ゆりかごの鍵は雪風の使い魔   作:楠木 蓮華

3 / 5
退学疑惑と微熱との邂逅

皆さん、初めましての人は初めまして。3話目をご覧の皆さんはまた見てくれてありがとうございます。突然、名も知らないところに召喚されたらしい高町ヴィヴィオです。

 

「え、えっと……つまり、私はタバサさんの使い魔として、それこそ天文学的な確率で呼び出された……と」

 

「うん……」

 

その後、タバサさんは混乱していた私が落ち着くまで待ってくれて……もう一度丁寧に教えてくれました。

 

ここはハルケギニアという大陸の……トリステインという国で、そしてこの学校はトリステイン魔法学院というところらしく、今回……この使い魔召喚の試験が行われ……そして、私が呼ばれてしまったみたい。

 

ハルケギニアという大陸も……トリステインという国の名前も聞いたことがなかったので、やっぱりここは私のいた場所じゃない……異世界だということがわかってきました。

 

なので、ここは勇気を持って伝えてみることにしました。

 

「その……実は私、ここの世界の人じゃないみたいなんです……」

 

「どういうこと……?」

 

青い髪の女の子……タバサさんも、コルベールさんという頭のすっきりしているおじさんも、おヒゲのおじいさんのオールド・オスマンさんも、頭にクエスチョンマークがつきそうな顔をしていました。

 

「その……たいへん申し上げにくいのですが、私のいた場所ではハルケギニア……という大陸も、トリステインという国もなかったんです」

 

「っ……それ、ほんと?」

 

「は、はぃ……」

 

「ふむ……ということは、本当に異世界からの召喚ということになりますな……オールド・オスマン」

 

「そうじゃの……」

 

「オールド・オスマン?」

 

おヒゲの……オールド・オスマンさんが、なにやら考え込んでいました。

 

「いや、なんでもないぞぃ。 それよりも君……えっと、名前は……」

 

「あ、はいっ! 私は高町ヴィヴィオですっ」

 

「タカマチヴィヴィオ?」

 

「変わった名前……」

 

「ですね……」

 

ほかの三人から変わった名前だと思われてしまいました……ちょっとショックです……。けどやっぱりここは異世界みたい……さっき念話で、クリスにママにメッセージを送ってみてって頼んだけど……まだクリスからは何も言ってきていません。

 

「あのぉ、一ついいですか?」

 

「なに……?」

 

「私、タバサさんに召喚されちゃいましたけど……元の世界に戻る方法って……」

 

「ない……」

 

「え……な、ないってどういうことですかっ!!」

 

あまりの衝撃的な発言に、私はとっさにタバサさんの肩を掴んで強く揺らしていました。

 

「この召喚の儀式には、呼ぶことは出来ても……返す方法は、ない」

 

「そ、……そんな……」

 

そして、嫌なことというのは続いて起きるもので……

 

クリスから連絡が取れたか……という返事が来ました。その返事は……連絡が取れない……という最悪の状況でした。

 

「それじゃあ……私は……帰ることが、できない……?」

 

「うん……一生」

 

一生帰れない……その言葉が、私に強くのしかかりました。こんなのは夢だ……そう思ってしまいたくもなったが、残念ながら夢というわけでもなさそうで……

 

「そんな……の……いや、嫌ですよ……だって、そんな……私には、まだ……やりたいことも……一緒にいたかった人も……たくさん……」

 

口に出してしまうと、強制的に思い浮かんでくる……私を救ってくれて……世界中の誰よりも幸せにしてくれた、ママ……そしてフェイトママ……ノーヴェや他のみんな……一緒のチームにいた、リオやコロナ……そして……アインハルトさん……。

 

まだ……これからだったのに、これから、皆でいろいろ……たくさんしていくはずだった。ママには……私が強くなっていくところを……私が成長していくところ……見ていて欲しかったのに……本当に……、これから、だったのに……

 

「そんなのって……そんなのって、ない……よ……う……ぁ……ぁぁぁぁあ!!」

 

