翼 作:お手柔らかに
私は頬を膨らませたままシューの前に乗せられていた…騎乗経験がないからだけど
「一緒に来てくれて有難う…シュー王子様」
素直でない私は私は小さな声で感謝の気持ちを伝えると
「え?あ…な、何て言ったんだ?翼…」
思わず聞き返してきたけど私は再びシューから顔を逸らして前を見ながら
(くすっ、二度は言って上げないよ…私の王子様っ♪)
街は黒い霧?にすっかり覆われて様子がわからない解らない上にその霧は堪らなく嫌な邪気を放っててアーチャーさんと爺さんすらも顔を歪めるくらいでレイさんとディアナさんの顔色はすっかり血の気が失せて真っ青になってる…そんな五人に私は
「なし崩し的に同行を認めたですから私からのお願いも聞いてもらいます
以後私の事を媛巫女と呼ぶのは禁止ですからね?私はお媛様でも巫女でもないんですから翼と呼ぶ事が条件です」
そう言い放つとレイさんとディアナさんが顔を見合わせ
「仕方ありません…ですがせめて呼び捨てではなく翼様とお呼びする事だけはお許し願いたいです」
と、レイさんが言うとディアナさんも頷い同意する二人は
「その代わり翼様も私達の事は呼び捨てにしていただきますよ?」
そう言われて言葉に詰まる私を男達は面白そうに見てるので
「仕方ありません…わかりました、私もその呼び方に慣れるよう努力します」
そう言って溜め息を漏らすと
「さて…どうやら落ち着いたようだから現状を整理するためにもまず翼に聞くがこの黒い霧は何だと思う?」
そう聞かれた僕は
「属性の違いは有っても皆さんも見た事がある筈ですよ?」
そう私が答えると
「それはもしかして以前の翼様が纏っていた魔力の炎の事ですか?」
レイの問い掛けに静かに頷くと
「では実害はないと?」
そのシューの質問には
「無いとは言い切れません…私の場合力を押さえ込んでましたから周囲に影響を及ぼさなかっただけで恣意的に力を解放していたら…」
「その結果は保証は出来ない…か?」
爺さんの言葉に頷くと
「確かにこの霧から感じる気持ち悪くなるくらいの悪意はそれだけで十分影響を受けていると言えますね…」
吐き気を堪えているらしいディアナが辛そうにそう答えると
「…で、しょうね…それについては今の私には私にはなんとも言えませんけど少なからず影響を受けてるのでしょうね…この説明し難い不快感…」
レイのその言葉に
「貴女もナニかを持っている訳ですね?」
そう言って一人頷いて
「取り敢えずこれを」
翼を撫で抜け落ちた羽根を手渡して
「私の魔力の象徴である羽根を持っていれば多少抵抗力は上がるはず?」
そう言ってお守りがわりに持たせることにしたけどディアナの顔色も多少よくなったみたいでそれを見た私は
「ナニが在るのかわかりませんがこれだけの邪気を放つモノがあるのですから警戒は怠らないようにお願いします」
そう話しているうちに町中に入った私達は気配を探ってみると人の気配はあるけど道を歩く者はなく子供の声も聞こえない
どの家も窓を閉め切りカーテンで中が見えないように閉ざし扉を固く閉めて見えない外敵を恐れているようだったけど侵入者の私達に対する警戒心は失ってないらく家の中から監視する視線は感じられていた
「翼、どうするね?」
じいさんの問い掛けに
「まずは警戒心を解かなければ信用を得ことも情報を聞き出すことも出来ませんから…」
そう言って目を閉じて一気に魔力を高めるとそれに呼応した翼は大きく広がり白銀の輝きを放つと私の身体を宙に浮かせてくれたから
「私達は決して貴方達に害を加えに来た者はなくこの黒い霧の怪異の正体を突き止め霧を…悪夢を祓いたくて参った者
