白き闇は正義になれない?   作:ソウクイ

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始動

 

200X年、夏の日。

 

其処は東京銀座。

 

場所を考えれば仕方ないが人が多い。それに今日は休日だ。銀座の街を歩く人、人、人の波。服を透けさせるほど汗を掻きながら休日を楽しむ人、今日も仕事なのか制服姿の人も行き交っている。気温は少し殺人的だがほのぼのとした平和な日本の1コマ。戦後復興から何十年と続いた何時もの平和な光景。騒乱や危険とは無縁な空気。日本は今日も平和だ。

 

どんな平和でも崩れることもある。

 

平和が崩れると想像するとしたらそれはどんな事態によるものだろうか。海外なら災害、事故、テロ等を想像するだろうか。日本の場合だと災害や事故はともかくテロを想像する人は殆ど居ないだろう。大多数は突発的に起こる地震などの天災を想像するだろうか。

 

もし天災が起きればどうなるか。海外で日本人はどんな時でも秩序をもって行動すると言われる事がある。日本人は良くも悪くも日本に住んでいると天災との付き合いが深い。言い方が悪いが天災に慣れている。日本人なら天災に際してある程度は適切に秩序をもって行動もできる。これは付き合い深い天災の場合だ。

 

だが、もしそれが天災、自然の猛威でなく日本で起きないような大規模な人災、例えばテロや戦争ならどうなるか。日本人は秩序を保ち他人と協力できるだろうか。他者の事を心配することはできるだろうか。

 

 

……その答えは今日の昼前の銀座を見ればわかる。

 

 

昼前の頃から銀座ではとても、とても大規模な騒がしい宴が行われていた。

 

それは銀座の誰も行われる事を知らなかった宴であり、銀座に居れば誰もが強制的に参加させられる宴でもあった。

 

その宴は…

血と恐怖に彩られた宴。

銀座の街全体に響いてくる数えきれない悲鳴、耳を塞いでも四方から聞こえてくる怨嗟や怒声、聞こえてくる音は全て負の感情に満ちている。アチコちに発生した火災の火の柱、地獄だと言われれば誰も否定しないだろう。

 

街中を多くの人が逃げている。誰も彼も息も絶え絶えに力の限り全力で逃げていた

 

「た、助け…」

 

地面に倒れ伏す老人が傍を走り抜けようと男性の足を掴んだ。日常なら老人を助けおこすだろうが…

 

「は、離せえ!」

 

「が!?」

 

男性は足を掴んだ老人の頭を蹴飛ばす。頭を蹴飛ばされた老人の首から枯れ木が折れた様な音が、老人の掴んだ手から力が抜ける。男性は老人を見ずに走り去る。公の場所で行われた凶行にも、動かなくなった老人にも誰も見向きもしない。それ所ではないと言うように我先に逃げ回る人達。

 

そこら中で聞こえる悲鳴や助けを求める声、だが逃げるのが必死で他人を助ける人は…いや僅かに助けに動いてる人も居るが…他者を押し倒して逃げている人の方が多すぎた。

 

多くの人が他人に対して気を使う余裕を無くし必死に逃げている。車道や歩道も関係なしに逃げる人で溢れ、空から見ればまるで蟻の巣に水を入れた後の様な光景が見えるだろう。

 

「きゃあ!!」

 

一人の少女が倒れた。

 

中学生か小学生ほどの少女、幸いと言っても良いのか、人の流れから少しだけ外れていて後続に踏み潰される事はなかったが…

 

「い、いたい…あ、あし…」

 

少女は直ぐに立とうとするが呻き座り込んでしまう。足を抑えている。どうやら転んだ時に足を痛めたようだ。立つことは辛うじて出来るかもしれないが走ることは難しい。満足に動けない。少し時間があれば少しは動けるぐらいに痛みも引くだろうが……今は早く動けなければどうなるか。

 

「誰か!!誰か!助けて!」 

 

少女は必死に助けを求める。喧騒の中に紛れる少女の必死の助けを求める声。誰にも反応されない可能性の方が大きい。

 

