気持ちが高まる中、1人悩む穂乃果。
しかし、時間が止まることはなく、ついにライブ当日となる。
今後の活動について、活動報告を投稿しましたので是非ご確認ください。
「これで新入生歓迎会を終わります
各部活とも体験入部を行っているので、興味があったらぜひ覗いてみてください」
絵里により、ついに新入生歓迎会の終わりが告げられる。
そしてこれからは、いよいよ体験入部の時間となる。
「HR終わったら直ぐに準備を始めよう」
「そうですね、他の部活より人数少ないですし」
「そう言えば、海未ちゃん、弓道部の方は?」
「弓道部はそれなりの人数がいますので、他の方に頼みました」
「そう、今更だけど、忙しいのにごめんね」
「大丈夫ですよ、それより成功させるためにもチラシ配り頑張りましょう」
講堂から教室へ戻る道中、そう言って笑う彼女に、穂乃果も笑顔で、うん、と返した。
しかし今の穂乃果にはその笑顔が辛かった。
どんなに海未とことり、この2人とライブの成功を祈っても、あの事実が変わる事はないかもしれない。
その心配が頭から離れる事はなかったからだ。
そんな時、そっと両肩に手が置かれた。その手は海未とことりのものだった。
「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん」
「私達ならできます」
どうやら笑っていたはずなのに、2人には心配事でいっぱいなのがバレてしまったようだった。
見た目はまだ高校生でも、心はもう大人。
私が2人を引っ張ってあげないといけない、支えないといけないはずなのに……そう思ってはいるはずなのに、支えてくれる2人の姿がとても嬉しかった。
「うん、頑張ろう!」
穂乃果は精一杯の笑顔でそう言った。
HRも終わり、ついに迎えた放課後。
タイムリミットは約2時間。できればその内の半分はリハーサルや準備をやりたいところだ。
いざ、チラシ配りへ!そう思い教室を出ようとした、その時、
「穂乃果!」
ヒデコに呼び止められた。
3人は足を止める。
「私達も手伝うよ!」
「本当!?手伝ってくれるの!?」
「リハーサルとかしたいでしょ?」
ヒデコに続くようにミカがそう言いながら、持っていたチラシのほとんどを半ば強引に奪い取る。
「チラシ配りなら任せて!」
「私達も学校はなくなるのはやだし……」
そう言ってフミコも講堂の設備の準備を手伝うと言ってくれた。
「穂乃果達には上手くいって欲しいと思ってるから!」
もちろん、彼女達が手伝ってくれる事も知っていた穂乃果。
しかしその彼女達の気持ちは、いつ何時も嬉しい、いや嬉しすぎる。感極まった穂乃果は泣きながら、ありがとう、と感謝の気持ちを言った。その時彼女は、とにかくその気持ちが嬉しかった。
3人のおかげで、スケジュールに余裕ができた彼女達。
リハーサルなどに多く時間をかけるため、チラシ配りは予定の半分を配る事になり、必死に声を出していた。
「お願いします!
