白き闇は正義になれない?   作:ソウクイ

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対話

 

此殆どが焼け落ちた森の中の村。まだ火の気が燻り焦げ臭い。村の被害に反して助かったエルフは多い。しかし村の修復は難しそうだ。まだ一から作り直した方がましだろう。

 

そんなエルフの村の跡地から少し離れた場所。

其所に居るのは伊丹と栗林。彼等の前に居るのは銀座に現れた白い怪人。リアルな着ぐるみだという説も根強くあったが、間近で見ると判る。これは着ぐるみじゃない。

 

白い怪人は近くで見ると生々しい部分が見える。鎧に隠れてない部分は生物のそれだ。この世界にダグバに似てるだけの生物が居たと考えようにも、醸し出す気配により本物のダグバだと納得させられてしまう。

 

「(あぁ、この年で漏らしそう)」

 

一つの物語りの始まりであり終わりでもある悪の集団の首領。物語の中では思想や目的もなく…ただただ純粋に大好きな戦いの為に戦ったとしか思えなかった最後の敵。

 

ン・ダグバ・ゼハ

 

「君達ノ言葉ハワカルカラ、スキニ喋ッテイイヨ」

 

姿と銀座で見せた力を考えれば、ダグバの同位体にしか見えない相手が伊丹と栗林に気さくに話し掛けて来ている。気さくで軽い感じの方がむしろ怖い。好きにしゃべって良い?無礼講を本気で無礼講だと信じるようなモノだ。

 

「ふふ」

 

白い怪人の隣、二人の反応に可笑しそうにクスクスと笑う正体の判らない黒いゴスロリ服を着た少女。デカイ斧を持っている。ダグバの事で視線から外されてたが初めからエルフの村にいた特徴的な少女、ダグバの隣に居なければまだ変な格好の少女と済ませられたが、ダグバの隣に居るとなると……

 

「(この子、グロンギ…?)」

 

クウガの物語でのグロンギは大体は良くも悪くも特徴的な服を着ている。ゴスロリで凶器の斧まで持っていたら…まぁダグバの隣に居ることも合わせグロンギだと疑われても仕方ない。

 

片方は銀座で武装した兵士やオーク等を数万焼いて消滅させた存在。推定される力を最大限に見積もるなら日本どころか世界がヤバイ、戦略核のような戦略兵器並みの評価。

 

「(ちょっと話すのやっぱキツいわ)」

 

伊丹が栗林に話すように目で促す。栗林の米神がピクリと動いたが、流石に相手を前にして押し付けあいをするわけにもいかず栗林は自分が話すことにする。代わりに(栗林の)ただでさえオタクだと嫌われてた隊長への信頼感はマイナスに振りきれそうだ。

 

「ドウシタノカナ」

 

「い、いえ、なんでもないです。お言葉に甘え日本語で話させてもらいます。…では…、初めまして、私達は日本国から来ました自衛隊員のモノです。私は栗林、隣のは一応私達の隊の隊長である伊丹二尉です。お聞きしたい事が有るのですが少しお話しを窺ってよろしいでしょうか」

 

「伊丹サン二栗林サンデスカ。ドウゾヨロシク。ソレデ聞キタイ事ハ何カ…ナ」

 

ダグバの言葉が少し不自然な形で途切れる。キャラ付けに片言でエセ外国人を演じてるようで笑いが込み上げてきたのだ。

 

ただの自分への笑いなのだがその反応を見ていた側にはどう伝わるか。二人はダラダラと汗を流す。相手が相手なので次の瞬間に腕を向けられ炎上して灰になっても可笑しくない。栗林は小柄な女性だが勇敢な自衛官だ。例えば多数の敵が犇めく中に突っ込む程の胆力もある。それでも体が震えてしまう。

 

「スマナイネ。別ノ事ヲ思イダシテネ。ドウゾ聞キタイコトヲ」

 

「あ…ありがとうございます。…では…先ず貴方があの場に居た経緯について教えて頂けないでしょうか」

 

言葉が色々と足りない。

 

「アノバ?」 

 

「あ!す、スイマセン!あ、あの場とは一月ほど前に襲撃のありました銀座の事です!」

 

