しかし曲がないため練習できないという事態。良いスタートとは言えないが、一応のスタートはきった3人。
一方、花陽はライブ告知を見て穂乃果達を知る。
そこにはにこの姿もあった。
「あら、いらっしゃい」
学校が終わり、場所は穂乃果の家。
海未は店の受付でお団子を食べていた穂乃果の母に挨拶をすると、彼女が今どこにいるか質問した。
「上にいるわよ。あ、お団子食べる?」
「いえ、結構です。ダイエットしなければいけないので」
海未はそう言った後、階段を上がっていく。
3人の体型はダイエットする程問題があるかと言われれば、微妙なライン。どちらかと言えば、しなくても十分だ。
けれど、一応アイドルを志す者として、なるべく気にするようにする。
という、話だったのだが……
「「練習お疲れ様ー」」
部屋を開けて見たのは、穂乃果とことりがお団子を食べている光景だった。
「お団子食べるー?」
「今お茶入れるねー」
眉をピクピクとさせながら、座って一言。
「あなた達、ダイエットは?」 「「あぁ!」」
はぁ ため息を漏らす海未。このような光景を見れば、呆れるのも当たり前である。
「努力しようという気はないようですね。
それで、曲の方はどうなりました?」
「1年生にすっごく歌が上手な子がいて、ピアノも上手だから、作曲もできると思う。
だから明日、その子に聞いてみようと思うんだ」
「もし作曲してもらえるなら、作詞の方は何とかなるよねってさっき話してたの」
「なんとか、ですか?」
ねー、と笑みを浮かべる2人。
何のことだか分からないが、嫌な予感がする海未。
そしてグイッと顔を近づけてきた瞬間、確信する。これはとんでもないことを押し付けられるかもしれないと。
恐る恐る、海未は2人に聞いてみる。
「な、何ですか?」
「海未ちゃんさ、中学の時ポエムとか書いたことあったよねー?」
「読ませてもらったことも、あったよねー?」
次第に近づいてくる2人。
とうとう威圧に耐えられなくなった海未は、すぐさまその場から離れようとする。だが「逃げた!」穂乃果にすぐ手を掴まれる。
「やめてください!帰ります!」「海未ちゃん!いいから、いいからー!」「海未ちゃーん!」
結局、部屋に戻され大人しく座る海未。
そして一言、「お断りします!」きっぱりと断った。
穂乃果は断られる事は分かっていたので、とりあえず何故なのか理由を問う。
「絶対嫌です!中学の時のだって、思い出したくないぐらい恥ずかしいんですよ!」
「でも、私は衣装作るので精一杯だし……」
「穂乃果がいるじゃないですか!言い出したのはあなたなんですよ」
「い、いやぁ私は」
「海未ちゃん、小学校の頃の作文を思い出して。無理だと思わない?」
海未は穂乃果の作文を思い出す。
『おまんじゅう、うぐいすだんご、もうあきた!』
あ、ダメだこれ。
確かに、不可能だと感じさせる記憶。海未は何も言えない。
「お願い、海未ちゃんしかいないの!」
「穂乃果達も手伝うから!何か元になるようなものだけでも!」
今の穂乃果はμ'sの曲なら何でも知っている。故にアドバイスどころか、もう彼女の中では完成しているのだ。
だからと言って、歌詞全部を教える事はできないのだから、今ここで説得を失敗するわけにはいかない。
何よりμ'sの曲の歌詞は海未が努力し、さらに皆がそれを元に考え完成させる。そうじゃないとダメだ、穂乃果はそう感じていた。
説得が続き、ようやく海未が頭を縦にふる一歩手前まで来た。
そしてそれはことりの一言により終わりを迎える。
「海未ちゃん……
おねがぁい!!」
「……はぅ!」
園田海未、矢で射抜かれた瞬間である。
「もう、ずるいですよことり」
「さすが海未ちゃん!そう言ってくれると思ったんだ!」「ただし」「ん?」
瞬間、穂乃果は思い出す。
「ライブまでの練習メニューは私が作ります」
「練習メニュー?」「げっ」
練習メニューと言われキョトンとすることり。それに対し穂乃果は声に出しながらの苦笑い。
彼女が思い出したのは、アイドルを始めた当初の辛いメニューの記憶であった。
「楽しく踊っているようですが、ずっと動きっぱなしです。
それでも笑顔でいる。それにはかなりの体力が必要です」
この中で誰よりもそれを知っているのは穂乃果。
アイドルに笑顔は欠かせない。かといって、踊り、歌などが欠けては意味がない。完璧に完成させるには、それ相応の体力が必要になる。
それは痛い程分かっていた。
「穂乃果、ちょっと腕立て伏せしてもらえますか?」
「う、うん」
やばいかも。
この時期の自分はとにかく体力がない、その事を自分自身のことだからよく知っている。だからこそ出る焦りであった。
「こ、こう?」
「はい、それじゃ笑って」
「お、おっけー」
「そのまま腕立て伏せをしてください」
「う、うー、うぅ……はぅ!いったーい!」
見事と言わんばかりに崩れ、地面に鼻をぶつける穂乃果。
相当やばい、という事を身を以て実感する。
それにしても、お鼻が痛い。
「弓道部で鍛えている私はともかく、穂乃果とことりは楽しく歌えるだけの体力をつけなくてはいけません」
「そっか、アイドルって大変なんだね」
「はい、ですから……」
海未は2人にある提案をした。
「はぁはぁ、き、キツイ……」
「もう足が動かないー!」
次の日の朝、穂乃果とことりは息を切らしながら地面に倒れこむ。
場所は神社の境内であった。
倒れこむ2人をストップウォッチ片手に見守る海未は、改めて昨日提案した練習メニューの確認をした。
「ライブまでの期間、これから毎日朝と晩、ここでダンスと歌とは別に基礎体力をつける練習をしてもらいます」
「い、1日2回……」
体力がかなり無い事を自覚した穂乃果にとって、そのメニューは明らかにキツさを感じた。
「やるからにはちゃんとしたライブをやります。そうじゃなければ生徒も集まりませんから」
「そ、そうだね……よし、頑張ろう、ことりちゃん!」
「う、うん!穂乃果ちゃん!」
「その意気です!それじゃ、もう1セット!」
よし、いくぞ!