スーツ姿の男性の耳に少女の声が辛うじて届く。男性は助けを求める声に反射的に振り向く。男は振り返り倒れる少女を見て咄嗟に引き返そうとして……少女の後ろも見てしまい凍りついたように動きを止めた。 

 

「す、すまない…!!」

 

振り返った男を見て助けてくれると顔を明るくする少女を見たが、少女の方を見て動きを止めていた男性は少女を助けず謝って顔を背け逃てしまう。彼は余裕がない中でも少女の助けを求める声に反応するぐらいには善良な人物だった。しかし”どう見ても助けられない”少女を助けようとする勇気のある人でもなかった。

 

「ま、まって!なんで、私、あしが!た、たすけて!置いてかないで!た、たすけて!誰かたすけ……て……」

 

男性に向かって少女は助けを求めた。

必死に助けを求め叫んだ。

後ろから聞こえる音に気づくと声を出すのを止めた。

 

後ろから足音が聞こえる。喧騒の中でもハッキリと聞こえる重々しい足音。足音に続いて漂ってくる野生の獣の様な臭い。ドンドン、ドンドンと足音は近づいてくる。少女は強く願う。どうかこのまま通りすぎてくれと、それが叶うと思えなくても必死に願った。

 

「……ぁ……」

 

足音が止まった。

 

少女は自分の後ろに何かがいる気配を嫌でも感じてしまう。大きな影が少女を覆っている。自分の後ろにいる相手の確認なんて出来ない。怖くて振り返る事が出来ない。いや振り返らなくても少女は相手が何なのかわかってしまっている。少女を含めた皆が必死に逃げている相手だ。

 

「に、にげなきゃ…にげなきゃ」

 

少女は震える手で体を動かして這うように影から離れようとする。銀座に来るのに奮発して買ったお気に入りの服が汚れるのに構わず少しでも逃げようと、そんな少女の頭を何かの手が掴んで持ち上げた。

 

「い、いや!いやぁぁああ!!!!」

 

持ち上げられる少女は暴れたが大きな掴む手は微動だにしない。そのまま少女の身体は地面かから離れる。少女の頭は持ち上げた相手の顔の近くまで上がった。

 

「ひ!!」

 

自分を掴んだ血管の浮き出た丸太の様な腕の本体を少女は見る。二足歩行だが相手はどう見ても人ではない。毛深い動物の様な頭をした怪物、体毛がある体格や身長はプロレスラーよりも大きい身体。外見はゲームなどではオークといわれる魔物だろうか。掴んだオークの後方にも沢山のオークも見えた。

 

銀座に突如として現れた化け物達。

銀座で殺戮を繰り広げている化け物たち。

老人でも子供でも関係なく殺されているのを見た。

 

そんな相手に捕まれ…なんで捕まれた?

 

少女の頭にそんな疑問が過る。なんで頭を捕まれたのだろうか。オークの持った棍棒から血の雫が垂れている。殺すだけならアレで殴られて終わった筈だ。少女なら踏み潰すだけでも済むだろう。態々掴む理由なんて……

 

少女はある事に気付いてしまう。

 

オークの口、口から赤い血の雫のような液体が垂れている。歯に服の切れ端が付いてるのも見えてしまう、人が着ていた服の様な切れ端が口にある。少女は理解する。理解してしまう。あの服を着ていた誰かの末路が今度は自分の番だと。今は夏で気温も高く周囲に火災も発生しているが極寒のような寒気を感じた。

 

「ーーーー!!!??」

 

少女は言葉に成らない言語で叫んで暴れる。少女はなりふり構わず暴れるが掴まれた手はビクともしない。逆に少女の頭を掴む手に圧力は増す。ミシリと頭蓋骨の軋む音、少女の叫びが途絶える。か細いうめき声しか出ない。頭の骨が軋み少女の口の端に漏れる泡。風切り音?次の瞬間、頭はまるで万力をもつプロレスラーに掴まれたリンゴの様に…

 

グシャア

 

と破裂した。

 

