高坂穂乃果は再びスタートする   作:ひまわりヒナ

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μ's再結成を決めた穂乃果。
今回から本格的に動き出します。
そしてメンバーも登場、とは言えまだ絡む事はできませんが……

シリアス要素もあるという事を予めお知らせしておきます。
楽しい描写を多くいれたいと思っていますが、自分はシリアスな場面も含めてラブライブという作品だと思っているので、度々入ります。

長々と申し訳ありません、それではどうぞ。


4話 過去とのズレ

 穂乃果は夕食やお風呂などを済ませると、部屋に戻って布団の上に寝転んだ。

 考えてみれば、今日がタイムスリップを起こしてから1日目。

 いきなり多くの問題が出過ぎである。もっともそのほとんどは、穂乃果1人の問題ではあるのだが。

 

「明日は、どうしようかな」

 

 とりあえず今は、昔、自分が行動した通りに行動するのが最善だと考えているため、自分が昔どうしていたのかを思い出す。

 そして思い出したのは、明日は私がアイドルをやろうと思った日、UTXに行った日だ。ということを思い出した。

 

「考えてみれば、あの時ににこちゃんと花陽ちゃん、凛ちゃんに出会ったんだよね」

 

 初めての出会いは本当に偶然だった。その事を改めて考えると、私達9人が出会うのは奇跡だったのではないかと思い、笑みがこぼれる。

 そして同時に少し寂しくなる。今は彼女達とは友達ですらないからだ。

 

「……ファイトだよ!」

 

 小声で自分に言い聞かせる。

 全てまだ始まったばかり、そう、まだまだこれからなのだ。

 とりあえず穂乃果は明日早く起きるため、今日は寝ることにした。タイムスリップなど難しい事は少し忘れて、明日またμ'sのメンバーと会えることを楽しみにしながら。

 

 

 

 

 

「行ってきまーす!」

 

 次の日の朝。

 花に水やりをしていた母にそう言った後、UTXのパンフレットを持って家から出る。

 

「あ、雪穂ー!これ、借りてくね!」

「え、わ、分かったー!」

 

 偶然、部屋の窓を開けた雪穂にパンフレットを借りて行くとだけ言い残し、穂乃果はUTXへと向かう。

 いつも待ち合わせする、ことりと海未には『先に行ってて』というメールを送っておいたので心配はいらない。

 とりあえず学校に遅刻はしないようにしなければ、と思いつつ少し駆け足で向かった。

 

 

 そして久しぶりにUTXへ訪れた。

 その大きさは今も未来も変わらず、圧倒的でいつも驚かされる。学校と言われなきゃ、学校とは分からない。いや、学校と言われても中々学校とは思えないだろう。

 

「相変わらずすごいなぁ」

 

 穂乃果は懐かしさを感じながら辺りを歩く。通った学校ではないが、ラブライブを共に戦ったA−RISEがいて、ユメノトビラを歌ったのもこの場所。全く関係のない学校ではないからだ。

 

 少し歩いていると、近くに集まっていた群衆が盛り上がりを見せた。

 後ろに下がってモニターが見える位置に移動する。

 

「A−RISE……」

 

 懐かしい光景だ。

 未来でもA−RISEはもちろん活動しており、数年経ったというのにその人気は衰えていない。

 だから何度もテレビなどで見る事はあるが、高校生時代の彼女達を見るのは数年ぶりであり懐かしさを感じるのも無理はなかった。

 

 そんな中、少し遅れて現れる1人の少女。

 サングラスにコート、さらにはマスク。周りとは明らかに違う格好をするその人物。そんな人は穂乃果の知る限り、この世でたった1人しかいない。

 

(にこちゃんだ……)

 

 矢澤にこ。彼女が穂乃果の隣に現れた。

 彼女が穂乃果に話しかけることはなく、黙ってモニターへと視線を向け続けている。サングラスで見えはしないが、穂乃果は彼女のアイドルへの情熱を向ける視線をよく知っていた。