栗林は慌てて補足する。しかし補足も足りない。相当に緊張してるようだ。 

 

「ウン………ソレハ門ノ先二アル銀座カナ?」

 

ダグバがフォローするように聞く。銀座という単語が出たことに少し引っ掛かる。日本語が出来る事と良い…ダグバが日本に何日も居たと推察が出来てしまう。

 

「は、はい…それであっています。少し前に私達の世界の国、日本の銀座は此方の世界の住人に襲撃を受けました。その襲撃時に……貴方が居たと多数に目撃されています。もし目撃されたのが貴方で有っていたのでしたら…何故あの場に居たのか……目的なども含めて教えて貰えないでしょうか」

 

質問をした栗林はもちろん、隣の伊丹、遠巻きに聞いている自衛官たちも息を呑む。最悪の答えも予想できてしまう質問だ。

 

「襲撃ノ時ハ……居タ理由ハ偶然トシカ言エナイカナ」  

 

ダグバがチラリと伊丹を見たが二人は気づかない。

 

「ぐ、偶然、偶然というのは…」

 

「ボクハ銀座デ観光ヲシテイタンダヨ。ソノ時二偶然アノ襲撃二遭遇シタンダ」

 

二人はお互いに顔を見合わせた。

 

「か、観光ですか。あの、え、貴方は銀座に観光に…ぁ、日本語が使えるのは観光してたから…え、日本で観光を?い、何時から銀座に居たんでしょうか…」

 

栗林はたいへん混乱しながらも聞いた。

 

「銀座デハナイケド、日本ニハ結構前カライタヨ……アア、不法入国二ツイテハ申シ訳ナイ。パスポートハ無クテネ。ケドソレ以外ハ滞在中概ネ君達ノ国ノ法律ニ違反シタ行為ハシテイナイカラ安心シテホシイ」

 

本人としては緊張を解すための単なる冗談のつもりだった。

 

受けとる側としては……あの襲撃の日ダグバがやらかした事が法律上問題無いのかと言われれば、発火現象みたいな超能力は立証出来ないのであれだが、それ以外に立証出来るモノで大量殺戮やら銃刀法違反やら法律違反のオンパレード。証拠画像もスマホの撮影や防犯カメラ等で豊富。

 

「(色々とアウト!……って言えるか!!)」

 

相手の前でアウトと言える訳がない。逆にセーフとも言うことも出来ない。後日に万一にも日本で法律違反者とダグバが扱われたらどうなるか。問題無いと言った後に追求されたらどうなるか。嘘をついた自分達はどうなる?

 

グロンギは作中で狙った獲物は逃さない。どんな手段を使って追跡してたのか不明だが逃げれたターゲットは……更に言えば自分だけで済むのか、相手を考えれば関係ない身内や関係ない民間人も巻き添えになる可能性は大いにある……二人の心臓はバクバクと破裂しそうだ。

 

因みに本人的に返答は求めてない。仮にどう答えても友人の伊丹はもちろん友人の部下の栗林達に何かする気は欠片もない。何かするつもりはない。しかし二人にはそんな思惑なんて気づける訳がなかった。

 

「(質問もういいのかな?)」

 

ダグバが無言で見てくる。早くどう思ってるのか答えろと催促してる様に見える。二人にとって自分達の命は次の発言に掛かっている。いや!相手を考えると、下手をすると自分のどころか多数の日本国民の命も天秤に乗っているか!そう 思えば、若い真っ当な良心のある女性の心理的なストレス限界値を越える…。

 

「そ、その…あの……」

 

自分の命だけなら大丈夫だったが、若い身空で多数の命を背負った(勘違いの)責任のプレッシャー、意識を旅立たせかける栗林。

 

「クリちゃん…クリちゃん大丈夫か!」

 

伊丹は意識を飛ばし掛けてる栗林の肩を揺さぶる。一人で残されたくない一心だ。間違い。伊丹は部下を心配しているのだ。

 

伊丹の肩に手が置かれる。

白い硬質な手。

誰だと考えるまでなくダグバの手だ。

伊丹の下腹部から何かがチョロッと漏れかけた。

 

「なななな、なんでしょうか!?」

 

