白き闇は正義になれない?   作:ソウクイ

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報告

 

 

アルヌスの丘にある自衛隊駐屯地。

 

冷や汗をタラリと垂らした銀座の英雄と呼ばれる自衛官の伊丹。伊丹は不真面目さの欠片も表に出さずに立不動で立っている。伊丹の目の前には笑顔の壮年の男性が居た。

 

顔は笑顔だ。

顔だけが笑顔だ…

 

「さて……伊丹二尉、何か遺言は有るかね」

 

言った相手次第で生存に直結する台詞だ。言った相手が伊丹からして雲の上の存在の派遣部隊のトップ、狭間陸将ならどうだろうか。命令一つで死地に送ったりするのが簡単に出来る相手だ。

 

「……遺言は冗談だ洒落だよ。笑わないのかね」

 

言ってる狭間の顔は笑顔だが目がマジだ。養豚場の豚相手に向ける視線だ。洒落や冗談という言葉の信用性が水の味になるまで薄められたカルピス並み。救援フォローを頼みたいが周りに人は居るが視線は狭間に似たり寄ったり。この場に伊丹の味方はいない。明日には出荷される豚、いや伊丹は笑った。

 

「は、ハハハ、お、面白い冗談ですね」 

 

全力で媚びる愛想笑い。世渡りが上手いとは言えない伊丹が人生で一番会心の出来だとできる愛想笑い。それはもう尊い(自分の)命が掛かってるので必死だ。

 

上司の顔が(ヤバイ)笑顔からピクリとも動かない事に泣きたくなる。あと近くに居る同僚達の顔をもう一度見ても似たり寄ったりで更にキツイ。

 

「ああ…ははは…そうか面白いか。あぁ改めてーーー何か言いたい事は有るかね」

 

『改めて』と『何か』の間に"最期に"と聞こえたのは伊丹の幻聴だろうか?幻聴だろう。幻聴と思った方が健康的に良い。伊丹は自分が何をしたのか考えてから爽やかな声でいった。

 

「えー小官は自衛隊の末席を汚すものとして最善の行動をしたつもりであります!」

 

「ほう」

 

漫画みたいな青筋ができている。リアル上官の額に…同僚たちは呆れた視線やら上官と同じく血管が浮き上がっていた。

 

「そうか。……そうか。それが最期に言いたいことか」

 

伊丹は今度はやけにハッキリ最期って幻聴が聞こえたなと思う。

 

伊丹のやらかしたことは大きく分けて二つ。

 

一つは難民保護し自衛隊の駐屯地に身元不明の難民を連絡も無しの無断で連れて帰って来た。

 

敵地の様な所で多数の 非戦闘員を抱えるリスク。衣食住を用意しないといけない。難民は信用できるのか。正面からは敵わなかった敵が何をしてくるか。懐に入れた後に敵になるなんて悪夢もありうる。あと世間に漏れたら大変面倒なことになると断言できた。

 

情報と現地との交流を考えれば自衛隊にメリットが無いわけでもない。情報源として使える。現地の情報が欲しくて伊丹たちは偵察に出されたので成果と言っても良い。……数が数人ぐらいなら。

 

二つ目の問題

 

ぶっちゃけ1つ目は大した問題だと思われていない。問題としては本来は大きかったのだが、伊丹の持ち帰った二つ目の問題があると霞んでしまうレベルとなる。手榴弾の爆発が大型ミサイルの爆発で消し飛ばされたみたいな感じか。

 

伊丹は避難民と共に連れてきた相手が最悪。

銀座騒動から今に続いて世界を騒がせている、一月前に銀座に現れて軽く数万人を消滅させた白い怪人。

 

元々白い怪人との接触は可能ならするようにとの命令は出している。しかし大方の予想で白い怪人の居場所が特地でなく地球と思われており、あくまでも念のための命令だった。

 

伊丹から出会ったという報告はあった。対話が成功したという報告もある。しかし誰が連れて帰ってくると思うだろう。避難民と一緒に。

因みに難民についてはダグバの事が手一杯で伝え忘れたと宣った。

 

存在が戦略兵器。力の全貌は不明なのにヤル気なら日本が終わる国家存亡の危険な存在と言う声もある。過小評価しても駐屯地の自衛隊ぐらいなら何とでも出来ると想定できる。

 

そんな目下自衛隊が最大の脅威として警戒してる相手を連れてきた伊丹。起爆装置がどうなってるのか不明な核弾頭を持ち帰ってきたと言い替えてもいい。

 

伊丹を通じて攻撃すれば報復すると宣言された。

 