どうか貴方達を苦しめている怪異について教えてください…私はこの自らが背負いし翼に誓って皆さんのお力になりなりたい」
そう告げると翼は益々輝きをまして周囲の霧を祓うのを見た街の人達が一人二人と外に出て私達の周りに集まってきたから大きく翼を羽ばたかせ抜け落ちた羽根を撒き散らせて
「私が魔力が込めたその羽根にどれ程の力があるかはわかりませんがお守りくらいにはなりましょうから必要な方はお持ち帰りください」
そう声を掛けると人達は競って拾い集めて家に持ち帰り再び現れると私を拝みだす人もいて
(あ、あはは、私は神様でもなきゃ怪しげな宗教の教祖様でもないから拝んだってご利益なんか無いのにな…)
そう思いながら内心苦笑いしていたら
「私はこの街の町長として町を預かる者ですが貴女様のご厚情により久しぶりに街の者達の笑顔が見れました…感謝致します」
そう言われた私は町長のそばに降り立ち首を横に降り
「いいえ、私は未だ皆さんの心からの笑顔を見ていませんからこの霧を祓い街に光を取り戻したいのです」
そう告げると驚いた町長が
「なぜ貴女がそこまでこの縁もゆかりもない私達の街に拘るのですか?」
そう問われたから
「理由なんかありませんが強いて言えば私が私であるから…異邦人である私が縁とか言い出したらこの世界でなにも出来なくなってしまいますよ?」
そう言って笑うと
「貴女様はいったい」
と、呟く町長にじいさんが
「翼の民の媛巫女を目指す者…まぁ本人は認めてないが私達は既に媛巫女を 名乗る資格は十分あると思っているのだがな」
そう言って苦笑いを浮かべると改めて私を見た町長は
「翼の民の媛巫女様…」
そう言って絶句していると
「そうだ、苦難の時を迎えた世界に現れた新時代の媛巫女様だ」
そう誇らしげに言うじいさんを見て
「雷人様にそこまで言わせるお方、なのですね?」
そう言ってじいさんを見るとじいさんも頷いて
「シューも認めている」
そう言われて初めてシューの存在に気付いた町長は
「なんとシュー様までもが…」
そう言うのが精一杯だった
「おじい様にお願いがありますがよろしいでしょうか?」
そう聞く私を見る一同と頷くじいさんに向かい
「帰還途中の兵士の皆さんには大変申し訳ない話になりますが私達がこの怪異の正体を解き明かし解決するまでの間…少なくとも女王陛下の御判断が下るまでこの街の防衛を頼むわけには参りませんでしょうか?」
私のその問い掛けに
「わかった、シューよ…一旦我等の領地に伝令を走らせ事情を伝え早馬をかけさせて陛下の指示を仰ぐのが良かろう…頼めるか?」
そう言われて驚いている街の住民達を他所に
「承知しました、帰還兵達への伝令は誰が?」
と、問い掛けられたから
「アーチャーさんお願いします、そして町長さんには防衛を受け持ってくださる兵の皆さんの受け入れをお願いします」
私の要請に黙って頷くアーチャーさんと
「町長、この怪異せいで宿屋は空っぽだから受け入れは平気だっ!シュー様にお願いして兵隊さん達に来ていただこうっ!」
そう言って活気付く街の人達を見るとその表情は明るさを取り戻しつつあったので
『墳墓の守り町の防衛を任せたい、詳しくは書簡にて知らせるので町には言ってほしい』
と、アーチャーに伝令を頼むと帰還部隊の隊長であるトリアイナ宛の指令書と女王と領主宛の書簡を認めているのを待ちながら改めて町長から話を聞くことにした
「事の起こりは一週間ほど前になりますが墳墓の扉かいきなり吹き飛び中から黒い霧が吹き出してきたのです」
そう言われて頷くじいさんを見て安心したのか
