作:お手柔らかに

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この世界は…人々は媛巫女になにをもとめるのか?


黄泉路

①セクハラ爺さんの老害はイタイから止めてね…つかキモいつかタヒねっ!

 

湖を渡る風を帆に受け船は順調に走り魔力の消失により疲労困憊の僕の身体を優しく撫でてくれていた

朝には熱も下がっていたのだけど蓄積された疲労はやはり軽くなく身動きも儘ならず臥せったままになっていて相も変わらずベッドの住人の僕

出来得ればこのまま布団と一体化したいくらい…

それでも今夜の宿泊地に着く頃には筋力はともかく体力はかなり回復していたからちょっと起きてみたくなった僕は上体を起こそうと身体に力を入れてみたのだけど僕の身体は嘘みたいに重くなっていた

「嘘っ…私ってこんなに重かったの?」

そう言って落ち込む僕に

「どうかいたしましたか?」

レイが私の呟きに気付き聞いてきた

「私…太ったのかな?身体が重くて起き上がれないの…」

僕は情け無さそうにボソボソと言ったけどレイは

「?…、すっかり窶れたくらいですのに?」

そう答え僕達が頭を捻っていると

「太ってはいませんが翼の重さの分だけ体重は増えていると思いますよ?」

「あっ…馴染んできたから元から羽が有った気でいたけたど…

つい最近でしたね、私の魔力が…翼が目覚めたのは…

おまけに今の私…魔力のレベルも残量も思い切り下がってますし…ちょっと待って下さい」

僕はそう言うと身体中に散らばってる魔力をかき集めて翼に集中すると今まであれ程重たかった僕の身体は信じられない位に軽くなって…

スッと起き上がり寝かされていた馬車のシートから飛び降りる事ができた

「あっ…こんなハシタナイ事を…申し訳ありません修道尼様…」

僕はドレスの裾をつかみちょこんと頭を下げてみせるとそんな僕を怪訝そうな目で見る二人に僕は首を傾げ

「レイさん、修道尼様私…何処かおかしかったのでしょうか?」

不思議そうな顔をして顔を見合わせる二人

「いえ…媛巫女様らしくないと思いまして…」

「私らしくない?ああシュー様、アーチャーさんごきげんよう」

私を迎えに来た二人挨拶をすると二人の女性も気付き挨拶をしたが僕の立ち居振舞いに驚いて何やらこそこそ何やら話し合ってる四人を見て

「又子供扱いの私は仲間外れですか?」

そう言って唇を尖らせて見せた僕

「気にしなくて良いですよ…それより今宵は領主から晩餐の招きを受けているが翼の民の媛巫女様とその従者逹はどうしますか?」

と、シューに聞かれた僕は

「媛巫女様…制作中だった媛巫女様の衣装…完成しましたので体調が宜しいのでしたらそれをお召しになってお招きを受けられては如何でしょうか?」

僕は王子とレイにそう言われてアーチャーとその姉を見たけど二人はただ黙って頷くだけだったから

「二人はどうするのだ?」

そうシューに問われた二人は

「私は放浪の修道尼」

「俺に至っては国から追われてる脱走兵なんだぞ?その様な場に出れる身じゃないだろうが?」

そう答えたから

「そうですね、そういう事情で二人が行かないなら当然私も行きません…と、言うか人じゃない私こそそんな晴れがましい場所に行く資格はありません…」

溜め息を吐き

「予想してた通りの答えだな…

私からの提案なのですがこの地の領主、我が叔父上にも相談の上

一呼吸おいて

貴女を翼の民の媛巫女として我が国に迎えるよう女王陛下に進言しようと思っているがどうでしょうか?」

「?、?、?、?、?、?」

言われた事を理解できない僕…いや、全く解らない訳じゃ無いけどそれが何の意味が有るのかが解らないでいると…

「貴女ご自身は異世界からお見えになったからご存知無いのも無理ないが我が国にとり翼の民の媛巫女がどれ程の存在なのか…

この世界にどれ程の影響を及ぼす存在なのかを…」

そう言ってレイを見るとレイは王子の意を受け

「正式には陛下の承認が必要ですが臣下に下ったとは言え先代の女王陛下の血を引きしお方の推薦があればきっと…」

「陛下の承認は容易く降りよう…その為に是非とも伯父上殿に会って頂きたい」

「じゃあ二人は?」

「祖国を捨て翼の民のとして生きる覚悟かあるのならそう扱うのだが

何故ならその男は既に貴女に誓いを受け取って頂いた貴女の騎士…そうですね媛巫女様?」

そう僕に言ってアーチャーに確認をとるシュー

「我が魂に賭けてそう誓った」

そう毅然と答えてくれるアーチャーが好もしく思えた…残念ながらその事実は全然覚えてないけど素直に喜べた

覚えてないのが情けなくも悲しかったのも事実だったけど…

「私はもう死んだ人間となってますから私のいる場所はあの国にはもうありません…

それに…貴女もそうじゃありませんか?

媛巫女様はほうっておけない方あって思いますから…」

そう言ってレイに同意を求めるとレイも「そうですね…」

と苦笑いして同意した

勿論僕はムッとしたのを隠さなかったから二人は忍び笑いしたんだけどね

「解りました…本当はよく解らないのだけど少なくとも私が招かざる客じゃないって事は解りましたから」

僕達はそのまま謁見の間に案内され僕を先頭にし後ろにアーチャーと修道尼が並んで平伏して領主の登場を待った

領主が王子を伴い現れると僕に顔を上げるように言った

僕が顔を上げると

「そなたが翼の民の媛巫女ですねお初にお目に掛かる」

と声を掛けられたので

「はい、確かに私はそう呼んでいただく方が居り…翼と多少の魔力を持つ者です」

そう言うと軽く羽ばたいて宙に浮いて見せた

「ですが私は媛巫女と名乗ったことはありません…

ただ…その可能性があり人が私にそう期待するのならばそうなれる努力は惜しみませんが…その機会をお与え下さいませんか?」

「幼い顔立ち…」

聞こえないつもりで洩らした小さな呟きなんだろうけど残念ながら聞こえてしまっていた

勿論聞こえた事を気付かせない気配り位できる

「勿論私も貴女に期待しておりますともっ!」

領主は力強く言ってくれたけど…これって喜ぶべきなんだよね?

