高坂穂乃果は再びスタートする   作:ひまわりヒナ

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ついにライブ前日を迎えた穂乃果達。
気持ちが高まる中、1人悩む穂乃果。
しかし、時間が止まることはなく、ついにライブ当日となる。

今後の活動について、活動報告を投稿しましたので是非ご確認ください。




11話 1stライブ

「これで新入生歓迎会を終わります

 各部活とも体験入部を行っているので、興味があったらぜひ覗いてみてください」

 絵里により、ついに新入生歓迎会の終わりが告げられる。

 そしてこれからは、いよいよ体験入部の時間となる。

 

「HR終わったら直ぐに準備を始めよう」

「そうですね、他の部活より人数少ないですし」

「そう言えば、海未ちゃん、弓道部の方は?」

「弓道部はそれなりの人数がいますので、他の方に頼みました」

「そう、今更だけど、忙しいのにごめんね」

「大丈夫ですよ、それより成功させるためにもチラシ配り頑張りましょう」

 

 講堂から教室へ戻る道中、そう言って笑う彼女に、穂乃果も笑顔で、うん、と返した。

 しかし今の穂乃果にはその笑顔が辛かった。

 どんなに海未とことり、この2人とライブの成功を祈っても、あの事実が変わる事はないかもしれない。

 その心配が頭から離れる事はなかったからだ。

 

 そんな時、そっと両肩に手が置かれた。その手は海未とことりのものだった。

 

「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん」

「私達ならできます」

 

 どうやら笑っていたはずなのに、2人には心配事でいっぱいなのがバレてしまったようだった。

 見た目はまだ高校生でも、心はもう大人。

 私が2人を引っ張ってあげないといけない、支えないといけないはずなのに……そう思ってはいるはずなのに、支えてくれる2人の姿がとても嬉しかった。

 

「うん、頑張ろう!」

 

 穂乃果は精一杯の笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 HRも終わり、ついに迎えた放課後。

 タイムリミットは約2時間。できればその内の半分はリハーサルや準備をやりたいところだ。

 いざ、チラシ配りへ!そう思い教室を出ようとした、その時、

 

「穂乃果!」

 

 ヒデコに呼び止められた。

 3人は足を止める。

 

「私達も手伝うよ!」

「本当!?手伝ってくれるの!?」

「リハーサルとかしたいでしょ?」

 

 ヒデコに続くようにミカがそう言いながら、持っていたチラシのほとんどを半ば強引に奪い取る。

 

「チラシ配りなら任せて!」

「私達も学校はなくなるのはやだし……」

 

 そう言ってフミコも講堂の設備の準備を手伝うと言ってくれた。

 

「穂乃果達には上手くいって欲しいと思ってるから!」

 

 もちろん、彼女達が手伝ってくれる事も知っていた穂乃果。

 しかしその彼女達の気持ちは、いつ何時も嬉しい、いや嬉しすぎる。感極まった穂乃果は泣きながら、ありがとう、と感謝の気持ちを言った。その時彼女は、とにかくその気持ちが嬉しかった。

 

 

 

 

 3人のおかげで、スケジュールに余裕ができた彼女達。

 リハーサルなどに多く時間をかけるため、チラシ配りは予定の半分を配る事になり、必死に声を出していた。

 

「お願いします!

 この後午後4時から初ライブやります!」

「ぜひ来てください!」

 

 穂乃果とことりがチラシを配る一方で、「こちら吹奏楽部でーす!」近くでは他の部活も勧誘を行っていた。

 まだ穂乃果達は無名に等しい。

 生徒の集まる数の差はハッキリとしていた。

 

「他の部活に負けてられないよ!」

「うん!」

 

 そのような光景を目の当たりにしても、励まし合い、再び呼びかけを始める。

 そんな中、

 

「お願いします!午後4時からです!」

 

 海未は恥ずかしがっていたとは思えない程、チラシ配りを頑張っていた。

 その姿を見て2人の気持ちにさらに火がつき、チラシ配りは順調に進んでいった。

 

 

 

 

「3人とも、こっちは準備オーケーだよ!」

 

 そう言ってやってきたのはヒデコ。

 やった事があるとは聞いていたが、それにしても準備が早い。

 

「もう終わったのですか?」

「うん!それより早くそっちも準備しちゃいな、時間ギリギリまで音の調節とかしなきゃ」

「うん!分かった!」

 