「当然ながらその事態に気付いた神官達が事態の究明と収拾に当たろうとしましたが逆に黒い霧に取り込まれ姿見えなくなり恐ろしくなった街の者達に早く家に隠れて固く扉を閉ざすようにと言ったのです」
そう告白したので
「それはとても賢明な判断でした」
私がそう答えを聞いて驚いた町長は
「私は臆病者の謗りは免れぬものと思っておりましたのに」
そう言って息を吐き出すのを見て
「生兵法は怪我の元、貴方の適切な判断のお陰で街の人達の被害が最小限に押さえられたのですよ?謎の怪異に無策で飛び込むのは勇気でなく無謀
街の人達を守ると言う責任を果たした貴女を貴方を謗るのは自ら愚かさを露呈するも同然」
「お前はもっと自分を誇っても良い」
私の言葉を受け継ぎじいさんも誉めてくれたからようやく肩の荷が下りたのか安堵の溜め息を吐いた
「やはり神官や守り人達の安否確認と出来うる限りの情報収集が先決問題でしょうね?」
私の提議に異論の無い四人が頷いて
「まずは神官達に会いに行こう」
じいさんはそう言って寺院に案内してくれる事になってやはり姉弟寺院に近付くにつれ濃くなっていく霧を心配するディアナが
「霧が、障気がどんどん濃くなってきてますね?」
不安を口にすると
―結界を張りな―
そんなことを言う魔女の婆さんの声?がしたから
(ケッカイ?)
と、暗号を聞いて首を傾げると
―あーっ、面倒臭い…お前さんの魔力を借りて結界を張った方が早い―
そう言って結界をはってくれたから
(え?あーっ、有難うございます…)
やっと意味がわかった私に婆さんのお叱りの声
―全く世話のやける、さっさと状況を結界を張った事を教えてやりなっ!―
そう言われて
(ハイハイ、そんなに叫ばなくても良いでしょうに…)
私がそうぼやくと
―お前さんのおつむにゃ怒鳴るくらいでなきゃ響かないんだよっ!―
と叫ばれやれやれと思いながら
「遅くなりましたが結界を張りましたから安心してください」
私がそう言うと
「弟は…アーチャーは大丈夫なのでしょうか?」
初めて聞くディアナの姉らしい言葉にちょっと感動しながらナゼか胸が痛くて切なくて
「大丈夫、彼が腰に差す魔剣は伊達じゃありませんしぼんやりしてる私と違い即座に対応するはずですから大丈夫」
そのどう返せばいわからない微妙な私の答えに苦笑いしながら
「私にも何か貰えませんか?翼の為に戦う力になるものを…」
そう言われて私の答えは
「未だその時じゃないから…」
私が決めて言い訳じゃない事だけにそう答えるしかなかった
ようやく寺院に着いたけど当然ながら入り口に待ち構えていたからその門番に向かって私は
「邪魔だから退きなさい、中に入れませんっ!」
と、言ってやったら律儀に
『何をわからぬことを…その様なことを言われてはい、どうぞ等と言って通すわけなかろう』
と答えてくれたから私も
「勝つと決まってる面倒臭い戦いを省きたかったんですけど…」
そう言って武装すると戦闘態勢にはいる私に
『貧相な装備のお前が私に敵うとでも思っているのか?』
そう嘲るように言うから
「私の魔力を感じ取れぬ木偶の坊が私に敵うつもりでいるのが片腹痛い」
そう言って嘲笑うと
『引き返すなら今のうちだぞ?』
そう言われて
「元より力ずくでも通るつもり…行きますっ!」
そう叫ぶと金剛槍炎を大きく振りかぶって叩き付けたけどめちゃくちゃ固くて弾き返されたから一旦下がりハンドボーガンを放ちなんとか隙を探してみたんだけど…うん、固い
どうすれば良いのかは何となくわかるけど私の身体能力でそれが出来るかは甚だ微妙
イタズラに時間が過ぎ私の体力の限界は近くそれに気付いた門番は
『どうした、力ずくで通るのではなかったのか?』