後でこっそり4人に呟いた一言だし今の僕はまるで自分じゃないみたいに色んな事か見えているのだかららしく振る舞うのは容易いこと

「勿論ご期待に沿えるよう精進いたします所存です」

僕が深々と頭を下げたので領主は嬉しそうに何度も頷き

「取り敢えず屋敷の中にある温泉で旅の垢を落とすが良い

誰か案内をして差し上げなさい」

と親切に言ってくれたけど元々風呂嫌いの上に背中に翼の有る今どうしたら良いのか解らなかった

そう迷っていて踏ん切りの着かない僕はディアナさんとレイさんの二人に手を引かれて浴場に向かった

記憶が欠け落ちまるきり別人と化していたのは幸いと言うべきだろうね

でなきゃ女性の裸を平気で見れる僕じゃない…

この頃の僕には男だった記憶がすっぽり抜け落ちていたのだ

でなきや自分の身体すら直視できなかったはず…

この頃の僕は僕じゃなく私なのだから…

まぁそれは良いとして身体に残した僅かばかりの魔力は全て翼に回した僕には二人に抗うすべはなく嫌いなお風呂に渋々と言うか嫌々入らされ扱いは保育園児

所謂源泉かけ流しの温泉は贅沢なんだろうけど風呂嫌いな僕には猫に小判で嫌々入ってたら湯中りで倒れてしまった…

「ごめんなさい…お二人にはご迷惑ばかり掛けてますね…」

僕は二人への申し訳無さと自分の情けなさで泣きたい気分だった

もっとも頭を冷やす為目の上に掛けられたタオルが涙を隠してくれてたから涙は出てたかも…

暫く休んだお陰で宴に出る元気の出た僕は領主に用意して貰ったドレスを侍女達に手伝ってもらって支度をした

招待された宴は早い時間から始まるため会場内には幼い子供の姿も結構見受けられたので領主が未だ姿を現してないせいか結構ざわついていた

仕方無いから一番近くに居て偶々視線が合った子に微笑んでみた

最初は母親の影に隠れるようにして見ていたが僕みたいに珍奇な存在は子供の旺盛な好奇心は押さえきれるもんじゃない、だから一人の男の子が行動した

「お姉さんそれ(翼の事)本物?翔べるの?」

私は首を傾げて微笑み

「羽をむしらないってお約束出来るのなら自分で触ってみて本物かどうか確かめてみなさいね、羽をむしらないってお約束出来る?」

僕がそう聞くと激しく頭を上下させ

「約束する、僕は大人になったら騎士になってこの国を護るんだからお姉さんとの約束は守るっ!」

そう力強く宣言したから

「では未来の騎士様、私の翼に触れどうぞご見聞をなさって下さいませ」

僕がそう言うと他の子供達も奇声をあげ僕に群がりてんでに翼に触れていた

「!、痛い痛いっ!」

と叫び翼ではない所を触って…

いや、揉んでいる手を掴み手の主を見た

立派な身形はしているけど絵に書いたような助平面の爺さんの手だった

「何故大人の貴方がと言うより何処触ってるんですかっ!?」

それに気付いた人達が皆目を覆っている

「そもそも貴方は一体誰なんですか?

小さい子に紛れ込んで人の胸を触るなんて…痛いじゃありませんか!?」