 穂乃果はそう答えると、ことりと海未と共に待機室へと向かった。

 

 

 待機室に着くと、直ぐに着替え始める。

 またこの服を着る事ができる。それだけで、穂乃果のワクワクは止まらない。

 

「うわー!可愛い!どう?どう?」

「うん!すごく似合ってる!」

 

 童心に帰り、はしゃぐ穂乃果。

 先に着替え終わる、2人。一方でまだ出てこない海未。

 

「海未ちゃん、着替え終わった?」

「ま、まだです」

 

 ことりの言葉にまだと答える海未。

 しかし本当は既に着替え終わっていて、出てくるのを拒んでいる。

 そのことを穂乃果は知っている。

 

「海未ちゃん、私達しかいないんだから、出てきて大丈夫だよ」

「うっ、は、はいぃ……」

 

 そう言って渋々試着室から出る海未。

 ことりはチラッと見える衣装姿から目を輝かせていたが、穂乃果は今彼女がどういう状態かを知っている。

 

「え」

 

 海未の全体像が見え、ことりは口を開けたまま固まる。

 

「ど、どうでしょうか?」

 

 海未はそう言いながら、決めポーズ。

 しかしそんな彼女はスカートの下からズボンを履いている。

 まぁ何というか、残念である。

 

「何、この往生際の悪さは!さっきの海未ちゃんはどこにいったの!」

 

 そう言ってズボンをつかむ穂乃果。

 あんなにハキハキとチラシ配りをしていたのに、今ではこう。穂乃果がそう言うのも当たり前である。

 

「あの、その、鏡を見たら急に……」「えーい!」「いやぁあ!」

 

 恥じらう海未に対し、知ったことかと言わんばかりにズボンを無理やり下ろす穂乃果。

 時には思い切りも必要だという事だ。

 

「隠してどうするの!スカート履いてるのに」

「で、ですがぁ」

 

 まだ恥ずかしがっている海未を、穂乃果は手を引っ張って鏡の前に連れていく。

 そして海未に自分の姿を確認させると、

 

「ほら、海未ちゃん、一番似合ってるんじゃない?」

 

 海未はそう言われ改めてしっかり鏡を確認する。

 だが、そう言われてもやはり恥ずかしい。そんな海未に、

 

「どう、こうして並んで立っちゃえば恥ずかしくないんじゃない?」

 

 そう言われ、前をまっすぐ見る。

 すると不思議な事に、穂乃果とことり、2人と一緒に並ぶと確かに恥ずかしさは薄れていた。

 

「はい、確かにこうしていれば」

「よし、じゃあ最後に練習だ!」

 

 着替え終わった3人。ついに本番直前、最後の練習が始まった。

 

 

 

 

 穂乃果達が順調に準備を進める中、花陽は自分のロッカーをマジマジと見ていた。

 そこにあるのは、前にコソコソと取ったライブ告知のチラシ。

 見に行きたい、その気持ちは誰よりも強かった。

 

 そのチラシを取ると、ロッカーを閉めた。と思いきや、

 

「シャー!」「あひぃ!?」

 

 閉めたと同時に突然現れた凛。裏に隠れていたようだ。

 

「やったー、イタズラ成功!」

「やめてよー」

「ねぇねぇ、一緒に陸上部行こう!」

「え?陸上部?あ、いや、その」

 

 スクールアイドルを見に行きたい、直ぐにはそう言えず、たじたじとしていると、腕を掴まれ、

 

「かよちん、少し運動してみたいって言ってたじゃん!」

 

 確かにそうだけど、違う、違うんだよ凛ちゃん!

 と言えず、引っ張られていく花陽。

 

「ダ、ダレカタスケテー!」

 

 その声が誰かの耳に届く事はなく、花陽は連れて行かれるのであった。

 

 一方同時刻、生徒会室。

 そこには希と絵里がいた。

 絵里は何か考え事をしているのか窓をじっと見つめている。

 そんな彼女の気持ちの正体を希は知っていた。

 

「あの子達のこと、気になるん?」

「希……」

 

 絵里の悩み事、それは穂乃果達の事。

 努力していると、必死にやっていると、希からは聞いている。

 彼女からの情報であるし、何よりあの時の穂乃果の言葉に嘘はない。そう思っているから、準備をしっかりしたのは事実であろう。

 しかし、廃校の危機に瀕しているとはいえ、部活はそれなりにあるこの学校で、はたして無名の彼女達の元に何人の人が集まるのだろう。

 

 最悪の結果、それは十分に起こりうる事なのである。

 

「うちは帰ろうかな」

「あ、うん、お疲れ様」

 

 希がいなくなって、1人となった絵里。

 私も、もう帰ろうか……そう思っても、何故か彼女達の事が気になって帰る事を拒んでしまう。

 

 私は一体何がしたいの?