スイカを割ったような音を鳴らし"オーク"の頭がザクロの様に破裂していた。

 

「きゃあ!」ドサッ

 

頭を無くしたオークの手から少女の体は落ちる。血の噴水、頭を無くしたオークの首から噴出する血が少女に掛かり、首を無くしたオークがドサリと倒れる。後ろにいたオーク達が後ずさっていく。少女を見て怯えている?いやそんな訳がない。怪物達の視線は少女の更に後ろの方だ。

 

これは、

 

つまり、

 

少女の後ろにはオークが怯えるような……

 

(なに…なにか、いるの…)

 

少女のそんな思考を読み取ったように聞こえてきたガシャ…ガシャと何かが歩く音。

 

聞こえる足音の大きさはオークより小さい。しかし目の前のオークたちが後ずさっている。いったいなんなのか。状況のせいなのか、それとも後ろの何かのせいなのか、少女は呼吸が困難な程の圧迫感を感じていた。

 

「ヅギパビリダヂグゲロボザ」

 

聞こえたのは言語のようだが少女が聞いたことのない言語。

 

謎の言語が聞こえてから一秒だろうか、一分だろうか。時間の感覚も曖昧になるほど緊張。目の前のオーク達も怯えた様子のまま動かない。怯えているのは…おそらく後ろにいる謎の言語を出した相手がオークの頭を破壊したのだ。

 

オークの敵なのだと思う。少女は助けられたとも思えるが……少女は期待と不安の狭間の中で恐る恐る振り返る。振り返りそこに居たのは…姿は炎が燃える光でハッキリとはわからなかったが…

 

(…人?)

 

少女に見えたのは鎧を着たように見える人型の影。

 

歩く音から察せられた通り影は少女から見て大きいがオークより小さい。なのに、その存在感はオークとは比較に成らないほど巨大な何かと感じるのは緊張による錯覚なのか、本能で感じる何かなのか。

 

影は手を上げた。

手には何も持っていない。

 

何なんだろうと不審に思う少女。

何をするつもりなのか……

何かは少女の後ろで起きた。

 

『!!!!?』

 

突然の熱気、後ろで聞こえた野太い複数の悲鳴、人のモノでない悲鳴、火災が近くで起きた!?少女が慌てて振り替えると…

 

「…も…もえ…てる?」

 

まるでトーチのように”オークだけ”が燃えている。逃げるのに必死だった少女は気付いてなかったが、それは…火の柱、出火する原因が無い。明らかに自然の火でなく銀座のアチコチで発生している不自然な発火と同じ現象。

 

何れだけの熱量なのか。そのまま短時間で多数居たオークが全て燃え灰と化す。燃えたカスの臭いが少女にまた吐き気を誘発させる。瞬きする様な時間で自分を殺そうとしたオークが死んだ。そう少女を殺そうとしたオークは死んだ。

 

「………」

 

オークが簡単に死んだ。どうやったか判らないが、タイミング的にどう考えても後ろにいる正体不明の影に殺された。オークの脅威は無くなった。なら少女にとっての危機が去ったかと言えばそんなわけがない。オークを一瞬で燃やし殺した力が少女に降りかからないなんて保証はない。

 

燃え尽きた灰、頭が破裂したオークの死体。どちらかが少女の未来だと言われても否定する材料は少女にはない。

 

影が少女に向かい歩きだす。

 

「…ぁぁ」

 

悲鳴が口から漏れかけた。影は少女に近づいてくる。少女は再び通りすぎてくれと願う。今度も強く願う。震えながら必死に願う。現実に幼い少女の願いを必ず叶えてくれる優しさなんてない。しかし、優しさが無くても願いが叶うことはある。…影はなにもせず少女の横を通りすぎた。

 

「え」

 

思わず少女がそう漏らすほどに影はアッサリと少女の隣を通り過ぎ、少女を放置して進んでいく。少女の困惑した声が聞こえたのか影は少しだけ振り向く。今度は少女に影でない姿が見えた。

 

みえた姿は人のモノと違った。

 

