高坂穂乃果は再びスタートする   作:ひまわりヒナ

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ついにμ'sの名が決定し、海未の説得も終え、練習も始め、後は作曲のみとなった。
しかし、真姫は首を縦にふることはなかった。
穂乃果は絵里との話し合いを通じ、改めて自分のやる事の壮大さを感じながらも、諦めずに取り組んでいくのであった。

今回で本編2話終了です。




9話 START:DASH!!

「屋上でいつも練習してるんだって」

「うちの学校でスクールアイドルやる人がいるなんて、思わなかった」

 

 小泉花陽はそんな会話を耳にした。

 スクールアイドルの事について気になっていた彼女にとって、その情報は重要なものであり、興味深いものでもあった。

 

「かよちん、帰るにゃー」

 

 そう言って現れたのは凛。

 うん、と返事して一緒に帰ろうとした、その時だった。

 

(あれは……)

 

 偶然後ろを通り過ぎたのは、どこかで見覚えのある姿。

 そして脳裏によぎる、ライブ告知のポスター。

 あの絵の中の1人、つまりスクールアイドルの1人、確か名前はほのかさん。

 彼女は1年生教室のドアを開けた。

 何の用だろう、と思い、凛とともに彼女の近くに行った。

 

「うわぁ、やっぱり誰もいないか」

「にゃ?」

「あ、り……ゴホン、ねぇ、あの子知らない?」

 

 一瞬、凛と名前を言ってしまいそうになったが、何とかギリギリセーフ。すぐに真姫がいないか問いかける。

「あの子?」と、凛はキョトンとした顔をしたが、

 

「に、西木野さん、ですよね?歌の上手い」

 

 花陽はあの子が誰なのか直ぐに理解した。

 前回教室を訪れた時のことから、予想したのだろう。

 

「西木野さん、って言うんだ」

「は、はい。西木野、真姫さん」

 

 一応、ここでは名前は知らなかった。という事にしておいた方が良いだろうと思い、知らなかったという前提で話をすすめた。

 もちろん、彼女の居場所についても。

 

「用があったんだけど、この感じじゃ、帰っちゃったよね」

「音楽室じゃないですか?」

「音楽室?」

「あの子、あんまり皆と話さないんです。休み時間は図書室だし、放課後は音楽室だし」

「そうなんだ。2人ともありがとう!」

 

 居場所を聞いた穂乃果は、駆け足で音楽室へと向かおうとする。その時、「あの!」花陽が彼女を呼び止める。

 そして、振り返った穂乃果に

 

「が、頑張ってください!……アイドル!」

 

 声援をもらった彼女は、にっこりと笑って「うん!頑張る!」と元気な声で言った後、音楽室へと改めて向かった。

 

 

 

 

 

 美しい音色が聞こえてきた。

 間違いなく、これは真姫の奏でている音。その音が大きくなるにつれ、音楽室に近づいていることを示していた。

 そして音楽室に着いた時には、その演奏は終わっていた。ドア越しで拍手する。真姫は驚いた表情をしていた。

 

「何の用ですか?」

 

 真姫は足を組んで彼女に問いかける。

 

「やっぱり、もう一回お願いしようと思って」

「しつこいですね」

「そうなんだよね、いつも海未ちゃんにそう怒られるんだ」

 

 自分で言っておきながら、そう言えばそうだったなぁ、と懐かしく感じる穂乃果。

 しかし、今は過去の思い出に浸っているわけにはいかない。

 真姫を説得する、それが彼女の今の目的だ。

 

「私、ああいう曲、一切聞かないから。聞くのはクラシックとか、ジャズとか」

「へぇ、どうして?」

「軽いからよ。何か薄っぺらくて、ただ遊んでるみたいで」

 

 その言葉に穂乃果は「そうだよね」と肯定した。

 真姫は「え?」と疑問符を浮かべた。

 アイドルの作曲をしてほしいと頼んだ人物が、否定的見方をした自分の意見に肯定すれば驚くのも当然である。

 

「私もそうだったんだ。お祭りみたいにパーっと盛り上がって歌っていればいいんじゃないかって。

 でもね、結構大変なの」

 

 そう言った後、穂乃果は唐突に彼女に近づき「ねぇ、腕立て伏せできる?」と言った。

 一体何のことだと思いながらも、できないと思われたら嫌なので、直ぐにその場で腕立て伏せをやって見せた。

 