ダグバが来る前に丘にいる全自衛隊員に武器を向けるのを禁止する通達が出されている。もちろん混乱がおきている。ダグバと接触したという情報が来た時にもパニックが起きている。先制攻撃をすべきなんて意見も出た。

 

伊丹が連れてきた。刺激すればどうなるかわからない。刺激しなくてもどうなるかわからない。どう対処すれば良いのかわかるわけがない白い怪人を。

 

しかし言い換えるとそんな危険物と平和的な接触をして連れ帰ってきている。今のところは自衛隊としては理想的な展開とも言える。成し遂げた伊丹を賞賛してもいいかもしれないが……感情的には伊丹をちょっとぶん殴りたいと多くが思ったのはしかたないことか。殴るのは駄目だと理性は思う。しかし腹は立つ。なので精神的にイビられた。

 

どうするか。

 

お花畑みたいに楽観的に考えて本人がなにもしてこないと想定しても…白い怪人が居ること自体大きな問題だ。

 

白い怪人と接触したと知れば国内は勿論のこと他国の動きがどうなるか。只でさえ銀座にある門の存在で他国の干渉が頻発しているのに、知られれば干渉が更に情熱的に加熱する事は確実。日本の安全もだが下手をして白い怪人を刺激したらどうなるか。

 

大きな利益もあるかも知れないが危険度はそれ以上、政府、自衛隊の本音としては触らぬ神に祟りなしと言う感じで関わりたくはなかった。

 

この駐屯地に、政治的にも物理的にもアウトな危険物を連れてこられた駐屯地責任者としては、どうしたら良いのか解らない。行動次第で悪い意味で歴史の教科書に乗るかも知れない。改めて伊丹を見る。反省してる風を装っているが先生のお説教が早く終わらないかなと思ってる小学生の顔だ。真剣に殴っても許される気がした。

 

 

問題を持ってきた伊丹は自分は下っぱなので(丸投げして)上の人間の奮闘に期待している。そんな伊丹の上司は白い怪人の世話係を伊丹に(押し付け)任せようかと考える。素敵な信頼関係だ。

 

説教がまだ続きそうな空気、伊丹には伝えておかなければいけない事がある。説教を終わらせる切り札だ。

 

「あのダグバから聞いた事なんですが…報復するという事以外にもありまして…」

 

伊丹は上官のお怒りが少しは静まったとみるや情報という爆弾を投下する。実はダグバに聞いたことで報復以外の事は教えてなかった。お前白い怪人相手にちゃんと聞いてたのかよという視線が多数。その視線の意味は白い怪人相手に聞けると思ってなかったのか、誰かの信用度の無さなのか。

 

「なにをきいたのだね」

 

「何処から来たのか聞いたか!?」

 

白い怪人について色々と気になる事はあるが目下一番の問題はそれだ。特地なら問題ないが、もし日本ならどうなるか。ダグバ延いてはグロンギが地球ち居ると言う事になる。門と同レベルかそれ以上に日本が大変な事になる。固唾をのんで伊丹の返答を待った。

 

「地球でも此方でもなくて、別の世界から神様に送られてきたと言ってました」

 

「は?神様…」

 

「神様と言ったか?」

 

「はい神様から送られたそうです」

 

「……なる…ほど」

 

狭間が伊丹が精神的な病気なのか検討するのも可笑しい事でもない。精神的な病気になる切っ掛けは多数ある。しかし魔法やら世界を移動できる手段があって、ダグバみたいなのもいる。ダグバを送った神の様な何かが存在しても可笑しくないと思い直す。頭が可笑しくなりそうだと思う。

 

「別世界から神に送られて来たか…別の世界か………」

 

常識人だと脳が受付を拒否してしまう。それでも現実逃避も出来ない立場、一旦は置いておくことにした。

 

「何の為にその神様とやらに送られたのだ?何かしらの目的が有るのではないか」

 

何の理由もなしに別の世界に送られるとは思えない。思い付くのは…銀座の門に関連してダグバが送られた?後はダグバの存在が危険だから神から追放されたという可能性か。

 

「特に何もないそうです。…」

 

神様に送られて特に何の目的もない…本当なら追放の方だろうか?