 

「あ、あの」

「何?今忙しいんだけど」

 

 穂乃果は思わず話しかけてしまっていた。

 話しかけたかったし、話す予定であったのだが、話す内容が決まっていなかった。

 どうしよう、困惑した彼女は唐突に浮かんだ言葉を発していた。

 

「アイドル、好きなんですか?」

 

 言った後で思い出す、自分はここでにこにA−RISEについて教えてもらった、ということを。

 昔通りにやろうと言っておいて、いきなり道を踏む外し内心パニックになる穂乃果。

 そんな彼女に、質問されたにこは返答した。

 

「えぇ、アイドルは大好きよ」

 

 予想通りの返答であった。

 

「……あんた、音ノ木坂の生徒ね」

「は、はい」

「あんたもA−RISEを見に来たの?」

「え、えっと、そんなところです」

 

 ふーん、とにこは大して穂乃果に関心を持たず、また熱意のある視線をモニターに向ける。

 知り合いですらないのだから、こうなるのも仕方ない。と分かっているもののやはり寂しさを感じる穂乃果。

 そんな時、後ろから懐かしい声が聞こえた。

 

「ねぇ、かよちん!遅刻しちゃうよ!」

「ちょ、ちょっとだけ待って!」

 

 凛ちゃんに花陽ちゃんだ!

 おーい!……とは話しかけられない。あっちは自分を知らない、急に話しかけては困惑させてしまうだけだ。

 今は、黙っていた。

 

 

 

 

 A−RISEの曲を一通り聞いた後、3人に気づかれないようにその場から離れた。もし話しかけられた時、ボロを出してしまいそうだからだ。

 すぐに向かったのは、本屋。スクールアイドル関係の情報収集のためだ。

 とは言え、遅刻してしまうので選別する暇はない。適当に数冊選んで購入し、急いで学校へと向かった。

 

 

「あ、穂乃果ちゃん、おはよう」

「穂乃果、また今日も寝坊し……「違うよ、海未ちゃん!」え?」

 

 教室に着いた穂乃果は、2人のいる席へと早足で向かい、机の上に買ってきた本を広げた。

 もちろん、2人はいきなりの事に目を丸くする。

 

「見て見て!アイドルだよ、アイドル!」

「アイドル、ですか?」

「うん、こっちは大阪の高校で、こっちは福岡の!」

「今有名なスクールアイドル?」

「そうそう!人気のアイドルがいる高校は入学希望者も増えてるんだって!それで私考えたんだけど……」

 

 2人に納得してもらうためにも勢いが大切だ、と思った穂乃果は夢中で話をしていると、1人急にいなくなったことに気づく。

 急いで廊下に出た。

 

「海未ちゃん、話終わってないよ!」

「ちょ、ちょっと私は用が……「私がこれから言うこと分かって、逃げようとしたんでしょ?」うっ、鋭いですね」

「そう言ったら海未ちゃんもでしょ」「誰だって想像つきます!」「え、嘘!?」

 

 海未は少しため息をつくと、

 

「穂乃果、そこに写っている人達はプロ並、もしくはそれ以上の努力をしてきた人達です。穂乃果のように好奇心だけで……「違う」え?」

「私は本気でしたいと思ってる!本気で練習して、本気でアイドルやって、廃校を無くしたいの!」

「ほ、穂乃果ちゃん、落ち着いて!」

 

 しまった。

 穂乃果は後悔した。

 アイドルをやりたい、いや正確に言えば『μ'sの活動をしたい』その気持ちは誰よりも強かった。だから、つい声を大にして強く言ってしまった。

 もちろん、穂乃果の事情を知らない海未の言い分は正しい。実際に昔の彼女はそうだった。

 けれど今の穂乃果の気持ちは好奇心だけではない。しっかりとした気持ちがある。それをあのように言われてしまったら、強く言ってしまうのも無理はなかった。

 