「1.2.3……これでいいんでしょ?」

「うん!すごい、すごい!」

「あ、当たり前でしょ。私はこれでも」「それじゃ、そのまま笑ってやってみて」

 

 穂乃果に言われ笑顔を作り、腕立て伏せを再開する真姫。

 そのぐらい……と思っていたが、思った以上にうまくいかず。明らかに難易度が上がった事を身を以て感じた。

 

「ね、アイドルって難しいでしょ?」

「な、何のことよ。全く」

 

 そう言って立ち上がった彼女に、「はい」と言って穂乃果は歌詞が書かれた紙を渡した。

 

「一度読んでみてよ」

「だから、私は……」

「読むだけならいいでしょ?今度聞きにくるから、その時ダメだったら、私は諦める」

 

 真姫は「答えが変わることはないと思いますけど」と言いながら、穂乃果から紙を受け取る。

 そして、穂乃果が返した言葉は、

 

「だったらそれでもいい。そしたらまた歌を聴かせてよ」

 

 思わぬ返答だった。

 断られてもいいという所よりも、歌を聴かせて欲しい、その言葉の方が真姫にとって驚きが強かった。

 

「私、真姫ちゃんの歌声が大好きなんだ。あの歌声とピアノを聴いて感動したから、貴方に作曲をお願いしたいなって思ったんだ!」

 

 昔、ピアノコンクールなどに出た経験があるから、自分のピアノ技術は何度も褒められた事はあった。

 もちろん、歌声も何度も何度も多くの人が褒めてくれた。

 

 しかし、今目の前にいる彼女からの言葉は何かが違った。

 

 大好きだって、感動したって、在り来たりな言葉ではあるけれど、不思議とその言葉の嬉しさは今までと違った。

 その時、確かに真姫の心に動きがあった。作曲してもいいかな、と。

 

「毎日朝と夕方に神田明神の階段で練習してるから、良かったら遊びに来てよ」

 

 そう言って穂乃果は音楽室を出た。

 真姫は静かにピアノの前の椅子に座り、じっと織り込まれた紙を見つめる。その時、「言い忘れてた!」と、穂乃果が再び音楽室に戻ってきた。

 ビクッとしながらも、穂乃果の方を見る。

 

「あのね、アイドルの歌ってすごい元気が出るんだ!

 それにね、何より皆でやったら、すっごい楽しいんだよ!」

「だ、だから何ですか」

「それだけ、伝えておきたかったの。

 確かに、音楽の中では軽いものなのかもしれない。

 でもあの曲達は誰かが一生懸命作って、誰かが一生懸命歌って踊る。そんな、皆が頑張って作る、素晴らしいものなんだって。

 

 いつか、真姫ちゃんにも分かってくれたらなって思って」

 

 穂乃果はそう言うと「またね!」と言って音楽室を去る。

 

 真姫は再び静けさを取り戻した音楽室の中で、先程までの穂乃果とのやりとりを思い出す。

 自分はアイドルの曲に良い印象は持たない。

 いつも弾くのはクラシックなど。

 もちろん、だからと言って作曲できなくはない。

 

 気持ちは何とも言えないモヤモヤした状態だった。

 しかし、作曲してもいいかなと思う気持ちがあることに間違いはなかった。

 

 そんな気持ちのまま、紙を開いて歌詞を見る。

 そこに書かれている文字をしっかり読み込み、同時にどんな曲にしようかと、本格的に作曲する気で取り組む。

 気が付けば夢中になっており、大体の構成が浮かび上がっていた。

 

「……作曲、しようかな」

 

 思った以上に楽しい。

 心の中に浮かび上がるちゃんと作曲したいという気持ち。

 

 しかし、問題が1つ。

 何だか恥ずかしい。

 作れる、その自信はあったが、人前に出すということは多くの人に聞かれるということ。

 自分の音楽が聞かれる。それは嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが同時に混ざり合う感覚。

 その気持ちが作曲する気持ちを僅かに抑えていた。

 

 

 真姫はとりあえず音楽室を去り、ある所へと向かった。

 それは神田明神の階段、穂乃果達が練習する場所である。

 

「はぁはぁ、あぁ、疲れたー」

「まだ2周、残ってますよ!」「は、はーい……」

 

 聞こえてくるのは穂乃果達の声、練習してる最中なのだろう。

 その光景を物陰から確認した。

 