「面倒臭い戦いになると言いました通りに面倒臭い展開になってるだけなのですからお気遣いなく」
息が切れ切れであるにも関わらず余裕ぶって一気に言うと
『何を強がりを…』
ド、ドーンっ!と言う吹き出しが見えそうな衝撃音が響き話の途中だった門番が目の前から消え
「翼、無事か?」
事態を理解し闘いの緊張感から解放された私の身体は力が抜け崩れ落ちそうになったけどなんとかこらえていたらアーチャーさんが肩を貸してくれたから
「大丈夫…です」
そう言って笑って見せだけどあまり笑顔に自信無いから…等と考えてたら
「取り敢えず伝令を伝え町に入るよう言って俺は一足先に戻ってきた」
そう報告するアーチャーに
「ご苦労様です、それと有難う…助かりました、攻めあぐねてじり貧状態でしたからね」
そう言って苦いする私に
「翼様、あの門番はどうなったのですか?」
そう聞いてきたレイに
「門番ならあそこで壊れてますよ」
私の視線の先にあった塀の一画が崩れていてバラバラの甲冑が散らばっているのを見て
「リビングデッドだったんですね」
そう呟くレイに
「この魔方陣から出なければ無敵のようですが圧倒的な拳撃で吹き飛ばされましたから…
魔方陣内で破壊はできなくても拳圧までは相殺出来るほどの魔方陣ではありませんからね」
そう言って羽根を魔方陣の中心に投げつけ破壊する頃には息が整ったのを確めたアーチャーが取り敢えず中に入ろう、話しはそれからだ
そう言って私の右手を握り扉を開け寺院内に入ることとなったけどしばらく歩いてから
「アーチャー、ひとつ言いたいんだが一体いつまで翼の手を握っているつもりだ?」
苛立たしそうに聞くシューに呆れた私は
「そんな細かい事をいちいち、私の手は二本あるんだからはい」
そう言って左手を差し出すとビックリしながらもその手を握り私も握り返すと嬉しそうな顔をするシューに
「二人とも、お願いしますから仲良くしてくださいねっ♪」
私にそう言われて複雑な顔をする二人だけど私を挟んで恋の鞘当てを演じる二人の男達と戸惑う私…
そしてそんな私達を生温かい目で見守ってくれる三人だけど
『笑ってないで助けてくださいよ皆さん…お願いしますからさっ!』
私の記憶の残骸がそう叫ぶ
『男にモテても嬉しくねぇ~っ』と…
「おじい様、神官達に生き残りがいるとするのならどかに閉じ込めてあると思いますがそれはどこだと思いますか?」
寺院内を探索しながらした私の問い掛けにしばらく考えてから
「牢屋等は無いから地下の物置小屋だろう、そこに案内する」
そう言って案内するじいさんについていくとやはり鍵が掛かっていて
「俺が壊す」
そう言って名残惜しそうに私の手を離し剣の束で殴って壊すと扉を開け中を確かめるアーチャーに続いて私達も中に入ると無気力な人達が床に座り込んでいて
「おぉ、お主か、無事だったか…話しは出来るか?」
顔見知りらしい一人の…かなり身なりの良い老神官に話し掛けるじいさんに
「お知り合いですか?」
そう問い掛けるとやはり目立つ私の翼
「その翼は…」
そう呻いて目を見開く老神官に
「そうだ、我等の時代に遣わされた我等の翼の民の媛巫女様だっ!」
そう誇らしげに宣言じいさんに
「おじい様、私はそんなことっ…「わかっている、媛巫女である証をナニも立てていない、そう言いたいのだろう?」」
憤る私に穏やかな口調で言い含めるように話すじいさんに
「お前が認めようと認めまいと人はお前に期待する…辛い現実だろうがお前にはお前に誓いを立てた騎士のアーチャー君と運命を共にする覚悟を持った修道尼のディアナ嬢がいる
後ろ楯の私や力になりたいシューにレイもいるのだから頼りなさい」
