高坂穂乃果は再びスタートする   作:ひまわりヒナ

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自分の中に押し留めた悩みは、いつも通りに過ごしていたはずの日常に、行動として影響が現れていた。
そしてそれに気づかされた2人は、互いに素直な気持ちをぶつけ合う。
それを聞いた2人は瞼を閉じ、ついに明日を迎えるのであった。

いよいよやってきたこの日。
穂乃果ちゃんとにこちゃんは本当の意味で出会う時がやってきました。
にこちゃん編、後編突入です。

それではどうぞ


21話 始まりはここから

 いつもの通り道、そしていつもの境内へと続く階段。

 それを目の前にした時、足が止まった。昨日の記憶が甦っていた。

 

 本当にこのまま足を進めて良いのだろうか?

 

 ……いや、迷う必要はない。進まなくちゃ

 

 穂乃果は前へと進み出す。そして新しいμ'sの物語が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 21話 始まりはここから

 

 

 

 

 

「ごめんごめん!待った?」

「ううん、私も今来たところ!海未ちゃんは弓道の朝練があるから来れないって」

「そっかー 「ん?」 どうしたのことりちゃん?」

 

 境内に辿り着いた穂乃果。先に準備運動をして待っていたことりと話していると、急に後ろに振り返った。

 急にどうしたのだろう?普通なら誰もがそう思うだろうが、穂乃果は違う。彼女の行動した理由を既に知っていた。

 ここで聞かないのは不自然である。なので穂乃果はどうしたのと問いを投げる。

 

「穂乃果ちゃん、さっき後ろに誰かいなかった?」

 

 ことりがじっと見つめる視線の先に人影は見当たらない。しかしそこに何者かがいる、その事を知っている穂乃果は「いなかったと思うけどなー」と少し棒読みになりながらも、確認してくると言ってその場を離れる。

 そして角を左に曲がれば……

 

(あれ、いない)

 

 てっきりそこで待ってくれているものかと思っていたが、影も形もなかった。

 おかしいな、そう思いつつもう1つの角を曲がろうとした時だった。

 

「うわっ!」

 

 グイッと手を引っ張られ、裏へと連れ込まれた場所にいたのは、やはり矢澤にこの姿だった。

 

「これからは、しばらくの間にこ先輩。少しの間だったけど、ありがとう穂乃果」

 

 黒いサングラスをかけたていたにこ。

 そのサングラスの奥にある僅かに見えた瞳は、優しくて笑っていたような気がした。

 

「うひゃあ〜!」

 

 気がつけば穂乃果はデコピンをくらって、地面に倒れ込んでいた。

 心配になって後を追いかけてきたことりは地面に倒れている穂乃果の姿を見て、急いで駆け寄った。

 

「穂乃果ちゃん!?大丈夫!?」

 

 そんな時、目の前に1人の人物が現れた。

 ことりは意識が全てそっちに行ってしまうほどの、衝撃をその時確かに受け驚愕していた。

 それもそのはずだ、輝く太陽をバックに厚いコート、黒いサングラス、マスクを付けた人物が現れれば……

 

「あんた達……」

「、ぁっ!?」

「とっとと解散しなさい!」

 

 そう言って颯爽とその場から離れていく彼女。

 何も知らないことりはただ1つの疑問しか頭に残らない。

 

「今の、誰?」

 

 衝撃的な幕開けである。

 

 

 

 

「それでは新たに3人のメンバーを含めた新生スクールアイドルμ'sの練習を始めたいと思います!」

「もう、何回言っているのですか穂乃果。もう2週間ですよ」

「えへへ、だって嬉しいんだもん。皆が集まってくれて!」

 

 そう言って笑う穂乃果。

 まだ完全ではないが1年生の3人が集まってくれた事が嬉しい事に変わりはない。

 あの時とは違った嬉しさが彼女には存在した。

 