「体調ガ悪イヨウダシ栗林サンヲ休マセテアゲタラドウカナ?話ナラ伊丹サンダケデモ聞ケルダロウ?」

 

ダグバの対応はとても紳士的だ。栗林をこんな状態に追い詰めたのが誰かは置いておくとして。常識的に言えば頷くべきだろう。伊丹が頷けば伊丹一人で対応することになる。伊丹は辺りを見回す。

 

治療の済んだエルフ達と部隊の仲間は遠くから見守っている。まったく心強くない。伊丹はいい大人が涙目で誰か来てくれと訴えるが、返答として目が逸らされた。 

 

「……そうですね」

 

「何故泣キソウナノカナ?」

 

「イエナンデモ」

 

伊丹はまるでダグバの様な片言で答える。だがそんな伊丹に救いの手が差し伸べられた。

 

「す、すみません大丈夫です。話を続けさせてください。」

 

若い女戦士の復活。

 

栗林が伊丹だけに任せてられないと責任感で復活する。伊丹がそれだけ栗林から頼りならないと思われるてる事が伊丹の救いとなるとは何とも皮肉な事だろうか。

 

「無理ハシナイ方ガイイ。ヤスメル所マデハコボウカ?」

 

「い、いえいえ!大丈夫です!ここにいます」

 

なんで自分からそんなに離れたくないのだろうか?別に彼女でなくても質問は伊丹に任せたらいい。伊丹単独で駄目なら他にも代わりの人はいるだろう。体調が悪いのに自分から離れたがらない。そう言えば彼女(栗林)はグロンギ語が出来た。

 

一度は自分を想定して自衛隊全体でグロンギ語を学んだと思ったが…もしや…クウガの熱烈なファンの可能性は無いだろうか?グロンギ語が出来るのもクウガが好きだから、体調が悪そうなのもファンだから感動して興奮し過ぎて……納得してしまった。

 

クウガ好き仲間と思えば親切にしたくもなる。離れたくないならせめて座る場所だけでも用意しようと善意で思いつく。

 

座れそうな岩は有る。

モーフィングで椅子を造ってみるか。

それか物理で作るか。

何れがサービスとして良いかな?

 

そんな事を思っているありがた迷惑なダグバにテレパシー、念話で意志が届いた。もうすぐ念話を届けた相手が此処に来るようだ。止めようかと思ったが……ちょうど良いかと思った。

 

「スコシキヲツケテ」

 

そう言いダグバが見たのは空。

伊丹達も釣られて空を見上げた。

 

「な、何だ!!」

突風とともに何か影が通りすぎた。一瞬ドラゴンが戻ってきたのかと思ったが…ドラゴンよりはだいぶ小さかった。

 

再び戻ってきて今度は降下してくる。

影の正体が伊丹達にもわかった。

 

「あれって銀座の…」

 

白いワイバーン

 

ダグバの前で止まる。突然の登場に呆然としていた伊丹達は正気に戻ると、咄嗟に銃に手を掛けるが、当のワイバーンが伊丹達を無視している。通常のワイバーンの皮膚の鱗は警官の拳銃を弾いている。伊丹達の持った銃は警官のモノよりは威力はあるが、白いワイバーンは通常のワイバーンより明らかに堅そうである。自衛官の持つ銃の銃弾でも弾かれるそうだと思える。手榴弾なら効果はあるかどうか。それかロケット弾なら……。

 

「頼ムヨ」

 

その短い言葉だけで伝わったのか白いワイバーンが頷く。伊丹達の方を向いて歩きだす。伊丹と栗林は後ずさった。

 

「な、なんですか!?何をするきですか!」

 

サイズはゾウ並みはある白いワイバーンが二人に近付いてくる。どう見ても相手は肉食動物、二人は生きた心地がしない。

 

「ダイジョウブ、キケンハナイヨ」 

 

「き、危険はないといわれましても」

 

仮に野放しのライオンが目の前に居て危険がなく大丈夫と思えるだろうか?白いワイバーンはライオンよりも恐ろしい。脳は逃げろと命令するが身体が動かない。白いワイバーンは伊丹や栗林にノッシノシと近づく。そのまま固まる栗林の後ろに回り寝そべった。

 

「サア彼女二座ルト良イ」  

 

言葉を理解するのにタップリ十秒かかった。

体調の悪い栗林の座らせる場所に? 