私はその場に蹲り……泣きました。沢山泣きました。……これでもかってくらい泣きました。泣いて泣いて……こんなにも泣いたのは……いつの頃以来だったかな……確かに、大会で負けた時……リオとコロナと泣いたこともあったし、アインハルトさんと……本当の意味でわかり合えた時も……泣いたけど……

 

ここまで泣いたのは、本当に久しぶりだったかもしれない……。

 

でも……それでも、思いっきり泣けたのは……

 

「ごめん……」

 

そう言いながら……私を優しく抱きしめてくれた、タバサさんのおかげかもしれなかった。そのぬくもりはどこか……ママみたいで、だから安心して……感情を吐き出すことができたのかもしれない……と。

 

私はその後……泣きつかれてしまったこともあり、そのまま、ゆっくりと……眠ってしまいました。

 

 

**

 

 

「んっ……んん」

 

目を覚ますと……そこは、見たこともない個室でした。特に目立った装飾がされているわけでもない、ベットと……机と椅子、それから、本が置いてあるくらいだった。

 

「ここは……」

 

「目、覚めた?」

 

「えっ……、あ……タバサさん」

 

ドアをゆっくり開けられ、タバサさんが入ってきました。

 

「私は……いったい」

 

「たくさん泣いた後……泣きつかれて寝ちゃったみたい」

 

あ……そういえばそうだったかも……。

 

「すみません……いきなり泣いたりして」

 

「ううん……大丈夫、むしろ……いきなりこんなところに連れてきた私が悪い」

 

そういうと、タバサさんは申し訳なさそうに顔を伏せていたので、私は慌てて手を横に振りながら答えた。

 

「そ、そんなことないですよっ! きっと連れてくる人を選ぶことはできなかったんですから!」

 

私がそう必死にフォローをしようとすると、タバサさんはほんの少し驚いたような顔をした後……いつもの無表情に戻った。

 

「うん……あ、コルベール先生が言ってたんだけど」

 

「はい……?」

 

「元の世界に返すことは出来ないけど、最低限暮らせるように補助はするって……だから、落ち着いたら顔を出しに行くといい……」

 

「あ……えっと、ありがとうございますっ!」

 

「私は何もしてない……」

 

タバサさんはそういうと、もういうことはないと言わんばかりに、本を取り出して読み始めた。

 

無限書庫に通っていろんな本を読んでいた身としては、その本にも少し興味があったのだが、たぶん言語が違うので読めないだろう……と、ほんの少し落胆しました。

 

「えっと……じゃあ、その、コルベールさん……のところに行ってきますね」

 

「ん……」

 

タバサさんの返事を聞くと、私はその場からゆっくり立ち上がり、ゆっくりとドアを締め……タバサさんの部屋らしい個室を後にしました。

 

 

**

 

 

「えっと……そういえばコルベールさんはどこにいるのかな……? 」

 

タバサさんの部屋を出た後、コルベールさんを探して学院内を歩いていました。

 

「それにしても広いなぁ……ママの故郷の本で見た……中世……だったかな、その時の建物に少し似てるけど……」

 

建物の外壁に触れたりしながら、昔……母の故郷の星に遊びに行った時に読んだ本に出てきたお城に、なんとなく雰囲気が似ているなぁ……と思っていました。

 

「って……そんなことよりも、早くコルベールさんを……」

 

コルベールさん探しに戻ろうとした時。

 

「ねぇ……お聞きになりました? ミス・タバサの件なのですが」

 

「ええ……聞きましたわ」

 

「ん……なんだろう……?」

 

タバサさんの名前が挙がっていたので、つい足を止めて聞き耳を立ててしまう。いけないことだとはわかっているけど、なんだか気になってしまった。

 

「ミス・タバサの召喚した使い魔が、使い魔になることを嫌がっている……らしいですわね」

 

「えぇ……そのようですね。 大丈夫かしら……ミス・タバサは。 使い魔がいなくては、進級ができない……悪ければ退学になってしまうかもしれないのに」

 

「えっ!?」

 