兜の様な頭には黄金の角。

金の装飾で飾られた白い鎧を着た様な体。

顔は仮面の様だ。

 

怪人、人とは違う白い怪人。怪人は少女に興味がないのか少女を一別しただけで再び前を向き歩きだす。進む先を見て少女は気絶しそうになる光景、先程より多くのオークやその他多数の化け物たちがいる。化物に命令をする鎧を着た人間の様な誰かも…

 

「…」

 

白い怪人は腕を前に向ける。すると無数の炎の柱が立ち上り化け物たちが燃えている。銀座の人々を襲っていた逃げ惑うしかなかった化け物達が一方的に燃やされていた。

 

 

その光景を見た少女は…白い怪人が天罰を下す神さまにも殺戮を楽しむ悪魔にも見えた。

 

 

 

 

宴が始まる数時間前…

 

 

ガタン、ガタン、ガタン。

 

電車の中は涼しいが外は暑い。こんな暑い日にどうかと思う白い服を着た彼は椅子に座り外を見ている。大学生ぐらいの年齢だろうか。ボンヤリした顔の青年。穏やかそうな暴力とは無縁そうな青年だ。

 

「……あーーここって」

 

高校生時代の通学時に毎日見てた風景と似てると思う。"一度目の"高校の通学の時に嫌になるほど見てきた風景に似てるな。ホント似てる。まぁ違う。地名も路線も同じだけど似てるだけで違うんだけどね。

 

移動時間は同じか。高校時代の通学が電車で片道で二時間、つまり往復で四時間。待ち時間とか除いて一日で四時間。それを高校の三年間、1095日、休みを削って、通学回数にして、まぁ800として、800×四時間=……考えんじゃなかった。

 

”前の”高校時代で電車は懲り懲りだと思ってずっと乗って無かったし、電車移動は何十年ぶり。こんなのは久し振りだけど、今のこの気持ちを一言で言えば…

 

飽きた。

心底飽きる。

 

ダメだ。だいぶ久し振りでも電車移動なんて懐かしいと思えない。懐かしさとか有っても五分も有れば消失する。せめて電車が満員で暑苦しくて汗臭くなかったらもう少し長く感傷に浸れたのかな。時間を無駄にしてると思えるのもマイナス点かな。ホント長い。ケチらないで特急にすれば良かった。それかいっそのこと…力を使って移動か。流石に力の方は論外かな。

 

目的地の東京はもうすぐ

 

東京に行く理由はネットでの其なりに付き合いのある友人に誘われたって理由。オタク御用達らしい即売会への参加。あんまり即売会自体には興味ないんだけどネットの友人と直接会うのには興味があったから、たまたま暇だったし行ってみることにした。

 

『ーーーー、降りの方は右手ドアが開きます。ご注意ください』

 

と、降りる駅だ。急いでおりないと、人が多いけど出れるかな。大型のリュックを背負って電車の外に出る。なんとか出れたけど人混みで大きいリュックだったから凄く他の人に迷惑そうに見られた。

 

苦労して外に出て…帰りたくなった。 

 

外が暑い。それに人がスゴいから余計に暑く感じる。人は多いんだろうと思ってたけど予想より人が多い……シャレにならない人がいる。満員電車の中と変わらない人の群れ。見てるだけで吐きそう。人混み揉みくちゃにされながら勝手に移動してく。どうしようかこれ。何処にいくのかわからない。どうにか人の流れから抜けないと、どうにかこうにか頑張って人混みから抜けれた。抜けた場所でも人が多い。

 

(見なさい。人がゴミのよう…ゲフン、ゲフン)

 

さっきの発言は、発言してないけど無し。人がゴミなんて思ってない。ゴミは掃除したいなんて事を思ってもない。言ってないしネタだし言い訳とかする必要とかないんだけど、今の自分だと危ういと言うのか…冗談でも思ったら不味いというのかな

 

まぁそれはそれとして、それより目的地につくことに全力を傾けないと…目的地何処だろ。待ち合わせ場所の改札口に行かないといけないんだけど……目的の改札口は……………うん……いや、そもそもの話だけど……此処は何処なのかな?

