東方夢幻魂歌 Memories of blood 完結 作:ラギアz
直感的に。
俺は、爆発の起きた方へと駆けだしていた。
「八咫烏!」
懐から取り出した銀のナイフを投げ、黒い霊力を纏わせる。
漆黒の翼を大きく広げた八咫烏に飛び乗ると、俺は地底の空を大きく飛翔し始めた。
後に起きる可能性より、目の前の物事に全力を注ぐ。
今持てる全ての力を出しながら飛翔する俺の横に、突然スキマが現れた。
「ねえ真。戦ったわよね」
「・・・うん。ごめん」
「いやまあ、良いのよ。別にあれくらいは」
迫る施設、横で気だるげに話す紫。
黄色い瞳を鋭く細め、彼女は告げた。
「隔は、妖夢と咲夜とずっと一緒に行動してるわ」
「・・・ああ、クソ。一番最悪の状況じゃないか」
「そうね。で、今貴方以外の人は皆地霊殿に行ってる」
深くため息をついた紫は、飛び続ける俺の額を弱く小突く。
「だから、あれは貴方に任せる。私は少し、悪夢の遊び相手になってくるから」
「大丈夫か?」
「ええ、まあ死なない程度には頑張るわ」
迫る銀の壁。
肌を炙る様な熱気は近づく程に強さを増し、じりじりと肌を焦がしていく。
近づくのが困難な程に。俺は一旦止まり、大きい施設をじっと見上げる。
流石に、ここから近づくのはしんどい。
汗が噴き出る。服がびしょぬれになっているのを気持ち悪く思っていると、紫が眉をひそめた。
「何してるのよ。霊力を氷に変換すれば良いじゃない」
「え?俺、炎にしか変換できないぞ?」
一気に呆れた表情になる紫。
彼女は扇子で顔を仰ぎつつ、俺に人差し指を突き付ける。
「貴方の能力・・・[霊力を属性変換する程度の能力]だからね?勝手に炎だけって決めつけないでね?」
「えっ」
「だから、やろうと思えば纏出来るのよ?」
「えっ」
驚きの新事実。
固まる俺の肩を叩いた紫は、ぽん、と俺の背中を押した。
「行きなさい。そろそろ、時間よ」
「分かった。頑張ってな」
「そっちもね」
瞬時に消える紫。同時に、地底に現れる絶大な妖力の反応。
背筋を震わせつつ、俺も目を閉じ長く息を吐いた。
「・・・[属性変換・氷]!!」
そして叫ぶ。
すると次の瞬間、俺を包み込む霊力がひんやりとした冷気を持ち、熱くなっていた俺の体を冷ましていく。
形を持ち始め、まるで氷の鎧の様になったそれを纏いつつ、俺は再び施設へと羽ばたき始めた。
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地霊殿の主を、霊夢は虹色の弾幕でねじ伏せる。
だが、彼女たちは緊張を解かなかった。
「さとり。・・・あの爆発って何?」
「分かりませんよ。ただまあ・・・あの方向での爆発は、少しばかり危険ですね」
「何で?」
異変解決メンバーを代表する様に、地霊殿の主を問い詰めて行く霊夢。
暗い、大きい部屋。その床にぺたりと座っているさとりは、目を鋭く細める。
「あっちは、核融合の実験施設。その中には一匹の八咫烏。・・・ええ、そうですね。妖怪ですし、もしかしたら貴方達の思い描いてる・・・・暴走妖?の可能性もあり得ますよ。十分」
さとりは、人の考えを読むことが出来る。
故に彼女は気づいてしまった。核融合の実験施設方面での爆発、それの原因に成り得るものに。
不味い、かもしれない。証拠は無い。もしかしたら、皆が思って居る様な事は無く、地底の荒くれ者たちの喧嘩がヒートアップしてしまったのかもしれない。
サードアイ。さとりの体から伸びる三つめの眼は、それに映ったものの思考しか読めないのだ。
「・・・いやいや、迷ってる暇なんて無いんだぜ?直ぐ行くべきだろ」
悩む皆。しかしそれを切り開いたのは、魔理沙だった。
「確かに、考えられる可能性は全部危険だぜ?そら、有効策も限られるし、ぽんと思いつくもんでも無いだろう。だがな、それよりも先にまず行くべきだろ。いやまあ死にたくはないけどさ。困っている奴が居たとしたら。手遅れになりそうな奴が居たとしたら。私は、直ぐに行くべきだと思うぜ」
皆は一瞬、固まり。
そして次には、各々が頷いていた。
「・・・私も独自に手は尽くしておきましょう」
さとりが小さく呟き、戦闘で汚れたスカートの裾をぱっぱと払う。
しかし。
直後、轟音と共に地霊殿の壁が打ち砕かれた。
ドガアアンッ!!!! という破壊音と同時に、砕け散った壁の外から紫が此方へ吹き飛ばされてくる。
慌ててそれを受け止める霊夢。臨戦態勢に入る皆。
カラン、と物音を立てながら、ゆっくりと、ゆっくりと紫と戦っていたそいつは姿を現す――――
「・・・あれが・・・雷・・・!!」
霊夢が呟く。
白髪の少年は腰に括り付けてある鞘から、深い黄色の刃を持つ刀を抜き放った。
それはまるで、とある少年の持って居る刀。
見間違えるほどに似ているその刀の銘を、隔が思わずと言った風に読み上げる。
「彼岸ノ妖・・・?」
悠々と此方へ歩いてくる雷。黒い霊力の靄を後ろに携え、彼は刀をゆらりと上段に掲げる。
「満開[妖霊ノ彼岸花]」
そして、真っすぐに振り下ろした。
世界から音が消える。純白の光が、視界を塗りつぶす。
その切っ先は、吸い込まれる様に八雲紫へと。