衝撃の事実に声が出てしまったので、慌てて隠れる。最初こそ、周りを見渡して、誰かいたのかと言っていた女の人達でしたが、少し経つとその場から離れていきました。

 

「ふぅ……バレなくてよかったぁ。 でも、退学って……本当なのかな」

 

でも……タバサさんはそんなこと、一言も言ってなかったし……、あの人達の勘違いだよね、きっと。それくらいで退学になるなんて、そんなこと……絶対に嘘だよっ。

 

突然不安になった私は、タバサさんの退学疑惑が本当なのかどうか……最初の目的以外にも、聞くことができちゃったこともあり、絶対にコルベールさんをみつけよう、と決意しました。

 

それから、私はあちこち探し回りました……落ちかけていた日は完全に沈み、学内もだんだんと暗くなってきていました。タバサさんに、心配かけちゃってるかな……と少し思いながらも、今更戻るというわけにはいかないと思いました。

 

「だって……もし、本当に退学になったら……ふぎゅっ!?」

 

「あら……?」

 

急いでいた時、突然ぽにょんっとした柔らかい何かにぶつかってしまいました。声がしたような気もしたので、もしかしたら人にぶつかってしまったのかもしれない。

 

「ご、ごめんなさいっ! ちゃんと前見てなくてっ」

 

私は慌てて頭を下げて謝りました。

 

「いいのよ別に……って、あら? 貴女……確かタバサの……」

 

「ふぇぇ……?」

 

また、タバサさんの名前が呼ばれ……タバサさんの知り合いなんだろうか……と、そっと顔を上げると……

 

「やっぱりそうねっ! 金髪だし、目の色が左右違うしっ」

 

真っ赤な、まるでリオが放つような炎のような色の髪をした、褐色の肌の女性がいました。肌の印象か、はたまた髪の印象か……それとも、妙に大胆に着崩された制服のようなものせいなのか、とても活発な印象を持っている女性でした。

 

「え、えっと……貴女は……」

 

「おっと……そうね、自己紹介をしてなかったわ。 私は……キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。長いから、キュルケでいいわ。 貴女は……?」

 

「は、はいっ! 私は高町ヴィヴィオですっ! 宜しくお願いしますっ」

 

「タカマチヴィヴィオ? 変な名前ね」

 

「うぅ……やっぱり変なんですかね……私の名前」

 

ここに来てから、妙に名前を変って言われることが多い気がします。もしかしたら、私の名前って変なのかな……、なんだか悲しくなってきたよ……。

 

「あっ、そういえば……えっと、キュルケさんは、タバサさんとはどういったご関係で……?」

 

「そうね……私は、タバサの親友よ」

 

「あ、……そうなんですねっ! 」

 

タバサさん、なんだか大人しそうな人だったから、もしかしたら友達いないのかな……と思ってたけど、いたんだ……よかったぁ……。

 

「今……タバサに友達がいたんだな~って思ったでしょ」

 

「い、いえいえいえ!? そんなことないですよ!?」

 

思っていたことを当てられてしまいました。もしかしてこの人エスパーかなにかなの!?

 

「ふふふっ……顔に出てたわよ。 まぁ、タバサには内緒にしておいてあげるわ」

「ありがとうございます……」

 

本当に内緒にしてくれるのか、少し疑問ですが……なんとかバレずに済みそうです。

 

あっ……そうだ。もしこの人がタバサさんの親友なら……本当にタバサさんが退学になってしまうのか。本当のことを教えてくれるかもしれないっ!

 

そう思った私は、意を決して聞いてみることにしました。

 

「あ、あの……キュルケさん」

 

「ん……? なにかしら?」

 

「その……もし、私が使い魔にならなかったら、タバサさんが退学になっちゃうっていうのは、本当なんですか!」

 

私がそう聞くと……先程までの気楽な雰囲気はどこへやら、キュルケさんの目付きが鋭くなり、なにやら……重々しい雰囲気が私達の周りを取り囲みました。

 

「そう聞くってことは……貴女、ならないのかしらね……使い魔」

 

そう言っているキュルケさんの表情は……ほんの少し、怒りのようなものも含まれているように、私は感じました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。