と意気込んだその時、「君達」唐突に話しかけられる。
振り向いて最初にその正体に気づいたのはことりであった。
「副会長さん?」
そこにいたのは巫女服姿の東條希であった。
当然、何故その服を着ているか疑問がわくだろう。しかし穂乃果はここでお手伝いをしている事を知っていたので、そのことについて質問したのは海未だった。
「その格好は?」
「ここでお手伝いしてるんや。
神社は色んな気が集まるスピリチュアルな場所やからね」
「スピリチュアル……ですか」
「そうや。それより、3人とも。階段を使わしてもらっているんやから、お参りぐらいしていき」
希に言われ確かにそうだと気付いた3人は、すぐに賽銭箱の前に立ち、お金を入れて2回手を叩く。
「初ライブが上手くいきますように」「「上手くいきますように」」
1stライブの結果を知る穂乃果。
しかしこの時彼女は私達なら上手くいく、と強く思っていた。
そしてそんな3人を見て、希は3人の本気さを感じていた。
「1年生の皆さん、こんにちは!スクールアイドルの高坂穂乃果です」
その日のお昼休み。場所は1年生の教室。
3人は教壇に立ち、穂乃果は堂々と自分はスクールアイドルと言った。それに対し1年生達はキョトンとした表情、知れ渡っていないというのは明らかであった。
「や、やっぱ、まだ浸透してないか」
「当たり前です!」
「それより穂乃果ちゃんが言ってた子は?」
ことりが問いかけるのとほぼ同時に、ガラッと扉が開いた。
そして教室に入ってきたのは、探していた人物、西木野真姫であった。
「あ! ねぇ、ちょっといい?」
「わ、私?」
「うん!一緒に来て!」
「え、ちょ、ちょっと!」 「ちょ、ほ、穂乃果!強引すぎます!」 「ま、待って、穂乃果ちゃーん!」
穂乃果は真姫の手を引き屋上へと向かう。海未とことりもその後を追った。
そして屋上に着くと同時に、真姫に用件を話す。
「私達スクールアイドルなんだけど知ってる?」
「噂程度には聞いたことあります」
「それで頼みがあるんだけど……作曲、お願いできない?」
笑顔で言う穂乃果。しかし、その笑顔は作られた笑顔。
何故なら、
「お断りします」
断られる事が分かっていたからだ。
だが分かっていたからと言って諦めるわけにはいかない。
「お願い、力を貸して!」
「お断りします」
「あなたの力があれば生徒が集ま」「興味ないです」
そう言って、屋上を離れる真姫。
分かってはいたものの、傷つかないわけではない。あそこまできっぱり断わられれば、傷つくのも普通である。
「お断りしますって、海未ちゃんみたい」
「あれが普通の反応です」
そんな事を言ってると「ちょっといいかしら」そう言いながら屋上のドアが開いた。
そこにいたのは絵里だった。
「少し、お話がしたいの。高坂さん」
そう言う絵里の視線は穂乃果のみを捉えていた。
空気を読んだ海未とことりは先に教室に戻っていると言って、屋上を後にする。
2人が去った事を確認すると、絵里は用件を話し出した。
「スクールアイドルが無かったこの学校で、やってみたけどダメでしたってなったら、皆どう思うかしら」
スクールアイドルの影響力は今の時代かなり大きい。
それはこの学校の生徒達も同じ。そんな状況下で絵里が言ったようなことなれば……廃校阻止どころか逆効果なのは間違いない。
「私もこの学校にはなくなって欲しくない。本当にそう思ってる。だから軽い気持ちでやってほしくないの」
絵里の言葉はもっともだ。
時間もない、技術も不十分。そう言うのも当たり前の事だと穂乃果もよく分かっている。
だから何も言い返す事はできない。
「よく、考えてちょうだい」
「……はい」
絵里は屋上を去った。
1人屋上に残った穂乃果はため息をつき、空を見上げる。
自分のやろうとしている事の壮大さを改めて感じていた。
1度体験したとは言え、もしかしたら未来が変わってしまうかも、という悩みを持つ彼女。その心配がある以上、安心する事などできない。
もしかしたら真姫ちゃんが作曲してくれないなんてことも……などとマイナス思考になってしまう穂乃果。