善意の発言なのはわかる

 

クウガ好きならゴオラムと同類に乗れるなんて嬉しい筈と……ワイバーンが怖いものだと言う認識が抜け落ちていた。

 

栗林は恐る恐る寝そべるワイバーンを見る。ワイバーンは食事をした後なのか口からは何かの血が滴っている。……肉食だ

 

肉食動物に座る。

自殺と同義でないだろうか。

座ろうとした瞬間に首が動いてバクリと…

 

「お、お気遣いされなくても大丈夫ですよ!私元気ですので!」

 

助けを求めるように藁にもすがる気持ちで伊丹を見た。

 

「栗林三等陸曹、御親切に甘えて座らせて貰いなさい」

 

藁どころか塵だった。

 

いや伊丹からして断る理由が見付からないので仕方ないだろうが、栗林の中の伊丹の評価表の数字の横にマイナス棒が付加されてるが…。

 

「ウン顔色ガ悪イヨ。早ク座ッタ方ガイイ。ソレカ休メル所マデハコボウカ」

 

ダグバはさらにさらに善意の追い討ちを掛ける。休める所とは何処だろうか。下手したらこのままだ栗林は連れ去られそうだ。

 

栗林は退路を塞がれた。

ならまだマシと思える方を選ぶしかない。

 

「ス、スワラセテモライマス」

 

栗林をジッと見る白いワイバーン。

恐る恐ると腰を落とし栗林はワイバーンに座った

 

「…………」

 

座った栗林の表情は微妙だ

 

白いワイバーンの外郭は金属の鎧みたいなモノで出来てるので、栗林のしかめた顔が座り心地を露骨に語っている。白いワイバーンは栗林を無視するように前を向いている。危険はなさそうだ。

 

伊丹は白いワイバーンと栗林を見ないように対話を続行することにした。

 

「其では話を続けさせて貰います。此方の世界が襲撃を受けたあの時の事件に偶然に遭遇したそうですが……何故貴方はあの襲撃者達と戦ったのでしょうか」

 

世間が最も気にする質問の一つだった。

 

「あの時か」

 

思わず漏れたような声、伊丹は聞き覚えがある声だと思うが気のせいだと思った。

 

「ウ、ン…観光中二偶然二此方ノ世界ノ軍ノ非道ヲ目撃シテネ。見逃スノハダメダト思ッテ介入シタンダヨ?タダノゼンイダヨ。」

 

「……アレは善意でしたと?」

 

「マァ観光ヲ邪魔サレタ腹イセモアルカナ」

 

数万人焼き殺したのが腹いせ……

 

「イケナカッタカナ?」

 

「…いえ………自分としてはアナタに感謝していますし、アナタに助けられた人も(ネットで)貴方に感謝してますよ」

 

狙いはどうあれ結果的には助けられた形には成ったので、複雑な思いは有るが感謝しているのは本心ではあった。

 

「ソウカイ?ソレハ良カッタ。君達ノ国ノ人間カラハ危険ト思ワレテ、ボクヲ殺ソウトカ言ッテルト思ッタヨ」

 

伊丹が顔を引き繼らせる。

そういう番組は大量にあった。

自衛隊内部でも対抗する作戦や武装の開発などやっていた。

 

「は、ハハハハ……い、一部にはそんな事を言ってる人も居ますね」

 

「え、ええ!そうですね!一部、一部には居ますよ!勿論私達はそんな事は少しも思ってませんから!」

 

大多数の意見でも一部とも言えるかもしれない。ダグバは知ってて聞いてないか?二人は流れる汗で脱水症状が起きそうだ。

 

「何ヲイウノモ自由ダシ、攻撃サレナケレバナニモスルツモリハナイケド、排除スルツモリデ攻撃サレレバ報復ハスルカラ気ヲ付ケテネ」

 

太い釘を刺された。

 

「…それは……その報復するのって攻撃した本人だけですか?」

 

「ウン、ソウダネ。攻撃シタ相手ト関ワッタ相手ニ報復スルカナ?」

 

ヒェッと思わず悲鳴が漏れた。

 

仮に自衛隊が攻撃したとなるとどうなる?