そう諭されて考え込んでいる私に構わないで
「一体何者がなんの目的でこんなことを…」
そう老神官に聞くと老神官は
「何者と言われても魔族の者としか申せませんがその目的は雷竜槍の封印です」
その言葉にじいさんは顔色を失ったけどその意味がわからない私達はただひたすら戸惑うばかりでそんな私には構わずじいさんが
「賊は何者で賊の狙いは一体なんなのだ?」
じいさんにそう聞かれた老神官が
「賊は魔族の者としか申せませんがその目的は雷竜槍の封印ですのでお急ぎください雷人様」
そう言われて雷竜槍を知らない私とアーチャーが
「雷竜槍?」
そう呟いて首を捻っていると
「翼様はともかくアーチャー…貴方まで知らなくてどうするんですか?全く…」
そう言ってこめかみを押さえるディアナに苦笑いで
「そうは言っても我が国で名前しか知らぬ者も珍しく無いのだから仕方無いだろう…」
そう言ってディアナを宥めて
「いずれにせよ雷竜槍を封印されては敵わんから奪還せねばならんが…」
そう言って私を見るじいさんに
「取り戻しましょう、その雷竜槍とやらを不快な魔力を感じますから警戒を怠らないようにしてください」
私がそう伝えると
「わかった…お前がそう言うのなら気を張って挑むことにしよう」
じいさんがそう答えてくれたから
「私の記憶違いでなければかなり厄介なよろしくお願いします」
頭下げてそう言ってから
「雷竜槍ってその名から感じる魔力とゆーか霊気の属性はやっぱり電気系だよね?まぁそんなの如何にもなネーミングせんスでネタバレしてますけど…」
そう言って見たけど槍から感じる魔力から予想はついたけど
「うん、感じないな…その代わりにイヤな奴の気配なら感じるけど…レイ、気を付けて…アイツ、やっぱり生き延びてたからね」
私の言葉に青ざめるレイを見たじいさんが
「アイツとは一体何者だ?」
そう聞かれたレイが
「」
そう呟いて再び歩き始めた
「い、居た…やっぱりアイツか…しぶとく生き延びたみたいだけど何てゆーか…うん、前に会ったときよりより一段とキモくなってるね?アレってば…間違いなく」
視線の先にいるのは以前取り逃がした敵で
「今度こそ逃がさない」
そう呟き狙いを定めて矢を放ったけど矢は一本もかする事無くかわされ一瞬の内に見失った奴が私の目の前に現れたのに気付いて
「は、はやっ…ヤバいっ!」
なんとか張った防御壁の結界だけど奴の拳は私に届かなかったけど結界ごと吹き飛ばされて壁に叩き付けられるだけで済んだ
もっとも直撃を受けなかっただけで全くの無傷だったと言う訳ではなく
「大丈夫か?翼」
心配そうに聞いてくるアーチャーさんに
「大丈夫、問題ないです」
苦笑いで答えると
「唇切れてる」
そう言って差し出されたタオルを受けとると笑顔で
「有難うございます…女の顔を殴ったんですから私もきれて良いですよね?」
そう言って妖しく微笑むと
「くれぐれも無理だけはするな…と、言いたいところだがどう攻める?」
そうアーチャーさんに聞かれた私は
「動きが早くて私の目じゃ捉えられないし攻撃力だって知れてるから私は矢を射つことに集中して援護するから接近戦を任せて良いですよね?」
そう言って笑顔で小首を傾げると
「任せろっ!」
そう低く唸るように言って気合いと共に奴に向かって斬りかかっていった
私とアーチャーさんの呼吸が合い始め言葉を交わなくても意図が読め徐々に奴を追い詰め始めた
ボウガンの矢は私の意思に応え自在に曲がり始め奴を戸惑わせ魔剣を使いこなし始めたアーチャーさんの動きは格段に鋭さが増してきているからだ
「アマイ、ソノ程度の攻撃ガ何度モ当タルモノカ」