この後午後4時から初ライブやります!」
「ぜひ来てください!」
穂乃果とことりがチラシを配る一方で、「こちら吹奏楽部でーす!」近くでは他の部活も勧誘を行っていた。
まだ穂乃果達は無名に等しい。
生徒の集まる数の差はハッキリとしていた。
「他の部活に負けてられないよ!」
「うん!」
そのような光景を目の当たりにしても、励まし合い、再び呼びかけを始める。
そんな中、
「お願いします!午後4時からです!」
海未は恥ずかしがっていたとは思えない程、チラシ配りを頑張っていた。
その姿を見て2人の気持ちにさらに火がつき、チラシ配りは順調に進んでいった。
「3人とも、こっちは準備オーケーだよ!」
そう言ってやってきたのはヒデコ。
やった事があるとは聞いていたが、それにしても準備が早い。
「もう終わったのですか?」
「うん!それより早くそっちも準備しちゃいな、時間ギリギリまで音の調節とかしなきゃ」
「うん!分かった!」
穂乃果はそう答えると、ことりと海未と共に待機室へと向かった。
待機室に着くと、直ぐに着替え始める。
またこの服を着る事ができる。それだけで、穂乃果のワクワクは止まらない。
「うわー!可愛い!どう?どう?」
「うん!すごく似合ってる!」
童心に帰り、はしゃぐ穂乃果。
先に着替え終わる、2人。一方でまだ出てこない海未。
「海未ちゃん、着替え終わった?」
「ま、まだです」
ことりの言葉にまだと答える海未。
しかし本当は既に着替え終わっていて、出てくるのを拒んでいる。
そのことを穂乃果は知っている。
「海未ちゃん、私達しかいないんだから、出てきて大丈夫だよ」
「うっ、は、はいぃ……」
そう言って渋々試着室から出る海未。
ことりはチラッと見える衣装姿から目を輝かせていたが、穂乃果は今彼女がどういう状態かを知っている。
「え」
海未の全体像が見え、ことりは口を開けたまま固まる。
「ど、どうでしょうか?」
海未はそう言いながら、決めポーズ。
しかしそんな彼女はスカートの下からズボンを履いている。
まぁ何というか、残念である。
「何、この往生際の悪さは!さっきの海未ちゃんはどこにいったの!」
そう言ってズボンをつかむ穂乃果。
あんなにハキハキとチラシ配りをしていたのに、今ではこう。穂乃果がそう言うのも当たり前である。
「あの、その、鏡を見たら急に……」「えーい!」「いやぁあ!」
恥じらう海未に対し、知ったことかと言わんばかりにズボンを無理やり下ろす穂乃果。
時には思い切りも必要だという事だ。
「隠してどうするの!スカート履いてるのに」
「で、ですがぁ」
まだ恥ずかしがっている海未を、穂乃果は手を引っ張って鏡の前に連れていく。
そして海未に自分の姿を確認させると、
「ほら、海未ちゃん、一番似合ってるんじゃない?」
海未はそう言われ改めてしっかり鏡を確認する。
だが、そう言われてもやはり恥ずかしい。そんな海未に、
「どう、こうして並んで立っちゃえば恥ずかしくないんじゃない?」
そう言われ、前をまっすぐ見る。
すると不思議な事に、穂乃果とことり、2人と一緒に並ぶと確かに恥ずかしさは薄れていた。
「はい、確かにこうしていれば」
「よし、じゃあ最後に練習だ!」
着替え終わった3人。ついに本番直前、最後の練習が始まった。
穂乃果達が順調に準備を進める中、花陽は自分のロッカーをマジマジと見ていた。
そこにあるのは、前にコソコソと取ったライブ告知のチラシ。
見に行きたい、その気持ちは誰よりも強かった。
そのチラシを取ると、ロッカーを閉めた。と思いきや、
「シャー!」「あひぃ!?」
閉めたと同時に突然現れた凛。裏に隠れていたようだ。
「やったー、イタズラ成功!」
「やめてよー」
「ねぇねぇ、一緒に陸上部行こう!」
「え?陸上部?あ、いや、その」
スクールアイドルを見に行きたい、直ぐにはそう言えず、たじたじとしていると、腕を掴まれ、
「かよちん、少し運動してみたいって言ってたじゃん!」
確かにそうだけど、違う、違うんだよ凛ちゃん!
と言えず、引っ張られていく花陽。
「ダ、ダレカタスケテー!」
その声が誰かの耳に届く事はなく、花陽は連れて行かれるのであった。
一方同時刻、生徒会室。
そこには希と絵里がいた。
絵里は何か考え事をしているのか窓をじっと見つめている。
そんな彼女の気持ちの正体を希は知っていた。
「あの子達のこと、気になるん?」
「希……」
絵里の悩み事、それは穂乃果達の事。
努力していると、必死にやっていると、希からは聞いている。
彼女からの情報であるし、何よりあの時の穂乃果の言葉に嘘はない。そう思っているから、準備をしっかりしたのは事実であろう。
しかし、廃校の危機に瀕しているとはいえ、部活はそれなりにあるこの学校で、はたして無名の彼女達の元に何人の人が集まるのだろう。
最悪の結果、それは十分に起こりうる事なのである。
「うちは帰ろうかな」
「あ、うん、お疲れ様」
希がいなくなって、1人となった絵里。
私も、もう帰ろうか……そう思っても、何故か彼女達の事が気になって帰る事を拒んでしまう。
私は一体何がしたいの?