攻撃の対象は自衛隊全体か。

悪い場合、自衛隊に命令を下した政府

もっとも最悪の場合、日本国民全体が関わっている判定に入ってしまう。

 

自衛官はもし命令が有ればダグバを攻撃をしないといけない。それが日本の大惨事の引き金になるかもしれない。伊丹の個人的な心情としては絶対に攻撃なんてしくないが、命令次第でどうなるかわからない。

 

伊丹はこれは絶対に上に伝えなければと思いながら次の質問に移ることにした。

 

「……で、では次の質問をさせてください……質問なのですが、貴方はどういった御方なのでしょうか?」

 

伊丹の質問はひどく曖昧だ。

 

「……ミタママダヨ?」

 

返答もまた曖昧だ。

 

「……見たままですと、貴方の姿は私たちの国で創られた仮面ライダーという物語に出てくる、グロンギと言う種族のン・ダグバ・ゼハと言う存在にひどく酷似してるのですが」

 

「ソウナノカイ」

 

「は、はい、そうなんです……違うんですか。貴方はこの世界の住人なんですか」

 

「…チガウヨ、コノ世界ノ住人デハナイヨ」

 

この世界の出身でないと否定。

グロンギである事については否定はしてない。話の流れとしてグロンギのダグバである事も否定してるようにも思えるが

 

「で、では門の先の世界の、地球で産まれたのですか」

 

肯定されれば地球が大騒ぎになる質問。

 

「ソレモ違ウカナ」

 

最悪の答えが違うと否定され伊丹は良かったと思うが、そうなると何処から来たのかという謎が出来た。

 

「それは、どういうことですか…地球でもこの世界でもない………まさか別の世界から来たと?」

 

「ウン、マァ、ソウダネ」

 

別の世界の存在とすればなぜ来たのだろうか。

 

「なぜ地球に…銀座の門が関係あるんですか」

 

伊丹は転移事故の様なものを想像する。

ダグバは答えることにした。

 

「関係ナイカナ。ヨクワカラナイ神様二君達ノ世界ニ送ラレタンダヨ」

 

「神様に……ですか?神様の名前などは」

 

神様に何かされたなんて発言は、目の前の存在を見れば簡単に否定もできない。

 

「名前ハ知ラナイ。神様ポイナニカダトシカワカラナイ」

 

仮面ライダーにでた神様だろうか。

仮面ライダーで神様ぽいなにか?

伊丹は洒落に為らない相手が複数浮かんだ。

 

「その、神様に何か目的があって送られたのですか」

 

「トクニナニモイワレテナイ。好キニシテモイイカンジダッタネ」

 

特になんの目的も言われてない。伊丹は危険生物だから地球に追放したんじゃ無いだろうなと疑う。

 

「…貴方自身に目的などは?」

 

「…ソウダネ…今ハ物見遊山ノ見物カナ?自分カラナニカスルツモリハナイヨ?」

 

「………そ……そうですか…物見遊山って観光みたいな感じですか?」

 

「ソウトモイウネ」

 

「…貴方と同族の種族の方はこの世界に飛ばされてません?」

 

「ミタコトハナイヨ」

 

「では貴方の元居た世界には何れだけ…同種の方は居たんです。グロンギ、こう人より強力な感じの…」

 

「元ノ世界デモミタコトナイヨ」

 

「…………そ、そうなんですか」

 

嘘でないとしたら恐らく朗報だが、そうなると目の前の相手は何なんだろうか。単にダグバにソックリな存在だと言うのだろうか。

 

「今更ですがお名前は」

 

「…名前ハ特ニナイカナ」

 

名前が無い。同族を見たことがない事も合わせると、別の世界で天涯孤独だったのだろうか?デリケートな問題としか思えず安易に追求も出来ない。

 

「…名前を誰かに呼ばれる事は無かったんですか?」

 

「(この姿では)ナイカナ」

 

誰も呼んだことがない。別の世界で会話が出来なかったと思えない。なのに名前を呼ばれた事がない。どんな生き方をしていたのだろうか。

 