 

「あと本人としての目的は物見遊山、観光が目的だそうです」

 

「か、観光か」

 

危険な目的ではないが…好き勝手に何処に行くのかわからないともいえる。

 

別の人間が質問した。

 

「……………別の世界から送られたそうだが、初めは何処に送られたと言っていたんだ。地球か此方かどちらだ」

 

「地球です。結構前から居たと思います」

 

「事件の前から地球に居たと?」

 

「結構前から居たと本人が言ったのか」

 

「いえ、言ってませんが、日本語での会話が可能でしたので其なりの期間居たんだと思いまして」

 

「……そ、そうか。日本語が話せるのか。他にきいたことは」

 

狭間は別の事を聞くことにする。内心ではもう聞きたくないと頭を抱えながら

 

「……グロンギ、自分と同じ様な相手はこの世界でも元の世界でも見たことが無いと言ってました」

 

「……見たことが無いか…」

 

これは有難い情報か?本当かどうか。本当でも本人が知らないだけでこの世界にもいる可能性が無いとも言えない。因みに長崎の某所の調査などは現在進行形でされている。

 

伊丹は会話の内容を隠さずに洗いざらい全て上に投げつける。後は任せた!という気持ちで清々しい気持ちで、伊丹の狙いどおり説教を続けるという空気でも無くなった。聞いた情報から今後の対処について話し合わなくてはいけない。

 

伊丹は解放され…白い怪人の世話役を申し渡される。やった事に対してのとんでもない責任を言い渡される。伊丹は当然だがごねる。自分みたいなのに任せて良いんですかと自分の評価の悪さを盾にした。

 

伊丹に任せて大丈夫かと言われたら…命令した方も悩んでしまうだろう。そんな可笑しな攻防が繰り広げられる避難民+怪人のやって来たアルヌスの丘、自衛隊員が騒然としてる自衛隊駐屯地。

 

自衛隊からも避難民からも遠巻きにされてるダグバこと白野。自衛隊からはあまり良い視線が向けられていない。避難民からの視線の方が本人としては辛いかもしれない。此方に来る時に避難民達の目の前で襲ってきた赤龍を正面からボコボコにしている。オマケに火傷など怪我をした相手に再生染みた治療をやっている。尊ぶべき神様やら亜神の部類と思われても仕方ない。

 

そんな正と負どちらの視線も向けられて遠巻きにされてるダグバの近くには、伊丹の部下達が残されている。連れて帰ってきた責任。災難であった。

 

 

 

 

 

 

エルフの村から何となく伊丹さん達に着いてきた自衛隊の駐屯地…どういう対応されるかな?

 

 

自衛隊の上の人と話しでもするのかと思ったら伊丹さんだけ行って放置されてる。

 

周りの自衛隊員の人達の顔色が悪い。青ざめた感じ。ボクのせいなのかな?暴れそうで怖いのかな。まぁ怖がるのも仕方ないかな。正直、肉体の直感が正しいなら敵対しても特に驚異になると思えない。何となくだけど銀座で襲った相手より数が少ないだけマシとも思えた。

 

自衛隊の人達がボクの強さをどう思ってるのかわからないけど、少なくとも犠牲を出さずに勝てるとは思ってないはず、そんなボクが暴れない保証もないのに近くにいる。だから自衛隊の人達が怖がるのはわかる。わからないのは避難民の人達はなんだろう。

 

拝んだりするの何でかな?

 

道中でまた襲ってきたドラゴンと戦闘した後から拝まれたりする。伊丹さんが名前を教えたのかダグバ様とか呼ばれるし。居心地が悪い。まだ怖がられたりする方がマシかもしれない。普通な反応はないのかな。

 

普通なのロウリィちゃんぐらい。あとこっちを観察する様に見てくる青い髪の娘も崇拝って感じではないか。

 

遠巻きにされて放置されてる。

唯一話せそうなロゥリィちゃんは見学に回ってる。暇だなぁ。

 

こうして近くで改めてゆっくりと見ると、ファンタジー世界に自衛隊って違和感あるなぁ

 

そう言えばこの世界が物語とすれば自衛隊が主役に近い立ち位置なのかな。物語としたら自衛隊が銀座を襲った国とぶつかったりしそう。謝罪と賠償を求めるとか首謀者を逮捕ってニュースでは言ってたし、戦闘無しでどうにかなると思えないし。

 

物語はどんな方向に向くのかな。

 

普通にこの国と戦争するだけなら自衛隊が普通に勝てそうだと思うけど、それだと大した波乱はなさそう。波乱がない物語は無いよね。

 

例えばこの世界のロゥリィちゃんのいう神様が干渉してくるとか、それか外国が日本で何かするとかあるかな。外国と言えば外国でのボクへの反応はどうか確認してなかった。日本よりマシなのかな。日本より危険物扱い?どんな反応してるか気になる…今度帰った時にネットで確認してみようかな。

 

それにしても伊丹さんはまだかな。

そう言えばお昼どうしよう。

 

お昼の食材といえば、ここに来る前にまた襲ってきたドラゴンからもぎ取った尻尾がある。ファンタジーの定番でドラゴンの肉は高級食材って事で持ってきた。

 