思わず自分に問いかける。
彼女達の行為は無謀、どうせ失敗してしまう。あの子達のダンス、歌じゃ、誰も惹きつけられない。活動の意味なんて、ない。
そうは思うのに、何故彼女達に期待してしまうのだろう?
矛盾した気持ち、頭の中で様々な思考がグルグルと巡る。
「……だったら、証明する」
校門前まで来ていた絵里だったが、急に歩く方向を変えた。
向かう場所は講堂。
彼女達の姿を撮影しネットで公開する。
そして証明する、彼女達の活動の無意味さを。
彼女達に、そして自分に分からせるために。
「スクールアイドル、μ'sのファーストライブ、間も無くです!
ご覧になられる方はお急ぎください!」
マイクを通した声はしっかりと穂乃果達の耳にも入る。
「いよいよだね」
ついにライブの時間が迫ってきた。
緊張、いやそれ以上に練習の成果を出せるこのワクワク。
久しぶりだ、と穂乃果は感じる一方、海未とことりは初ライブで、緊張のあまり震えている。
特に海未は顕著にそれが現れていた。
穂乃果は海未の手をしっかり握った。
「大丈夫、私達がついてるから」
その言葉は完全にとはいかないが、海未の緊張をほぐす。
1人ではなく、私達なら。そう考えれば不可能ではないと感じれた。
「こういう時、なんて言えば良いのかな?」
ことりはふと疑問に思った事を口にした。
それに対し穂乃果は笑顔で答える。
「こういう時はね、番号を言うんだよ、みんなで!」
1!
2!
3!
穂乃果から始まり、海未、ことりの順番で大きく番号を言う。
それが何だかおかしくって、3人は無邪気に笑い合う。
全ての不安や悩んでいた事が全て吹っ飛んでいき、楽しい気持ちだけが彼女達の心の中を満たしていた。
「μ'sのファーストライブ、最高のライブにしよう!」
「うん!」
「もちろんです!」
ライブが始まる音と共にゆっくりと大きな幕が上がる。
自分達は精一杯やってきた、だから……
ゆっくりと目を開く。
そして彼女達の瞳に映ったのは、誰もいない講堂の光景だった。
そこにあるのは静寂のみ。
物音1つしない広い空間の中に、ポツンと置かれる3人。
まるで魂が抜き取られたかのように、3人はただただ目の前の光景をじっと見つめるだけだった。
「頑張ったんだけど……」
分かってる、ヒデコがフミコがミカが頑張ってくれたこと。
感謝でいっぱいだ。だから、だから……そんなに泣きそうな顔しないで。
私達は精一杯やった。結果がどうであれ、精一杯やった。
やった、やったんだよ、私達。
「穂乃果ちゃん……」
「穂乃果……」
2人とも泣かないで。
一生懸命やったじゃない。
穂乃果は楽しかったよ。3人と一緒に練習できて、チラシ配りも頑張った。
重要なのは結果じゃない、その過程だって誰かが言ってたもん。
私達はとにかく頑張った。だから、私はそれで、それだけで……
「そりゃそうだ!世の中そんなに甘くない!」
……やっぱり辛いよ。
あんなに頑張った。毎日毎日筋肉痛になったし、不安でいっぱいだった。でもそれでも諦めないで今日までやりきった。
真姫ちゃんもそんな私達に力を貸してくれた。
でも、でもこうだなんて、私達の努力は、頑張った日々は全部、全部……
無駄なんかじゃないよ
「あ、あれ?ライブ、ライブは?」
「花陽ちゃん……」
私達は廃校を阻止するため、μ'sを作った。
最初はその為に頑張ろう、その気持ちだけだったけど、練習するうちに思った。
皆に見てもらいたい。私達のダンス、歌を通して笑顔になってもらいたいって。
そして、やってよかったって思いたいって。
「やろう。歌おう、全力で!」
「穂乃果?」
「だって、そのために今まで頑張ってきたんだから!」
私達が何のために頑張ってきたか。
その意味が今日、本当に分かった気がする。
「歌おう!」
だから、私達は歌う。全力で。
そしてこの思いを、皆に届けたい!
