高坂穂乃果は再びスタートする   作:ひまわりヒナ

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練習に燃えるμ'sを襲ったのは激しい雨、季節は彼女達に大きな課題を与える。
それを解決するために、近くのハンバーガーショップで会議を行うことにする彼女達。
そんな彼女達の後を追うのは、アイドル研究部部長、矢澤にこであった。


今回から文章表現に変化を加えております。
今までは場面転換を長めの空白で行なっていたのですが、その場合『表現としての空白』or『場面転換としての空白』の判断ができないと考え、今後は【––▽––▽––▽––】このような記号で場面転換を表現していきます。
記号を使って良いのか、調べ、迷ったのですが、文章表現としての空白を大事にしたいと考え、このような決断に至りました。
しばらくはこの表現を活用し、今後も使っていくかどうか判断していきたいと思います。
尚、今まで投稿した話数については、この表現を今後も使用と判断、かつ私事が落ち着きましたら修正します。

長々と失礼しました。
それではどうぞ。



22話 初めましてにこ先輩

「穂乃果、どうしたんですか?あなたらしくもない」

「え?あ、ううん!いやぁ、練習場所どうしようかなって考え込んじゃって、あはは〜」

 

 学校から近いところにあるバーガーショップの店内。

 μ's6人は練習場所などについて考えるために、学校から場所を変えた。まだハンバーガーなどを待っている者や、呼ばれて取りに行っている者がいる中、海未の質問に少し焦りながら笑顔で答える穂乃果。そんな彼女の前にはハンバーガーやポテトが置かれていた。

 普段の彼女であれば、パクパクとポテトを口に運んでいるであろう。それを知っているからこそ、海未も気になって質問したのである。

 けれど全く彼女の目の前にある食べ物達は姿を消さない。

 

 それもそのはずで……

 

(隣ににこちゃんがいるから気になって食べれない!)

 

 障壁の向こう1mすらない距離に、にこが存在するからであった。

 

 

 

 ––––第22話 初めまして、にこ先輩

 

 

 

 

「あ、雨なんで止まないのかなー」

 

 少し棒読みになりながらも、普段通りにする為話題を振りながらポテトを口へと運んでいく穂乃果。

 

「私に言われても……」

「そうだよねぇ」

 

 とりあえずにこの事は頭の片隅に置いておくことにして、自分が出した話題、つまり天気の問題は無視できない話題である。

 もっとも後々解決できる事は分かっているのだが、他の子達の心配はそこに集中している為、自分もそれに合わせ、とりあえず何かしらの対策案を出して置く必要があると考えている。

 

 さて、どうしたものか……「あー!うんちうんち!」って、何事!?

 

 見事な場外ホームラン。遠く彼方へ吹っ飛ばされた穂乃果の思考回路。

 さらには「うるさぁい!」というにこの声で、トドメを刺される。

 

「ナンダローナー」

 

 明らかなカタコト言葉、隣を見る穂乃果。

 まさかとは思ったが、やはりあの時と同じ格好である。何故そんなに目立つものを!とツッコミを入れてやりたい所であるが、その気持ちは抑えなければならない。

 

「穂乃果ちゃーん、さっき予報見たら明日も雨だって〜」

 

 ちょうど良いタイミングで、ことりと花陽が戻ってきた。

 さらにはことりが先程の話題に戻してくれたおかげで、全員の意識が再び天気の話題へと向かう。

 

「んー、明日もまた雨か……」

 

 残念だなぁ、という暗い気持ちを払拭するかのようにポテトを1つ、また1つ、と口に運ぼうとする穂乃果。しかし違和感を覚える。

 あれ、もうない?

 そんな馬鹿な、まだあったはず。そう思ってポテトの箱をひっくり返してみるが、落ちてくるのは小さなポテトの破片と塩だけ。

 

「海未ちゃん、私の分食べたでしょ」

「な、そんなわけありません、自分で食べた分も忘れたのですか!」

 

 全く……と少し怒った表情の海未がポテトに手を伸ばすと、「あれ?」今度は海未のポテトも消えてしまっていた。

 

「穂乃果こそ!」

「私は食べてないよ!」

「そんなことより練習場所でしょう」

 

 2人の言い合いに呆れながら声を出したのは真姫であった。

 確かに今はポテトよりその問題の方が重要である、この時ポテトはどうしたんだっけなーと思い出せない穂乃果だったが、とりあえずそれは置いておいて話し合いを進めることにした。

 

「他の場所は借りられないの?例えば……教室とか」

「もちろん確認したんだけど、正式な部活じゃないと認められないって」

 

 μ'sを結成して、まず取り掛かったのは場所の問題であった。故に一通り思い浮かぶ場所は全て先生に使って良いかどうかを聞き終えている。今使っている屋上を除けば、それ以外の場所を使う場合には正式な部活として申請しなければならないのだ。

 

「そうなんだよねー。人数が5人いれば正式な部活として申請できるんだけど……」

 