 

 

それから何十分か後

 

「…ここかな」

 

到着してから本当に苦労して…ようやく目的の改札らしい所についた。良かった。本当に良かった。改札に辿り着くだけで大冒険をした気分、今更けどもっと大変そうな即売会行くのが怖い。時間は、待ち合わせ時間にギリギリ間に合ったかな。

 

待ち合わせしてる相手は来てるかな。時間的にはもう居ても良い頃あいだけど…約束を破る人とは思えないし居るかな。まさか向こうも迷子になんて訳はないだろうし。誰か此方を見てる。キョロキョロしてるから…あの人がそうなのかな。

 

あの人が?

 

本人を直接見たこと無いけどなんとなく本人だと思えるような気もする。此方に来た。比較的若者向けの服を着た30代に見える男性。着てくると聞いてた服装と一致、あの人がネットでは自称自衛官の……どうなのかな。

 

確認するのに事前に決めといた待ち合わせの合言葉はある。あるけど、あの合言葉…人が居ない所でしか言えないよね。ここ人混み。まさか言わないよね?

 

そう思ってると目の前に…

 

「……イエスロリータ」

 

うん…真剣な顔付きで決められてた合言葉を言い出した。わりと人に聞こえる大きさで、もうこの人で間違いない。合言葉を言わなきゃいけないんだけど、此方が合言葉の続きを言わなくも良いかな。いいよね。

 

「どうもお待たせしました」

 

「……イエスロリータ!」

 

…言わないと駄目と?

 

言えって目をしてる。

しかたないか…

 

「ノータッチ」

 

「「二次元ならゴータッチ」」

 

お互いに真顔で言った。

 

いや、うん、何してるんだろうね。深夜テンションでこの馬鹿な合言葉を決めてしまったんだよ。決めたときの自分に出会えたら止めろと説得したい。

 

「いやーー…白野くんで合ってて良かった。本当に良かった。間違ってたらどうしようと思った」

 

確かにいきなりイエスロリータとか知らない人に言ったらどうなるか。うん想像したらゾッとする。改めてなんでこんな合言葉にしたのかな。合言葉を決めた時は問題だと全く思わなかった。ネットのノリって怖いね。

 

「ちょっと知らないフリをしようか迷いました。はじめまして伊丹さん」

 

伊丹さんとの直接の顔合わせは今日が初。だけど、まぁ合言葉のせいで初対面な気が全くしない。ネットでの付き合いは四年ぐらい。合言葉みたいなノリはネットでは何時もしてたから。

 

「はじめまして?…あー一応は初めましてになるのか白野くんとは」

 

「ええ一応はそうですよ」

 

御互いに苦笑い。どうやら向こうも初めてって感じはしないみたいだ。 

 

「それにしても白野くん思ったより若いね」

 

「そう言う伊丹さんは……思ったよりフケてますね」

 

「おぉい、そこは思ったより若いだろぅ。ジックリ見てからフケてるとか言うなよ」

 

いやだって30代って年齢聞いてたけど、ネットでのハッチャケぶり的に若い感じが。数日前にもブルマやスク水について熱く語ってたりしたしね。古き良き萌えについて

 

「まぁ良いや、さて!ホワイトブラックくん!」

 

「ハンドルネーム呼びは止めましょうか。さっき白野くんて言ってましたよね」

 

ホワイトブラックって安直なハンドルネームをリアルで言われると恥ずかしい。

 

「そう?では改めて白野くん!今日は遠い所から良く来てくれた。今日は同人即売会を一緒に楽しもうか!」

 

伊丹さんがいきなりグッと拳を振り上げた。

そのままの体勢で止まった。

 

「…楽しもうか!!」

 

一度手を下ろしてまた振り上げた。

 

何をこんな人が一杯の所で何してるんです?