「穂乃果ちゃん、海未ちゃん!」
「えぇっ!」
音楽が流れ始める。
そして3人は全力で踊り、歌う。
そんな彼女達を花陽は目を輝かせながら、その姿をしっかりと目に焼き付ける。
遅れてやってきた凛はそのダンスを見て、可愛い、綺麗、彼女達から溢れ出す魅力に心を奪われる。
気になってやってきた真姫は、見るのを躊躇っていたが、結局彼女達の姿をその目で確認する。そして彼女もまた魅了される。
講堂内ではなく、外で聞いていた希は静かに思う。
今回は完敗ではあったが、同時にスタートの日でもあると。
席に隠れ見に来ていたにこは複雑な気持ちを持ちながらも、彼女達の踊り歌う姿を見て、まだまだと思いながらも、無意識に頑張れと応援する。
機材室にいた絵里は彼女達を見ながら思う。
まだダンスは揃っていない、どこからどう見ても素人のもの。
初めてのライブでこの結果、続けても意味がないとしか思えない。
そのはずなのに、何故か彼女達の姿から目を離せなかった。
そしてライブが終わる。
起こる拍手。人数は少ないが、1つ1つ思いの込められた拍手。
やった!やった!
穂乃果達は笑い合う。やり遂げた喜びを共有し合う。
その時穂乃果の目には、そこにいた全員の姿がしっかり見えた。
ヒデコ、フミコ、ミカ、花陽、凛、真姫、そしてあの時見えなかったはずのにこまでも。
そんな彼女達の元へ、絵里がやってきた。
「生徒会長……」
「どうするつもり?」
その質問の意味は言われなくても分かっていた。
だから、穂乃果はハッキリと言う。
「続けます」
「何故?これ以上続けても意味があるとは思えないけど」
「やりたいからです!」
確かにこの結果を見れば絵里の言う事ももっともだ。
でも、穂乃果の『やりたい』その気持ちは変わらなかった。
「今、私もっともっと歌いたい、踊りたいって思ってます。きっと海未ちゃんもことりちゃんも」
穂乃果の言葉に応えるかのように、笑顔で頷く2人。
言葉にしなくても気持ちは一緒だとお互いに分かっていた。
「こんな気持ち初めてだったんです。やってよかったって本気で思えたんです!
今はこの気持ちを信じたい。
このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない。
応援なんて全然もらえないかもしれない。
でも、一生懸命頑張って、私達がとにかく頑張って届けたい!
今、私達がここにいる、この思いを!
いつか…いつか、私達必ず!ここを満員にしてみせます!」
穂乃果が言った言葉は、確かにそこにいた全ての者達の耳にしっかりと届いた。
彼女が言ったその思いに嘘はない。
例えどんな苦難が来ても最後までやり遂げる、その気持ちは3人とも一緒だった。
「完敗からのスタート、か」
希はそう呟いて、その場から静かに去る。
μ's1stライブ。
穂乃果達、決意の日。
1stライブ。
結果は変わらなかったが、穂乃果達は改めてスタートをきることができた。
そしてそんな彼女達を見守るメンバー6人。
いよいよこれから9人集める為の行動を穂乃果達は始める。
ついに1stライブが終わりました。
自分がラブライブというものにハマったのはこの回でした。見たときの衝撃は凄く、今も鳥肌がたってしまいますね。
穂乃果ちゃんのセリフが大好きです。
さて、とりあえずここまで来て、皆さんに報告があります。
前書きでも書いた通り、活動報告に詳しく書いたのですが、簡潔にここで言うと投稿ペースが遅くなります。
誠に申し訳ございません。
次回はまきりんぱなが活躍していきます。
それでは、また次回。