そんな悩む伊丹に驚くべき提案をした。

 

「伊丹サンガヨビナヲ決メテクレテモイイヨ?」

 

「お、オレがデスカ!?」

 

伊丹は突然のムチャブリを受ける。伊丹は悩み悩んだ末に…

 

「……に……似てると言ってたダグバでもよろしいでしょうか」

 

「ウン、イイヨ」

 

伊丹の圧倒的に無難な選択。これでダグバでなくてもダグバと名乗ることができる。もし文句が来ても決めたのは伊丹だという言い訳ができた。

 

「あの、そう言えば、この世界に居られる理由は先ほど言ってた物見遊山です?それか、まさか…銀座の報復が続いてるんですか」

 

銀座での報復の為に此方に来たのかと考えて聞く。ダグバの報復が何処まで続くのか確認できる

 

「物見遊山ノホウダヨ、ドンナ世界ナノカキニナッテ。」

 

「…そうですか」

 

他にも聞きたいことはまだあるが最低限の事は聞いたと伊丹は思う……で、どうしよう。このまま別れても良いのだろうか?

 

「す、スミマセン、もう一つだけ良いですか?」

 

栗林が声をあげた。

 

「ウン?ナニカナ」

 

「……彼女はどういった方でしょう」

 

栗林の言う彼女は、ダグバと伊丹を興味深気に見ている黒いゴスロリ少女の事である。グロンギだという疑惑を持っていたのにダグバ本人が同族は居ないといった。なら彼女は?

 

ダグバはどう答えるか少し悩んでから答えた。

 

「一番近イノハ…………ストーカーカナ?」

 

日本語を知らないはずのゴスロリ少女は文句ありげにダグバを見る。

 

「すとーかー……ストーカー??」

 

「此方ニキテカラツキマトッテクルンダヨ」

 

それは確かにストーカだろう。

ダグバをストーキングする少女。

余計に少女の事がわからなくなる。特殊な好みのストーカー少女なんだろうか?

 

「…(声?)」

 

二人は困惑し顔を見合わせる。そんな二人とは別方向に何の脈絡もなくダグバは顔を向ける。ダグバは突然歩きだす。伊丹と栗林は顔を見合わせてから慌ててついていく。何をしに行くのか気になった…そして何より、白いワイバーンと残されるのは怖かった。

 

伊丹達が追い付くとダグバは井戸を覗き見ている。悲鳴が聞こえた。井戸の中からだ。伊丹はダグバへの恐怖を意識から外し走りダグバの横から井戸を覗きこんだ。

 

「誰か居るのか!」

 

伊丹がライトを井戸の下に向ける。井戸の中にはエルフの少女がいた。

 

「女の子が井戸に落ちてる!」

 

「直ぐにロープを持ってきます!」

 

伊丹が叫び自衛官たちは直ぐ様に救出に動いた。ダグバは井戸の上に乗って手を井戸の上にのせた。光が走った。

 

「な、なにを」

 

井戸の構造が変わっている。

歪な階段ができていた。

さっきの光はグロンギのモーフィングパワーか。井戸の中に自分が作った階段を造りながら降りていく。 

 

トドメを刺しに…なんて誤解は仕掛けたがエルフの治療をしてて其はないだろう。助けに向かったことはわかる。わかるが……伊丹は心の中でエルフの少女に謝った。

 

井戸の中の悲鳴が消えた。

一応いうが井戸の中のエルフ少女が助けられただけだ。

 

井戸から登ってきた。ダグバが出てくると片手に金髪のエルフ少女を抱えている。濡れた金髪の少女はガタガタと震えている。震えてるのは水に濡れた寒さだろう。

 

「彼女ノ身体ヲ拭クモノハナイカナ」

 

「こ、こちらに有ります」

 

タオルをもった黒川二等陸曹がやってきて恐々とダグバから少女を受け取る。エルフ達が無事で良かったと声をかける。特に助けられた少女と同じぐらいのエルフの少女が喜んでいた。

 

そうして状況が落ちついて暫くして…

エルフたちは救助してくれた自衛官とダグバに感謝する。

 

ダグバに対しては

土下座で。

 