あぁそういえばネットだと毎回(^o^)/オー!とかやってたかな。うん現実にやるのはダメだね。合言葉と違って約束はしてないし今度はやらない。なので静かに見まもる。

 

「…………」

 

拳を上げたままの伊丹さんがチラチラ見てくる。やれと?ネットの乗りをまたやれと?ネットなら乗るけど、悪いけどリアルは二回も自爆するほどテンション高いタイプでないので。裏切り者みたいな目線もスルー。『こっち見んな』と返…まぁそれは酷いから……

 

「なにこの人」

 

他人ですとアピール。

 

「うおい!?それは酷いだろ!」

 

伊丹さん不審人物的な視線で見られてるし。彼処から通報しようか相談してる鉄道警備員ぽい人が見てるし仕方ない。

 

「……くっ!!…楽しもうか!!」

 

え、またやる!?ツッコミしたタイミングで止めないの。本気で反応に困る。完全に意地になってる。なんで意地になるのか。

 

「楽しもうか!!」

 

自傷をする姿は痛々しい。そんな事をされたら『ハシャグ、自称自衛官のオタク中年ww』と題名つけて動画投稿したくなる。それか『鋼メンタル自ーー』

 

「……行こうか」

 

「そうですね」

 

意地をみせて一分ぐらい痛い空気に晒されて伊丹さんはようやく諦めた。心臓に毛でも生えてるのかな?さて、こっそりスマホで撮影した動画は後で……。

 

「撮ったの消してくれよ」 

 

「了解」

 

目敏い。さすが自称自衛官と褒めるべきか。仕方ない消そうか。まぁ他の人にも撮られてたし意味はないと思う。親切にも撮影されてたの教える。自称自衛官はわざとらしくサメザメ泣くように顔を覆って遠い地平の彼方に沈みたいと言いましたとさ。めでたしめでたし。

 

「めでたくない」 

 

気にするなら伊丹さんは中学生みたいな事しないでほしい。伊丹さんは今年でもう33でしかも…既婚者(自称)、奥さん持ちとか言ってたね。

 

奥さん持ちで即売会に来る。伊丹さん年齢考えろ…って年齢のことを考えたらブーメランが。ある意味で30半ばの伊丹さんよりも年上、意識があった年数で言えば50代は越えてるのかな。

 

そうボクは前世の記憶もち。中二な病気的なモノでなく本気でボクは転生したヒューマン…たぶんヒューマン。因みに転生については輪廻転生みたいなモノでなく、転生は神さまのお陰?

 

神様なのかな…恐らく神様だと思う、転生させてもらって、あと転生した時に力を貰ってる。つまり神様転生。神様転生と言えば物語の世界への転生。実際にこの世界、転生先は『ゲート』とか言う作品に酷似した物語の世界らしい。前世の世界にあった物語……だけど前世の自分が肝心の作品を見たことがない。

 

因みに『ゲート』って物語は知らないけど転生前は危ない物語世界だと思っていたんだよ。転生する時に力を貰えたから危険だから渡されたんだと思ってた。

 

思ったのに……全く平和な世界。

 

前と同じ地球で日本で平和に見えても何かが有るんだと思っていたんだけど、2度めの小学校入学から始まり、魔法少女とかには出会わず小学校を平穏に卒業。そのまま中学も平穏無事に無事、そして一番なにかありそうな高校までも平穏無事に卒業。ファンタジーに巻き込まれそうな王道な学生時代は何の波乱もなく過ぎ、もう成人するぐらい時間が経ったのに何にもなし。酷い肩透かしを喰らった。

 

日常系の物語だったなら気付かなかった可能性もあると思っている。聞いてた物語の名前の『ゲート』って名前的に日常系って感じでもない気がするんだけど、日常系だったのかな。

 

それかゲートって別の世界か遠くに繋がるゲートって意味?舞台が地球でないとか?地球人の主人公が別世界に繋がるゲートで別世界に行ってたりするとか。この場合は物語に関わらないで終わってても不思議はないね。

 

何にしてもこれまでの人生は平穏無事、本当に何事も起きないし。平穏な2度目の人生を送れそうと思ってる。ホッとすべきなんだろうけど…残念と思えるのは危ういかな。

 