僕が睨んでも素知らぬ顔で

「何の事か私には解らんが?」

と両手の手首を僕に掴まれながら言った

「何の騒ぎかね!」

領主の叱責の声に続き

「お父様っ!」

僕に手首を掴まれている姿を見てそう叫んだ

(え…お父様?)

手首を掴む僕の手が思わず弛んだ…

「領主様の隣にいらっしゃると言う事は領主夫人様でその方のお父様って…」

慌て手を離すと僕は膝まづき謝ろうとしたら王子に脇を掴まれ

「この娘は血が滲む位地に額を擦り付けるんだから本人が悪くないのに謝らねば為らぬような真似はしないで貰いたいっ!」

(何で王子は怒ってるんだろ?僕が失礼な事しちゃったのに?)

僕は不思議な気持ちになって王子の顔を見ていると領主夫人も怒って

「お父様、悪ふざけが過ぎます、媛巫女様に謝ってくださいっ!」

言われた老人は

「触って良いと言われたから触ったまでだが?」

と言ったものだからそれを聞いた王子がますます怒りだして

「巫女は子供達に翼に触れて良いと言ったのですよ?

俺だって触ったこと無い巫女の胸なのに…」

「えっ?」

僕は驚いて王子の顔を見たが本人はしまったっ!と言う顔して僕の方を見れなくなっていたから

「全く…男ときたら皆一緒ですねっ!」

領主夫人が声を荒げ他の会場内の女性が激しく同意してこの事態を理解出来てない僕以外の女性が憤慨していた

「媛巫女様もはっきり言われないと解らない人ですから言っておあげなさい」

領主夫人からそう言われその他の人からも抗議するように勧められた

「あ…あのね…おじいさん、私ってあんな事されたの生まれて初めてだからもんの凄く痛かったんだからねっ!」

正直なところ何でこんなに痛いのか僕にはわからないけどかなり痛かったのは事実だったからそう正直に言ったんだけど

「媛巫女様、そう言う問題では…」

レイが私のドレスの袖を引っ張りそう言われた僕にとってはとても大きな問題でマジに涙が出そうな位だった

まぁそんな訳で私に頭を下げさせられた前領主の爺さんは不機嫌な様子で会場を後にする事になり私は領主様と並び人々の前に立つことになった

「我等は新しい時代の新しい翼の民の媛巫女を得るに至った事を皆に報告する」

「り…領主様、私はぁっ!」

領主の紹介の言葉に焦った僕は叫んだけど

「本人は未だ自分に自信が持てないからと媛巫女と呼ばれる事に抵抗が有るようだが…

実戦において既にその力の一端を垣間見たとの報告も聞いている」

会場内がどよめいて僕を見る目が集まった

息が詰まる…僕の決して長いとは言えない人生において人からこれだけの期待の視線を受けたこと無いからだ

「アーチャー、貴方の礼刀を腰から外して鞘ごと私に向かい捧げ持って下さいませんか?」

その通りにしてもらうと彼の左手の紋章に意識を集中し紋章に込めて彼に分け与えた魔力に干渉した「私の騎士の紋章よ…私の呼び声に応えて欲しい…その彼の手に在りし剣にその力を宿しお前の主人に相応しい…求めし力をその刀身に宿せっ!」