明るく元気、プラス思考で考えよう!それが自分、高坂穂乃果という人間。けれど事態は重い、まして彼女は昔とは違う状況下。
集中力が散漫し、気が付けば授業は終わり訪れた放課後。
早速3人は集まって話し合いをするが、
「他のアイドルの曲を使うしかないかもしれません」
「そう、だね」
出てくるのは妥協案ばかり。
元気を出してあげたい穂乃果ではあるが、今はどうする事も出来ない。
そんな時、ふと思い出す。
「私、投書箱見てくる」
グループ名を募集した投書箱の確認をしにいく穂乃果。
入れてくれているだろうか、とドキドキしながら向かう。
だが、その足は投書箱が見える辺りに来た時止まった。何故なら、
(に、にこちゃん!?)
投書箱の前ににこの姿があったからだ。すぐに近くの物陰に身を隠す。
何でとは思ったが、冷静に考えればいる事がおかしいわけではない。
アイドル研究部の彼女なら、色々と気になる事もあるだろう。むしろ見にこない方が少し不自然だ。
そんな所に、「あれ、にこっちやん」そう言って奥の方から現れたのは、希だった。身を隠しているため見えないが、この呼び方、口調、声。間違える事はない。
「その子達、やっぱり気になるん?」
「別に気にしてなんてないわよ」
「その割には、じーっと見てたやん」
「べ、別にいいでしょ。それよりその持ってる紙、なによ」
「こ、これは、生徒会関係のやつ」
「ふーん、まぁいいわ。それじゃ」
にこがそう言うと同時に足音が離れていく。
どうやら奥の方へとにこがいったようだ、と思ったらその足音は急に止まった。
「その子達、あんたは応援してあげなさいよ」
「やっぱり気にしてるやん」「気にしてないわよ!」
再び足音が離れていく。
(にこちゃん、この時から気にしてくれてたんだ……)
やらないといけない、成功させなければいけない。そんな気持ちを強くする穂乃果。
一方にこがその場からいなくなってから、投書箱に紙が入れられた音がすると、少し駆け足の足音が離れていった。
2人ともその場から去ったのを足音で確認した穂乃果は、一応そーっと投書箱前に2人がいないか確認する。姿はなかった。
確認した穂乃果はすぐさま投書箱に向かい、中身を確認しようとする。その時、
「穂乃果、どう?練習は」
そう言って現れたのはヒデコ、フミコ、ミカの3人だった。
「ライブ、何か手伝えることがあったら言ってね」
「照明とかお客さんの整理とか色々やらなきゃいけないでしょ?」
「え、ほんとに?」
「うん、だって穂乃果達学校のために頑張ってるんだし」
「クラスの皆も応援しようって言ってるよ」
「そうなんだ……」
思わず涙が出てしまいそうになったが、今は我慢した。
皆が応援してくれている。それを彼女達の言葉ではっきりと思い出した。
頑張ってねという言葉に、ありがとうと返す。
その言葉は強い励みとなった。
「よし」
元気が出た穂乃果は、投書箱を開きそこにあった紙を取り出す。
そして急いで教室へと戻り、待っていた2人に興奮気味に「あった、あった!」と報告する。
すると2人も立ち上がり、穂乃果の元へと駆け寄ってその紙を確認した。
そこに書かれていたのは【μ's】であった。
「これは、なんて?」
「ミューズ……ミューズだよことりちゃん!」
「よく読めましたね、穂乃果。神話の女神から恐らくとったのでしょう」
ついついミューズと口にしてしまったが、とりあえず大丈夫だろう。
「私、いいと思う。いいと思うな、μ's!」
「私もμ'sで良いと思います!」
穂乃果はμ'sと書かれた紙をじっと見つめ、
「うん!私達はμ'sだ!」
スクールアイドル、μ's
誕生の瞬間だった。
ついにμ'sの名がつけられ、基礎練習などを始めた3人。
しかし作曲作りに首を縦に振ってくれない真姫ちゃん。
作曲をしてもらうため、穂乃果ちゃんは諦めず説得していきます。
次回でアニメ本編2話の終わりになると思います。
今の予定では本編3話まではこれぐらいのペースで投稿するつもりです。
それではまた次回。