「それでは恒例の、1!」

「2!」「3!」「4!」「5!」「6!」

「くぅう〜!あぁ6人だよ6人!本当に嬉しいな!」

「毎日同じ事で感動できるなんて羨ましいにゃ〜」

「だって、私賑やかなのだーい好きだもん!皆と一緒に居られるのはもっともーっと大好き!」

 

 身体を大きく伸ばして、無意識にその嬉しさを表現する穂乃果。

 そんな彼女を見て他の5人も笑みがこぼれる中、ふとことりが今朝の事を思い出した。

 

「でもしっかりとやらないとね、じゃないと今朝みたいに言われちゃうよ」

「あぁそう言えば、『解散しなさい!』って言われたと」

「う、うん、そーなんだよねー」

 

 そう言って少し引きつった笑顔を見せる穂乃果。

 他の人から見れば「解散しなさい」という言葉を受けての苦笑いに見えたであろうが、実際はにこの話題になった時自分が何かボロを出してしまわないか、それを意識したため顔が引きつってしまったのだ。

 

「でもそれって凛達、それだけ有名になったって事だよね!」

 

 凛の言う事も間違っていない、が、事実としてはこの学校の生徒の1人に厳しい言葉をもらったというものである。

 

「それより練習、どんどん時間なくなるわよ」

 

 真姫の言葉通りである。時間は多くない、有名になる為にも練習をしなければいけないという事実にかわりはないのだ。

 

「お、真姫ちゃんやる気だにゃ!」

「べ、別に私はそんなんじゃ」

「またまた〜お昼休み見たよーこっそり1人で頑張ってるの!」

「そ、それはちがっ!この前のステップを変えようと思ってたの!あまりにも酷かったから……「そうですか、あのステップ、わ、私が考えたのですが」 ヴェエ!」

「気にすることないにゃー真姫ちゃんのは照れ隠しだにゃ〜」

 

 ……まぁ重く捉えるのは自分だけでいいだろう、やっぱり皆といるのは楽しい。

 そう思いながらいつもの練習場所、屋上へと向かうが、ある事をふと思い出す。

 そう言えば梅雨に入ったはずじゃ、そう思って先行していた凛の後ろの窓を見た時だった。

 

『あぁ』

「にゃ? あっ」

 

 全員がため息に近い声を漏らすと共に、凛が後ろを振り向くとそこには大雨で濡れる窓があった。

 激しい雨の音が、耳をすませば確かに聞こえていた。

 とりあえずもう少しよく状況を見るため、屋上の扉まで向かうが、何となく予想はついている。

 

「土砂降り〜」

「梅雨入りしたって言ってたもんね」

「うん……でもでも、降水確率60%だったのに 「十分降ってもおかしくない確率じゃない」 そうだけど昨日も一昨日も60%だったのに降ってなかったんだもん」

 

 今更にこと出会った時が雨だった事を思い出した穂乃果。それに真姫の言っていることも理解できる。

 しかしこれから練習だ!という気持ちだったので、このように雨になってしまって悲しい気持ちであるのは事実。ふてくされて頬を膨らます。

 

「あ、でも少し弱くなってきたよ」「本当!?」

 

 ことりの言葉に真っ先に反応し、外を見る穂乃果。

 確かに先程の土砂降りが嘘のように弱くなっているのが確認でき、すぐさま扉を開ける。

 

「やっぱり確率だよ!良かった〜」

「これぐらいなら練習できそうにゃ!」

「ですが下が濡れていますし、またいつ降り出すかも……「大丈夫にゃ!」 あ!」

 

 動きたい、その気持ちが特に強かった穂乃果と凛は一気にその場から屋上を駆け巡った。

 

「大丈夫大丈夫!練習できるよ!」

 