 

 思わず自分に問いかける。

 彼女達の行為は無謀、どうせ失敗してしまう。あの子達のダンス、歌じゃ、誰も惹きつけられない。活動の意味なんて、ない。

 そうは思うのに、何故彼女達に期待してしまうのだろう?

 矛盾した気持ち、頭の中で様々な思考がグルグルと巡る。

 

「……だったら、証明する」

 

 校門前まで来ていた絵里だったが、急に歩く方向を変えた。

 向かう場所は講堂。

 彼女達の姿を撮影しネットで公開する。

 そして証明する、彼女達の活動の無意味さを。

 

 彼女達に、そして自分に分からせるために。

 

 

 

 

 

「スクールアイドル、μ'sのファーストライブ、間も無くです!

 ご覧になられる方はお急ぎください!」

 

 マイクを通した声はしっかりと穂乃果達の耳にも入る。

 

「いよいよだね」

 

 ついにライブの時間が迫ってきた。

 緊張、いやそれ以上に練習の成果を出せるこのワクワク。

 久しぶりだ、と穂乃果は感じる一方、海未とことりは初ライブで、緊張のあまり震えている。

 特に海未は顕著にそれが現れていた。

 

 穂乃果は海未の手をしっかり握った。

 

「大丈夫、私達がついてるから」

 

 その言葉は完全にとはいかないが、海未の緊張をほぐす。

 1人ではなく、私達なら。そう考えれば不可能ではないと感じれた。

 

「こういう時、なんて言えば良いのかな?」

 

 ことりはふと疑問に思った事を口にした。

 それに対し穂乃果は笑顔で答える。

 

「こういう時はね、番号を言うんだよ、みんなで!」

 

 1!

 

 2!

 

 3!

 

 穂乃果から始まり、海未、ことりの順番で大きく番号を言う。

 それが何だかおかしくって、3人は無邪気に笑い合う。

 全ての不安や悩んでいた事が全て吹っ飛んでいき、楽しい気持ちだけが彼女達の心の中を満たしていた。

 

「μ'sのファーストライブ、最高のライブにしよう!」

「うん!」

「もちろんです!」

 

 ライブが始まる音と共にゆっくりと大きな幕が上がる。

 自分達は精一杯やってきた、だから……

 

 

 ゆっくりと目を開く。

 そして彼女達の瞳に映ったのは、誰もいない講堂の光景だった。

 

 

 そこにあるのは静寂のみ。

 物音1つしない広い空間の中に、ポツンと置かれる3人。

 まるで魂が抜き取られたかのように、3人はただただ目の前の光景をじっと見つめるだけだった。

 

「頑張ったんだけど……」

 

 分かってる、ヒデコがフミコがミカが頑張ってくれたこと。

 感謝でいっぱいだ。だから、だから……そんなに泣きそうな顔しないで。

 私達は精一杯やった。結果がどうであれ、精一杯やった。

 

 やった、やったんだよ、私達。

 

「穂乃果ちゃん……」

「穂乃果……」

 

 2人とも泣かないで。

 一生懸命やったじゃない。

 穂乃果は楽しかったよ。3人と一緒に練習できて、チラシ配りも頑張った。

 重要なのは結果じゃない、その過程だって誰かが言ってたもん。

 私達はとにかく頑張った。だから、私はそれで、それだけで……

 

「そりゃそうだ!世の中そんなに甘くない!」

 

 ……やっぱり辛いよ。

 あんなに頑張った。毎日毎日筋肉痛になったし、不安でいっぱいだった。でもそれでも諦めないで今日までやりきった。

 真姫ちゃんもそんな私達に力を貸してくれた。

 でも、でもこうだなんて、私達の努力は、頑張った日々は全部、全部……

 

 

 無駄なんかじゃないよ

 

 

「あ、あれ?ライブ、ライブは?」

「花陽ちゃん……」

 

 私達は廃校を阻止するため、μ'sを作った。

 最初はその為に頑張ろう、その気持ちだけだったけど、練習するうちに思った。

 

 皆に見てもらいたい。私達のダンス、歌を通して笑顔になってもらいたいって。

 そして、やってよかったって思いたいって。

 

「やろう。歌おう、全力で!」

「穂乃果?」

「だって、そのために今まで頑張ってきたんだから!」

 

 私達が何のために頑張ってきたか。

 その意味が今日、本当に分かった気がする。

 

「歌おう!」

 

 だから、私達は歌う。全力で。

 そしてこの思いを、皆に届けたい!