 そんな彼女に忍び寄る1つの影。

 真姫はそれに気付くことはなく、完全に油断していた。

 

「きゃー!」

「な、なに、今の?」「さぁ?」

 

 穂乃果達の視線に映らないところで、真姫は何者かに後ろから胸を触られていた。直ぐに振りほどき、後ろを振り向く。

 どこかで見たような顔、確か副会長の人だ、と真姫は思い出した。

 

「な、何すんのよ!」

「まだまだ発展途上ってところやな」

「何の話!?」

「恥ずかしいなら、こっそりっていう手もあると思うんや」

「だから何……」「分かるやろ?」

 

 そう言って希はその場から去る。

 唐突に変な事をされたが、その言葉の意味は分かる。

 そのままの意味、恥ずかしいならこっそりと、だ。

 それが何故言われたのかも分かる。もっとも何故彼女がその事を知っているのか、という疑問は残るが……

 兎にも角にも真姫はある事を決断し、直ぐに家に帰った。

 

 

 

 

 次の日の朝

「行ってきまーす!」

 すっかり今の生活に慣れた穂乃果は、当たり前のように学校へと向かう。今日は学校で2人と今後の予定について話し合うため、朝の練習は無しにしているのだ。

 そんな彼女を「お姉ちゃーん!」上の階から、雪歩が呼び止めた。

 

「どうしたのー?」

 

 問いかける穂乃果に雪歩は1枚の封筒のような物を見せた。

 

「お姉ちゃんあてに!宛名がないんだけど、μ'sって書いてあるよ」

 

 μ'sって書いてある……まさか。

 穂乃果は急いで雪歩の元へ行き、それを受け取った後、学校へ向かいながらそれを確認する。

 そして入っていたのはやはり、CD。

 真姫が作ってくれた曲が入ったCD。

 

「真姫ちゃん……ありがとう!!」

 

 穂乃果は大事にしまって、学校へと急いだ。

 早く、2人に聞かせてあげたい。その一心で。

 

 

 そして学校に着き、屋上へ向かう。

 話し合いなども基本、教室ではなく屋上で行っていた。

 

「おはよう!2人とも!」

「おはよう、穂乃果ちゃん」「おはようございます、穂乃果」

「2人とも!これ見て、これ!」

 

 そう言って見せる1枚のCD。

 もちろん、この中身を2人は知らない。

 

「穂乃果、それは?」

「ちょっと待っててね」

 

 穂乃果はそう言って、部活専用のPCに電源を入れる。

 2人は穂乃果の元へ集まり、PCの画面に注目した。

 

「いくよ、2人とも」

 

 PCにCDをセットし、再生ボタンを押す。

 瞬間、まるで電流が走ったかのような感覚が3人に襲いかかった。

 

「こ、これが……」

「私達の……歌」

 

 あまりの驚きと感動に唖然とする、海未、ことり、そして穂乃果。

 そんな時、PCの画面上に映る。

 

【音ノ木坂学院 アイドルμ's(ミューズ)】

 RANKーーー

『It is under search……』

 

 そこに書かれていた文字は変わり、

 

【音ノ木坂学院 アイドルμ's(ミューズ)】

 UP↑ RANK999

『Congratulations!ヾ( ´ ∀ ` )ノ"』

 

「票が入った!」

 

 圏外から999位に。

 もちろん、その順位ではまだまだである。

 しかし、その順位に入ったことは3人に強い力を与えた。

 

「2人とも、頑張ろう……そして絶対成功させよう!」

「はい!」

「うん!」

 

 強い意気込み。

 そして曲が決定したことにより、後はこれを練習あるのみという段階までになった。

 全てが決まった、全てが整った。後は練習あるのみ。

 

「私達の曲、私達3人のスタートの曲、『START:DASH!!』

 よぉし、やるぞー!!」

 

 本当の意味でのスタートをきった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 




ついにSTART:DASH!!完成。
ラブライブの曲は良いものばかりですが、特にこの歌大好きです。
3話のSTART:DASH!!を見た後に、最終回のSTART:DASH!!を見ると涙腺壊滅です。
イントロのキター!って感じが凄いです。

そしてツンデレ真姫ちゃん可愛いですね。

さて、これにて本編2話終了、次回からついに3話突入。
つまりファーストライブへと場面は移っていきます。お楽しみに。

それではまた次回。
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