「考えてみたらさゲームの二週目とか強くてニューゲームって、チート転生系の始まり?」

 

時刻は10時過ぎ、目的地に行く前に銀座を観光をしてると、伊丹さんがナゼか唐突に出した話題、伊丹さんがゲームの二週目とか言い出してビクッてきた。話題がちょっとね。自分がリアルに体験中な事だし

 

「どうかした?」

 

「…いえ…えっとどうなんでしょうね。転生チートの?始まりとか言うなら、死後に復活して凄くなるって事で、チート転生の始まりはもっと昔の死後に復活するキリ…」

 

「よしその話題やめよう!怒られそうな感じがするからな!」

 

「じゃあ話を少しかえて強くてニューゲームと言えばスパ○ボですよね」 

 

「スパロ○なの。俺としてはクロノトリ○ーかな。周回の回数で言えばスパロボだけど」

 

スパロボ、前世でも今世でもやってる作品。因みに伊丹さんにスパロボをオススメしたのボク……

 

「スパロボで周回は何回ぐらいしてます?」

 

「大体二周くらい?主人公機でスーパーかリアルで一回ずつ、4周やる場合もあったな。主人公が4人の時は」

 

「主人公全員分やりますね。4周とか周回やり過ぎると迷走しますよね」

 

「例えば?」

 

「使わないユニットやら最弱ユニットの育成とか、二軍だけの部隊で出撃、ほかには嫌いな敵を弱い攻撃でチマチマ削って、手加減で10まで削って、それで最後は必用無いのに無傷の全員で囲って脱力、必中、魂掛け最強技のオーバーキルとかやりました」

 

うまいこと一桁まで削ったこともあったなぁ。面白いとは思ったけどあまり楽しくはなかった。やっぱり楽しいのは一周目の対等な戦闘の時だよね、一回で十分かな。周回も人生も…今の第二の人生に不満ってことでもな。

 

「やだ光景想像したら完全に敵側より悪党側だわ」

 

敵側より悪党、ちょっと刺さる言葉。

 

わりと楽しいけど、銀座を歩きながらお互い何でネットで話してる事と同じ事を話してるのか。オサレな町に場違いな感じがスゴい。人混みで殆んど銀座がどうなんて見えない?田舎者にとっては銀座ってだけでオサレなんだ。

 

「そう言う伊丹さんは何かしませんでした」

 

「オレか?オレは…あーー俺もボスキャラはしこたま改造した三軍キャラに倒させたりするな。雑魚とか言ってた機体にボコボコにされて倒されたボスとか想像したら面白いし。リガズィどころかジェガンでササビーを倒すみたいな。情けないMS以下に負けたシャ○乙」

 

「「((この人、歪んでるわ))」」

 

何処からか同類だろうと言う声が?気のせいか。そんな感じで伊丹さんと銀座を見学しながら雑談。楽しいんだけど、20代と30代の男が休日に男二人。片方既婚者、休日でカップル多い。カップルを見ると謎の敗北感が。

 

なんか伊丹さんが言いたげ

背中を見てなにか

 

「……ツッコミしようか迷ってたんだけど白野くん、背負ってるの登山行きみたいなリュックだけど、相当に買い込む気。体力大丈夫?」

 

「えぇまぁ大丈夫ですよ」

 

信用してない顔だ。見掛けは力無さそうだし信用できないかな。本当に大丈夫なんだけどね。

 

特にこれといった運動はしてないけど、力の影響が素の肉体の方にも影響が出てるからね。人を逸脱したレベルで、あと誤解されてるけど別に訂正は良いか。リュックは買い物と言うより持ち運び用。もうリュックの中に…"中身"が入ってる。…なんで今回に限って無理矢理着いてきたのかな。

 

ん?

 

「どうした白野くんいきなり向こうを見…て…向こうから何か聞こえるな?」

 

「聞こえますよね」

 

騒がしいのはずっとだけどこれまでとは騒ぎの種類が違う。怒号やら悲鳴ばかり聞こえてくる。事故か通り魔でも出た?

