皆さん、初めましての人は初めまして。3話目をご覧の皆さんはまた見てくれてありがとうございます。突然、名も知らないところに召喚されたらしい高町ヴィヴィオです。
「え、えっと……つまり、私はタバサさんの使い魔として、それこそ天文学的な確率で呼び出された……と」
「うん……」
その後、タバサさんは混乱していた私が落ち着くまで待ってくれて……もう一度丁寧に教えてくれました。
ここはハルケギニアという大陸の……トリステインという国で、そしてこの学校はトリステイン魔法学院というところらしく、今回……この使い魔召喚の試験が行われ……そして、私が呼ばれてしまったみたい。
ハルケギニアという大陸も……トリステインという国の名前も聞いたことがなかったので、やっぱりここは私のいた場所じゃない……異世界だということがわかってきました。
なので、ここは勇気を持って伝えてみることにしました。
「その……実は私、ここの世界の人じゃないみたいなんです……」
「どういうこと……?」
青い髪の女の子……タバサさんも、コルベールさんという頭のすっきりしているおじさんも、おヒゲのおじいさんのオールド・オスマンさんも、頭にクエスチョンマークがつきそうな顔をしていました。
「その……たいへん申し上げにくいのですが、私のいた場所ではハルケギニア……という大陸も、トリステインという国もなかったんです」
「っ……それ、ほんと?」
「は、はぃ……」
「ふむ……ということは、本当に異世界からの召喚ということになりますな……オールド・オスマン」
「そうじゃの……」
「オールド・オスマン?」
おヒゲの……オールド・オスマンさんが、なにやら考え込んでいました。
「いや、なんでもないぞぃ。 それよりも君……えっと、名前は……」
「あ、はいっ! 私は高町ヴィヴィオですっ」
「タカマチヴィヴィオ?」
「変わった名前……」
「ですね……」
ほかの三人から変わった名前だと思われてしまいました……ちょっとショックです……。けどやっぱりここは異世界みたい……さっき念話で、クリスにママにメッセージを送ってみてって頼んだけど……まだクリスからは何も言ってきていません。
「あのぉ、一ついいですか?」
「なに……?」
「私、タバサさんに召喚されちゃいましたけど……元の世界に戻る方法って……」
「ない……」
「え……な、ないってどういうことですかっ!!」
あまりの衝撃的な発言に、私はとっさにタバサさんの肩を掴んで強く揺らしていました。
「この召喚の儀式には、呼ぶことは出来ても……返す方法は、ない」
「そ、……そんな……」
そして、嫌なことというのは続いて起きるもので……
クリスから連絡が取れたか……という返事が来ました。その返事は……連絡が取れない……という最悪の状況でした。
「それじゃあ……私は……帰ることが、できない……?」
「うん……一生」
一生帰れない……その言葉が、私に強くのしかかりました。こんなのは夢だ……そう思ってしまいたくもなったが、残念ながら夢というわけでもなさそうで……
「そんな……の……いや、嫌ですよ……だって、そんな……私には、まだ……やりたいことも……一緒にいたかった人も……たくさん……」
口に出してしまうと、強制的に思い浮かんでくる……私を救ってくれて……世界中の誰よりも幸せにしてくれた、ママ……そしてフェイトママ……ノーヴェや他のみんな……一緒のチームにいた、リオやコロナ……そして……アインハルトさん……。
まだ……これからだったのに、これから、皆でいろいろ……たくさんしていくはずだった。ママには……私が強くなっていくところを……私が成長していくところ……見ていて欲しかったのに……本当に……、これから、だったのに……
「そんなのって……そんなのって、ない……よ……う……ぁ……ぁぁぁぁあ!!」
私はその場に蹲り……泣きました。沢山泣きました。……これでもかってくらい泣きました。泣いて泣いて……こんなにも泣いたのは……いつの頃以来だったかな……確かに、大会で負けた時……リオとコロナと泣いたこともあったし、アインハルトさんと……本当の意味でわかり合えた時も……泣いたけど……
ここまで泣いたのは、本当に久しぶりだったかもしれない……。
でも……それでも、思いっきり泣けたのは……
「ごめん……」
そう言いながら……私を優しく抱きしめてくれた、タバサさんのおかげかもしれなかった。そのぬくもりはどこか……ママみたいで、だから安心して……感情を吐き出すことができたのかもしれない……と。
私はその後……泣きつかれてしまったこともあり、そのまま、ゆっくりと……眠ってしまいました。
**
「んっ……んん」
目を覚ますと……そこは、見たこともない個室でした。特に目立った装飾がされているわけでもない、ベットと……机と椅子、それから、本が置いてあるくらいだった。
「ここは……」
「目、覚めた?」
「えっ……、あ……タバサさん」
ドアをゆっくり開けられ、タバサさんが入ってきました。
「私は……いったい」
「たくさん泣いた後……泣きつかれて寝ちゃったみたい」
あ……そういえばそうだったかも……。
「すみません……いきなり泣いたりして」
「ううん……大丈夫、むしろ……いきなりこんなところに連れてきた私が悪い」
そういうと、タバサさんは申し訳なさそうに顔を伏せていたので、私は慌てて手を横に振りながら答えた。
「そ、そんなことないですよっ! きっと連れてくる人を選ぶことはできなかったんですから!」
私がそう必死にフォローをしようとすると、タバサさんはほんの少し驚いたような顔をした後……いつもの無表情に戻った。
「うん……あ、コルベール先生が言ってたんだけど」
「はい……?」
「元の世界に返すことは出来ないけど、最低限暮らせるように補助はするって……だから、落ち着いたら顔を出しに行くといい……」