 ため息混じりに呟いた穂乃果の言葉に、全員がキョトンとした表情をする。

 どうしたんだろう、と思う穂乃果に視線は集まり、何か変な事でも言っただろうかと穂乃果は自分の言葉を必死に思い出そうとするが、その答えは花陽の一言によってすぐ知らされた。

 

「5人なら、もう」

 

 時が止まったように全員固まる。

 そしてしばし経って、穂乃果はハッとした表情で立ち上がった。

 

「そうだ、忘れてた!部活申請しちゃえば良いんじゃん!」

「忘れてたんかーい!」

 

 刹那、穂乃果の表情が青冷める。

 メンバー全員の視線が立ち上がった穂乃果……ではなく、彼女の真隣、障壁の向こう側から顔を出している人物に向かう。

 とりあえず大きな声で言いたい、なんでにこちゃんがツッコミ入れているの!と。しかしその出かかった言葉を必死に抑える。

 

「イ、イマノイッタイナンダローナー!」

 

 少し声が裏返りながらも、他の子ににこの姿を確認させないように真っ先に上半身前に出して壁を作る。

 にこもその間に急いで、机に伏せるように体を縮こませた。

 

【にこちゃん気をつけて!】

【あんただって忘れてたってどういう事よ!?】

【そ、それは本当に忘れちゃって……って、あ、思い出した!ポテト食べたのにこちゃんでしょ!】

【今言うことじゃないでしょう!?】

 

 少し顔を上げたにこと、顔を少し出した穂乃果との僅か数秒の口パク、だが何故か通じた2人。

 

「どうしたの、穂乃果ちゃん」

「え、あ、い、いや、何か違うことだったみたい!スイマセーン」

 

 ことりの質問に別の事だったらしいと、苦しい言い訳をして何とか逃れようとする穂乃果。

「それよりも忘れてたってどういうこと?」と、そんな時ちょうど良く真姫が質問してくれたので、座り直して話題をそっちに改めてずらすことにした。

 

「いやぁ、メンバー集まったりとか色々あって安心してて〜」

「この人達ダメかも」

 

 確かに色々あったし大変な状況ではある彼女だが、後でどうにかなるという事ばかりが頭にあって、部活申請という重要事項を忘れてしまっていたのは大きなミスである。真姫には面目無いといった表情だ。

 とは言え、その次どうすべきかという大きなものが見つかった事は良いことである。

 一先ずは……と安心した所為か大きく空いた胃の中を埋めようと、ハンバーガーに手を伸ばした時である。

 

『あ……』

 

 全員が揃って、穂乃果のハンバーガーに視線を向けた。

 いや、正確には彼女のハンバーガーを掴んでいた1つの手に視線を向けていた。

 その空気に気付いたのだろう。

 障壁の向こう側へと向かおうとするハンバーガーは一時停止し、そして再び元の位置へと戻される。そのハンバーガーを掴んでいた手もゆっくりと向こう側へと消えていく。

 そしてその手の主は、その場から静かに忍び足で離れ……

 

 ガシッ!

「げっ!」

「ちょっと!」

 

 そんな訳にはいかない!と言わんばかりの速さで動き、主犯の腕を掴む穂乃果。

 

「言ったでしょ!解散しなさいって!」

「か、解散!?」

 

 解散という言葉を聞いて驚く花陽だが穂乃果は違う。

 もっとも主犯はにこであるということなど、とっくのとうに知ってはいるので重要ではないし、彼女がそのような言葉を言うことも何となく覚えていたから驚く程の事でもなかった。

 そう、今彼女にとって1番重要なのは、

 

「食べたポテト返してよー!」

「そっち!?」

 

 花陽の鋭いツッコミが放たれる。

 にこもそっちかい!と、思わずいつもの調子でツッコミを入れようとする所だったが何とか抑え……

「あーん」

「違うよ!買って返してよ!」

 ……たかと思ったが、ほら取ってみなさいと言わんばかりに口を開いて挑発に回るにこ。それに対し彼女のほっぺたをつねって、文句を言う。

 一連の流れは昔とほぼ同じなのだが、これは故意に行ったのではなく互いに自然とそう言った反応になっていたのである。仲が良いようにも見える光景、しかし他から見れば穂乃果が相手にしているのは謎の人物。

 他の5人はクエスチョンマークを浮かべ、その光景をポカンと見ているだけであった。

 

「あんた達ダンスも歌もなってない!プロ意識が足りないわ!」

「ポテトー!」

「いい加減ポテトから離れなさいよ!」

「ハッ、確かに」

 

 穂乃果の手を振り払い、ポテトからは離れるように言われた事でようやく我を取り戻した穂乃果。

 何だか緊張した雰囲気が流れていないので、これではいけないと真面目な顔になってにこと対立しようとする彼女だが、別に何ら雰囲気が変わる事はなく、相変わらず他5人はキョトンとした表情である。

 とにかくようやく話を進めそうなので、にこは話を続けた。

 

「いい?あんた達のやっている事はアイドルへの冒涜、恥よ! とっとと、やめることね」

 

 ふっ。

 

