは落ち着きを保ったまま左手の甲を姉に見せ

「媛に…翼媛に誓いを受け入れていただきその誓いに賭けて必ず又お迎えに行きますと約束しましたし…

媛にも待ってるとのお言葉を頂きましたから」

その二人の前にいきなり現れたみこ

「お師匠様からの伝言です

アーチャーさんのお姉さんはこの間の闇の者の襲撃で死亡

アーチャーさんはその復讐の為に制止を聞かず脱走した脱走兵と本国に報告したんだって」

そのみこの突然の出現にアーチャーの姉は目を丸くして驚いたが

「媛の事は?」

「無かったことに…だから砦の人達には存在しないと処理されたって、どうする?」

姉弟は顔を顔を見合わせ

「どうするもありません…私はもう死んだことになってるのですから帰る場所の無い私は翼の媛と共に生きようと思います」

それを聞いたみこはにっこり笑い

「お姉さんは修道尼なんだよね?丁度良い、お行儀の悪い翼ちゃんをもう少し躾しないとね」

と言いアーチャーの方を見ると

「助かったよみこちゃん、このままノコノコ帰って脱走兵として捕まる何て間抜けた目を見るなんて事は冗談じゃないからな…全く」

既に誓いを立てた俺の魂は媛の元に有るのだから何の問題もない」

そう言って満足そうに笑い

「表立っては何もしてあげられ無いけど可愛い翼ちゃんの力になりたいのは私も同じだからね…

貴方達の支援をします」

「そんな事してよいのですか?確か…」

と良い掛けるアーチャーを制し

「翼ちゃんと貴方逹は何処の国家にも属さないのだから政治に介入する事にはならない筈?

とは言え先程も言った通り立場上余り表立った事はしてはいけないと言われてるけどね」

笑いながら言うみこに呆れ顔で

「貴女にも作法を一からお教え致しましょうか?」

と言ったがみこは更に笑って

「魔女見習いの私にはそんなの必要ないよ」

そう言って一頻り笑ってから

「どのみち高熱を出してる翼ちゃんは暫くは動かせない

その間ただ待ってるだけじゃ芸がない…

良かったら私が鍛えてあげようか?

やるからには厳しくやるからその覚悟が有るのならの話だけどね?」

その目は意地悪そうに輝いていたのだが覚悟を決め

「勿論媛の為、媛を守りたい自分の為にも今よりもっと強くならなければならない…

そう思っているのだから鍛えて下さいっ!お願いします」

その弟を見て

「その間私は何をしていれば?」

聞かれ

「私は必要ないけど貴女達の食事は任せるしこれを…

貴女の部屋から持ってきた」

そう言って渡された小箱は確かに自分の物で中には趣味のアクセサリー作りの道具と材料が入っていた

「翼ちゃん洒落っ気なくてそう言うの全然持ってさそうから作ってあげてね」

「つまり私達の媛を取り戻した後の準備をしていれば良いのですね?」

「察しが良いから助かるよ、翼ちゃんの事宜しくお願いするね」

こうして二人はみこの世話を受けながら救出の時を待った

 

 

 

 

 

⑤失せ物

 

見慣れない場所で僕は寝かされていた

それも分不相応な高級寝具に寝かされ高級そうな肌着に身を包まれている

又二日酔いなのかな?何か吐き気がして景色がぐるぐる回って身体がダルい

又人数合わせで引っ張り出された合コンにでも出てたんだろうか?

とにかく気持ち悪くて仕方無かった

「お嬢様お目覚めですか?」

そう言われて僕の頭はノロノロと動き始めた

(お嬢様?でも前にもこんな事有った様な…考えるの面倒臭いな…喉乾いた…ヤッパ二日酔いだな)

僕の思考は収集がつかなくなっていた

僕の口に何かが入れられた(冷たい)

冷たい水を口に含まされたのだ

僕は無意識の内に水を飲み干し渇きを癒すと再び落ち着いた眠りに落ちた

僕はその眠りの中様々な夢を見た

でもその中身は何一つ覚えては居ないのだけど…

熱も下がり起きれるようにはなったけど正気を取り戻さない僕を不安げに見守る人達

僕は時々その様子を寝台の上から眺めていたのだけど誰も気が付かなかった

僕は今修行中で僕の中に眠る魔力を解放する術を魔女の婆さんから学んでいた

そんなある日奴は現れた

アマゾネスが僕を必要とした原因が…




これも加筆修正してます
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