「あ……えっと、ありがとうございますっ!」
「私は何もしてない……」
タバサさんはそういうと、もういうことはないと言わんばかりに、本を取り出して読み始めた。
無限書庫に通っていろんな本を読んでいた身としては、その本にも少し興味があったのだが、たぶん言語が違うので読めないだろう……と、ほんの少し落胆しました。
「えっと……じゃあ、その、コルベールさん……のところに行ってきますね」
「ん……」
タバサさんの返事を聞くと、私はその場からゆっくり立ち上がり、ゆっくりとドアを締め……タバサさんの部屋らしい個室を後にしました。
**
「えっと……そういえばコルベールさんはどこにいるのかな……? 」
タバサさんの部屋を出た後、コルベールさんを探して学院内を歩いていました。
「それにしても広いなぁ……ママの故郷の本で見た……中世……だったかな、その時の建物に少し似てるけど……」
建物の外壁に触れたりしながら、昔……母の故郷の星に遊びに行った時に読んだ本に出てきたお城に、なんとなく雰囲気が似ているなぁ……と思っていました。
「って……そんなことよりも、早くコルベールさんを……」
コルベールさん探しに戻ろうとした時。
「ねぇ……お聞きになりました? ミス・タバサの件なのですが」
「ええ……聞きましたわ」
「ん……なんだろう……?」
タバサさんの名前が挙がっていたので、つい足を止めて聞き耳を立ててしまう。いけないことだとはわかっているけど、なんだか気になってしまった。
「ミス・タバサの召喚した使い魔が、使い魔になることを嫌がっている……らしいですわね」
「えぇ……そのようですね。 大丈夫かしら……ミス・タバサは。 使い魔がいなくては、進級ができない……悪ければ退学になってしまうかもしれないのに」
「えっ!?」
衝撃の事実に声が出てしまったので、慌てて隠れる。最初こそ、周りを見渡して、誰かいたのかと言っていた女の人達でしたが、少し経つとその場から離れていきました。
「ふぅ……バレなくてよかったぁ。 でも、退学って……本当なのかな」
でも……タバサさんはそんなこと、一言も言ってなかったし……、あの人達の勘違いだよね、きっと。それくらいで退学になるなんて、そんなこと……絶対に嘘だよっ。
突然不安になった私は、タバサさんの退学疑惑が本当なのかどうか……最初の目的以外にも、聞くことができちゃったこともあり、絶対にコルベールさんをみつけよう、と決意しました。
それから、私はあちこち探し回りました……落ちかけていた日は完全に沈み、学内もだんだんと暗くなってきていました。タバサさんに、心配かけちゃってるかな……と少し思いながらも、今更戻るというわけにはいかないと思いました。
「だって……もし、本当に退学になったら……ふぎゅっ!?」
「あら……?」
急いでいた時、突然ぽにょんっとした柔らかい何かにぶつかってしまいました。声がしたような気もしたので、もしかしたら人にぶつかってしまったのかもしれない。
「ご、ごめんなさいっ! ちゃんと前見てなくてっ」
私は慌てて頭を下げて謝りました。
「いいのよ別に……って、あら? 貴女……確かタバサの……」
「ふぇぇ……?」
また、タバサさんの名前が呼ばれ……タバサさんの知り合いなんだろうか……と、そっと顔を上げると……
「やっぱりそうねっ! 金髪だし、目の色が左右違うしっ」
真っ赤な、まるでリオが放つような炎のような色の髪をした、褐色の肌の女性がいました。肌の印象か、はたまた髪の印象か……それとも、妙に大胆に着崩された制服のようなものせいなのか、とても活発な印象を持っている女性でした。
「え、えっと……貴女は……」
「おっと……そうね、自己紹介をしてなかったわ。 私は……キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。長いから、キュルケでいいわ。 貴女は……?」
「は、はいっ! 私は高町ヴィヴィオですっ! 宜しくお願いしますっ」
「タカマチヴィヴィオ? 変な名前ね」
「うぅ……やっぱり変なんですかね……私の名前」
ここに来てから、妙に名前を変って言われることが多い気がします。もしかしたら、私の名前って変なのかな……、なんだか悲しくなってきたよ……。
「あっ、そういえば……えっと、キュルケさんは、タバサさんとはどういったご関係で……?」
「そうね……私は、タバサの親友よ」
「あ、……そうなんですねっ! 」
タバサさん、なんだか大人しそうな人だったから、もしかしたら友達いないのかな……と思ってたけど、いたんだ……よかったぁ……。
「今……タバサに友達がいたんだな~って思ったでしょ」
「い、いえいえいえ!? そんなことないですよ!?」
思っていたことを当てられてしまいました。もしかしてこの人エスパーかなにかなの!?
「ふふふっ……顔に出てたわよ。 まぁ、タバサには内緒にしておいてあげるわ」
「ありがとうございます……」
本当に内緒にしてくれるのか、少し疑問ですが……なんとかバレずに済みそうです。
あっ……そうだ。もしこの人がタバサさんの親友なら……本当にタバサさんが退学になってしまうのか。本当のことを教えてくれるかもしれないっ!
そう思った私は、意を決して聞いてみることにしました。
「あ、あの……キュルケさん」
「ん……? なにかしら?」
「その……もし、私が使い魔にならなかったら、タバサさんが退学になっちゃうっていうのは、本当なんですか!」
私がそう聞くと……先程までの気楽な雰囲気はどこへやら、キュルケさんの目付きが鋭くなり、なにやら……重々しい雰囲気が私達の周りを取り囲みました。
「そう聞くってことは……貴女、ならないのかしらね……使い魔」
そう言っているキュルケさんの表情は……ほんの少し、怒りのようなものも含まれているように、私は感じました。