 

「穂乃果ちゃん、海未ちゃん!」

「えぇっ!」

 

 音楽が流れ始める。

 そして3人は全力で踊り、歌う。

 

 そんな彼女達を花陽は目を輝かせながら、その姿をしっかりと目に焼き付ける。

 

 遅れてやってきた凛はそのダンスを見て、可愛い、綺麗、彼女達から溢れ出す魅力に心を奪われる。

 

 気になってやってきた真姫は、見るのを躊躇っていたが、結局彼女達の姿をその目で確認する。そして彼女もまた魅了される。

 

 講堂内ではなく、外で聞いていた希は静かに思う。

 今回は完敗ではあったが、同時にスタートの日でもあると。

 

 席に隠れ見に来ていたにこは複雑な気持ちを持ちながらも、彼女達の踊り歌う姿を見て、まだまだと思いながらも、無意識に頑張れと応援する。

 

 機材室にいた絵里は彼女達を見ながら思う。

 まだダンスは揃っていない、どこからどう見ても素人のもの。

 初めてのライブでこの結果、続けても意味がないとしか思えない。

 そのはずなのに、何故か彼女達の姿から目を離せなかった。

 

 

 そしてライブが終わる。

 起こる拍手。人数は少ないが、1つ1つ思いの込められた拍手。

 やった!やった!

 穂乃果達は笑い合う。やり遂げた喜びを共有し合う。

 その時穂乃果の目には、そこにいた全員の姿がしっかり見えた。

 ヒデコ、フミコ、ミカ、花陽、凛、真姫、そしてあの時見えなかったはずのにこまでも。

 

 そんな彼女達の元へ、絵里がやってきた。

 

「生徒会長……」

「どうするつもり?」

 

 その質問の意味は言われなくても分かっていた。

 だから、穂乃果はハッキリと言う。

 

「続けます」

「何故?これ以上続けても意味があるとは思えないけど」

「やりたいからです!」

 

 確かにこの結果を見れば絵里の言う事ももっともだ。

 でも、穂乃果の『やりたい』その気持ちは変わらなかった。

 

「今、私もっともっと歌いたい、踊りたいって思ってます。きっと海未ちゃんもことりちゃんも」

 

 穂乃果の言葉に応えるかのように、笑顔で頷く2人。

 言葉にしなくても気持ちは一緒だとお互いに分かっていた。

 

「こんな気持ち初めてだったんです。やってよかったって本気で思えたんです!

 今はこの気持ちを信じたい。

 このまま誰も見向きもしてくれないかもしれない。

 応援なんて全然もらえないかもしれない。

 でも、一生懸命頑張って、私達がとにかく頑張って届けたい!

 今、私達がここにいる、この思いを!

 

 いつか…いつか、私達必ず!ここを満員にしてみせます!」

 

 穂乃果が言った言葉は、確かにそこにいた全ての者達の耳にしっかりと届いた。

 彼女が言ったその思いに嘘はない。

 例えどんな苦難が来ても最後までやり遂げる、その気持ちは3人とも一緒だった。

 

「完敗からのスタート、か」

 

 希はそう呟いて、その場から静かに去る。

 

 μ's1stライブ。

 穂乃果達、決意の日。

 

 

 

 

 




1stライブ。
結果は変わらなかったが、穂乃果達は改めてスタートをきることができた。
そしてそんな彼女達を見守るメンバー6人。
いよいよこれから9人集める為の行動を穂乃果達は始める。

ついに1stライブが終わりました。
自分がラブライブというものにハマったのはこの回でした。見たときの衝撃は凄く、今も鳥肌がたってしまいますね。
穂乃果ちゃんのセリフが大好きです。

さて、とりあえずここまで来て、皆さんに報告があります。
前書きでも書いた通り、活動報告に詳しく書いたのですが、簡潔にここで言うと投稿ペースが遅くなります。
誠に申し訳ございません。

次回はまきりんぱなが活躍していきます。
それでは、また次回。
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