僕の口からスラスラ出てきた言葉はただの儀礼の際に着用する礼装用の短剣に命が宿ったかのように見え脈打ち始めた

「領主様…もしご迷惑でなければこの短剣を我が騎士アーチャーに拝領願えないでしょうか?」

私は無理を承知でそうお願いしてみたけどその許しは驚く位アッサリ出たけど驚いたのは僕だけらしく皆当然の事と受け止めていた事を知ったのはずっと後の事だ

ホッとした僕はグラスに注がれた乾杯用のアルコールの弱い…

そう、ジュースと然程変わらぬ子供でも酔わないごく低アルコールのワインをクイッと空けると王子とレイが顔色が変わった

もっとも…極々微量のアルコールにも酔ってしまう僕はもう完全に手遅れで性懲りもなく会場に舞い戻った前領主の爺さんを見付けるとくどくど説教を始めてしまい…

やがて爺さんの胸にすがり付き

「皆が私を子供扱いする」

と、言って泣き出しクライマックスは暑い暑いとドレスを脱ぎ始める僕に慌てたレイが駆け寄って

「ショー様、ボーッとして無いで媛巫女様を押さえてください」

そう言われ話に聞いて話にいていた僕の酒癖の悪さを目の当たりにしたシューが慌てて僕の身体を押さえ付けようとするけど酔っ払いの僕は魔力を解放してしまい収集がつかない状態になりつつある

そして混乱の中心人物とゆーか当事者の僕ときたら威張って言える事じゃないけど酔っぱらった僕は一切覚えていないない(ふんす!)

お酒に呑まれ泣きじゃくる僕の頭を撫でながら

「私がこの娘の後見人になろう」

そうじいさんが高らかに宣言をしたのだ

「もう命を惜しむ歳でもない私でもこの…運命立ち向かう乙女の力になれる

この娘は覚悟の上で世界の運命を背負うのであろう?」

「はい…媛巫女様は私にその御名を告げこの世界に殉じる覚悟と仰いました

それ故私も媛巫女を守る盾とならんと思い捧げし騎士の誓いを受け入れて下さったのです」

そう言って左の手の甲を掲げ紋章を人々に見せた

「それは紛れもない翼の民の紋章…間違いない…この娘は翼の民の魂をその身に宿している

生きてこの紋章が拝める日が来ようとはな…やはり長生きはするものだ」

その呟きを聞いた人々が再びどよめいた

「後見役なら私でも…」

そう言い掛けた王子を止め

「王子よ、貴方がなりたいのは後見人では無かった筈?後見人は年寄りに任せておけば良い

この娘を見て私とてもっと若ければと思わぬでもないのだからな」

泣いていた僕が泣き止み爺さんから離れた

「?」

「いけませんっ!シュー様、媛巫女様を取り押さえ無いと…」

この後の僕がとるであろう行動を知っているレイの顔がひきつるけど事態を理解しない一同はただ僕を見守るだけだったんだけど

「…つい…暑くなってきた…」

そう呟いてドレスを脱ごうとし始めた僕を見て慌てた王子が手を押さえ付けなければ…

暑い暑いを繰り返し何とか自分を戒めるものを振りほどこうともがくうちに疲れて眠ってしまった…らしい

又しても酔い潰れて眠ってしまう醜態を晒してしまったのだ

 

「頭痛い…」

まるで二日酔いの様にズキズキ痛む頭を抱えながら起きる僕に冷たい水の入ったコップが差し出された

それを取り敢えず空けると

「まず顔を洗ってくると良いですよ」

そう言われてふらつきながらも何とか水場に向かう僕…

湧き水を引いた水は冷たくて僕の寝ぼけ頭をスッキリ覚ましてくれた

レイに手伝ってもらい貰い朝の身支度を終える頃一人の老紳士が朝のお散歩のお誘いに現れた

「えっと…まさか夕べの…嘘っ、別人みたい…素敵なお爺様…」

老紳士は優しく微笑むと

「朝食には未だ少し時間があるから自慢の庭園を見て貰いたい」

そう言われた僕は

(何故だろう?僕の心臓は可笑しいくらいに鼓動が激しいし心なしか頬が熱いような気が…)