そう言って難なくかわしたはずの流れ矢が構築中の結界の楔に当たり結界が破られて焦る奴の動きに隙が見え始めた
「(動揺してる)おじい様、奴はもう私とアーチャーさんの攻撃をかわすので精一杯ですから槍の奪還をお任せしても良いですか?」
「わかった、任せなさい」
じいさんはそう答えてくれたから
「私が合図したら槍の奪還に向かってくださいませっ!」
じいさんに向かってそう叫び奴の隙をうかがっていたけどついにその時はきた
「おじい様、今ですっ、槍を取り戻してください」
私の声に反応したじいさんが飛び出し槍に向かうと当然の様に奴は反応したけどけど奴にとっては痛恨のミスだった
じいさんにき気をとられたその一瞬に矢が三本刺さりアーチャーの斬撃を二太刀浴びてダメージを負ったのだから
私の矢は奴を捉え始め確実に奴の行動を制限していたのでアーチャーの剣をかわせなくなりダメージを徐々に与えつつあった
逃げるのもできないことを悟った奴は最後の悪あがきである相討ちを…でも残念、それが確実に仕留めるための私の狙いでもあるのだから…
誘った訳じゃなく体力が尽きた私の動きが鈍るのは当たり前でその隙を逃す奴ではないけどこちらも予測の範囲内で左側から襲ってきた奴に向かって燃え上がる炎竜剣を突き出した
剣は大きく開けた口から入り奴の牙は暫く私の肩口に食い込んでいたけど炎竜剣の炎に焼かれる内に開放しそして焼き払われた…
こうしてなんとか無事に雷竜槍を取り戻した私達は神官達が待つ地下倉庫(解放されたからって年寄りばかりで食事もろくに与えられてない監禁生活で動けないから取り敢えず水分を摂って身体を休めているところ)に戻った私達
その私達を待ち構えていた老神官(実は偉い人)に向かってじいさんは
「神官長よ、無事雷竜槍を取り戻したぞっ!」
そう言って取り返した雷竜槍を神官長に手渡して
「我等の役目は終わったから寺院の宝物殿に安置して欲しい」
と、主張するじいさんと
「いいえ、今こそ初代媛巫女様が雷竜より賜りし雷竜槍を雷帝の名を受け継ぎし雷人様にお返しする時と存じます」
そう言って譲らない神官長の意見が対立するなか他の皆が私の意見を求めように集まる視線を感じて
「私ならこのこの子の声を聞きその意思に任せます」
そう言って雷竜槍を掴むと
『雷竜槍よ、私は貴方に問います…今この時貴方は雷帝の名を受け継ぎし16代目雷人公の元に行きその力となるか未だその時でないと寺院にて時の訪れを待つのか…
雷人公の力になるのなら雷人公の元にそうでなくば神官長の元に行き貴方の意志を示して欲しいと私は翼の民の媛巫女の名に於いて貴方にそう問います』
そう言って頭上に持ち上げると放電を始めた雷竜槍はゆっくりとじいさんの元に行きその手に収まると放電を止めたのを見たじいさんは
「お前の意志、しかと受け取った…翼の為に力を貸して欲しい」
そう訴えると槍は黄色く光ってじいさんの想いに答えたみたいだった
神官達と別れて守り人達に会うため守り人の屋敷に向かい屋敷内を探し回ったけど一人として見付からなかった守り人達
神官達が地下倉庫に閉じ込められていた寺院と異なり守り人の屋敷は全くの無人だったので
「取り敢えずここでしばらく休憩をとることにしよう」
じいさんがそう言うと
「私達は食事の支度をしますから翼様は出来るまで少しお休みなさいくだ さいまし」
ディアナにそう言われたけど
「食欲無いから要らない…」
ディアナとレイが溜め息を吐くのを見て
「アーチャー君あれを」
そう言ってアーチャーが取り出し渡してくれたランチョンマットをの中に入っていたのは私の好きな草の実で