 

「なんだろな。何か起きてるのは確実なんだけど……ただの事故ってレベルの騒ぎの大きさじゃないな」

 

「まさかテロとか」

 

「それは…ないよな?」 

 

冗談で言ったのにもしかしたら有るかもって反応をされると困るんですけどね。ほんと何かな。おさまるどころか騒ぎがさらに大きくなってる感じがする。

 

「うーん此処で考えてもわからんし確認してみるか……」

 

行くの?確かに気にはなるけど下手に野次馬になると救助とか必要な場合に邪魔になるよね。邪魔にならずに見れそうな場所は…

 

「彼処のデパートなんてどうです」

 

上の階がガラス張りで外が見えるタイプ、彼処からなら野次馬になっても救助とかの邪魔には成らないかな。

 

「彼処からなら見れそうか。よし!あそこに行こうか」

 

「ではお先に」

 

「はや!」

 

何が起こってるか気になってたから急ぎで向かう。一応伊丹さんを置いてかない位の速度で。

 

さて着いた。

 

「はぁはぁ…は…早すぎ…息切れしてないし。これでも訓練で鍛えてる俺を置き去りにするし、し、白野くん運動部で相当に走ってたしてたの?で、…なにが起きてる」

 

「…えっと…何て言えば良いのか」

 

デパートの中に入って上から騒ぎのある場所を見てる。聞かれたから伊丹さんに教えたいけどちょっと…ほんと見えた光景を何て言えば良いのかわからない。

 

僕の横から伊丹さんも外を見た。

 

「そんな言葉に困るような事がおきてんの………なんだあれ??」

 

少し沈黙した後に伊丹さんから出た言葉が其れだった。そうですよね。言葉に困りますよね。デパートの窓から見える光景はなんて言えば良いのか。

 

先ず見えたのが道の真ん中にある可笑しな建造物。少し前に通ったんだけどあそこに門なんてなかったよね。あんなの見逃さないよね。話しながら歩いてたけど流石にあんなの見過ごすとかないよね。突然現れたとしか考えられない?上から落ちてきたのか、下から生えてきたのか、それかワープみたいな事なのか。門の近くの地面に大きいクレーターとか見えないしワープ……?

 

「伊丹さん」

 

「な…なんだい白野くん」

 

「東京ってスゴいですね。あんな建物がいきなり建つなんて地元では有りませんでしたよ」

 

「イヤイヤイヤ!東京でもあんなの普通は無いから!」

 

勿論伊丹さんに言ったのは半分は冗談だよ?天然ボケではないよ。念のための確認でやっぱり常識的な物件では無いと。あんな門ぽい建造物が多分東京の往来に突然現れるなんて"現実的"には有り得ないと…なるほど

 

転生の時に聞いた『ゲート』 

ゲート=門。

 

うん、聞いてた『物語』が道路の真ん中に建ったあの門ぽい建物関係あるよね。なかった場合の方が意味不明。まさか二十年も経ってから、しかも偶然来た東京でこの世界の物語要素に出会う事に成るとは。偶然にしては出来すぎでないかな?東京に誘ったの伊丹さん、伊丹さんは神様の手先とか?……ないか。

 

なんにしても物語の始まりって感じがする。改めてゲートって一体どんな物語だったのか気になる。ワクワクする。知らない方がよかったかな?どんな物語か知らないからこそ一体何が起こるか楽しめてる感じもする。この世界でどんな物語が繰り広げられるか楽しみだ。

 

不謹慎か。

 

物語にあるのは夢や希望、幸せだけじゃない。むしろ盛り上げる為に理不尽な不幸の方多い。見てる分には楽しくても現実にはあってほしくない物語の方が多い。今さらだけど良くわかった。

 

そう、どうやら門から”出てきたモノ”を見ると、多くの人にとって現実にはあってほしくない部類の物語みたいだ…ようやく自分の目の前に現れたわりと楽しみにしてた物語の始まりは…

 

 

随分と…

 

血生臭いね。

 

 

 

 

 

 

 

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