待ってるだけだと暇だし時間も昼だし試して見ようかな。独り暮らしだし簡単な料理ぐらいはできる。だけど当然だけど……ドラゴンの料理方法なんて知らない。

 

……煮込みタレ焼きシンプルに塩コショウ。此方の世界でドラゴンの調理方法が無いのかな。此方の人に聞いてみよう。

 

聞くと知らないと言われた。

別に土下座なんてしなくても…。

 

「うふふふ、炎龍を食べるなんて貴方がきっと世界で初めてよ。面白そうだから手伝ってあげるわぁ」

 

見学から戻ってきたロゥリィちゃんが笑って料理に協力してくれる事になった。何か意地の悪い笑みを浮かべてた。炎龍に何か含むところがある?協力してくれるのは有りがたいけど……料理出来るのかな?

 

それからなんやかんやあり、ジックリコトコト、カレーを作ることに、カレーなのは自衛隊だからカレーって連想から、自衛隊のカレー食べてみたい。カレーは海上自衛隊だっけ?

 

木を大量に燃やして火事みたいな強い火の上にはモーフィングパワーで造った特大の寸胴鍋。鍋の中身はドラゴン肉入りのカレー。最悪ドラゴンの肉が美味しくなくてもカレーなら大丈夫のはず。ルーや野菜、そしてお米は栗林さん達経由で自衛隊の人がわけてくれた。

 

それに大量に作れて毒味…他の人にも食べてもらえるからね。…難民の人達の前で自分だけ食べるってのも気まずいし。

 

ヨーグルトがある。ドラゴンの肉堅そうだからヨーグルトに漬けて見よう。

 

「野菜こんな感じで良いかしらぁ?」

 

ローリィちゃん意外と料理の手際が良い。長く生きてると料理ぐらい出来るようになると言われた。

 

もしかして…見掛けより年が有る?好奇心に負けて聞いたらすごい年上だった。四桁近くって、ロゥリィちゃんでなくロウリィさんだね。リアルロリBBAと誰かが呟いたの聞こえた。ボクでも怖くて言えないことを…。

 

近くにいた栗林さんとかにも料理の手伝いをしてもらってたんだけど……手際はまぁ、うん、ボクよりは下手かな。

 

「…じょ…女子力で負けてる…?」

 

ショックを受けていた。

料理の技量って女子力って言うのかな

…いやダグバの姿に女子力って凄いワード

 

「これってスパイスの塊なのよね。こんなにスパイス入れるなんて、とんでもなく豪勢な食事ね」

 

カレー粉を興味深く見てる。スパイスって昔は金より高い時代もあったんだっけ、此方だとそう言う時代なのかな。

 

ロゥリィさん好奇心旺盛な子供…じゃなくて年齢的におばあちゃんかな。そう言えば年齢が若く見えるのって人間とは違う種族だからなのかな?亜神だから?

 

料理中に本人に聞いたところ年齢が若く見えるの亜神だかららしい。亜神になって将来的に神様になるまで姿は変わらないそう。

 

…ボクって今までは普通に年齢とってきたけど老化するのかな?ロゥリィさんから亜神か神様みたいな感じがするみたいな事を言われたけど

 

 

料理を手伝ってくれてる人が増えた。

ロゥリィさんや自衛隊の人に加えて、蒼い髪の中学生ぐらいの女の子。魔法使いぽい。興味津々な様子な感じで鍋を覗いてる。

もう一人は井戸の中で助けた金髪のエルフの娘、お手伝いをしようって感じ。

 

いつの間にか特徴的な娘ばかりが近くにいる。

 

ロゥリィさんもそうだけど物語の登場人物、もっといえばヒロインにも見えるね。ダグバのファンの栗林さんとかもわりとヒロインにも。

 

あれ?誰のヒロインか考えたら最有力なのは伊丹さんになる?ボクが居ない場合でも多分全員と伊丹さんは会ってそうだよね。

 

小柄自衛官女性、ゴスロリ、エルフ、魔法少女、前にも思ったことがあった気がするけど、考えれば考えるほど物語だとすると主人公が伊丹さんとしか思えないな。あの銀座とドラゴンの事を思うと主人公でなくても何か騒動に巻き込まれたりしそう。

 

伊丹さんこれからどうなるのかな。物語がどんなのか確認したい興味本位でもあるけど…伊丹さんが友人でもあるしね。う~ん、伊丹さんの周りになるべく居れないかな。難しいかな。

 

 

 

なんて思ってたら伊丹さんがボクの世話役になったらしい。自分で思うのも何だけどボクってソコソコ重要だよね。 そんなボクを任せられるって伊丹さん上の人から信頼されてるのかな。

 

 

 

 

 

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