 穂乃果は未だ建物の中にいる他4人に声をかけるが、何か嫌な予感がしているのか動こうとせず苦笑い。

 そんな一方でテンションがどんどん上がっている凛は、「う〜テンション上がるにゃー!」と声をあげながら、思わず拍手を送りたくなるアクロバティックな演技をして見せた。

 こんなに動けるんだよ!大丈夫、おいでよ!と言わんばかりの行動、穂乃果もこれだったら大丈夫などと手招きをしていると、

 

「にゃっ!?」「うそっ!?」

 

 決めポーズを決める凛、そして笑顔で4人を待つ穂乃果の元に大量の雨が襲いかかった。

 とりあえず穂乃果は笑って「おー!かっこいい!」と今の気持ちを振り払う気持ちで呆然としたまま拍手をしていた。

 

「私帰る」「わ、私も今日は……」

 

 真姫に続いて花陽も今日は練習できないと判断しそう告げる。

 誰が見てもこの状況じゃ難しいというのは、一目瞭然。ことりも今日はやめにしようと提案した。

 

「えー!皆帰っちゃうの?」

「それじゃあ凛達が馬鹿みたいだじゃん!」「馬鹿なんです」「「えー!?」」

 

 ひょっこり戻ってきた2人を一言で一切り、海未の思考は今の問題へと全て向かう。

 今後もこのような天気が続いた場合に何もできない、となるとただでさえ時間がない彼女達にとって、大きな痛手を負う事になるのは明らかな事である。

 体育館などは?と質問した花陽。海未の返答はもちろん、体育館、講堂などは調査済みで既に他の部活が使ってしまっていたという事であった。

 

「んーじゃあそういう事も含めて、少し話そっか」

 

 そう提案したのは穂乃果。

 今の問題はすぐに解決できるものではないので、改めて話の場を設けるべきであろう。という意見ではあるが、本人としてはそこに向かわないといけないからという気持ちが大きい。

 何にせよとりあえずの目標が決まったμ'sは、帰ろうとしていた真姫達ももちろん誘った上で、穂乃果が指定したバーガーショップへと向かう事にした。

 

 彼女と接触するため、という目標も存在しながら……

 

 

 

 

 

 そんな彼女達の様子を、物陰に隠れ見守る少女が1人。

 近づいてくる足音に気付き、僅かに微笑んで言う。

 

「どうやらあの子ら、やめる気は無いみたいやで、にこっち」

 

 足を止めるにこ。

 少し険しい表情で希を見つめる。

 

「そうみたいね」

「どうするん?このまま何もしないわけではないんやろ?いや、もう……」

 

 そう言って、寄りかかっていた壁から離れ、その場からにこのいる方へと歩き出す。

 そして彼女の横を通りかかった時、静かに呟く。

 

「力、貸してあげてもええんやない」

 

 希はそのまま後ろへ後ろへと歩いていく。

 そんな彼女の後ろ姿を振り返って見るにこ、希は一体……、彼女への疑問が頭の中を埋め尽くしていた。

 

「考えてもしょうがないか」

 

 直接的に聞くことは難しく、情報も少ない今、やるべき事をやるという選択肢しか彼女にはない。

 再び前を向き、μ'sの後を追うべく足を進め始めた。

 

 

 

 

 

 

 




ついに穂乃果とにこが接触し、μ'sの中に彼女の存在が知れ渡った。
しかし彼女が何者なのか、という所までは穂乃果以外分からない。それ故、いつも通りに練習に力を注ぐ。
そんな彼女達を襲ったのは激しい雨、練習する事は明らかに不可能な状況で今後これが続く可能性を考えたら彼女達は、ハンバーガーショップで会議を開くことにする。
一方でそんな彼女達追おうとするにこの前には、謎多き希の姿。
彼女の手を貸してあげたらという提案に、あえて返答はせず、今は彼女達を追うことを優先し歩き出した。

現状まだ経験通り動いていますが、2人の中にはまだこのまま上手くいくか分からない不安、そして接触したことでボロが出ないかという不安も出てきました。
今後も上手くいけるのか、それは2人の行動次第です。

それではまた次回。
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