「どうせ翼は食べろと言って素直に食べるはずがないのだからアーチャー君にアーチャー君に頼んで持ってきて貰ったのだからお礼を言っておきなさい、そしてこれを食べたら少し休むようにしなさい」
そうはっきり言われてムッとしたけど頷くと包みごと渡してくれて皆が呆れるのを構わず草の実を食べて一眠りしたんだ
短い時間の仮眠だけと夢を見た
誰かわからない人に顔を叩かれ
「仕方無いんだよ、仕方が…」
そう呟き痛む頬を押さえ立ち尽くしていた私の頬も濡れていた
いつの間にかディアナの膝を借りて寝ていた僕は下から見上げる姿を誰かに重ね合わせていた
誰だかは思い出せなかったけど
「お目覚めですか?翼様…」
ディアナの優しい声が私の耳を心地よく擽るので私はもう少しだけ眠ったフリをすることにした
ディアナが溜め息を吐くのが聞こえたから
「翼はまだ寝てまぁーすっ♪」
と返事したら
「翼ちゃん、良い子ですから早くおっきしましょうねえっ!」
そのキツい言われ方に溜め息を吐きながら
(仕方無い起きよう…)
「もう少しこーしていたかったのにな…」
私が態とらしく呟いたら嬉しそうに
「私もそうしていたいけど今はピクニックの途中…と言うわけではありませんからね」
と言われてしまって再び溜め息を吐くと
「落ち着いたら皆でピクニックに行きましょうね、翼様」
そう言われて
(その気持ちは嬉しいけどいつの事になるのやら…)
そうぼやきたかった
「食事になさいますか?」
レイが聞いてきたけど全く食欲の無い私は首を横に振りボソッと答えた
「要らない」
と…その言葉を聞いて顔を曇らせたディアナにレイが
「スープが有りますから…翼様、スープなら召し上がって頂けますね?」
今度は要らないとは言わせない迫力で言われてしまった私は仕方無いから
「少しだけなら…」
と答えざるをを得なかった
でも身体は本当に少ししか受け付けずに気分が悪くなってしまって顔色も…
その事態に至ってはさすがに誰も何も言わなくなったし私自身気分悪くて言葉がでなかった
「仕方無い…もう少し休んでから出発することにしよう」
爺さんがそう言って腰を降ろすと王子とアーチャーもそれに倣った
休憩を延ばしエネルギーの補給もした僕の魔力も急速に回復しつつあった
それは食べ過ぎで悪くなっていた気分も快方に向かっていることも意味していた
「お爺様そろそろ出掛けましょうか?」
私の顔色を見て
「未だ余り良くないが大丈夫なのか?」
心配顔で聞いてきたから私は
「もう大丈夫です…後は身体を動かした方が回復が早いのだから」
私は言葉だけではなく軽やかに宙を舞って見せた
その私の顔色を確かめた爺さんは溜め息を吐き
「わかった…だが、くれぐれも無理はしない事だっ!良いな?」
じいさんの説教臭い言葉にひ
「はぁ~いっ!」
明るく元気で軽薄な返事に更に深い溜め息を吐いた爺さん
「支度は出来てるな?」
ディアナとレイに聞き二人が頷くのを確かめると
おもむろに立ち上がり王家の墳墓を目指し歩み始めた
本来立っている筈の見張りも居らず開け放たれた扉が煙のように闇が吹き出していた
私は魔力を込めた矢を爺さん、王子とディアナ、とレイの四人に渡し
「皆を守ってくれるお守りだから手放さないで…」
参拝室の闇はこれまで以上に濃くなっていたけど私の翼の放つ光が闇を照していたから進むのに苦労は無かった
でも…そこには敵も異変の原因らしき物も無いのを確かめた私達は更に奥深く進むことにした
動く物の見当たらない漆黒の闇
参拝室の奥の部屋に入った途端に僕達は異変を感じ取った
間が空きましたが更新です、これからも頑張ります?