僕は少し俯いて歩きながら老紳士をチラチラ見ていた

何だろうこの感じ…まるで僕が僕じゃなく客観的な目で見知らぬ人を見るように自分見ている気がする

暫く歩くと紳士が赤い草の実をもいで渡してくれた

受け取った僕は実を見て老紳士の顔を見ると微笑みながら頷いた

僕は躊躇うこと無く口に入れ噛んでみた

「んっっっ…(すっ…すっぱぁ~い)」

僕は涙目になり老紳士を睨むと

「どうかね?頭がスッキリしただろう?」

言われてそれまでの不快な二日酔いみたいな頭痛がスッキリ治っているのに気付き驚いていると

「今度のは大丈夫」

そう言って黄色い草の実を手渡されるたけど僕は顔をしかめ食べるのを躊躇っていると自らも食べて見せてくれた

実を噛み砕くと彼の口から甘ぁ~い香りが漂ってきた僕は慌てて貰った実を口に入れてみると柔らかい歯触りのそれはとても甘くてジューシーだった

僕は貰った分を食べ終えるともっと欲しい…と彼を見たが

「これ以上食べると朝食が食べれなくなる」

と言われ口を尖らすと笑いながら頭を撫でられた

完全に子供扱いだけど何故だか許せたのは彼から見たら僕は未だ未だ子供なんだろうから…

僕は翼の下で自分の左の手首を右手で握ると翔ぶ様に跳ね回って老紳士の周りを舞いながら庭園を巡った

レイの僕達を呼ぶ声が聞こえ僕は老紳士と手を繋ぐと歩いて庭園を後にした

 

僕が老紳士と二人きりで朝の散歩をしていた事を知ったシューが妬きもちを妬き…

乱暴に僕の手を引き食卓の間へと向かった

「いっ、痛いっ!腕が抜けちゃうから離してっ!お願いだから…」

そう抗議したけど僕の言葉に耳を貸してはくれないし抗う力も今の僕には無かった…

「ここって…」

案内された部屋は明らかに貴賓室らしくて慌てて引き返そうとしたけど僕の手首は掴まれたまま離しては貰えない

「私には分不相応ですからその手をいい加減離してくださいっ!」

私はそう叫んだけどその声も聞き流されてしまった

「どうしたね?二人とも…朝から痴話喧嘩かね?」

「違いますっ!」

二人の声が綺麗にハモった

「息もぴったり合ってるのだからもっと素直になって仲良くしなさい」

そう言われて溜め息を吐くと

「そんな笑えない冗談言わないで下さい

私みたいに得体の知れない化け物とその様なこと言われたら王子様がご迷惑だとわかる位の分別はありますっ!」

僕は憤慨してそう答えたけど

「何だ…王子が気に入らぬのか?」

「そう言う問題じゃなく身分違いだと言ってるんです

今の私は貴方達の言うところの翼の民…即ち魔族なんですよ?さすがに媛巫女を名乗る資格が有るとは思えませんけど既に私は人ですら無い者なんですよ?」

私はそう二人に話ながら

―違うっ!何か肝心な事を忘れてるから駄目なんだよっ!―

僕は私に向かって叫んだけど聞こえる筈もない

「た…確かに貴女は人を越えた存在…

例え王家の血を引こうとも人の子に過ぎぬ私には貴女こそ尊お方なのですよ?」

―それで?―

僕はそんな視線で王子に話の続きを促した

「え?だから身分違いなら私の方こそ口にする事だと…」

僕(私)はそ呆れて

「私がその様な軟派な口説き文句を真に受けると思っているのでしたら心外です」

そう言われて力の緩んだ王子の手を振りほどき僕には場違いなこの場所から出て行き

そして出て行ってから暫くして僕は後悔する事になった…

何処に行ったら良いのか解らない事に気が付いたからだ

(まぁ良いか?)

窓の外を見ると梢を揺らす風が気持ち良さそうに吹いている

だから僕は開いている窓から外に飛び出すと座り心地の良さそうな枝に座り風に吹かれボンヤリ時を過ごした

元々それほどお腹の空いていなかった僕には食べなきゃいけない理由はなかったのだから…

頬を撫でる気持ちの良い風に吹かれる内にいつの間にか眠っていた僕をレイが見付けた時は既に枝からずり落ちる寸前だった…

慌てて駆け寄ったけど間に合うはずもなく受け止められると思っていたのも笑える話しだよね?