先程エルフの集落を襲ったドラゴンは炎龍と呼ばれる存在なのだが、この世界では国でもどうしようもない天災扱い。集落程度が炎龍に襲われたら本来だったら滅びるしか無い。なのにそんな天災である炎龍を目の前で素手で追い返したとなればどう認識されるか。これまでの態度も考えれば土下座するのも致し方ないだろうか。

 

前が不審者の様な扱い。

今は荒神のような扱いか。

 

「……」

 

ダグバは何か言いたげだがその気持ちを誰も察しない。いやダグバの心情を察した様にストーカー、いやゴスロリ少女はクスクスと笑っていた。

 

エルフの少女救出後、伊丹はこれからどうするか悩む。ダグバの事もあるが、無事だったが火災で住む場所を失くしたエルフ達のこともだ。集落を再建するんだろうか?

 

エルフの代表格らしき人物に伊丹は接触する。現地の言葉は伊丹も一応学んである。英語を習い始めたばかり中学生程度の英語力で英語で外人と話すようなモノだが、それでも対話は成立した。此れからどうするのか伊丹が聞くと集落から離れると教えられた。

 

村がダメになった事もあるが、逃げたドラゴンがまた来る可能性があると判断したそうだ。

 

「で、隊長はそんなエルフたちを近くの村まで護衛するのを引き受けたと………」 

 

「ま、まぁ一旦助けたんだし送るぐらい良いだろ」

 

自衛隊、エルフの残りゴスロリ少女、ダグバ+白いワイバーンを引き連れエルフの村の近くにある村、コダ村に出発。自衛隊、エルフ全員の心情は一致していた。

 

「(なんでついてくんの!?)」

 

ダグバが当然の如く付いてきた事に困惑する。着いてこられるのもどうすれば良いのか。本隊に連絡はしたが、向こうも混乱したようすで兎に角敵対しない事を優先に臨機応変に対応する様に対応を丸投げされた。

 

着いてこないで欲しいとも言えない。伊丹は先ずは厄介後とを一つでも減らすことにする。厄介ごと、もといエルフを連れてご近所のコダ村について……新たな難民(厄介ごと)と合流する事になる。減るどころか増えた。

 

ドラゴンが近場に出たことを恐れて村を破棄する判断をしたのだ。身内が他の村に居る村人は其方に向かうそうだが、往く宛もない人達の方が多い。エルフ達も含めて百人は居る。無関係な敵地と言える土地の住人、無責任に批難してきそうな世間やマスコミ等の目もない。自衛隊に助ける義理も義務もない。上に連絡すれば十中八九放置しろと言われるだろう。

 

「ドウスルノカナ?」

 

何故かついてきてるダグバが伊丹にどうするのか聞く。隣にいるゴスロリ少女共々面白そうに伊丹を見てる気がした。

 

「……連れ帰ります」

 

伊丹は難民を自衛隊の駐屯地にまで無断で連れていく事にする。連れて帰れば難民を追い返すなんて事も出来ないだろう。

 

難民を助ける事に伊丹に何の利益もない。利益どころか怒られる未来しか見えない。白い怪人と黒いゴスロリは面倒ごとが嫌なくせして面倒ごとを背負う伊丹を面白そうに見ていた。

 

自衛隊の本拠地に向かう伊丹一行。

人員はコダ村の難民が増えた。

あとダグバも…

 

自衛官達はこそこそと話した。

 

「あの…何時までついてきてるんです」 

 

「友人が居るから手伝ってくださるとさ…」

 

「手伝いって…」

 

「友人って誰なんですかね…エルフの誰か?」

 

「ゴスロリの娘じゃないか?」

 

「あの娘はストーカーって言われてましたよ」

 

エルフや村人は遠巻きにしてて友人らしい素振りの相手が居ない。伊丹達にはダグバのいう友人が誰なのかわからなかった。友人からしたらありがた迷惑だろう。

 

 

そのまま"報告をせず"駐屯地に戻った伊丹の第3偵察隊……多数の難民も引き連れ戻ってきた。

 

道中で襲ってきた炎龍を返り討ちにして返り血で血塗れなダグバと一緒に

 

 

 

 

 

 

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