「どうしよう……どうしようー!?」
本当かどうかは分からないが、1番有力なのはタイムスリップ。
そんな衝撃の事実に穂乃果は頭を悩ませていた。
「お姉ちゃん、朝からうるさいよ」
そんな彼女の嘆きが聞こえた雪穂が洗面所に現れた。
彼女の姿も最近の記憶にある大人びた姿から、随分昔の姿に変わっている。ほぼタイムスリップに間違いない、そう穂乃果は確信した。
「だって、だってタ……」
「た?」
穂乃果は口を紡いだ。
今ここで彼女にタイムスリップなんて言ってどうなる?
そんな現実的でない事……誰が信じてくれる?
言いたい、相談したい、けれど言っても馬鹿にされるだけかもしれない。恐怖と孤独が彼女に言い出す勇気を与えなかった。
「どうしたの?お姉ちゃん」
「え?あ、ううん!何でもない!」
穂乃果に対し違和感を感じはしたが、追求する事はなかった。
雪穂はもう学校に行くからと言って、その場を離れようとする。その時ふとある質問が思い浮かび、慌てて質問する。
「ねぇ雪穂。私何年生だっけ?」
「頭でも打ったの?もう高校2年生でしょ」
「……あはは、だよね〜ごめん、ごめん」
「? それよりお姉ちゃんも早く準備しなよ、また2人待たせちゃうよ」
疑問を抱いたものの雪穂は少し時間が押していたため、追求しないまま自分の部屋に戻った。
そして一方穂乃果は1人、ある事実に辿り着いた。
私のあの頃に戻りたい気持ちが叶ってしまったのだと。
顔を洗って、深呼吸。
どうしようか、という疑問ばかり。しかし解決策なんて考えてすぐに浮かび上がるものではない。
彼女はとりあえず自分の部屋へと戻った。その時だった。
「電話?」
着信音がちょうどなり始めた。
慌てて携帯を探し、電話をかけてきた人は誰だろうかと確認する。そこには園田海未と書かれていた。急いで電話に出る。
「もしも『穂乃果!また寝坊ですか!』わわっ!ごめん、海未ちゃん!」
つい反射的に謝る穂乃果。実際は寝坊どころの騒ぎではないのに。
『だいたい穂乃果はいつもいつも『ごめん、ちょっと変わるね』あ、ことり!』
『穂乃果ちゃん、もう時間だよ。今起きたの?』
「え、あ、うん。ごめんね、今すぐ準備する!」
『分かった。待ってるね!』
「う、うん、それじゃ」
電話を切る。今ある情報から考えれば、もう登校時間なのだろう。そして2人はいつもの神社で待ってくれているのだろう。
そらぐらいの予想はつくが、正直それどころじゃないというのが事実だ。
しかし、準備すると言った以上行かないといけない。それにこちらは待たせてしまっているのだから尚更。
とりあえず彼女は急いで制服に着替え、今日の日にちを確認した。
「4月5日……確か始業式の日」
記憶通りであれば今日は始業式。高校2年に正式に上がる日だ。
まだ何も解決してはいないが、2人を待たせるわけにはいかない。
「お、お母さん、行って……くるね」
「行ってらっしゃい」
笑顔と共に行ってらっしゃいの言葉。懐かしいなぁ、としみじみと思いながら、神社へと急いだ。
「ごめん!2人とも!」
「あ、穂乃果ちゃん、おはよう」
「穂乃果!今日は始業式なのですよ!特に今日は遅れてはいけないのに……「本当にごめん!気をつけるようにする」え?あ、はい。分かってくれれば良いのです」
いつも以上に素直な穂乃果に海未は少し驚きながらも、あれこれ言うのをやめる。
元々素直で良い子であるのは知っているが、今日は何と言ったらいいか分からないが、少し雰囲気が違うような気がする2人。
とは言え、その微妙な差異をどう言って良いか分からなかったので、とりあえず学校へ急ぐことにした。
「そう言えば穂乃果。春休みの宿題は終わりましたか?」
「え?えっとー」
そう言えば春休みには宿題が出ていたな、と思い出しながら、宿題をやったかどうか思い出す。
数年前の話であるが、僅かに思い出すことができた。そう言えば自分は宿題を前日にまとめてやるタイプであったと。
「終わった……と思う」
「本当ですか?どうせ今回も昨日辺りにまとめてやったんでしょう?」
「うっ、さすが海未ちゃん」
「まぁまぁ海未ちゃん。やらないよりかは全然良いよ」
「そうですけど、早くやった方が良いのは事実。毎度言っていますが、今年の夏はしっかりと計画を立ててやりなさい、穂乃果!」
「は、はーい」
何年経っても変わらない説教癖。
だが最近会っていなかったため、それすらも懐かしく、不思議と笑みがこぼれる。
怒られているのに何故笑っているのだろう?とふたりは少し奇妙にも感じながらも言及することはなかった。
3人は適当に駄弁り、学校を目指した。
「クラスはどうなっているでしょうか?」
「うーんと、あ、同じクラスだよ!やったね、海未ちゃん!穂乃果ちゃん!」
まず最初に行われるのが、掲示板にデカデカと掲載されるクラス分け発表。
ことり、海未、穂乃果は同じクラス。穂乃果はもちろんのこと、そんな事は元から分かっていた。
「やりましたね、穂乃果……って、穂乃果?」
「え?あ、うん!そうだね、同じクラスだ!」
穂乃果は久々のこの学校に対し、懐かしさを感じ、ボーッとしていた。誰が見ても心配するのは当たり前であった。
「あの、穂乃果?どうかしたのですか?」
「え?何が?」
「今日の穂乃果ちゃん、ちょっと変だよ?体調でも悪いの?」
「もし何かあるのでしたら、相談してください、穂乃果」
私、タイムスリップしちゃったんだよ!
そんな事、言えるはずがない。
いくら2人とは言え、さすがにここまでは信じてくれないだろう。少なくともすぐには。
第一証拠も何もない。これから起きる事を言ってしまえば証拠になるかもしれないが、これからこんな事が起きるんだよ!と言ってしまって良いものなのかすら分からない。
言いたいのはもちろんだ。2人に隠し事をしたくないのももちろんだ。けれど今、彼女が言い出だすことなどできなかった。
「実は……昨日宿題をするために夜更かししちゃって、眠いんだ〜」
「はぁ、もう、全く。だから計画的にと!」
「あはは、次は気をつけまーす!」
上手くごまかせただろう。もし言うにしても、今でなくていい。
穂乃果はそう思いながら、2人と共に講堂へと向かった。次に始業式が行われるからだ。
「次は理事長の挨拶です」
始業式が始まってからも、穂乃果はこれからどうしようかと頭を悩ませ、難しい顔をしていた。
私は元の時代に戻れるのか?それともこのまま過ごすことになるのだろうか?未来を考えれば考える程頭が痛くなる。
そんな時ふと思い出す。そう言えば今、私は高校2年生であった、と。そして再び脳裏によぎる、『あの頃に戻れたら』という自分の願望。
あの頃……μ'sとして活動していたあの頃
もしかして。
穂乃果は急に起きたタイムトラベルの事に気を取られ、すっかり忘れていたあの衝撃の事実を思い出す。
そしてそれは直ぐに知らされることとなった。
「今日は皆さんにお伝えしなければならない事があります」
理事長からの言葉、それは穂乃果にとってこれからの生活を決める一言となる。
いかがでしたか?
不定期の更新となりますが、頑張っていきます。
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