 今の穂乃果と海未には、お互いを知っているからこそ、確かなズレが生じてしまっていた。

 

「すいません、何も知らずに適当な事を言ってしまって」

「こっちこそ、ごめん。強く言い過ぎちゃった」

「いえ、大丈夫ですよ、穂乃果。それにあなたの気持ちも分かりました。けれどアイドルをやるという話に、私はまだ賛成しかねます……」

「急な話だもんね。それに海未ちゃんは弓道もやってるし、仕方ないよ」

 

 直ぐに仲直りできるのは時代が変わっても変化のないことであった。

 しかし、話は先へと進まなかった。いくら穂乃果の熱意が分かったとは言え、直ぐに決めることは難しい。

 とりあえずその場で決まることはなく、3人は席へ戻った。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 結局何も決まることなく訪れた放課後。

 穂乃果は1人、屋上へと訪れため息をついていた。

 

「とりあえずこの後は先生に頼んで音楽を借りて、踊ってみなきゃ」

 

 初日からなんとなく気付いていたことだが、体力等が昔に戻っていた。

 未来では色々と忙しかったので、何だかんだ体力がついていたのだが、今では極端ではないが、体力が落ちたと感じる程に減ってしまっていた。

 

「うーん、また筋肉痛とかになっちゃいそう」

 

 そんな事を考えていた時だった。

 

「この歌……」

 

 僅かに聞こえてくる美しい音色と歌声。

 穂乃果はその音に吸い込まれるかのように、歩いていく。

 

 そして辿り着く、音楽室。

 よりはっきり聞こえてくる音色と歌声に静かに耳を傾ける。

 

(真姫ちゃんの声だ……)

 

 色々な悩みを忘れさせてくれるような、静かな空間に響き渡る音楽。

 そしてその音楽を奏でる真姫。

 ドアの向こう側は別世界ではないか、と勘違いしてしまう程。いや、実際に別世界なのだろう。そう思う程にドア越しに見える音楽室の中は、素晴らしいものであった。

 

 その音色が止まった瞬間、気がつけば穂乃果大きな拍手をしていた。

 

「凄い、凄い、凄い!感動しちゃったよ!」

「べ、別に……」

「歌上手だね!ピアノ上手だね!それにアイドルみたいに可愛い!」

 

 思った事をスラスラと言う穂乃果、それに対し赤面する真姫。

 出会い方は同じだった。

 

 真姫は恥ずかしくなったのか、立ち上がって音楽室を去ろうとする。

 そんな真姫に「あ、あの!」穂乃果は慌てて話しかける。

 

「真姫ちゃん、アイドルやってみない?」

「……なにそれ、意味分かんない」

 

 足早に音楽室を去る真姫。

 はぁ、とため息をつく穂乃果。

 真姫は確かに最初はあんな感じだった、その事を知っている穂乃果は大きなショックはなかったが、中々難しいなぁとちょっぴり寂しさを感じる。

 しかし何度も会えばいつかは分かってくれる、そう思い直し、目的であった職員室へと向かう事にした。

 

 

 一方、先に音楽室から離れ、1年の教室に戻ってきた真姫は、先程音楽室であった事を思い出していた。

 

(なんで、私がアイドル……)

 

 アイドルになろうと誘ってくれたという事は、それに見合う要素があったという事。つまり遠回しに褒められたということだ。

 直接歌もピアノも上手だし、可愛いとも言ってくれた。悪い気はしないが、第一あの人は誰?などと疑問もある。

 

 その時ふと彼女の言葉の中で違和感があったことが一つ。

 

「あれ、なんであの人、私の名前……」

 

 事情以前に穂乃果の存在自体知らない真姫。

 妙にその疑問が頭の中で引っ掛かったが、今日はもう家に帰ることにした。

 

 

 

 

 




これで一応メンバーが出揃いましたが、まだまだμ's全員が揃うまで長い道のりです。
穂乃果ちゃんのボロが出ないか、それが大分重要になりますね。

それではまた次回。
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