 にこはそう言うと素早くその場から雨が弱くなった外へと走り出す。

 急いで、近くにあった窓から彼女の後を目で追いかける6人。彼女の姿が見えなくなると、慌ただしい空気が段々と静まり返っていった。

 

「い、今のは一体?」

 

 全員の今の気持ちを花陽が口にする。

 

「解散……もしかして朝の?」

 

 服装は全く違えど、一度近くで見ているかつ強烈なキャラであったため容姿に何となく似ている点を感じたことりはそう口にした。

 

「う、うん、多分ね。とりあえず、あれだね!食べ終わったら、また学校に戻って部活申請をしちゃおう。まだ時間はあるし」

 

 これ以上何か言及されればボロが出る可能性は高まる。

 再び部活申請の話へと切り替え、彼女の問題は放置しておく流れへと上手く乗せることができた穂乃果。一先ず乗り切ったことで安心して空いたお腹を埋めるべく、席に着くのであった。

 

 ––▽––▽––▽––

 

 そして食べ終わった彼女達の次の舞台は学校、生徒会室。

 部活申請は先生ではなく生徒会を通す決まりとなっているからである。

 そこにはいつもの2人、絵里と希の姿があった。

 

「部活申請書です」

 

 μ'sの代表としてやってきた2年生メンバー。穂乃果はμ'sメンバー6人の名前が書かれた部活申請書を絵里に渡した。

 彼女はその書類に目を通すとそっと机の上に置いた。

 何とも言えない表情、けれど静かな空間が感じさせる張り詰めた空気。とてもその申請書が許可される雰囲気ではない事をことりと海未は感じ取っていた。

 しかし2人よりも先にそれを感じ取っていた、いや知っていたのは穂乃果。

 これから絵里の口から語れる事は彼女にとって既知のものなのである。

 

「この学校にはアイドル研究部という部が存在します」

「アイドル研究部、ですか?」

 

 初めての情報に思わず聞き返す海未。

 絵里からの返答は既に、この学校にはアイドルに関する部が存在しているという情報だった。

 

「まぁ、今部員は1人やけど」

「でもこの前部活設立には5人以上って……」

「設立の時には最低5人必要、でもその後は何人でも良い決まりやから」

 

 ことりの質問はあくまでも設立当初の問題であり、それ以降人数は問題視しない。それがこの学校のルールなのである。

 

「生徒の数が限られている今、いたずらに部を増やす事はしたくないんです。アイドル研究部がある以上、あなた達の申請を受けるわけにはいきません」

 

 分かっていた返答であった。

 しかしだからと言って希望がないわけではない。

 

「これで話しは終わり––––

「に、なりたくなければ、ちゃんとアイドル研究部と話をつけてくるんやな」

  っ!希!」

「2つの部が1つになるんやったら、問題はないやろ?」

 

 そう言って希は絵里に微笑む。

 彼女の言っている通り、部を増やしたくないと言うのなら、部を増やさない解決策を考えれば良い。つまり部の統合。

 それに関して反論する事はもちろんできるはずもなく、絵里は色々と言いたい事をとりあえず今は飲み込んだ。

 

「部室、行ってみれば?1階のロッカールームの隣、普段は使われてない部屋やけど、小さくアイドル研究部って書かれてるから分かるはずや」

「はい、そうしてみます!ありがとうございました!」

 

 穂乃果は笑顔でそう言って一礼すると、海未とことりと共に生徒会室から出た。

 

「どうだったの?」

 

 生徒会室の外で待っていた1年生メンバー。真姫が先行して質問する。

 

「申請は受け取れないって。でも大丈夫、これからアイドル研究部の人に会いに行くから!」

「ア、アイドル研究部、ですか?」

「うん、そう。既にこの学校に存在する、アイドル関連の部活。そこに行って、一緒に……ううん、部活として、μ'sとして活動させてほしいってお願いしに行くの」

 

 本当なら、一緒にアイドルをやりませんか、って……まだ言えない。

 

 だって今の彼女はにこであってにこ(・・)でないから。

 まだ彼女の中にいるはずの、この時代の、矢澤にこ、彼女を説得する事はできていないから。

 

 ––––だから、それまでは

 

 

「初めまして、にこ先輩」

 

 

 音ノ木坂学院1階ロッカールームの隣にある部室、アイドル研究部。

 6人のμ's、そして矢澤にこが向き合う。

 その部室の扉の前で、μ'sと矢澤にこの物語が進みだした。

 

 

 

 

 

 




ハンバーガーショップで会議を行う6人の側に隠れる矢澤にこ。
が、過去同様アクシデント(故意的な)に遭う他、相変わらずどこか抜けてしまっている穂乃果。
とはいえ、やる事が決まった彼女達。早速、と行動を始め生徒会に向かったが、結果はNo。
そんな彼女達に希はアイドル研究部の存在を伝える。
そして始まる、矢澤にことμ'sの物語。

ついににこちゃん接触、始まる彼女の物語。しかしそれは未来にこちゃん編段々と終わりに近づいているというのも意味しております。
穂乃果ちゃんとにこちゃんはどう行動していくのか……

それではまた次回。
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