って頭を強かに打ち付けた僕には笑う資格も余裕も無かったのも事実だけど

それでもコブを作っただけで済んでる僕の石頭って…

後で皆からこってり絞れた…

頭痛いからそっとしておいて欲しいと言う願いも虚しく自業自得と一言で言われてしまった

特に口喧しかったのが前領主のスケベ爺ぃ(また格下げ)でうんざりする程くどかった

しかも僕の守役になるとかでこれから僕の旅について回るとか笑えない冗談言ってるし

そんな冗談止めて欲しいと言いたかったけど冗談じゃない事自体がまた更に笑えない冗談だった

頭が痛くて仕方無い僕は偉い人達の挨拶も耳に入らずただ曖昧に微笑み

時折爺さんに背中を小突かれてお辞儀をする内に何とか苦行を果たし終えた

馬車に乗り込む僕に爺さんが

「頑張ったご褒美だ」

と言ってランチョンマットにくるまれた黄色い草の実をくれたものだから僕の態度は一変

「お爺様大好きっ!」

と言って抱き付いた

そんな私の姿に我ながら現金なものだと他人事の様に呆れる僕がいた

もう一人呆れて何かを言い掛けたのが王子で私にジロッと睨まれたら黙り込んだ

フンッと鼻を鳴らし私は蕩けるような笑顔に戻ると草の実を摘まみ食べ始めた

―こえぇ…何この僕、マジ怖いんですけど―

そんな思いで自分自身を見ていた

そんな僕は貰った草の実を食べ終えると満足の笑みを浮かべ再び眠りに落ちた私

―全く…このお媛様は…呆れた娘だよ―

年老いた女の声がレイとディアナの頭に響いた

「ま、魔女様いつからこちらに?」

ディアナの問いに面白くもなさそうに

―そもそも私の所から出て行く時からシソーラス(監視の目)を張り付けてあるんだから最初からだよ―

そう二人に告げた

「それではお酒に呑まれた媛巫女様のお姿も?」

レイがそう尋ねると

「しっかりとね…全く愉快なものを見せてもらったよ」

その言葉とは裏腹に全く笑ってる感じのない婆さんに

「魔女様、この先の事の何か助言はいただけないのでしょうか?」

そう尋ねると

「今の所はなるようになっているのだから特に私が言うべき事はない

まぁ強いて言うべき事が有るとするならお嬢ちゃんが酒でヘマしないようにしっかり気を付けてやるんだよ?

何しろ本人に自覚も記憶も全く無いんだからね…」

そう言って呆れる婆さんに

「それだけなのでしょうか?」

と食い下がるディアナに

「くどいっ!お前逹人の子が先の事を知りすぎるべきではないんだからね」

そう言って二人の意識から接触から気配を消すと二人は肩を竦め魔女の訪れで中断していた自分達がすべき事の続きを始めた

 

夕暮れ近い頃今日の宿泊予定の町外れが見えてくると背筋にゾクッと来る悪寒と共に悪意に満ちた視線を感じた僕は

「馬車を止めてくださいっ!」

そう叫び止めさせると

「悪い予感がします…アーチャーさん、私を連れて先乗りしてくれませんか?」

そう言って立ち上がると王子が僕の腕を掴み

「私も連れていって欲しい…いや、ついていくっ!」

そう宣言する王子に

「魔力を持たない貴方をお連れするわけには参りません」

そう静かに告げたけど納得するわけもなくそればかりか爺さんまでもが

「魔力を持たない者に厳しいのは解るが私達はお前から離れる事の方が辛いのだよ…」

とか言い出した

「私は…「解ってるお前が私達の事を思うからこそ同行を許さないことを…だが…レイは私の馬に、ディアナは弟の馬に媛巫女様は王子の馬にそれぞれ同乗しなさい

後の者は夜営の可能性もあるからそれを念頭に置き第二警戒体制で待機せよっ!」」

そう命ずると私の反対なんかお構いなしに三人は馬を走らせたんだ

 




まぁサブタイトルで何となく展開は予想できますよね?
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