東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結   作:ラギアz

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第七章第九話「二つの戦い」

直感的に。

 

俺は、爆発の起きた方へと駆けだしていた。

 

「八咫烏!」

 

懐から取り出した銀のナイフを投げ、黒い霊力を纏わせる。

漆黒の翼を大きく広げた八咫烏に飛び乗ると、俺は地底の空を大きく飛翔し始めた。

 

後に起きる可能性より、目の前の物事に全力を注ぐ。

 

今持てる全ての力を出しながら飛翔する俺の横に、突然スキマが現れた。

 

「ねえ真。戦ったわよね」

「・・・うん。ごめん」

「いやまあ、良いのよ。別にあれくらいは」

 

迫る施設、横で気だるげに話す紫。

黄色い瞳を鋭く細め、彼女は告げた。

 

「隔は、妖夢と咲夜とずっと一緒に行動してるわ」

「・・・ああ、クソ。一番最悪の状況じゃないか」

「そうね。で、今貴方以外の人は皆地霊殿に行ってる」

 

深くため息をついた紫は、飛び続ける俺の額を弱く小突く。

 

「だから、あれは貴方に任せる。私は少し、悪夢の遊び相手になってくるから」

「大丈夫か?」

「ええ、まあ死なない程度には頑張るわ」

 

迫る銀の壁。

肌を炙る様な熱気は近づく程に強さを増し、じりじりと肌を焦がしていく。

近づくのが困難な程に。俺は一旦止まり、大きい施設をじっと見上げる。

流石に、ここから近づくのはしんどい。

汗が噴き出る。服がびしょぬれになっているのを気持ち悪く思っていると、紫が眉をひそめた。

 

「何してるのよ。霊力を氷に変換すれば良いじゃない」

「え?俺、炎にしか変換できないぞ?」

 

一気に呆れた表情になる紫。

彼女は扇子で顔を仰ぎつつ、俺に人差し指を突き付ける。

 

「貴方の能力・・・[霊力を属性変換する程度の能力]だからね?勝手に炎だけって決めつけないでね?」

「えっ」

「だから、やろうと思えば纏出来るのよ?」

「えっ」

 

驚きの新事実。

固まる俺の肩を叩いた紫は、ぽん、と俺の背中を押した。

 

「行きなさい。そろそろ、時間よ」

「分かった。頑張ってな」

「そっちもね」

 

瞬時に消える紫。同時に、地底に現れる絶大な妖力の反応。

背筋を震わせつつ、俺も目を閉じ長く息を吐いた。

 

「・・・[属性変換・氷]!!」

 

そして叫ぶ。

すると次の瞬間、俺を包み込む霊力がひんやりとした冷気を持ち、熱くなっていた俺の体を冷ましていく。

形を持ち始め、まるで氷の鎧の様になったそれを纏いつつ、俺は再び施設へと羽ばたき始めた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

地霊殿の主を、霊夢は虹色の弾幕でねじ伏せる。

だが、彼女たちは緊張を解かなかった。

 

「さとり。・・・あの爆発って何?」

「分かりませんよ。ただまあ・・・あの方向での爆発は、少しばかり危険ですね」

「何で?」

 

異変解決メンバーを代表する様に、地霊殿の主を問い詰めて行く霊夢。

暗い、大きい部屋。その床にぺたりと座っているさとりは、目を鋭く細める。

 

「あっちは、核融合の実験施設。その中には一匹の八咫烏。・・・ええ、そうですね。妖怪ですし、もしかしたら貴方達の思い描いてる・・・・暴走妖?の可能性もあり得ますよ。十分」

 

さとりは、人の考えを読むことが出来る。

故に彼女は気づいてしまった。核融合の実験施設方面での爆発、それの原因に成り得るものに。

 

不味い、かもしれない。証拠は無い。もしかしたら、皆が思って居る様な事は無く、地底の荒くれ者たちの喧嘩がヒートアップしてしまったのかもしれない。

 

サードアイ。さとりの体から伸びる三つめの眼は、それに映ったものの思考しか読めないのだ。

 

「・・・いやいや、迷ってる暇なんて無いんだぜ?直ぐ行くべきだろ」

 

悩む皆。しかしそれを切り開いたのは、魔理沙だった。

 

「確かに、考えられる可能性は全部危険だぜ?そら、有効策も限られるし、ぽんと思いつくもんでも無いだろう。だがな、それよりも先にまず行くべきだろ。いやまあ死にたくはないけどさ。困っている奴が居たとしたら。手遅れになりそうな奴が居たとしたら。私は、直ぐに行くべきだと思うぜ」

 

皆は一瞬、固まり。

そして次には、各々が頷いていた。

 

「・・・私も独自に手は尽くしておきましょう」

 

さとりが小さく呟き、戦闘で汚れたスカートの裾をぱっぱと払う。

 

しかし。

 

 

 

直後、轟音と共に地霊殿の壁が打ち砕かれた。

 

ドガアアンッ!!!! という破壊音と同時に、砕け散った壁の外から紫が此方へ吹き飛ばされてくる。

慌ててそれを受け止める霊夢。臨戦態勢に入る皆。

 

カラン、と物音を立てながら、ゆっくりと、ゆっくりと紫と戦っていたそいつは姿を現す――――

 

 

 

 

 

「・・・あれが・・・雷・・・!!」

 

 

霊夢が呟く。

 

白髪の少年は腰に括り付けてある鞘から、深い黄色の刃を持つ刀を抜き放った。

それはまるで、とある少年の持って居る刀。

見間違えるほどに似ているその刀の銘を、隔が思わずと言った風に読み上げる。

 

「彼岸ノ妖・・・?」

 

悠々と此方へ歩いてくる雷。黒い霊力の靄を後ろに携え、彼は刀をゆらりと上段に掲げる。

 

「満開[妖霊ノ彼岸花]」

 

そして、真っすぐに振り下ろした。

 

世界から音が消える。純白の光が、視界を塗りつぶす。

 

その切っ先は、吸い込まれる様に八雲紫へと。

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